寺島実郎の発言 (憲法調査会国際社会における日本のあり方に関する調査小委員会)

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○寺島参考人 私も、直近に行ったワシントン、ニューヨークでの議論で、先生が今御心配されているような、アメリカにとって日本が極端に小さくなっていくというか、私、十年いた間、これほど日本がある種のさげすまれた目線で議論されている経験をしたことないというぐらい小さくなってきているという実感があります。したがって、アメリカの議員も、この一年間、世界じゅう、先ほど話題に出ていましたけれども、中国にはどんどん今関心を持って行くけれども、日本に行く議員はいなくなったみたいな話をどこからも耳にするようなことになっちゃった。
 ただし、ここから一つ申し上げたいのは、話を長くしちゃいけないんですけれども、僕は、九〇年代にアメリカは産業構造の基本性格を変えたと思っているんです。冷戦が終わって、それまで軍事という産業に基軸を置いていた産業構造が、金融といいますか、要するにウォールストリートに軸を置くようなマネーゲーム型の産業構造に変わったということを盛んに僕は分析して言ってきているんです。そのことのために、日本に発信してくるメッセージも、やたらに金融に関心を持ったメッセージに変わってきているということに気がつかなきゃいけないと思うんです。
 ところが、この国の産業の基軸というのは、マネーゲームの国じゃないわけです。物をつくることに対する生まじめさ、例えば製造業を中軸にした、農林水産業からあるいは建設業に至るまで、ここの部分でやはり日本の産業化というものの基軸がなされてきたわけです。そういう意味で、この先の日本ということを考えたならば、同じ土俵だけで、つまり金融にだけ軸足を置いた産業国家になりつつあるアメリカと同じ土俵の中だけで針路を議論してちゃいけないということが僕の言いたいポイントです。
 したがって、アメリカに対して話をするときに、全員が株価と不良債権の話だけ話題にしているような構図から、日本の新しい産業の創成とか活性化というときに、どこに軸をとって産業の創成とか活性化をやらなきゃいけないかということを視界に入れなきゃいけない。
 したがって、アメリカというのは新しい技術パラダイムを成長力につなげていく巧みな力を持っていますから、ITだバイオだナノだとしかけてきているわけですけれども、日本も、新しい技術パラダイムとともに、新しい、その技術に乗っかった、自動車産業の次の新しいプロダクトサイクルをつくり出していくような産業政策といいますか構想力が物すごく問われていて、そこの部分が踏み固まらないと、やはり日本が国際社会の中で敬愛されている最大のポイントはまだそこなわけですから、アメリカも日本を見る目を改めて見直すという気持ちになるときに、多分このポイントが重要だろうなと思っています。
 一つだけわかりやすい具体例を挙げると、僕、これは半分冗談だという意味で言っているわけじゃないんですけれども、今回、ずっと関係者といろいろ議論してきて、それだけは日本はやめた方がいいよということを大いに進めることがこの国の再生にとって役に立つという気がしてきた、逆説的な表現ですけれども。何かというと、例えばジェット旅客機のことなんです、わかりやすく言うと。
 日本は、ボーイングだとか欧州のエアバスに対抗していくようなジャンボジェットをつくるということは、市場性からいって大変現実論からかけ離れるかもしれないけれども、例えば沖縄なんかの空港の整備なんということを前提にしたら、台湾とか香港とか上海だとかというところと、コミューター型の中距離の航空機需要は二十一世紀になったら非常に大きいわけですね。
 例えば、中型旅客機みたいなものに日本の持っている産業技術と資金力とエンジニアの力を集中していく、こういうことをやったらどうだろうかということを仮にアメリカに提起したとします、発想として。それだけはやめた方がいいよといって、必死になって反論します。なぜならば、アメリカのものを買えばいいんだよ、そんなもの自前でつくるなんということはやめた方がいいよ、大変な困難があるよということを盛んに言います。しかし、同じことを自動車産業の創成期のときに言っていたんですね、アメリカのものを買えばいいよと、日本が国民車構想なんというものを発表する以前に。ところが、頑張ったから今日の輸出第一位のアイテムになっているわけですね。
 事ほどさように、航空機というのは、ITもバイオもナノの技術も集結したようなプロダクトイメージですよね。そういうものをきちっとつくっていくことにチャレンジするぐらいの気迫がなければ、物を基軸にした経済の再生なんということはあり得ないんじゃないかということを私は言いたいんです。ジェット旅客機だけが唯一のプロジェクトじゃありませんよ、もちろん。ただ、一つの例として意思を伝えたいということでございます。

発言情報

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発言者: 寺島実郎

speaker_id: 12372

日付: 2002-05-09

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会国際社会における日本のあり方に関する調査小委員会