田久保忠衛の発言 (憲法調査会国際社会における日本のあり方に関する調査小委員会)

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○田久保参考人 田久保でございます。
 本日は、かかる権威ある会議にお招きいただきまして、大変ありがとう存じます。
 私の専門は国際情勢と外交防衛でございまして、その見地からいろいろ申し上げてみたいと思うのでございます。四十年近く在野の評論家生活をやってまいりましたので、勝手なことを申し上げて、あるいは皆様の御不興を買うかもわかりませんが、何とぞ御容赦いただきたいと思います。
 まず、私は、国際情勢全体、X軸、Y軸の中で、日本がどういう地位にあるのかということをまず申し上げてみたいと思うのでございます。それは、今の国際情勢をどう見ているか、主としてアメリカサイドからの見方になると思います。これは、ワシントンから物を見るか、東京から物を見るか、あるいは那覇から物を見るか、どこから見たら比較的公平な見方ができるかというところから考えますと、公平というか、私は、大きな文脈をつかむにはワシントンから見るのが一番適当であろう、こういうふうに考えているわけでございます。そこで、今の国際情勢をどう見るか。
 それから、新しい国際秩序が今形成されようとしている。現に、劇的な変化が米ロ関係にできているではないか。こういうことを中心に、ブッシュ政権のもとでどういう国際秩序が形成されていくのかということを申し上げてみたいと思います。
 その次に、X軸、Y軸の中で、日本に対して国際的にどういう期待が寄せられているのであろうかということを申し上げてみたいと思います。
 それから、その肝心の日本はどういう歩みをしてきたのであろうか。異常な国であろうか、普通の国なのであろうか、こういうところを私は申し上げてみたいと思います。
 次に、同じ敗戦国で、アジアと欧州とでは事情は異なりますけれども、ドイツはどういう歩みをしてきたのであろうか。
 こういうところから、私の結論は、日本は異常な国であります。したがいまして、普通の民主主義国家に早く脱皮しなければいけないという結論に持っていきたいと存じます。
 四十分でございますので早足で申し上げますけれども、今の国際情勢は、アメリカの一極時代が到来してしまった。もう十年前に、冷戦終結の直前でございます、例の「文明の衝突」を書いたハンチントン教授が、ロンドンのIISSの「サバイバル」という雑誌で、アメリカ一極時代の到来ということを明確に書いております。この後、ソ連、共産圏がぼろぼろと崩壊いたしまして、まさにアメリカ一極時代になってしまった。そのアメリカ一極時代は、昨年の九・一一テロ、これで一層強まった、こういうことでございます。
 一極時代は、これは私はかなりオーバーオールに申し上げているのでございまして、断トツの国の力でございます。これは軍事力、経済力、それから文化の力もございましょう、情報力、それから技術力、こういったものの総合であろうと思う。こういう点について、アメリカに対して一国で太刀打ちできる国はこの世界からはいなくなってしまった、この現実をきちっと把握する必要があるのではないかなというふうに考えているわけでございます。
 その中で登場いたしましたブッシュ政権、これは今までのクリントンの八年間とがらっと違っている、力を背景にした政権でございます。
 皆さん御案内だと思いますけれども、ピュリッツァー賞をとったエドモンド・モーリスという作家がおります。この作家が、セオドア・ルーズベルトについて、「セオドア・レックス」、レックスというのは王様という意味です、セオドア王という、これはベストセラーズに近い売れ方をしたわけでございます。これを去年の年末の休みにブッシュ大統領は、ブッシュ牧場、テキサスの別邸でございますが、あそこで読みふけっていたということでございます。
 セオドア・ルーズベルトは、スピーキング ソフトリー ホワイル キャリング ア ビッグ スティック、大きいこん棒を持ちながら、ソフトに話すんですよ。私は、学生には、でっかいこん棒を片手に、猫なで声でねというふうに訳すと命じているわけでございますが、ルーズベルトがやったのはそのことでございます。
 私は、ブッシュがそうだとは申しませんが、やはり外交には力が要るんだ、その力は単なる軍事力じゃなくて、今申し上げた総合的な国力を背景にいろいろ外交を展開しているんだということを申し上げたかった。
 その一つには、大統領就任直後に打ち出したのがミサイルディフェンスでございます。これはクリントンもやっておりましたけれども、ブッシュの方は総合的なミサイルディフェンス、シーベースとランドベースとスペースベース、三つをベースにしまして、相手の攻撃、大陸間弾道弾を防ぐ、これを明らかにいたしまして、ABM条約を脱退いたしましたね。今月中にアラスカの基地を着工する、こういう段取りでございます。いささかもスピードを緩めていない。
 その中で九・一一テロが起こりまして、これはフェーズ1はもうあらかた済んだ。しかし、タリバンの残党とアルカイダの残党がおります。したがいまして、パキスタン軍の応援を得ているわけでございますが、印パの緊張が高まると、これは困る。ムシャラフ大統領は、西部の四万の軍隊を東部に回さなきゃいけない。これはアメリカの作戦に支障を来すわけでございます。アメリカは大変な衝撃を受けているだろうと思います。これは後からまた申し上げます。
 このフェーズ2というのは、ことしの一月二十九日に、年頭の一般教書で、悪の枢軸という言葉を使った。この悪の枢軸は、イラン、イラク並びに北朝鮮、こういうことでございます。ブッシュが考えているのはイラク攻撃でございますね。今、やるか、やらないか、あいまいにしておりますけれども、これはやるんだろうと思います。
 一カ月ぐらい前から、ニューヨーク・タイムズが、何月何日付か忘れましたけれども、年内ではなくて来年に入ってからであろう、七万から二十五万の軍隊をもう既に用意して訓練に入っていると報道しております。この報道の真偽は確認されておりませんが、私はスケジュールどおりやるんだろうと思います。
 今度は、大量破壊兵器がテロリストの手に渡る、これをアメリカが第二のターゲットにする。ところが、フェーズ2に、イラク攻撃、ここの障害となったのが、後からまた申し上げますけれども二つありまして、一つは、例のイスラエルの問題でございます。それから二番目が、インド、パキスタンということでございます。この二つをけりをつけないと、ちょっと一点集中というわけにはまいらぬのではないかというふうに私は考えております。
 さて、新しい国際秩序はどうなるかということでございますが、先ほど申し上げましたように、ブッシュ政権で米ロ関係ががらっと変わってしまった。これはMDに、ミサイルディフェンスにロシアが反対しなくなった。それからもう一つございます。九・一一テロに全面協力を誓っている。それから三番目でございますが、NATOの東方拡大。これは、去年、おととし、既にどんどん東方に拡大してまいりまして、チェコ、ハンガリー、ポーランド、三国を入れました。恐らく年内にはバルト三国と、あと、ルーマニアあるいはブルガリア、それからスロバキア、スロベニア、こういったところが入りますので、NATOは二十六カ国になるだろうと思います。
 そういう情勢で、しかも九・一一テロを見ておりまして、プーチンはすぐブリュッセルに参りまして、NATOにいわば準加盟する、テロその他の協議にロシアも参加させてくれ、こういうことを言った。ただし、安全保障の性格は政治に特徴を移してくれということを申しておりまして、これはローマで開かれました五月二十八日のNATO首脳会議で、NATO・ロシア理事会というものが設立されてしまった。
 これはどうでございましょうか。中国がロシアとの間で戦略的パートナーシップと言っていますけれども、そんなものよりももっと米ロの接近の方が重要ではないか、中ロの関係は空洞化しているということを申し上げたいと思います。
 それから、アメリカの対中政策でございますけれども、これは一概にこうだと言うことはできない。一つは経済重視、マーケット、一つは安全保障重視と、二つあるだろうと思います。
 クリントン以来、市場重視というのは、WTOに中国を加盟させましょう、それからオリンピック開催もいいでしょう、こういうことでございます。早く国際ルールになじませて、中国の透明性を促進する、あるいは民主化を促進すると言ってもいいと思います。同時に、アメリカはこのマーケットを利用しようということだろうと思います。
 もう一つは、安全保障重視でございます。これは、ブッシュ政権も大変強硬でございます。まず、大統領になりましてから、中国との間は戦略的パートナーシップでなくて競争相手ですよ、こう言い出した。大体、アメリカは五段階に分けているというふうに考えてよかろうと思います。同盟国、パートナーそれから競争相手、潜在敵国、敵国でございます。クリントンのときは中国をパートナーと言っていたんですが、ブッシュは競争相手、ワンランク下げちゃった。日本に対しては、二国間で最も重要な同盟関係、これを明確にしたということでございます。
 それから、ニクソンの訪中以来、ストラテジックアンビグイティー、台湾海峡に関しましてはなかなかはっきりしたことを言わない、曇りガラスのようなものでございます。これが、実はブッシュ政権以来、この曇りガラスが次第に晴れてきているというのが私の観測でございます。
 一つ一つ申し上げますと、三つのノーを言わないよ。三つのノーは、二つの中国はノー、台湾の独立はノー、それから台湾が国家として国際機関に入ることはノー。これは、クリントンが上海で言ってしまった。ブッシュ政権は、これは言いませんよ、こういうことを言ったわけでございます。
 それから、先ほど申し上げましたように、戦略的パートナーシップではなくて競争相手ですよ、ワンランク下げた。
 それから、去年の四月には、アメリカの偵察機が南シナ海で接触事故を起こした、中国の戦闘機と。中国のスクランブリングでございます。ここで両国関係が非常に険悪になりましたけれども、その直後の台湾との武器供与の定期的話し合い、毎年四月にやっております。ここで、ここにお書きしましたように、とてつもない武器を供与している。ディーゼル潜水艦でございます。これは、台湾の港を封鎖された場合、簡単に突破できる、それから相手の港も攻撃できるという大変な潜水艦でございます。キッド級駆逐艦は、台湾海峡、制海権をというふうにはいかないかもしれませんが、やはり大きな力になるだろう。それから、日本の自衛隊が持っておりますP3C対潜哨戒機、これは十七機でございます。こういうものを提供した。
 それから、もっともっと重要なのは、ここでイージス艦をやるかやらないかということが一番焦点だったわけでございますが、これは、定期協議をやらないとブッシュが言うんです。今回はイージス艦はやらないけれども、台湾との間で定期協議をやめようね。これは、必要があったらいつでも協議できますねということにほかならないというふうに私は解釈しております。
 それから、つい四月には、湯曜明という台湾の国防部長がフロリダに参りまして、これは民間の安全保障のディスカッションですが、ここに出た。ウォルフォウィッツ国防副長官とケリー国務次官補、この二人と堂々と会って、台湾に万が一のことがあったら何でもやりますよという発言をウォルフォウィッツから引き出している、こういうことでございます。
 それから、北朝鮮に関しましては、これは金大中さんがやっている太陽政策ではなくて、北風政策でございます。この北風政策がむしろ今効果をあらわしつつあるのではないかということでございます。悪の枢軸に北朝鮮の名前をメンションしたというのは、これまた重大な意味を持つというふうに考えております。
 それから、インド、パキスタン。これは、田中前外務大臣が会見を拒否したときに、アーミテージ国務副長官が日本にやってまいりました。あれはMDの説明でございましたね。このことはいいんでございますが、日本の後、ソウルからニューデリーに向かった。ニューデリーでどういう発言をしたか。驚くべき発言をしているんです。アメリカは最古の民主主義、インドは人口を一番多く持った大きな国の民主主義、これは仲よくしなければいけない、共通点は、イデオロギーだけではなくて、経済その他たくさんありますね。インドとアメリカの関係は、テロ以前によくなっているんだということを申し上げたいんでございます。
 それから、パキスタンがアメリカとどういう関係にあるかは、これは申し上げるまでもない。
 アメリカは、南アジアの両大国に影響力を行使し得るまでになってしまった。かつてのようなパキスタン、中国、インド、ソ連、こういう関係はもう消えてしまったと、少し強調し過ぎかもわかりませんが、申し上げていいんじゃないかと思います。
 さて、そういう中で、日本に対する期待はどうなったか。私のつたない文章をつづったものでございますが、「新しい日米同盟」の第一章の第二に私はこれを書きましたので、お配りしたわけでございます。
 今までクリントンが日本に対して打ち出していた方針とがらっと違いまして、このゾーリック、今ゼーリックと表記しておりますけれども、USTRの代表、彼は何を言っているか、三枚目をごらんいただきたいのでございます。三十九ページでございます。
 つまり、この傍点を打ってあるところでございますけれども、日本が防衛面で力を入れると、周辺諸国の問題が出てくるであろう、周辺諸国は日本ひとりではどうにもならないであろう、その場合に大きな役割を果たすのはアメリカですよと、これは堂々と「フォーリン・アフェアーズ」に言っているわけでございます。
 その次が四十一ページでございますが、これは先生方よく御存じだと思います。カート・キャンベル、クリントン政権のときの国防次官補代理でございます。国防次官補がナイ、今ハーバード大学の大学院の院長さんですが、ナイの下でやっていた人。
 彼が日本の「外交フォーラム」という雑誌で、日本の外交官が、今日本にナショナリズムという危険な動きがありますがどうですかというようなことを言ったんです。これは、キャンベルから、そうですね、危険な軍国主義の動きですねという答えを引き出したかったんだろうと思います。ところが、キャンベルはそうは言わない。そんな危険なナショナリズムというのは、日本の性格を全く取り違えていると思います、こうした評価は危険であり、日本の人々を深く侮辱するものであります。民主党の政権に参加していた人間からこういう言葉が出るというのは、私はびっくりした、こういうことを申し上げておきたいと思います。
 それから、アーミテージ報告は、おととしの十月、これは、日本が弱い方がいいということを信じていたナイさんも含めて十六人がリポートを出しまして、大きな世界観というのは、欧州ではあと三十年は大きな戦争は起こらないだろう、ただし、アジアでは四つの地域が危険である。一つは朝鮮半島、二つは台湾海峡、三つ目はインド、パキスタン、それから四つ目がインドネシアでございます。これは、今は落ちついているようなものの、地盤沈下が始まりますとどういう混乱を起こすかわからない。これはASEANの一番中心の国でありますから、ここの国が沈没していくと大変なバランスの混乱が出てくる、こういう書き方で、その中の日本はどうしたらいいか。安全保障に力を入れるのは当然だろう、これがアーミテージの言い方でございます。
 その場合に、集団自衛権の行使に踏み切れない。これは踏み切ったらいいじゃないですか、それに憲法が邪魔しているというなら、憲法を改正するのが筋じゃないですか、ただし、アメリカはおたくの国の内政にとやかく申し上げることはないんですがと断り書きながら、そういうことを要求したのがアーミテージ報告だと思います。これが今、ブッシュ政権にずっとつながってきているサインだろう、シグナルだろうというふうに思います。
 あとは、テロの後、小泉さんとブッシュがどれだけ緊密なキャッチボールをしているか。あるいは、小泉さんが向こうへ行かれる、ブッシュが日本にも来られた、このとき両者がどれだけ緊密なサインの交換をしたかということは、申し上げるまでもないだろうというふうに思っております。
 さて、その次でございます。日本でございますけれども、ここのところは私が特に研究したわけでございますけれども、一九八五年、今から十七年前に、青山学院大学教授、前の東京工大の教授永井陽之助さんが「輝ける吉田ドクトリン」という論文を文芸春秋に書かれ、これを単行本にされた。
 これは、私は吉田さんがちょっとかわいそうだと思うんですが、こんな言葉がひとり歩きしちゃったのでございます。ダレスの再軍備要求を拒否した、そこで経済大国の道を歩いた、これが輝ける吉田ドクトリンだ、これは保守本流、自民党の宏池会を中心に脈々と流れている輝ける本流なんだということを書かれた。吉田さんは、そういうことは一切おっしゃってないんです。ダレスの再軍備を拒否しただけのことでございますけれども、これが永井さんがおっしゃると、そういう吉田ドクトリンという言葉ができちゃった。
 この吉田ドクトリンが、この三年後、竹下さんが、ロンドンその他で竹下三原則、一つずつおっしゃった。これは、軍事的貢献を拒否して、ひたすら経済大国の道を歩もう、こういう考え方でございます。
 まず第一にODA、これこそ日本の行くべき道だ。あるいは、国際文化交流を活発にしましょう。それから平和への貢献、これは予防外交とか難民の救済とか、つまり軍事以外の面での貢献、こういうことでございます。
 これはこれなりに私は大変意味があったと思うのでございますが、戦後の日本にとって最大の衝撃は、やはり湾岸戦争でございましたでしょう。これがいかに衝撃的であったか。実は、私はワシントンに当時おりまして、ワシントン・ポストで、戦争が終わった後のクウェートが一面ぶち抜きで、世界家族の皆様方に心から御礼申し上げます、そこで国名を書いていますが、日本はそこに入っていないんですね。百三十億ドルやったからいいだろう、こういうことも言われるわけでございますが、では、おれが金払うから、おまえ、血流してくれるかい、こう言われた場合はどうするんだということでございます。
 これは外務省の中でも、当時の小沢調査会、その他私もいろいろ直接間接関係しておりましたけれども、大変な衝撃であっただろうと思います。
 ちなみにドイツでございますけれども、下の五の2に書いてございます。ドイツは、基本法で海外派兵、NATOの域外への軍隊の派遣を禁じられていた。ところが、小艦艇五隻、地中海東部、最も危険な地域、ここに派遣している。それから、三百人の兵員をトルコに派遣している。それから、イスラエルへはパトリオットミサイルを提供している。それから、九十億ドルを提供しておりますが、これは日本のような大まかな使い方じゃなくて、ちゃんと会計検査員のような人をワシントンに派遣して、どういうふうに使ったかということをチェックしております。
 私は、こういうドイツのやり方というのは、これはさすがだなというふうに思わざるを得ない、こういうことでございます。
 湾岸戦争で衝撃を受けたか受けないかでございますが、私は、政府は受けていなかったんじゃないか、特に、中心たるべき官庁の外務省は受けていなかったんではないかというふうに考えているわけでございます。
 当時、九三年でございますから、湾岸戦争の二年後でございます。小和田外務次官が現役でございまして、東京芸大の平山郁夫先生と「プレジデント」で対談をしたわけでございます。平山先生が、小和田さん、あなた、外務次官だから、日本の今後行くべき方向はどうなの、どういうふうに考えるの、こういう質問に対して小和田さんは、三つあります。一つは、戦争に敗れた直後の日本で、清く、貧しく、美しく生きていくので、国際貢献なんか考えなくていい、こういうことです。このアジアの小国の地位に甘んじていいんだ、余り他の国とかかずらいたくない、こういうお考えであります。
 その直前に、小沢さんの普通の国論というのがジャーナリズムでわっともてはやされて、これに対して小和田さん、ちょっと曲解しておられるんじゃないかなと思ったんですが、政治、経済、軍事、軍事だけがバランスがとれてない、これを経済に見合った軍事力にする。経済に見合った軍事力にするというと、これは世界第二位のGNPを持った日本は、とんでもないことにならざるを得ない。小沢さんが言っているのはそんなことじゃなくて、非常に単純な、一般大衆がわかるように、普通の国がやっていることをやれっつうの、こういう言い方ですね、あの日本改造論の中に出てくる表現は。大して意味を持たない。ただし、小和田さんは、これはバランスをとった国になれ、こういう意味だと。
 三つ目の選択は、軍事の貢献はやはりだめなんだ、そのかわり、その他の面で日本はほかの国よりももっとやるんだ、こういうことでございます。例えば、軍事が出せない。ほかの国が軍事力を出して百億ドル出していれば、こっちの方は軍事を出さない、軍事面での貢献をしないかわりに三百億ドル、四百億ドル、こういうふうに出すんだというお考えのようでございます。
 第一、自分の国がハンディキャップ国家などと言うことは、私はいいのかねという疑問を持つわけでございます。それから、そういう第三の生き方というのは、湾岸戦争で余り通用しなくなったんじゃないかなというのが私の考えでございましたので、これは愕然としたというふうに私は申し上げなければいけないと思います。
 この直後に斉藤邦彦さんが外務次官になられて、駐米大使におなりになるときだったですか、日本プレスセンターで会見というか講演をやられて、一問一答をやられた。そこで、小和田先輩が言われたハンディキャップ国家論を私は正しいと思いますということおっしゃっているわけでございます。ここまでくると、これはこういうことで突っ込んでいくとどういうことになるのかなという私は心配を持っているわけでございます。
 そこで、これは中山会長が外務大臣になったときにおっしゃったので、中山会長を別に私は批判するわけじゃございませんけれども、自衛隊は通常の概念では軍隊ではない、しかし、国際法上は軍隊とみなされる、こういう有名な御発言がありました。これは当然、今の憲法からするとそういうことにならざるを得ないだろうと私は思います。
 それから、必要最小限度の軍事力、これは今、福田さんが大変何か失言されたとかなんとかと言われているんですが、必要最小限度の軍事力しか持てないんだということになると、じゃ、必要最小限というのはどのくらいなのか。これはいろいろ議論百出で、とんでもないことになっちゃうだろうと思います。これもやはり今の憲法九条からすると、そう言わざるを得ないのかな。
 それから、集団自衛権、これも持っているけれども行使はできないという奇妙な言い方でございまして、これは幾ら英文に直しても、英語の読める外国の方は理解できないと言うんですね。これはもうどうしようもない。そうせざるを得ない。曲がっちゃっている。
 それから、有事法制も、今の与党がお出しになっている有事三法がいいか悪いかは別にして、中谷防衛庁長官が四月の末に韓国にいらっしゃって、首相と国防大臣にこの内容を御説明になった。読売新聞に出ておりましたけれども、有事法がなくてよく自衛隊はこれまでやっていらっしゃいましたねというふうに首相だか先方がおっしゃった。軍隊を持てば必ず有事法がなければいけないのに、こういうことになっている。
 それから、テロ対策特別措置法、これも、私は、従来の常識からいうと一歩前進だと思うんですけれども、憲法の枠内でやると、あれは官房長官がおっしゃったんですかね、国会でおっしゃった。私は速記録を見ていて、要するに、憲法解釈でもうぎりぎりのところだという、これ以上できないところまで憲法解釈、解釈改憲で膨らませてきて、これがもう限度に来ちゃって、これ以上行くと憲法違反になってしまうという、限度に来ているということだろうと思います。
 私は、その前にドイツのことを片づけてしまおうと思うんですけれども、欧州とアジアとでは事情が違いますので、単に同じ敗戦国云々というふうには私は言えないと思うんでございますが、ドイツは、欧州の歴史から、まず国軍を持った。これは、占領軍から数々の制約を受けながら、その中で国軍をスタートさせた。これはやはり相当なものだなと思います。それから、NATOに加盟し、東独を統一した。その直後に湾岸戦争が起こったけれども、これだけのことをした。
 それから、先生方、お調べになって、ドイツでいろいろ御研究になったと思うんでございますが、連邦憲法裁判所が解釈を変えまして、いろいろな制限はあるけれども、それをクリアすれば海外派兵可能だという解釈を下した。これにのっとって、おととしでございますか、コソボ戦争のときに、NATO軍に加わってドイツ空軍、初日から出動しておりますね。この判断を下したのが、保守党じゃなくて革新側のSPD、ドイツ社民党のシュレーダー党首、首相でございます。これをサイドからそのとおりと言って押したのがグリーン、緑の党の重鎮でありますフィッシャー副首相兼外務大臣。ここのところがどうだろうか、日本と比べてどうだろうかなということでございます。
 今度の例のテロの後でございますが、ドイツも政情は必ずしも私が言っているような単純なことではございませんので、舌足らずはお許しいただきたいんでございますけれども、ドイツも複雑な政情がありますけれども、あのテロの後にシュレーダー首相が議会演説をやっている。この中で、一点の曇りもないように申し上げるが、この責任というのは国際的責任です、この責任の中には自由や人権の擁護、地域の安定や安保を実現するための軍事行動に参加するということも含まれる、これを明確にしておきたいということを明言しているわけでございます。
 こういうところから、日本の歩みのところに返りますと、日本が戦後やってきた吉田ドクトリンあるいはハンディキャップ国家というこの思想は、周辺の国際情勢の激動、特に新しい国際秩序が形成されようとしているときに、それでいいのか、いいのかというふうに揺さぶりをかけられているのではないかなというふうに私は思うんでございます。
 そこで、もう一つ申し上げますけれども、我々が、今までどおりのこの吉田ドクトリン、あるいは、かつて通産御出身の天谷さんが言っておられた町人国家という言葉がございます。それから、アメリカなんかのディスカッションでよく出てくるんですが、シビリアンステート、これは文民国家、要するに軍事は勘弁してちょうだいということでございましょう。こういう国柄であるとどういうことになるか。
 四年前に、民主党のカーター大統領の大統領補佐官であったブレジンスキー氏が、「グランドチェスボード」、巨大な将棋盤というあの一著を書きまして、ここでこういうことを言っているんです。日本は軍事的に何もするな。この国は金もうけが好きだから、お金をうんともうけてくれ。それも自分の意思で使っちゃいけない。国際機関にどんどん振り込んで、これは世界平和に使うんだという使命感を持たす方向にこの国を二十一世紀に指導してやれば、これが一番いいんだということを言っているわけでございます。
 私は、こういうことを言われると何くそというふうに思うんで、このブレジンスキーのやろうというふうに大変腹を立てた。ただし、ブレジンスキーは、デファクト プロテクトリート オブ ザ ユナイテッドステーツ、日本はアメリカの事実上の被保護国だと明言しております。これは外交防衛がどうしようもなければ被保護国と言われる以外ないだろう。
 今、アンドラとモナコ、二つが被保護国でございます。アンドラはスペインとフランスの間にある人口七万ぐらいの国でありまして、私もブレジンスキーから言われるまでアンドラなんという国があることを知らなかった。それで、へえと思ったんです。これはスペイン、フランス両国の保護国条約をつくっている。それからモナコは、こういうところで申し上げるのはあれですけれども、ばくちのテラ銭で食っている国でありますから、外交防衛はフランスにお任せよということでございますから、フランスの被保護国になっている。
 私は思うんでございますが、日米安保条約というのは、これは予見し得る将来必要ではないか。その中で、日本は徐々に我々の方向でひとり立ちする方向に歩んでいかないと、これはえらいことになるんじゃないかなというふうに考えているわけでございます。
 TBSで大変人気がありました小汀利得さんと細川隆元さんの対談がございまして、あの番組は後の方は私もレギュラーメンバーになったんでございますが、あのとき、おもしろいことに、小汀さんは日本経済新聞の社長をやっておられた、経済の専門家だという頭がある。細川さんは朝日の政治部長ですから、おれは政治を小汀より知っているんだと。二人がこうやって、小汀さんが、細川君、来年の日本経済はな、笑いがとまらなくなるぐらいよくなるんだと。細川さんは何か変な顔して、よくわからないなという顔をしていたんですが、経済が悪くなっちゃったんですよ。
 そうしたら、細川さんは、小汀さんを頭からばかにしたように、小汀さん、あんた、去年、たしかこういうことを言ったよ、そうなっていないじゃないか。どうだ、あんたが社長をやっていた日本経済新聞、日本の経済不況本格化と書いてあるじゃないか、何だこれはと。小汀さんはくしゃくしゃな顔をして返答に詰まった。それで何秒かううんとうなっていましたけれども、細川君黙れ、おれが言っているのはぴたり合っているんだ、見通しはぴたり合っているんだ、間違っているのは現実だと言ったんですよ。これは私も噴き出したんでございますけれども。
 これは先生方にこれからしかられるのは覚悟の上で申し上げるんでございますけれども、今までの、吉田さんが言っていないような吉田ドクトリン、これが正しい方向だというふうに歩んでいくと、周辺の国際情勢はがらっと変わっている。周辺が変わっていないとどなりながらこれを続けていくのか。
 あるいは、ドイツのように巧妙に状況に対応していって、今やドイツは欧州を代表する国家になりましたね。NATOの東方拡大、これはドイツにとっては笑いがとまらないぐらいにうれしい。歴史的に、ソ連との間の緩衝地帯がどんどん向こうに広がっていく。しかも、NATOで最大の通常兵力を持ちまして、ドイツは八カ国と国境を接しておりますが、いずれの国とも非常に仲よくやっている。これは見習うべきではないかなというふうに考えます。
 ちょうど四十分でございますので、これで締めさせていただきたいと思います。乱暴な言葉遣いは、どうぞ御容赦いただきたいと思います。以上でございます。

発言情報

speech_id: 115404188X00420020606_002

発言者: 田久保忠衛

speaker_id: 4757

日付: 2002-06-06

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会国際社会における日本のあり方に関する調査小委員会