室生昇の発言 (厚生労働委員会)
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○室生参考人 全国保険医団体連合会の室生でございます。今回、この場所におきまして意見の陳述をさせていただく機会を与えていただきましたことを御礼申し上げます。
ただいま国会で審議されております健康保険法の一部を改正する法律案に対しまして、私は反対の意見を述べさせていただきます。
現在、政府・与党で進められております医療改革案、この方向は、根底から日本の国民の命と健康をより深刻なものに導いていくというものと考えております。
以下、それについて私の意見を述べさせていただきます。
本日、委員の先生方には資料が配付されておるはずでございますが、五ページ以降に図表等がございますので、それも参考にしていただければと思います。
第一に、労働者の健康の悪化の現実を踏まえていないという点がございます。
厚労省の平成九年労働者健康状況調査、資料一によりますと、五年間で「非常に健康である」は一一・二%から一〇・六%に減少し、「非常に不調」は一・七%から二・一%に増加しております。また、資料二に見るとおり、持病のある労働者は三一・五%で、平成四年より増加傾向を示しており、持病のある労働者の一人当たりの平均持病種類数も、一・二九七から一・三三三となり、増加傾向を示しています。資料の三及び四の、ふだんの仕事で身体の疲れがある、神経の疲れがあるという訴え率は前回調査より増加傾向で、特に「とても疲れる」が増加しています。
資料五に示すように、疲労に関する厚生省研究班が平成十一年に実施した調査結果によれば、半年以上も疲れが続く慢性疲労状況にある人は三六%に上り、そのうち一七%の人が生活に支障を来していると回答しています。
厚労省の二〇〇〇年定期健康診断調査結果では、資料六に示すとおり、異常所見があった人の割合は四四・五%に上っています。一九九〇年から十年間で倍増に近い伸びを示しております。労働者を初め国民の健康悪化は憂慮すべき状態になっております。
次に、健保三割負担による受診への影響について述べます。
慢性病の高血圧は、日本で現在約三千五百万人が罹患していると推定されております。日本能率協会総合研究所が昨年十二月に実施した三十五歳以上の高血圧患者を対象としたアンケート調査によりますと、医療費負担の増加で今後考慮することは、通院回数を減らすが三三%、通院をやめると回答した患者も三%おります。
自己負担の増加は、慢性病患者さんが治療をするに非常に困難な要因となります。九七年の健保二割負担によって、厚労省の九九年度患者調査でも、健保本人に該当する三十五歳から六十四歳は九六年に比べて一二・四%、三十五万人の減少となり、その三割が歯科の患者さんであります。九五年の外来受診率に比べて、九六年は上昇しておりますが、健保本人二割負担が行われた九七年から減少し、その傾向は現在も続く一方で、有訴者率は九五年と比べて増加しております。
第三に、早期発見、早期治療の日本の医療制度のよさを維持発展させる必要があります。
我が国の国民一人当たりの年間平均受診回数は二十一回です。主要国と比べて四倍になりますが、資料八に見るとおり、一回の受診当たりの医療費は主要国よりかなり低い金額であります。一人当たりの年間医療費は、日本が十四万七千円に対して、アメリカは三十二万八千六百円などでありまして、決して日本の医療費が高いということではありません。資料九に示すとおり、医療費に占める入院医療費の割合も、一九九七年の時点で日本は二九・八%で、フランスの四四・六%等と比べてかなり低い割合であります。
これらの状況は、アクセスがよい外来診療が早期発見、早期治療を促し、入院医療費を節減していると言えるのではないでありましょうか。
資料の十、十一をごらんいただきたい。富山地方鉄道健保組合の統計では、歯の健康度不良グループは、優良グループより総医療費で二倍、歯科医療費だけでは二十二・六倍も多くなっております。口腔保健の充実や早期発見、治療の重要性が、これによってよく示されております。
主要国の中で今でも重い患者負担をさらに重くし、外来受診のハードルを引き上げることは、疾病の重症化を招き、総医療費をかえって増加させるおそれがあります。負担増はやめるべきであります。
次に、一兆円を超す保険料の引き上げもやめていただきたい。
保険料引き上げの規模は、政管健保と組合健保を合わせて一兆円を超す数字になっていくものと思いますと、五月八日の衆議院厚生労働委員会で宮路厚生労働副大臣は答弁しておられます。一兆円を超える保険料の引き上げは、実質的な所得税と法人税の引き上げであり、法人税減税を掲げる小泉総理大臣の方針とも矛盾するものであります。
また、賞与から徴収している特別保険料には国は千分の二の補助を行っていますが、今回これを廃止して一般保険料に一本化することも見逃すことができません。
第五に、国民の財布を豊かにしてこそ、国も栄えるというものであります。長引く不況のもとで、一兆五千億円もの医療費負担の引き上げは、命と健康はもとより日本経済にも悪影響を及ぼします。
国民医療費に占める負担割合は、資料十三に示すように、国の負担が軽くなるのに比例して国民の負担は重くなっております。医療費の負担割合が五%、国から家計に移ったことになっております。
また、患者さんの実効負担率は、九八年で既に一五・四%で、資料十四に見るように、国際比較でも高くなっております。法案が実施されれば、平均で一八・三%、高齢者九・七%、サラリーマンなど一般の方々が二四・三%にまで上昇することが本委員会審議で明らかになっております。
国民から見て、本当の負担と給付の公平を論ずるには、支払った租税と社会保険料の総額のうち、社会保障給付としてどれだけ国民に還元されているかということも問われるべきであります。資料十五で主な国と比べますと、日本は低い還元率で、四一・六%で五割を切っております。
国民全体への還元をふやし、国民の財布を豊かにし、将来不安を解消することが、消費不況で深刻な日本経済の再生にも貢献する道であると考えております。
最後になりますが、現実の対応と未来の国民の健康を見通した対策の両面から、医療制度の国民的な議論をぜひお願いいたしたい。
国民の健康権、生存権、受療権を保障する立場から、日本の医療のよい点は伸ばし、問題点は改善する姿勢と実践が今こそ必要となっています。それなしに、一律に高齢者を金持ちとみなして過酷な負担を強いることや、給与引き下げを余儀なくされているサラリーマンの保険料を引き上げて三割負担にするということには反対いたします。
私どもは、医療の透明化と説明責任を軸に、医師、歯科医師と患者、国民との信頼関係の発展に向けて真摯に努力してきました。今後もその努力を続けますが、このことを申し述べて、私の意見の陳述とさせていただきます。
以上であります。(拍手)