憲法調査会国際社会における日本のあり方に関する調査小委員会

2002-03-28 衆議院 全124発言

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会議録情報#0
平成十四年三月二十八日(木曜日)
    午後二時一分開議
 出席小委員
   小委員長 中川 昭一君
      伊藤信太郎君    石川 要三君
      近藤 基彦君    土屋 品子君
      葉梨 信行君    平井 卓也君
      首藤 信彦君    中川 正春君
      中村 哲治君    山田 敏雅君
      赤松 正雄君    武山百合子君
      山口 富男君    金子 哲夫君
      西川太一郎君
    …………………………………
   憲法調査会会長      中山 太郎君
   憲法調査会会長代理    中野 寛成君
   参考人
   (日本貿易振興会理事長) 畠山  襄君
   衆議院憲法調査会事務局長 坂本 一洋君
    —————————————
三月二十八日
 小委員高村正彦君及び井上喜一君同日委員辞任につき、その補欠として伊藤信太郎君及び西川太一郎君が会長の指名で小委員に選任された。
同日
 小委員藤島正之君同日小委員辞任につき、その補欠として武山百合子君が会長の指名で小委員に選任された。
同日
 小委員伊藤信太郎君及び西川太一郎君同日委員辞任につき、その補欠として高村正彦君及び井上喜一君が会長の指名で小委員に選任された。
同日
 小委員武山百合子君同日小委員辞任につき、その補欠として藤島正之君が会長の指名で小委員に選任された。
    —————————————
本日の会議に付した案件
 国際社会における日本のあり方に関する件

     ————◇—————
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中川昭一#1
○中川小委員長 これより会議を開きます。
 国際社会における日本のあり方に関する件について調査を進めます。
 本日、参考人として日本貿易振興会理事長畠山襄君に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に参考人の方から御意見を四十分以内でお述べいただき、その後、小委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、発言する際はその都度小委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は小委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 御発言は着席のままでお願いいたします。
 それでは、畠山参考人、お願いいたします。
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畠山襄#2
○畠山参考人 本日は、この小委員会にお招き賜りまして、大変光栄でございます。お役に立ちますかどうか自信もございませんけれども、務めさせていただきたいと思います。
 それで、意見の中には個人的な意見にわたる部分もあろうかと思いますが、今、小委員長からお許しをいただきましたように、忌憚のない意見ということでお許し願いたいと思います。
 それでは、座ってやらせていただきます。
 「国際社会における日本のあり方に関する件」ということで、自由貿易協定の問題を中心にというのがいただいたテーマでございまして、まず、憲法調査会の小委員会様がこの自由貿易協定問題を取り上げていただきましたその炯眼に深く敬意を表させていただきたいと思います。
 それで、自由貿易協定、先生方は先刻御存じのことではありますが、念のため、どういうものであるかということをこのレジュメに従って説明させていただきたいと思います。
 この「定義」のところでございますけれども、このレジュメをつくりました後で、事務局の方から、「自由貿易協定について」といういい資料もお配りいただいているようでございますので、簡単にさせていただきたいと思いますが、大ざっぱに申し上げまして、自由貿易協定は、バラッサという学者が定義したところによりますと、五つございます。
 第一が、自由貿易協定、フリー・トレード・アグリーメントと呼ぶものでございまして、これは、メンバー国の間の関税、それからその他の非関税障壁を全く撤廃しようというものでございます。それが典型的な自由貿易協定であります。
 それから、その次の段階に進みますと、関税同盟といいまして、この関税同盟は、そのメンバー国の対外的な関税を統一するものでございます。
 それで、(2)の方に「典型的な例」とございますけれども、自由貿易協定の典型的な例は、北米自由貿易協定、いわゆるNAFTAでございます。アメリカ、メキシコ、カナダで構成しているわけでございますけれども、その間の関税は原則ゼロにする、その間の輸入制限は原則行わないということでございますけれども、対外的なアメリカの関税、メキシコの関税、カナダの関税、こういうものはばらばらでございます。
 それに対して、関税同盟の典型的な例がEUでございます。欧州連合でございますが、この欧州連合の対外的関税は統一されております。
 自動車の例で申し上げますと、例えばアメリカの関税は二・五%ぐらいであります。それに対して、カナダの関税は六%ぐらいであります。メキシコの関税が二〇%ぐらいで、みんなばらばらであります。ところが、EUの関税は全部、ドイツであろうとイギリスであろうとフランスであろうと一〇%というふうに統一をされておるということでございます。
 それで、第三段階に進みますと、これが共同市場というものになります。共同市場の中では、生産諸要素、例えば労働でございますとか資本でございますとか、そういう貿易財などの生産諸要素の移動を自由にしようというものでございます。先ほど申し上げましたように、EUが関税同盟の典型的な例ではございますが、しかし、九二年以降のEUは共同市場に移行をいたしました。だから、この共同市場の例もEUになるわけでございます。
 それから、第四の形が、このバラッサの分類によりますると、経済統合でございます。経済統合は、マクロ経済政策を統一しようというものでございます。さすがのEUも、ここまではまだ来ておりません。だから、今、マクロ経済政策まで統一して運用している共同体はないと思いますので、典型的な例はまだない。
 それから、最後の段階が完全な統合であります。これは、政治統合もやっちゃおうというような感じであろうかと思います。
 バラッサの分類でいいますとそういうことでございまして、典型的な例は、先ほど申し上げましたように、自由貿易協定の例で申し上げますと北米自由貿易協定であり、それからアジアで、ASEANのASEAN自由貿易地域というのができておりますけれども、それなどが典型的な例でございますし、関税同盟の例は、EUのほかで申し上げますと、南米はブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイで構成しておりますメルコスールというのがありますが、このメルコスールも代表的な例でございます。
 そこで、FTA、自由貿易協定は自由化を推進する一つの手段でございます。一つの手段でございますが、それとWTOとどういう関係になるのだということについて申し上げたいと思います。
 WTO、世界貿易機関はガットの後身でありますけれども、これは多国間で自由化を推進するということでございまして、昨年十一月の九日から始まりましたドーハの閣僚会合で、この次のラウンドをスタートすることが決定したわけでございます。ただ、これは、中国、台湾の加盟がこの間実現しまして、今、百四十四カ国が加盟いたしております。非常に多数の国がやるわけでございます。そこの合意を得ながら進めていくというのがWTOでございますし、前回のウルグアイ・ラウンドの結論に基づいて詳細なルールが決まっておりまして、それに従って自由化を推進していこうというのがWTOでございます。
 それに対してFTAは、さっきも申し上げましたように、単なる二、三カ国、あるいは多いときでEUのように十五カ国とか、そういうのが加盟をして、その間でだけ関税を免除し、輸入制限を免除していく、こういうものであります。したがって、FTAの問題は、メンバー国を優遇する、逆に言えば非メンバー国を差別するということでございます。この差別的な側面というのが問題であります。
 したがいまして、WTOの基本的な精神であるところの自由、無差別のうちの、この無差別というものに少なくとも精神は抵触するわけでございます。したがって、WTOルール上は、厳格な条件を設けまして、その条件に適合すればFTAは許してあげるという建前になっております。
 その条件というのは二つ三つございまして、一つは、実質上すべての品目をカバーしなくてはいけないということでございます。だから、貿易をやっております品目の中には工業製品もあれば農産品もあればいろいろあるわけでございますけれども、そのうち工業製品だけ自由化しようとか、そういうことは許されないわけでございます。実質的にすべての品目をカバーしなくてはいけないということが一つの条件であります。
 それから第二の条件は、FTAの関係に入る前と後とで対外的な障壁を引き上げてはいけない。だから、メンバー国の間で関税をゼロにするかわりに、例えばメキシコでいえば、FTA発足後は自動車の関税を、今二〇%なのを、対外的に、日本も含めた対EUとかそういうところに対しては二五%に上げるとか、そういうことをやっちゃいけないということであります。
 それから第三の条件は、自由貿易協定の関係に入るわけでございますけれども、そうすると、原則すべての品目について、先ほど申し上げたように、輸入制限なり関税を撤廃しなくちゃいけないわけですが、それに経過期間を設けることがあるわけですが、その経過期間は十年を超えてはならないということであります。
 そういう条件のもとにWTOはFTAを容認しておるということでありますが、ただ、それが建前になっていると先ほど申し上げました理由は、実は、WTOの審査は、物の貿易の方で申し上げますと、ガット二十四条でございますけれども、この二十四条をパスしたFTAなり関税同盟はいまだないという状況であります。提出しても、審査がたなざらしになっていたり、両論併記になっていたり、未提出だったり、そういう状況でございまして、いわば判例が確立していないというのが実態でございます。
 以上が「自由貿易協定とは何か」というところでございますが、次の「FTAの拡がり」というところへ入らせていただきます。
 すなわち、FTAが最近大変広がってまいりました。後で申し上げますように、数がふえてまいったわけでございます。それは何が契機であったかということでありますけれども、私の見るところ二つありまして、一つは、一九九〇年に、当時ウルグアイ・ラウンドの最中でございましたけれども、ウルグアイ・ラウンドのブラッセルでの閣僚会合というのがございました。これは、当時外務大臣であられた中山会長も外務大臣として参加しておられたと記憶しておりますけれども、その会合が実は失敗に終わったわけでございます。そこでウルグアイ・ラウンドの決着をつけようということであったわけでございますが、そうなりませんでした。
 このガットのラウンドが失敗したので、多国間の作業は難しいじゃないか、だから、同じ自由化を推進するにしても、自由貿易協定の方でいこうやというふうに思った、そういう関係国が多かったのではないかというのが第一点であります。
 第二点は、九二年に、先ほどちょっと触れましたけれども、それまでECと言っておりました欧州共同体がEU、欧州連合に切りかわるわけで、それまで欧州は、関税同盟ではありましたけれども、共同市場にはまだなっていなかったわけでございます。それで、生産諸要素の移動などは自由になっていなかったし、例えば域内の流通規制なんかも残っておりました。ところが、この九二年から域内の流通規制を撤廃し、労働の移動も原則自由にし、共同市場にしていこうじゃないかということになったわけでございます。これが当時、九二年ですから、EC92と言われておりました。
 それに対して、日本もアメリカも、これはフォートレス・ヨーロッパをつくるものである、欧州の要塞をつくるものであって、ブロック経済化につながる、けしからぬ話だといって、私も現役で通産省でやっておりましたので、声高にそういうことを言っていたわけでございます。ところが、それにもかかわらずEUはでき上がりました。EC92は完成して、共同市場が誕生したわけでございます。
 それでアメリカが態度を変えました。自分たちも自由貿易協定の方でいこうということになりまして、当時既に折衝に入っておりましたメキシコの加盟を温かく迎えるようになり、そして、九四年一月からNAFTA、北米自由貿易協定が発足するわけでございます。
 そういうことで、アメリカもFTAになびきまして、その同じような時期に、アジアの方も、これでは自由貿易協定をやらざるを得ないということで、それまでは自由貿易協定でなかったASEANがAFTA、自由貿易協定をつくったということでございます。
 それで、現在はどういうことになっているかというと、世界じゅうで効力を発揮している自由貿易協定の数が、ダブっているのをジェトロで調整して勘定してみますと、百三十八でございます。百三十八個も自由貿易協定が世界にあるということでございます。
 そのうちどういうものがあるかということは、資料の三枚目におつけしていると思いますが、「世界主要国・地域のGDPと加盟する自由貿易協定」、これは世界の主要三十カ国を上から順に並べたものでございます。そのうち、自由貿易協定のメンバーであるという国は、右側にその自由貿易協定の名前が書いてあるわけでございます。以下、自由貿易協定と申しますときは関税同盟も含めて申し上げたいと思いますけれども、そういうことで、ドイツはEUに入っている、英国はEUに入っている、カナダはNAFTAに入っている、ブラジルはメルコスールに入っているというようなぐあいでございます。
 そして、ここで影がついているのがありますが、五つであります。日本と中国と韓国と台湾と中国香港。この国あるいは経済、台湾とか香港は国ではないというふうに考えますと、経済と呼んだ方がいいかもしれませんけれども、この五つの経済が、自由貿易協定を発効させているものにはまだ入っていない。
 日本は、御案内のとおり、この間、一月十三日に小泉首相が訪シンガポールをされまして、その折に、ゴー・チョクトン首相とサインを交わされている。この日本・シンガポール経済連携協定というものは国会に提出をされているわけでございまして、御審査をいただくことになるんだと思いますけれども、そういう意味ではまだ発効はしておりませんので、この影は落とせないでおるわけでございます。
 すぐ容易にお気づきでありますように、日本、中国、韓国、台湾、中国香港というのは、いずれも、英語で言えば極東地域にあるわけでございます。この地域にある五つの経済体が自由貿易協定に手を染めていないだけであって、世界主要三十カ国、いかに主要であるかというのは、この三十カ国のGDPを足し上げますと、下から二行目に出ておりますように、世界のGDPの九一%を占めてしまうわけでございます。その中で自由貿易協定に手を染めていないのは、この五つの経済体だけである。台湾と香港を除きますと、結局日本、中国、韓国だけである、こういう状況になってきているわけでございます。
 のみならず、既存の自由貿易協定、例えばNAFTAでございますとかあるいはEUでございますとか、そういうものが拡大を始めております。
 それで、NAFTA、北米自由貿易協定は、今度は二〇〇五年までにFTAA、米州自由貿易協定になろうということで、中南米を入れてしまおう、合計三十四カ国で自由貿易協定をつくろうということになっております。そうなりますと、ブラジルとかアルゼンチンとかそういうところまで入って統合されていくわけでございます。
 それからEUの方は、ポーランドとかハンガリーとかチェコとかブルガリアとかルーマニアとか、ああいう旧共産圏の国々とトルコを含めて、今十三カ国が加盟の申請をしてしまっているか、しようとしているわけでございます。そうしますと、今十五カ国ですから、これができ上がった暁には二十八カ国ということになってくるわけでございます。
 そういうことで、既存のものも拡大しておりますし、それから新たな自由貿易協定という動きが高まっております。
 最も特筆すべきは中国であります。中国は、昨年の十一月四日、朱鎔基首相がASEANに呼びかけまして、そして中国とASEANの自由貿易協定を今後十年以内に完結すべく交渉に入ろうという合意に達しました。それから、アメリカとシンガポールも今交渉中でございまして、妥結の日も近いと言われております。それらに限りませんけれども、そういう状況でございます。
 ここでシンガポールとアメリカがもし自由貿易協定を締結しますと、アメリカも、これは私の個人的な観測でございますけれども、ほかのASEAN諸国とも自由貿易協定を結ぼうという動きになってくると思います。中国がASEANと自由貿易協定を結び、仮にアメリカがASEANと自由貿易協定を結ぶ、その中で日本がそれにおくれをとるというようなことがあると、これは一大事だと私は個人的に考えているわけでございます。
 それで、三番目の「日本の立場」というところに入らせていただきますけれども、日本の立場は、二、三年前までは、言葉遣いは悪くて恐縮でございますが、WTO一辺倒でございました。大ざっぱに申し上げればそういうことで、WTO以外のことには関心を示さず、その理由は、先ほど申し上げたように、FTAというのは非メンバー国を差別する、したがって、ガットの一大原則である自由、無差別のうちの無差別という原則に反する、したがってよくない、やがてブロック経済につながるじゃないか、したがってWTO一辺倒でいくんだということでございました。
 しかし、そのために問題点が生じました。
 第一の問題点は、国際的な孤立であります。
 これは個人的な体験で恐縮でございますけれども、一九八九年だったと思いますが、モントリオール・コンベンションというのがございまして、これは、実は例のオゾン層保護のためのフロンの規制に関する条約でございます。名前は違う名前でございますけれども、実質はそういうものでございます。その条約の第一回正式会合が行われました。それで、私は当時通産省の基礎産業局長か何かをやっておりまして、外務省の政務次官がおいでになるまでの間、代表みたいな格好で現地に行っておりました。
 そうしますと、これは条約実施のための第一回会合でございますので、国連側でおつくりになった実施規則のようなものを提案されました。ただ、国連でございますから出席者は三百人ぐらいおるわけでございまして、国連の担当理事の方は、提案されて、さあ友邦国と相談していらっしゃい、こう言われたわけでございます。夕方また会いましょうみたいな話だったわけでございます。
 友邦国と相談と言われて、アメリカはカナダと相談する。EUはEUで集まって相談する。中国は、当時グループオブ77というのがまだ非常に盛んなころでございまして、そういう方々と一緒に相談をなさる。あぶれたのが日本と韓国とロシア、そのときちょっとロシアは中途半端な時期にありまして、この三つでございまして、そういうこともございました。
 したがいまして、申し上げたい点は、自由貿易協定で結ばれておると、その他の関係でも、これは経済問題と関係のない話ではだめだと思いますけれども、国際経済と関係のある話であれば、非常にツーカーにつながる仲になるということでございます。したがって、国際的に孤立をする傾向になってきた、これが第一であります。
 それから第二は、FTAがあれば実現ができたであろうことが、当然ですけれども実現できておらないということであります。
 その第一は、国内の構造改革であります。
 御案内のとおり、国内の構造改革を実施しますためには、国内的に相当な抵抗があるわけでございます。その抵抗を、言葉は悪いですけれども、例えばFTAによる約束があるんだから仕方がないんだと言いながら推し進めていくということがEUの知恵であったわけでございます。
 EUの主要国の一つでありますドイツの経済省の次官が、退任後でありますけれども、ジェトロの招きで日本に来まして講演をしました。その際にまさにそういうことを言っておりまして、構造改革を推進する際に、EUはどうやっているかというと、構造改革でつらい決断をしたのはEUなんだ、おれたちではないと。そういうふうにして、端的に申し上げれば、EU委員会を悪者にして、個々の国のリーダーはその構造改革を進めることができたんだということであります。
 それから、メキシコの経済大臣も言っておりましたのは、構造改革を国内的に決定して推進しようとしても、反対が強まると、国内だけの意思決定にとどまれば少し後退せざるを得ない。しかし、それがFTAという形で外国との約束になっておれば歯どめがきく、後ろへ戻れない、そういうことも言っておられました。
 それから、FTAありせば実現できたであろうことの第二は、新分野の実験であります。
 例えば、WTOの中で競争と貿易、独禁法とかそういうことでありますけれども、そういうことを決めていくのは、今、この百四十四カ国の中ではなかなか難しゅうございます。しかし、FTAの中では、場合によっては競争と貿易ということを規定ができるかもしれない。そういうことでありまして、FTAという形で新分野を実験できる。そして、あちこちのFTAで競争と貿易というのができてくれば、それをWTOの中へ高めていくことができるということであります。
 それから、FTAありせば実現できたであろうのにということのもう一つは、FTAがあれば、そんなにWTOの自由化に反対するのであればFTAのルートで行くもんねと言って、WTOの作業を逆に推進する圧力にも使えるということであります。
 時間もありませんので、これぐらいにFTAありせば実現できたであろうのにということの御説明を終わります。
 第三点目の、FTAがないために生じた問題点は、日本経済が受けている実害であります。
 この例を申し上げますと、メキシコでございますけれども、メキシコ市場へ日本企業がどこの国の企業と競合して進出しているのかといいますと、アメリカとヨーロッパの企業であります。大ざっぱに申し上げれば、ASEANや中国の企業と競合しているわけじゃないわけであります。
 ところが、そのアメリカの企業は、NAFTAのおかげで関税ゼロでアメリカの産品をメキシコへ輸出できるわけであります。それからヨーロッパは、EUとメキシコが二〇〇〇年七月から発効させました墨EU自由貿易協定のおかげで、EUの産品も関税ゼロでメキシコへ出るわけでございます。ところが、日本の産品は関税がかかるわけでございます。
 ちなみに、メキシコの平均関税率は一六・二%であります。これは、必ずしも日本からのが全部一六・二%かかるということではありませんで、平均一六・二%でありますし、それから部品その他について特例もありますので、一六・二%を個々の品目について払っているということではございませんけれども、そういう実害が生じているわけでございます。
 それで、これは貿易面の実害だけにとどまりませんで、例えば投資を行っても、その立ち上がった工場の少なくとも当初段階は部品を輸入していくわけでございますね。その部品を輸入する際に、アメリカの部品は関税ゼロ、EUの部品は関税ゼロ、ところが日本の部品には関税がかかるということですから、投資もやりにくいということになってくるわけでございます。
 そういうFTAがないための弊害が出てまいりました。そこで日本は、FTAももう一つの選択肢にする。ここに書いてあります、「FTAでWTOを補完する重層体制」というものに徐々に移行を二、三年前から始めたわけでございまして、ここにございます対シンガポールは、先ほど申し上げましたように、包括的経済連携協定というものを結びまして、国会で御審査をいただくことになっております。
 それから、メキシコでございますけれども、もう一つの資料に出ておりますように、二段目でございますが、「日本と諸外国とのFTA研究・交渉状況」というのがございます。その右側に出ておりますように、中段から下でございますけれども、「二〇〇一年六月に小泉総理とフォックス大統領との間で、産学官からなる共同研究会の設置に合意。」ということでございまして、共同研究会を六回やる予定でございますが、今その四回までを終了しておるということでございます。
 先日私は、たまたまでございますが、メキシコへ参りまして、フォックス大統領にも表敬訪問をいたしました。その際に、フォックス大統領それからカスタニェダ外務大臣、デルベス経済大臣、それぞれお目にかかりましたけれども、これらの方々が口々におっしゃっていましたのは、この十月にメキシコがAPECの首脳会議の主宰国になるわけでございます。そこで小泉首相ともまたお会いする機会があるので、それまでの間にこの研究を終えて、そして、そのときに交渉に入ることを決定したいということを言っておられました。シンガポールも、最初この研究で入って、やがて交渉に行ったわけでございますので、そういうふうにやりたいということを言っておられまして、来年秋遅くにでも交渉の決着をしたいということを言っておられました。
 それから、ASEANでありますが、ASEANは、そこにございますように、この間の小泉総理のASEAN訪問の折に、日本・ASEAN包括的経済連携構想というものを提案されまして、そして、その専門家会合が一月と、それからついこの間三月二十一日、二十二日に行われまして、今研究が進んでいるところでございます。
 それから、その次韓国でございますが、韓国とは、一月二十五日に、民間のビジネスフォーラムというものが前向きな結論を出しまして、それを受けて三月二十二日、小泉総理が訪韓されました折に、金大中大統領との間で、産学官から成る共同研究会の設置に合意をしておられるわけでございます。そんな状況に今なっておるということでございます。
 それで、最後でありますが、簡単に、今後の残された課題といいますか、これを推進していく際の課題について触れさせていただきたいと思います。
 第一の課題は、申すまでもなく農産物の取り扱いでございます。
 農産物につきましては、先ほど申し上げましたWTOの規定のFTAを認めるときの条件の、実質的にすべての品目をカバーしなくちゃいけないというところがかかわってくるわけでございます。したがって、まず農産物は全体適用除外にしましょうということはWTO上許されない、これが第一点であります。それから、実質的にすべての品目をカバーというのはどういう意味だということについては、判例が先ほどのような状況ですからございませんけれども、一応の解釈は、輸入の九〇%以上をカバーするということではないかというふうに言われております。
 したがいまして、小委員長、ちょっと農産物の関係の資料をお配りしてもよろしゅうございますか。
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中川昭一#3
○中川小委員長 はい、配ってください。
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畠山襄#4
○畠山参考人 それで、今お配りしております資料にありますように、主要な日本への農林水産物の輸入相手先をごらんいただきますと、一位が米国で、二位が中国、カナダ、オーストラリア、こういう順番になっているわけでございます。
 それで、私は個人的には、この農産物の取り扱いについてどうすべきか、そういうことを申し上げられた義理ではありませんが、長年こういう問題にタッチさせていただいておりますので、あえて個人的な意見を申し上げさせていただきますると、食糧安全保障上どうしても守ることが必要という品目については断固として守るということであろうかと思います。
 ただし、その重要な品目を守るために、その周辺の品目と言っては語弊があるかもしれませんが、その他の品目もずっと並べて、いわばカードを持っていて、最後で切りたいとかいうようなことかもしれませんが、そうやって守るということはやめる。重要な品目を除いて、そうでない品目は、どんどんFTAやWTOで自由化をしていくということが大事ではないかと思います。
 無論、しかし急激な変化はいけませんので、そういう自由化をする品目につきましても、もし必要があれば、先ほどWTO上許されていると申し上げました経過措置を十分に利用いたしまして、十年までは許されるわけでございますから、十年後に自由化するとか、場合によってはそういう品目についてそういう措置を講じて、急変緩和をしていくということが必要かと思います。
 それから、よく農産物の場合に問題になりますのは、例えばメキシコと自由貿易協定を結ぶ、そうすると、アメリカの農産物がメキシコ経由で日本へ関税ゼロで入ってくるんじゃないか、こういう御指摘をいただくわけであります。そういうことはございません。メキシコの産品でなければ、日墨自由貿易協定の関税ゼロの品目にならないわけでございます。
 どういう品目がメキシコ産品であるかというと、原産地規則というのが必ず自由貿易協定の中に決められることになっておりまして、いろいろな決め方がございますけれども、関税分類が全く違うことになっちゃうか、あるいは付加価値が五割も付加されるか、大ざっぱに申し上げれば、そういう二つの基準でやっているわけでございます。だから、アメリカの農産物が手つかずで、単にメキシコを経由しただけで関税ゼロで日本に入ってくるなんということは、日墨自由貿易協定を結んでもないわけであります。
 それから、第二の残された課題は、これは技術的な話で恐縮でございますし、やや役所間の問題にもなって恐縮でございますけれども、自由貿易協定の交渉体制、審査体制の問題であります。
 まず、周辺のことから申し上げますと、主要国は、自由貿易協定の交渉に外務省などまずほとんど出てこないわけであります。経済省、貿易担当省が出てくるわけでございます。例えば、アメリカはUSTRであります。EUは、外交総局ではなくて通商総局が出てくるわけであります。メキシコも経済省がやっているわけでありまして、外務省なんかは出てこないわけであります。
 具体的に各国とこれだけいろいろやらなくちゃいけないというときに、外務省が必ず出てこなくちゃいけないとなると、人繰りがつかないとか、そういうこともありますし、それから審査も条約局が一々やらなくちゃならないとなりますと大変ということでありまして、やや古巣の経済省を応援するような話で申しわけないのでありますが、経済省あたりにまとめさせたらよろしいんじゃないかというふうに思うわけであります。
 それから、最後でありますが、現在の自由貿易協定をどういう国とどういう順番で結んでいったらいいのかというところはあいまいであります。率直に言って、今受け身であります。なぜかというと、日本の中では、コンセンサスをとって、そして提案していくことが非常に難しいからであります。
 しかし、御存じのとおり、EUというのは、ジャン・モネという人が、この指導者の一人が構想をして、ザールという当時の西ドイツの石炭の地域を共同管理しよう、そのために炭鉄共同体をつくろうと。そしてそれを、ロベール・シューマンというフランスの外務大臣が、政治家の方が提案をして、今日あのユーロをもたらしたわけでございます。
 それから、時間が過ぎて恐縮でございます、カナダでございますが、カナダは、米加自由貿易協定を結ぶ際に国内で大変な反対がございました。カナダの外交の一大原則の一つは、アメリカからの独立であります。それを米加自由貿易協定によって失うのではないかという強い反対がありましたが、それを当時のマルルーニ首相が押し切ったわけであります。そして、米加自由貿易協定を結びまして、それは議会で否決をされました。そうしたら、議会を解散しまして、米加自由貿易協定締結否かどうかということだけをスローガンに選挙に打って出たわけでございます。その結果、大勝しまして、そして米加自由貿易協定ができたということでございます。
 ですから、せっかくでございますので、きょうは我が国の非常に偉い指導者の方がお集まりでございますので、ぜひお願い申し上げたいのは、この自由貿易協定の策定という問題も通じながら、日本が国際的なリーダーシップをとれるよう、ぜひ政治家の方々のリーダーシップを御発揮いただきたい。
 ちょっと最後、非常に僣越なお願いになりましたけれども、そういうことで御説明を終わらせていただきます。大変御清聴ありがとうございました。拍手
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中川昭一#5
○中川小委員長 以上で参考人の御意見の御開陳は終わりました。
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中川昭一#6
○中川小委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石川要三君。
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石川要三#7
○石川小委員 大変お忙しい中、貴重な時間をいただきまして、有益なお話を聞くことができまして、ありがとうございました。
 私は、この方面には本当に素人で無知なものでございますので、今お話を聞いていろいろな点で大変勉強になったわけでありますが、特にきょうは憲法調査会でございますので、そこいらとの絡みといいますか、そういう点を主眼としてちょっとお尋ねしたい、こんなふうに思っています。
 まず最初に、いろいろと今お話を聞く中で、この自由貿易協定というものがどんどん、まさに二十一世紀の、これからの当然な流れではないかと思うほど非常に拡大されているわけでありますが、それにはやはり一定の、ある程度の規模というものもあるのかな。その適正規模というものがあるとすればどんなものなのだろうか、極めて素朴な質問でございますが、まずそういう点からお話を聞きたい。
 そして、そういう中で、いろいろとお話を総合しますと、これは、もちろん目的とするものは、経済のいわゆる協調といいますか、そういう一つの大きなメリットを目指しているわけですが、しかし、それは単なる経済的なことだけではない、やはり国家主権との関係とか、いろいろなものが出てくると思うんですね。文化あるいは人的交流というものも絡まるだろうし、特にその国の主権にかかわる問題、すなわち憲法とのかかわりも出てくるんではないか、こんなふうに思うんですけれども、そこいらはどんなふうに今関係があるのか、その点をちょっと具体的にお話しを。
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畠山襄#8
○畠山参考人 適正規模の点でございますけれども、確かに、今までNAFTAが結ばれましたけれども、メキシコの経済とアメリカの経済の一人当たりのGDPを比較いたしますと、六倍というような状況でございます。EUと違いまして、NAFTAの場合は、先進国と開発途上国の格差の割合大きい協定であると言われているわけでございますが、そういう六倍程度になっているわけでございます。
 ところが、もし日本が、先ほど申し上げましたように、仮にASEANと結ぶといたしまして、仮にそのASEANが十カ国だとしますと、その中にミャンマーも入るわけでございます。そうすると、ミャンマーは日本の一人当たりGDPの二百七十分の一でございます。だから、こういう国とまで結ぶことが適当かどうかということになりますと、私は、その部分については若干時期尚早かな、適正規模ということでいえば、やはりある程度、何十分の一ぐらいのところにとどまるのであって、ミャンマーまで入れるとどうかなと個人的には思います。
 ちなみに、アメリカが三十四カ国の米州自由貿易協定に拡大しようとしているというお話をさっき申し上げましたが、その中には、カリブ海の、キューバのわきにございますハイチも入っております。あそこの一人当たりGDPは四百六十ドルでありまして、それはアメリカの一人当たりGDPの七十六分の一であります。だから、そういうところまではやろうとしておるということでございまして、ASEANも、インドネシアぐらいですと、日本の五十二分の一でありますから、何とかなるんじゃないかというふうに思います。
 それから、第二番目の、自由貿易協定を結ぶと国家主権にかかわる分野も出てくるんではないか、したがって憲法上の問題も出てくるんじゃないか、これは一般論としては御指摘のとおりでございます。
 ただ、先ほど来申し上げております第一段階の自由貿易協定、これは単に、メンバー国の間の関税を撤廃し、輸入制限を撤廃するというだけでございますので、それにとどまっております段階では、私憲法に詳しくございませんけれども、憲法上の問題は出てこないんではないかというふうに思いますし、仮に第二段階の関税同盟に行きましても、対外的な関税を統一するというだけでございますれば、憲法上の問題は出てこない。
 ただ、先ほどの第四段階、マクロ経済政策を統一するとかいうことになってきますと、租税をどうするとかそういうことにもなってまいりますので、そこになりますと、その国の憲法の規定の仕方にもよると思いますが、現在の我が国の租税関係の条項の決め方にとどまる限りはそれでもいけるんじゃないかと私は個人的に思いますが、しかし、規定の仕方によってはやはり憲法上の問題にもなってくるんだろうというふうに考える次第でございます。
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石川要三#9
○石川小委員 EUというのは、私どもにとっては一つの典型的なものだ、こんなふうに思っておりますが、それに比べて、もし仮に私どもがASEANを仲間にしてやる場合、当然これは、欧州諸国とアジア、特に我々の近辺の中国、韓国、そういったようなところのいろいろな関係を見て、ヨーロッパとは随分違うなと。
 特に、まず一つには、経済格差が非常に大きい。したがって、その経済格差からくる利害対立。それから、中国との政治体制の相違、これが一番顕著であろうかと思いますが、これに起因する政治的な課題。それからまた、さきの大戦に関する歴史的な認識だとか、あるいは文化的課題だとか、いろいろとあると思う、そこいらの問題。それからまた、国民感情が依然として消えていないわけです。そういう国民感情の解決すべき問題などが山積しているわけですね。そうなると、そう簡単にいかないんじゃないかな、こんなふうに思うんですね。
 ですから、ここいらの困難性といいますか、また、それと憲法との関係なんかも当然出てくると思うんですね。そこいらはどんなふうな御理解をされていらっしゃるのか。
 特にEUは、御承知のとおり、その前にNATOというものがあって、極端に言えば、安全保障、こういったような問題でかなり整備されておりますが、アジアはそれに比べて逆ですね。ですから、我々は、経済の後に政治がついてくる、フォローされるというふうな関係ではないかなと思うんですが、そういう点から見ても、ヨーロッパとかなり違うな。
 この困難性、ここいらについてはいかがでございましょうか。
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畠山襄#10
○畠山参考人 まず、国民感情の点でございますけれども、国民感情で申し上げれば、ドイツとフランスだって、先生、先刻御存じのとおり、血で血を洗うような戦争を第一次世界大戦、第二次世界大戦と重ねてきたわけでございます。それを、もう絶対に戦うまいというリーダーの決意のもとに、炭鉄共同体をつくり、そしてECをつくり、EUに昇華させていったわけでございますので、国民感情の点だけで申し上げれば、そういう形でアジアも、リーダーの方々が、国民感情に残る違和感のようなものを克服していただければなと思う次第でございます。
 それから、中国は、政治体制の違いがございますので、中国と本当に自由貿易協定を結べるかというと、先ほどお配りしました、農産物の供給国の第二番目にもランクされているわけでもございますし、御指摘の政治体制の問題もありますので、なかなかにわかには中国とは難しいんじゃないかと、私は個人的に思う次第でございます。
 ちょっと、先ほどの私のお答えが長くて時間を過ぎたようでありますので、この辺で終わらせていただきます。
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石川要三#11
○石川小委員 ありがとうございました。
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中川昭一#12
○中川小委員長 次に、中川正春君。
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中川正春#13
○中川(正)小委員 民主党の中川正春でございます。
 畠山さん、これまでのもどかしさとか、日本の戦略に対する、あるいは政治に対するかもわかりませんが、そのもどかしい気持ちというのが一気にあふれ出たようなコメントをいただきました。
 まず最初に、さっきの憲法との関係で関連してお聞きをしたいんですが、ドイツあたりでは、基本法の中に、国家の権限を一部国際機関へ移譲していこうというような決めがはっきりあるわけですね。これからの日本を見て、そういうような条項も必要なんではないか、あるいは示唆を、いわゆる国民に対して方向性を示すためにも必要なんではないかというふうなことはお考えでしょうか。
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畠山襄#14
○畠山参考人 それは全く御指摘のとおりでございまして、日本も、EU当局のような第三者機関をつくっていく必要があると思いますので、そこへ主権の一部を委任するというようなことが、行く行くの話としては必要なんではないかと薄々考えております。
 ただ、自由貿易協定というその前の段階に行くのにも大変なものですから、それへの抵抗が主権問題と絡んで強くなるといけませんので、今でも抵抗が強いわけでございますので、当面は、そういうことを余り強調しないで、自由貿易協定の数をふやすということに力を注いだらよろしいんじゃないかなと個人的には考えております。
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中川正春#15
○中川(正)小委員 WTOにこだわり過ぎた、その理由は、無差別原則と、それからブロック経済への憂慮というか、そういうものが日本にあった、こういうふうに格好よく最初は説明していただきましたけれども、最後の方で本音が出まして、いや、それはどうも国内政治の中で利害調整ができなかったんだ、もっと通産省が前に出ていったらもっとやれたし、あるいは政治がもっとしっかりしていたらその辺の方向性は決められたんだ、この辺が本音なんだろうというふうに私は理解をさせていただいたんです。
 その場合に、特に、日本国内の利害調整をするのに、役割としては、本来なら外務大臣なんですよ。だから外務大臣の格が高くて、そのことを予見しながら役割分担というのがあったんだろうと思うんです。しかし、現実は、そのリーダーシップが発揮できなかった、あるいは、政治の中で政権交代という枠組みがないために構造改革まで踏み込むことができなかったという、いわゆるそれを予定して政治体制を変えるというメカニズムが日本の国内に働いていないということだと思うんですね。そこのところは、これからどんな形で国内の利害調整をやっていくべきか、さまざまな国がさまざまな工夫をしていると思うんですけれども、それを見られた上で、どういうふうにお考えですか。
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畠山襄#16
○畠山参考人 これは、先ほど申し上げましたように、構造改革について、何も日本の国内調整ができなかったのが不満だとか、そういうことを申し上げたつもりはございませんで、構造改革は、日本に限らず、世界各国、推進するのには大変な苦労が要るものでございます。したがいまして、EUの加盟国である例えばドイツにいたしましても、構造改革の痛みの方は第三者であるEU当局の責任にかぶせて、そして、ドイツのリーダーは、おれは立派ないいことをやっているんだからねというふうにおっしゃって、そこをそういう工夫で処理しておられるんですということを申し上げた次第でございます。
 そういうことでございまして、各国とも、あるいはメキシコにしても、構造改革の歯どめをつくるためには、国内だけじゃだめなんで、国際的なNAFTAというもので約束をしなくちゃだめだというようなことを言っているわけでございます。だから、日本だから構造改革の国内調整ができなかったということを申し上げたかったわけではなくて、外国もそうであって、その一つの道具としてこのFTAを十二分に、今のお言葉でいえば一つの工夫として使っておられるということでございます。
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中川正春#17
○中川(正)小委員 そこの部分は日本も、外圧という言葉があって、アメリカのそれぞれの圧力によって国内的にそれを転換しようとした努力はあったと思うんですね。ところが、現実は形だけで、中身、いわゆる本来の痛みというものに対して政治がしっかりと決断ができなかったということ、そのことが私はあったんだろうと思う。まずその決断が先で、それから次のステップが始まってくる、鶏と卵が逆なんじゃないかなという見方を私自身はしております。
 それと同時に、もう一つ、ブロック経済化ということに対しての懸念というのは、これは国家戦略として整理をしなきゃいけないところだろうというふうに思うんです。ヨーロッパにしてもあるいはアメリカにしても、もう既にブロック経済化の戦略を使って自分の国益を伸ばそうという決断をしているんだというふうに私は思っているんですね。そこのことを日本として理解ができなかったというか、戦略上のマインドをそれに入れ込むことができなかったということが、これは最大の失われた十年ということであったのかなというふうに思っているんですよ。
 そういう意味で、ブロック経済化を本当に恐れなければならないのかということ、ここの懸念は払拭すべきだというふうに私は思うんですよ、今の日本の国内議論の中でも。そこの部分はどう思われますか。
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畠山襄#18
○畠山参考人 御指摘のとおりでございまして、結論から申し上げると、ブロック経済化という懸念は払拭するべきだと私も考えます。
 それで、ブロック経済化の懸念の実体は何かというと、例えば、EUがEUとして内向きになって、そして対外的な障壁を高めていくとか、そういうことが懸念されていたわけでございます。ところが、率直に申し上げて、この十年のEUの対外通商政策は非常に開放的でありました。アメリカと比較いたしましても、アメリカよりよほど開放的でありました。EUも一方的な制裁の規定がありますけれども、一度も発動したことがありません。そういうことで、まずEUがブロック経済化の元祖になるというおそれはないんじゃないかというふうに思います。
 ただ、中国がこの間、石広生さんという対外経済大臣がおられますけれども、自由貿易協定の担当の大臣でございますが、この対外経済大臣が私におっしゃいましたのは、必ずしも自分の意見じゃないんですけれども、他の人が次のように言っていると。それは、北米自由貿易協定があるね、EUがあるね、それでアジアでこれがある、自分がASEANとやろうとしているこれがある、したがって世界は三つの経済圏に分かれるんじゃないか、こういう意見もありますよということを言っておりましたので、中国がどういうふうに考えているかということについては、少し考えなくちゃいけないかなと思いました。
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中川正春#19
○中川(正)小委員 最後に、これからの日本のこれに対する戦略を組んでいく上で、先ほどちょっと言われた、どこからやっていくのが一番メリットが高いか順番を決めていくというような作業であるとか、あるいは国内の利害調整をするという作業であるとかというようなことを考えていくと、これは総理大臣直属の通商代表機関みたいな、そういう機構をつくっていくということ。これは、先ほど通産省の話を強調されましたけれども、私は通産でもないと思うのですね。これは、通産でも利害調整はできないように思うんです、現状からいくと。だから、やはり総理大臣なんだと思うんですね。総理大臣直属の通商部をつくっていくということ、これが早急に望まれるんじゃないかなという気がしているんですけれども、その点についてはどう思われますか。
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畠山襄#20
○畠山参考人 これはちょっとバイアスがかかっているかもしれませんが、そういう御意見があちこちにあることは承知いたしておりますけれども、私は、屋上屋を架するものだと思います。
 通産省は、通商政策の企画立案、調整に関することというのが権限に入っております。昔は、外務省にそれがあって、外務省に通商局というのがあって、それが戦後、通産省に移ってきたためにそうなっているわけでございます。ところが、通産省自身もあるいはそうかもしれませんけれども、何となく昔の商工省みたいなニュアンスがあって、それで産業の保護もやるから、産業の保護と通商オープンというのと両立しないよなというようなことを特に外部の方が言われて、通産省は無理じゃないかということでありますが、今や工業製品で保護している品目は革を除いて全くございません。
 ですから、革だけでありますので、そこにこだわりを持つ必要は通産省にはないわけでございまして、せっかくそこに通商政策の企画立案、調整に関することという規定が入っているわけでございますから、それを一〇〇%活用するというのが私はよろしいんじゃないかというふうに思っている次第でございます。それで、もし調整に必要であれば、内閣官房なり総理大臣の御指示を仰ぐ形にしていけばいいというふうに思っております。
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中川正春#21
○中川(正)小委員 ありがとうございました。
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中川昭一#22
○中川小委員長 次に、赤松正雄君。
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赤松正雄#23
○赤松(正)小委員 公明党の赤松正雄でございます。
 きょうは、大変にわかりやすいお話、いろいろ聞かせていただきまして、大変に刺激を受けました。余りよくこの分野はわからない人間なんで、また初歩的なことを聞かせていただくことになるかと思いますが、よろしくお願いいたします。
 まず第一点目ですが、日本がWTO一辺倒であった、このことから生じた問題点ということで三つほど挙げられましたけれども、逆に言うと、今もブロック化の話とかあるいは無差別の精神に反するとかとありましたけれども、要するに、現状肯定の論理というか、それは、主な物の考え方というのはどういうものがあるわけですか。
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畠山襄#24
○畠山参考人 現状肯定の意見としましては、先ほどちょっと触れましたけれども、このWTOをかえってFTAによって推進できるんだ、FTAがあって、WTO以外にも自由化を推進する道があるんだよということを、いわば対案を示すことによって、WTOに自由化をいわば独占させないということに意味があるということが一つであります。
 それから、もう一つは、新たな領域を二国間協定の中には入れやすい。例えば、アメリカとヨルダンの自由貿易協定がこの間できましたけれども、その中には、これは私は個人的には反対なんですが、アメリカは労働と貿易という条項を入れたかったわけであります。それで、アメリカの夢はこれをWTOに入れたいわけでありますが、WTOは反対するから入らない。そこで、ヨルダンとの間で貿易と労働という規定を入れたわけでございます。そういうふうに、現状肯定派はここで実験ができる。やがて、それで判例も重ねていって、そしてWTOで議論することができるようになる、そんなようなことを言っております。
    〔小委員長退席、近藤(基)小委員長代理着席〕
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赤松正雄#25
○赤松(正)小委員 わかりました。
 次に、この自由貿易協定の、先ほど、日本の生き方としては数をふやしていくしかないとおっしゃいましたけれども、そういう流れの中で、このアジアという、ファーイースト、極東という地域のことを考えた場合に、EUというのは余り参考にならないんじゃないのかという感じが私はいたします。
 それは、先ほどおっしゃいましたように、ヨーロッパというのは、さきの二つの大戦で、もう断じて戦うまいという強い意識が地域の隅々までに恐らくあるんだろうと思います。逆に、ではアジアに、それと反対のことがあるんだということを言うつもりはありませんが、ヨーロッパと、我々が生存しているこの極東地域の置かれた状況というのは非常に違う。
 その中で、やはり一つの大きな存在は、中国という存在だろうと思うんですね。別に中国を敵視するわけでも何でもありませんけれども、ちょっと正体がつかめない中国。まあ、日本自身が自分の自画像をつかめないという部分ともかかわってくるんだろうと思うんですけれども、その辺のことが非常に関係をしてくるんではないか。先ほどの同僚委員の質問に対して、ブロック化ということに対して、中国の物の考え方というものがあるので、ちょっと不明なところがあるというような言い方をしておりましたけれども。
 そういうことを考えていく中で、例えばこの事務局がつくっていただいた資料の中に、要するに、このASEAN、東南アジア諸国連合自由貿易地域の今の状況を考えた場合に、一九九七年の通貨危機や中国経済の台頭等の影響を受けて、構成国が域外国と個別に自由貿易協定を締結することで、AFTAの停滞、形骸化が懸念されているというところに、やはり中国の影というか影響があるというふうに読み取れるような気がするのですが、このあたり、どういうふうに中国の存在を、このアジアにおけるところの、現在着々と進んでいるAFTAの将来におけるものを楽観視しておられるか、あるいはいろいろな風波があるというふうに思っておられるのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
    〔近藤(基)小委員長代理退席、小委員長着席〕
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畠山襄#26
○畠山参考人 委員御指摘のとおり、中国とASEANの関係については、日本として十二分に慎重な分析その他を継続していかなくちゃいかぬと思います。
 無論、中国が経済を繁栄させるということは、立派な隣国があるということでございますので、日本にとってメリットでありまして、決してデメリットではないわけでございますけれども、ただ今回、中国がASEANに呼びかけたにつきましては、中国としては、一つは、国内が過剰生産にあります。それで、あの人たちのカウントでやると、六百品目の重要品目があるそうでありますが、そのうち五百品目は生産過剰だそうであります。そこで輸出マーケットをASEANに求めた。
 自由貿易協定ができれば関税ゼロで入れるので、それがいいという側面があったわけでありますけれども、同時に、中国にだけ外国の投資が偏っちゃって、そしてASEANから若干恨まれておるのを慰撫しようじゃないかという意図もあったようでございます。
 そこで、何をやったかというと、例えばWTOで、これから熱帯産品の関税をこういう予定でしか引き下げませんよと言っているのを、このASEANの国に対しては前倒しで引き下げますよということも言ったようでありますし、それからメコン川開発でいろいろサービスをいたしますよということも言って、非常に意識的に、余り積極的でなかったASEANを誘い込んだわけであります。
 だから、それをそうやるなと言うわけにもいきませんけれども、中国がそういう行動をしているという事実は冷徹に眺めて、それを参考にしながら、日本としても対応を考えるべきではないかというふうに考えております。
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赤松正雄#27
○赤松(正)小委員 次の質問ですけれども、先ほど提示していただいた資料を見ながらふと思ったんですけれども、この「世界主要国・地域のGDPと加盟する自由貿易協定」という三十カ国についての資料ですが、日本、中国、韓国、台湾、中国香港、これを除くほかの国々がさまざまな自由貿易協定に入っております。
 これは私、過去の二十世紀の世界がいわば東西の軍事力冷戦というかそういうものであるなら、もちろんその同じ時期に南北の問題があったわけです。二十一世紀、自由貿易協定の推進が、結局、本当の意味の南北問題の解決にならなくて、新たなる格差の拡大というか、要するに、恵まれた力のある国々を、言ってみれば、例えばエリアの中心にそういう国があるところはある意味でその恩恵を得るにしても、例えばアフリカであるとか、あるいは中近東、ここで言いますと、サウジアラビアが湾岸協力会議という自由貿易協定に入っている、あるいは、最後の南アフリカが南部アフリカ開発共同体に入っている。辛うじてこの二カ国が今私の言った地域の代表選手なんでしょうけれども、そういった地域のいわば将来というものについて、自由貿易協定はどういうふうな役割を果たすんでしょうか。
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畠山襄#28
○畠山参考人 これは二つありまして、一つは、それらの国と先進国との自由貿易協定であります。これは余り今ありませんで、メキシコは昔は開発途上国だったわけでありますけれども、それとアメリカが同じ自由貿易協定に入って、自来、メキシコは、経済は非常に順調に発展したという例はございますけれども、今御指摘のようなアフリカの国とかそういうのが入っている例は余りございません。
 北部アフリカ、あそこはマグレブといって、チュニジアとかモロッコとか、ああいう国々でありますが、それはEUと自由貿易協定を結んでおります。ただ、あれはアフリカの中で典型的なアフリカではありませんで、進歩したアフリカであります。だから、先進国との間のはなかなかまだ発展途上にある。
 それから、彼ら自身の、南部アフリカ開発共同体のような、UEMOAというのも別途ありますけれども、そういう自由貿易協定は幾つかありまして、やっておりますが、率直に言って、私どもの勉強不足もありますが、それほど発展しているわけではないということでございまして、委員御指摘のように、自由貿易協定があるがゆえに南北問題が解決に向かっているかと言われると、そこはどうもそうなっていないんじゃないかというふうに考えております。
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中川昭一#29
○中川小委員長 次に、武山百合子君。
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