寺島実郎の発言 (憲法調査会国際社会における日本のあり方に関する調査小委員会)

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○寺島参考人 今、大変重要なことをおっしゃったと僕は思うんです。米中関係と日米関係の大きな違いは、相互敬愛というモチーフが違うといいますか、中国から見たアメリカに対する、これは美国と書くぐらい、近代中国外交史の中でアメリカが中国に登場してきたタイミングが、欧州とか日本からむしばまれていくプロセスの中で、カウンターカードとしてのアメリカの登場を歓迎したというところから始まっているものですから、米中関係というのは根本的にいい部分があるんですね。相互に敬愛しているような部分があるんです。
 日米関係にそういう部分がないというのが僕は非常にワシントンで実感してきた部分です。中国の要人がアメリカを訪問するときの雰囲気と、日本の要人がアメリカを訪問するときの向こうサイドでの受けとめ方をじっくり深く入ってあれしていると、親中国派とか知中派の人の厚みと親日派とか知日派という人の厚みは十倍違うだろうと思うぐらい、ずしっとくるんです。
 それはなぜかというと、例えば安保というものは、アメリカから見たら本音の部分で日米安保は片務条約です。なぜ自分の国の青年の血を流してまで日本を守ってやらなきゃいけないのという床屋政談的な議論が、アメリカ人の本音の中でフリーライダー論として蒸し返されてくる部分があります。一方、日本から見たら、一時、中曽根さんがそういうことを言われて問題になったことがありましたけれども、傭兵条約といいますか、ガードマン条約といいますか、おれたちが金を払っているんだという、七割はおれたちが負担しているんだと言わんばかりの本音がちらちらかいま見える。
 ですから、安保というものに対する相互リスペクトといいますか、敬愛がない仕組みを、お互いにやはり敬愛できるような仕組みに変えていかなきゃいけないということがこの外交安全保障における、まず、僕はポイントだと思う。それで、さっきからくどいほど僕は発言してきたのが、二つの常識というものに返って、この国におけるアメリカ軍の基地のあり方だとか地位協定の改定だとかというものをしっかり持ち出して、相互に敬愛できるような仕組みに近づけていこうよということを言い出さねばならないということを申し上げたんです。
 そこで、一つだけ、ちょうどきょう発売になっているから、お手元にコピーを配らせていただいた米国の新外交ドクトリン。多分、アメリカで議論されて同じようなことをお感じになったと思いますけれども、ブッシュ政権が、アフガン・モデルという言葉があって、アフガニスタンに短期に攻撃をしかけて親米政権をつくれたということをイラクにもというモチベーション、さらにはその延長線上に、この中で、後でお読みいただいたらよくわかっていただけると思いますけれども、ちょうど戦後直後に対共産圏封じ込め政策を発表したジョージ・ケナンという人がいたわけですけれども、ジョージ・ケナンがつくった外交ドクトリンにも匹敵するような、二十一世紀の新しい外交ドクトリンをつくろうという動きがアメリカの中でじわっと盛り上がっていると僕は思うんですね。これはチェイニー・チームだけじゃなくて、国務省のパウエルを支えているようなラインも一緒になって動き始めている。
 そういう中で、では、新外交ドクトリンというのは何だというと、アメリカのドミナントな、圧倒的に優位な役割を確保しつつ、テロとの闘いと、それから世界じゅうに民主主義という旗を立てていく。ただし、テロとの闘いも民主主義も、アメリカ的なコンセプトにおけるテロとの闘いであり民主主義なわけですけれども、そういうものを基軸にした外交ドクトリンを打ち立てようということで動き始めている。ある意味では、一種の役割意識肥大症みたいな気分になってきていて、今までユニラテラリズム批判というものがあって、世界の出来事に無関心なアメリカというものに批判があったものだから、ぐっと反転して、ねじれた形でのユニラテラリズムといいますか、アメリカ一極主義みたいなものが新たに展開されようとしている。
 私が言いたいのは、イラク攻撃カードとか、あるいは朝鮮半島政策の変更だとかというアメリカの新しい外交ドクトリンの中で見えてくるシナリオに対して、相当リードタイムを長くこの国が準備しておく必要があるということです。また、青天のへきれきのように、湾岸戦争とか九・一一とかという形で、パッチワークとは言いませんけれども、緊急避難的に事態に対応していかなきゃいけないというようなことに追い込まれないように、アメリカとの軍事協力関係というものを先ほど申し上げたリードタイムの中で見直しておかないと、結局この国に残された回路というのは、仕方がないじゃないか症候群といいますか、要するに、ほかにとる道はないじゃないかというところで政策が選択されていくということになりかねないんじゃないかということなわけです。特に、この新外交ドクトリンというのはかなり緊迫した動きだというふうに僕は思っていますので、後でお読みいただければと思います。

発言情報

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発言者: 寺島実郎

speaker_id: 12372

日付: 2002-05-09

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会国際社会における日本のあり方に関する調査小委員会