野尻俊明の発言 (国土交通委員会)
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○野尻参考人 流通経済大学の野尻でございます。
本日は、この委員会で私の意見を述べる機会をいただきまして、大変ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
私は、流通関係、とりわけ物流の法律制度につきまして、ささやかではありますが、内外の事柄について勉強をさせていただいている者であります。
実は、昨年の夏からでございますが、国土交通省内につくられました貨物自動車運送事業及び貨物運送取扱事業の在り方に関する懇談会、さらには貨物鉄道事業の規制緩和に関する懇談会、これらの懇談会に参加をさせていただきまして、その場を通じて多くの方々と論議をさせていただきました。本日は、両懇談会の議論を私のベースにいたしまして、さらに私見を加えながら御意見を述べさせていただきたいと考えております。また、両懇談会の概要につきまして、先生方のお手元に簡単なものを配らせていただいておりますので、後でごらんいただければありがたいと思います。
そこで、今回提案されている三法案でございますが、率直な感想を申し上げますと、大いなる期待と若干の不安を抱いているというのが今の私の思いでございます。
総論として、三法案を通じまして、現在、物流の市場というのは非常に競争が激しい、あるいは物流をめぐる経済社会環境というのは非常に激変をしてございます。こういう中で、我が国の物流産業、あるいは物流のシステムをより安定的に、さらに柔軟に、さらに強靱なものとして維持存続させることは極めて大切な事柄、かように考えております。その点を考えますと、基本的に行政の事業への介入を最小限にする、民間の事業者の事業活動を、より自由性を高める、さらには、そうした中から創意工夫を生み出していただくという考え方は、私は基本的に賛成であります。したがいまして、経済的規制の緩和という形での法改正につきましては、賛成をしたいと思っております。ただし、規制緩和につきましては、やはりデメリットの面にも目を向ける必要があるのではないかと思っております。
物流の分野におきましては、非常に激烈な企業間競争の中で、競争条件について必ずしも公平な、あるいは公正な土俵がつくられているとは言えないという側面を私は感じております。今回、事前規制から事後チェック型の規制に大きく規制の方針を転換するということにおきましては、こうした公平な競争条件の確保に関するチェック等の適正な執行を切にお願いしたいところであります。さらには、安全問題あるいは環境問題というのがこの物流について極めて深くかかわっているところでございますので、これに向けての施策もぜひお願いしたい、かように考えてございます。
具体的に三つの法案について意見を述べさせていただきます。
まず、トラック事業法、貨物自動車運送事業法でございますが、今般の法案におきましては、運賃・料金の規制を事後チェック型にするということになっております。従来、認可制から事前届け出制という制度の変更がございましたが、残念ながら、制度の建前と運賃の実態というのが乖離をしていた。この運賃規制の問題というのは、我が国ばかりではなくて、諸外国の制度においても非常に難しい問題を多々含んでおります。
そうした中で、今回、事後チェックのシステムに変えるということにつきましては、競争の現実を見るといたし方ないのかなというふうに思っておるところでありますが、一方で、競争の中で極端な原価割れを起こしておるような低運賃の実態というのも間々耳にするところでございます。こうしたことがさらに進むかについて、一部懸念をしているところであります。
それから、営業区域の規制の撤廃でございます。これは、現実のトラック輸送市場、あるいはトラック事業者のサービスにおきまして、高速道路網の発達、あるいはITの発展、あるいは荷主の物流システム、具体的には、物流ターミナルを分散型から集中化、全国に一カ所もしくは二カ所に集中するというシステム化が進んでございまして、そういう現実に対応するためには、営業区域規制の撤廃もやむなしというふうに考えておるところでございます。
しかし、一方、特にトラックにつきましては、事業場を離れて仕事をするということでございまして、トラックは公道上で仕事をしているものでございますので、やはり適切な安全運行にかかわるチェックシステムというものをつくり上げる必要があると考えております。先ほど中西参考人がデジタコ、デジタルのタコグラフ、タコメーターシステムということをお話しありましたけれども、それも一つ有力な手段ではないかというふうに考えております。
トラック事業法につきましては、やはり先ほど申し上げましたが、公平な競争条件の確保ということをぜひお願いしたいと思っております。やはり事業者が競争を行う場合には、共通の土俵というものを整備することが大切でございます。最低限のルールをつくり、それをしっかり守っていただくような仕組みをつくっていただきたいと思っております。そういう意味では、行政処分等の基準の見直しや監査体制の強化という新たな仕組みづくりというものをお願いしたいところであります。
続きまして、貨物取扱事業法でございます。これはソフトのビジネスでございまして、実際に輸送手段を持たないで輸送手段を利用して事業展開するビジネスでございます。そういう意味では一般には非常にわかりづらいところでございますが、今回、第一種の利用運送事業につきまして登録制に緩和がされる、さらには、運送取次事業につきましては全面的に規制を廃止するということでございました。ソフトという非常に柔軟なニーズへの対応が求められる事業にとっては、制度の合理化を図るというところに寄与をするものと考えております。
ただ、運賃・料金等のチェックの仕組みにつきましては、これも事後のチェック型になるようでございますが、なかなか難しい局面もあるのだろうということを漠然と考えておるところでございます。
最後に、鉄道事業法でございますが、これはプロとプロの仕事ということになっておりまして、規制の介入はやはり最小限にとどめることが適切であろうと考えております。事業者みずからが経営判断に基づいて迅速、機動的な事業展開をできるような仕組みをつくるのが必要と考えております。
ただ、その中で、需給調整の廃止ということは、参入の自由化とともに、退出、休廃止の自由ということも当然裏側についてくるわけであります。先ほど申し上げました懇談会の中でも、一部の荷主や鉄道利用者の中から、鉄道でなくては運べない貨物というものの存在、それをどう考えるかと。トラックでは運べない貨物というものがあるのではないか、そういった場合に、鉄道が休廃止を一方的にするということについての御懸念が出されておりましたので、この場をかりて御報告を申し上げます。
いずれにいたしましても、今盛んに言われておりますモーダルシフトにつきましては、伊藤、中西両参考人のお話のとおり、非常に重要なことでございます。鉄道の特性を生かした新たな仕組みづくりというものを今後ぜひお願いしたいところでございます。
簡単でございますが、以上でございます。(拍手)