早川忠孝の発言 (憲法調査会公聴会)
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○公述人(早川忠孝君) 早川でございます。
私は、現在のままの参議院がこのまま続いていけば、いずれ参議院は要らないという、そういう世論が大きくなるのではないかというふうに考えております。そういう意味で、今日は衆議院の予算委員会で、まあ言ってみればワイドショー的な国民の関心が寄せられておりますけれども、実はこの参議院の役割こそがこういった国家の重要な課題についての審議をするという意味での本当に大事な存在であるということを強く認識をしております。
お手元に配付しておりますレジュメで御説明を申し上げたいと思います。
まず第一に、我が国の憲法についてでありますけれども、我が国の憲法、世界に誇れる先進的な新しい憲法だと、こういう認識がいまだに国民の間には強いかと思います。しかしながら、比較憲法の立場からいって欠陥憲法であるというふうに主張される学者の先生もおられます。
日本の歴史を振り返って考えますと、まさに昭和二十一年、五十六年前、二月の十三日にマッカーサーの憲法草案が日本国側に交付されました。ポツダム宣言を受諾してから、ちょうど六か月後に英文での憲法の草案を受領したわけであります。それから約一か月足らずのうちに日本側で憲法改正草案を作りました。三月の六日でございます。六日六晩で作られたというこのマッカーサー憲法草案ですけれども、今から考えますと、相当内容的には優れていたものがあったと思います。
その憲法草案では、我が国の国会の在り方については一院制が提唱されておりました。当時の我が国の帝国議会は貴族院と衆議院の二院でありました。この衆議院は、実は前年度に解散をされていまして、およそ国会としての機能を果たしていない、その間に我が国の憲法が作られる、そういう作業が始まっておりました。貴族院という二院制の伝統を持っている我が国の憲法学者としては、あるいは当時の当局者としては一院制よりも二院制の方がふさわしいということで、当時の松本烝治国務大臣は二院制を主張しました。
この二院制の機能は、職能代表制あるいは勅選の議員でもって選ぶという、そういった直接選挙によらない二院制を提示いたしました。しかしながら、これは日本国の民主化を図るというその大きな流れの中では一蹴されました。結局、二院制を採用するに至りましたけれども、しかし第二院である参議院は公選によることとなりました。
四月に帝国憲法改正案が内閣から国民に知らされました。その三月から四月までの約一か月間の間にどのような検討作業があったかといいますと、当時の占領軍の総司令部との間に四回にわたる読会を開催し、英文で示された草案について、これを日本流に受け入れるとしてどういう制度がふさわしいかということの検討会を開催いたしました。
しかし、残念ながらこの二院制の内容については、当時の帝国議会あるいは有識者の間でもどういう制度にしたらよろしいのかという案ができ上がりませんでした。共産党もあるいは当時の社会党も一院制が望ましいという主張をされておりました。二院制を主張される方々は、この第二院である参議院は職能代表的な機能を果たさなければならない、このように主張をされました。
第一院である衆議院と第二院である参議院、この二院の構成は決まりました。しかし、その具体的な組織をどうするかについては、実は帝国議会が開催されてからも内容が全く詰まっておりませんでした。
衆議院は四月十日、選挙がありました。六月になってから帝国議会の審議が始まったわけであります。しかし、この衆議院選挙、実はかつての翼賛選挙で当選した衆議院議員が約九〇%公職追放になって、全くこれまでの日本を支えた主要な議員が議席を得られないと。貴族院の中でも、公職追放になって、勅選で議員を追加補充するという、そういういびつな構成での帝国議会の審議が行われたわけであります。
衆議院で附帯決議がなされました。お手元のレジュメの中に資料として、日本国憲法で参議院制度が採用されるに至った歴史的経過を記述してまいりました。詳しくはこの資料を見ていただきたいと思います。
八つの参議院についての組織あるいは選挙についての提案が検討をされました。しかし、職能代表的な参議院にするということについては技術的に大変不可能であるということから、実は日本国憲法についての審議がすべて終わった後に、参議院の組織についての参議院議員選挙法案要綱が決定に至っております。すなわち、十月の七日に、貴族院本会議での修正可決を経て衆議院に回付された後、衆議院本会議で日本国憲法が可決、成立をしております。その後の十月の二十二日に、臨時法制調査会総会で参議院議員選挙法案要綱が決定をされたわけであります。衆議院特別委員会における附帯決議とは全く抵触するような内容の参議院になったわけであります。
ビートたけしさんが、衆議院と参議院が全く同じことを決めるのであれば、そんな参議院は要らないと述べていたことがあります。正にこれからの参議院の在り方が問われているところだと思います。
そこで、これからの参議院はどうあるべきか。
私自身、かつて二回衆議院選挙に立候補し、参議院選挙にも立候補させていただきました。日本の選挙制度は大変ハードルが高うございます。特に、参議院の場合は一人一人の有権者と参議院議員候補者との間では大きな溝があります。だれも、どんな人が候補者であるか、どういう活動をしているのか、これから何をしようとしているか、そういう情報を自ら積極的に得ようとしない、そういう風土の中で参議院選挙が行われております。
私は、日本国憲法の検討の際に、参議院を正に良識の府にするという、こういう理想を持っておられた方々のためにも、本来的に参議院がその役割を果たすようにしていかなければならない。
そのためにどうしたらよろしいか。
選挙を経験しますと、やはりあらゆる選挙は政党の助けがなければ全く遂行することが不可能であります。選挙がある以上は政党がせざるを得ない。国民の代表である衆議院と参議院が全く同じような構成になり、同じような役割を果たしていくことになりかねないのであります。
どういうふうにこれを克服するか。
第一に、間接選挙の方法を採用することはいかがかということであります。
世界では一院制の国が二院制の国よりも倍あると報告されたことがございます。もちろん、先進二十一か国の中では二院制がほとんどであります。しかし、国民の意思を素直に代表するという意味では一院制がより望ましいのではないかと言われております。二頭立ての馬車を考えていただきたいと思います。国民の意思を代表する第一院と第二院が右と左に走ってしまえば、国家の運営は一歩も進まなくなってしまいます。
大きな欠陥を内蔵するこの二院制を変えていくためには、私は変則的二院制あるいは二層制の国会制度を導入してはいかがかと考えております。それは、職域の代表であり、訂正します、職能の代表であり、あるいは地域の代表であり、あるいは真に衆議院の様々な暴走を抑止する機能を持った第二院である参議院を構成しなければならない。それにふさわしい各種の専門家を参議院の場に次から次へと採用していただきたい。そのためには、場合によっては国民の直接の選挙で選ばれる衆議院で参議院の候補者を選んでいくというような二層制にしてはいかがかと考えるのであります。
任期が、参議院の場合には六年というふうに衆議院よりもはるかに長く、かつ身分保障もより優位なものが保障されております。参議院議員のこの身分保障は、当然、国民に対する責務の大きさと対応するものでなければならないと考えるのであります。国民に対する責務、すなわち参議院議員の一人一人が、国家のために、国民のために何をなすべきかということを明確に認識しておかなければならないと思うのであります。
私は、日本に憲法裁判所がないということは、憲法に従った行政あるいは立法、隅々までの憲法を行き渡らせる、そういう制度的な保障がないのではないかというふうに考えております。
フランスでも、またイギリスでも、憲法裁判所あるいは憲法院という考え方が採用されております。イギリスの場合には、貴族院の中に約十五名の憲法裁判所を貴族院議員で構成する、こういう制度がございます。連邦の大統領等の経験者等をメンバーとするフランスの憲法院構想も、正に個々の法令あるいは通達等について予防的な憲法審査をすることができる。司法の場で憲法との抵触関係を審査する、そういった個別的な具体的な憲法審査でなく、抽象的な憲法審査が必要なのではないかというふうに考えております。
そのためには、立法機関の中に憲法に対しての抵触関係を審議する専門的な機関を設けることが正に良識の府である参議院に最もふさわしい職責ではないかというふうに考えております。そのために大事なことは、政党支配から自由になった参議院を構成することではないかと考えております。
今、改革の動きが大きく、大きな流れを作っております。この改革の流れを本格的なものにするために、私は、参議院がいわゆる抵抗の府ではない、チェックの府ではない、提言の府である、国民のために何をなすべきかということを専門的に、安定的に、継続的に審議し衆議院に提起するような、そういう機関に変質をしていただきたいと思うのであります。
改革が求められております。今改革が必要なのは、国民がそれを求めているからであります。そしてまた、改革を実現するためにはスピードが求められているのであります。我が国の憲法審議が始まって六か月以内で日本国憲法が成立しました。憲法調査会、六年間、憲法調査会はたしか五年間の存続期間と聞いておりますけれども、もっと早く日本国憲法についての問題点を調査し、これからの日本の歩むべき道を是非ともお示しいただきたいのであります。
参議院の先生方が自らの立場のありようを見詰め直して、ひょっとしたら自分たちの存在の基盤を揺るがすことになるかもしれないけれども、しかし、これからの日本のためにどうあるべきかということを是非御提言いただきたい。明治維新と同じことが今我々に求められているのではないかと思います。
以上で発言を終わります。