伊藤直彦の発言 (国土交通委員会)

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○伊藤参考人 JR貨物社長の伊藤でございます。
 諸先生方におかれましては、平素より鉄道貨物輸送につきまして、大変深い御理解と御支援を賜りまして、厚く御礼申し上げます。また、本日、鉄道事業法改正の御審議に当たりまして、このような意見陳述の場を設けていただき、まことにありがとうございます。
 それでは、座らせていただきます。
 今回の法案について意見を申し上げる前に、我が国の貨物鉄道の現状及びJR貨物の経営状況について一言触れたいと思います。
 国鉄改革から早いもので十五年の歳月が経過いたしました。先生方御案内のとおり、十五年前に六つの旅客会社と一つの貨物会社ができたわけでございますが、貨物会社は、鉄道貨物輸送はいわゆる輸送距離が長いということで、複数の旅客会社にまたがって輸送されるという側面から、いわゆる分割になじまないという観点で、全国一社制がとられたわけでございます。また、国鉄時代、貨物部門は大変大きな赤字を出していたこともございまして、経営責任を明確化するという観点から客貨の分離があったということでございます。
 鉄道の業務量を一般にあらわす場合に列車キロという単位が使われておりますけれども、我が国の現状におきまして、これが旅客が八、貨物が二という形になっております。こうした状況を踏まえまして、JR貨物は、第二種事業者、つまり日本における国鉄改革は、線路は旅客会社に保有させ、貨物会社は第二種鉄道事業者としてその旅客会社の線路を使用して運行するという形をとりました。それに際しまして、線路使用料を支払うという概念が発生したわけでございます。それも、先ほど申し上げましたように、八対二という形で、貨物が主体でございませんものですから、貨物列車が走ることによって追加的に発生する費用を負担すればよい、こういうルールができてございます。
 クイズのような話で恐縮でございますけれども、貨物列車につきましては一般の方々は余り見る機会もございませんし、また御利用される機会もございませんものですから、時々、どのくらいの列車が走っているかということを聞かれることがございます。実際には、毎日約二十四万キロの列車が動いております。毎日二十四万キロといいましてもおわかりにくいかもしれませんけれども、地球を一周しますと約四万キロでございますから、約六周、毎日基本的にはダイヤどおり列車が動いている、こういうことになるわけでございます。
 この中でも、最も長い列車は北海道から九州、福岡から札幌、約二千百三十キロでございますが、三十八時間かけて日本を縦断して列車が動いております。これは大変御利用率の高い列車でございますけれども、これは北海道と九州の農産物のとれるシーズンが違うということであります。それから、当然とれるものも違うという意味で、北海道—九州間の二千百三十キロを毎日三十八時間かけて、大変御利用の高い列車も走っております。
 その次に、よく鉄道のシェアが四%、トンキロベースでございますけれども、全国で六十数億トンの荷物の動いている中で、鉄道のシェアが四%だ、小さいじゃないかというお話がございます。確かに、数字全体でどんぶり勘定で見ますとそのような数字になりますけれども、鉄道特性を発揮している分野では大変大きな強み、または役割を担っております。
 一例を申し上げますけれども、先ほども申し上げました北海道でありますけれども、タマネギやジャガイモが日本でも生産の一番高いところでありますけれども、そのタマネギやジャガイモなどはほとんど鉄道で輸送しております。
 最近大変伸びております宅配便等でございますけれども、この種の荷物も、北海道から東京、または九州から東京、長距離になりますと、必ずしも自分の会社のトラックで走っているわけではなくて、鉄道を利用されて動いておられます。どういうことかと申しますと、例えば北海道でゴルフバッグをお預けになりますと、それが東京に、自宅に翌日届くわけでございますけれども、その間、トラック会社が専用の私有コンテナ、大きなコンテナをお持ちになり、それに荷物を混載で載っけまして東京の隅田川駅に着き、そこからトラックで配送する、こういう形で、我々は専門的に複合一貫輸送と言っておりますけれども、そういうような利用形態も大変最近多くなっております。
 それから、内陸の物資輸送で、例えば長野県で消費される石油の約七〇%というのは鉄道貨物輸送で行われております。こういう現実もございます。
 その次に、JR貨物の経営のことについてでございますけれども、今から十五年前、国鉄貨物、大変大きな赤字を背負っておったこともございまして、貨物会社が独立して、本当に経営収支は大丈夫であろうかという御心配を各般からいただいたことを覚えております。今から思えばバブル景気ということになりましょうが、おかげさまで、開業当初から六年間は経常黒字が続きました。しかし、バブル崩壊とともに日本経済が長期低迷状況に入りますと、また、阪神・淡路大震災のような大きな自然災害もございましたけれども、六年間の黒字の後は、いわゆる収入関係に大変厳しい状況があらわれまして、八期連続の経常赤字となりました。
 もちろん、この間、我々は血のにじむような努力で経営改善に努めてまいりました。一、二の例を申し上げますけれども、国鉄からJR貨物になりましたときには、一万二千人の職員を承継いたしました。この方々のほとんどが鉄道事業に従事していたわけであります。それが、今日、六千人台の方々で鉄道事業を運営している実態にございます。また、厳しい状況を踏まえて、我々は、物流業界に目線を置き、ベアとか賞与等については厳しく抑制してまいりました。
 こうしたこともございまして、平成十三年度、昨年でございますが、わずかでございますけれども、九期ぶりに二億八千万の経常利益を計上することができました。これを契機に、気持ちを新たにして、今年度から新しい中期経営計画を作成いたしました。社内的にはニューチャレンジ21という計画でございますが、この計画の中において、お客様からこれまで以上に選択される商品づくり、いい列車をつくりまして、またその結果、安定的な黒字体質の定着化を図り、国鉄改革の最終目標である完全民営化への道筋をつけることを目指してまいりたいと考えております。
 さて、今回の法案の規制緩和につきましては、当社としてもより機動的な事業運営が可能となるチャンスと認識しており、このメリットを十分に生かしてまいりたいと考えております。
 まず、参入規制の緩和についてでございますけれども、これにつきましては、鉄道事業に携わっている立場からあえて申し上げるならば、貨物鉄道事業は、たくさんの鉄道車両と荷役設備、駅施設等を保有するいわゆる装置産業でございます。そういう点から考えますと、そう簡単には参入できるものではないと思いますけれども、今回の改正を契機として貨物鉄道事業の分野が活性化されることになれば、我々自身にとってもよい刺激であると受けとめておる次第でございます。
 ただ、規制緩和に当たりまして、JR貨物の立場からぜひお願いしたいことがございます。
 現在、我々は、完全民営化という国鉄改革の完遂を目指している途上にございます。言うまでもなく、国鉄改革時にいろいろな基本フレームが定められました。これらのフレームを、引き続ききちんと維持していただくことでございます。
 次に、運賃・料金規制の上限認可制が廃止されるわけでございますけれども、この運賃・料金問題につきましては、この物流業界においては、現在でも市場競争原理の中で適切な価格決定がなされております。今後とも、我々も、お客様のニーズを踏まえ弾力的に対応してまいりたい、こういうふうに考えております。
 せっかくの機会ですので、先生方に一つ二つお願いを申し上げたいと思います。
 御案内のとおり、鉄道輸送は、今はやりの言葉で言えば、二酸化炭素の問題になりますけれども、CO2の排出量がトラックの約八分の一となっており、昨今の地球温暖化等の環境問題が深刻化する中、我々鉄道貨物輸送の果たすべき役割はますます大きなものとなっております。政府におかれても、新総合物流施策大綱において、二〇一〇年までの船舶または鉄道へのモーダルシフトの数値目標も定められております。当社といたしましても、この要請にこたえることができるように、一生懸命頑張ってまいりたいと思います。
 現在、JR貨物には、コンテナを取り扱っている駅が百四十六ございます。ただ、その駅施設が、もちろんすべてではございませんけれども、大変使い勝手が悪く、近代化を早急に推進していかなければならない状況にございます。
 この種のインフラ整備につきましては、今から十五年前、国鉄改革のときに、基盤整備事業と称して、十三の駅が新しく生まれ変わりました。駅が新しく生まれ変わるということは、効率のよい駅ができるということでございまして、土地の面積も減ります。また、そこで働く社員の数も減ります。そういうような形の駅が近代化された駅というふうに我々は言っております。
 また、最近の例としては、新聞にも出ておりましたように、国と北九州市から事業費の五割の助成をいただきまして、北九州貨物ターミナルという駅が完成いたしまして、大変大きな効果を発揮しているところでございます。
 今後とも、全国の枢要なコンテナ貨物駅の近代化を進めていく必要があるわけでございますが、JR貨物の力だけでは極めて困難なものでございます。鉄道貨物の発展に資する公共的な施設整備等につきましては、引き続き公的な御支援をぜひお願い申し上げる次第でございます。貨物鉄道施設の近代化を進め、JR貨物が新しい時代の鉄道貨物輸送を担える形に脱皮していくことこそ、私の悲願でございます。
 全国幹線輸送ネットワークにより貨物鉄道事業を行う当社は、安定的な経営基盤を確立すべく、今後とも、自主自立の精神で経営改善に努めてまいる所存でございますので、引き続き先生方の御指導、御支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
 以上をもちまして、私の意見陳述とさせていただきます。まことにありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 伊藤直彦

speaker_id: 12773

日付: 2002-06-07

院: 衆議院

会議名: 国土交通委員会