本田年子の発言 (憲法調査会公聴会)
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○公述人(本田年子君) 本田です。よろしくお願いいたします。
最初にお断りしておきたいのですが、私は専門家でも研究者でもありません。一般有権者ですから、多少的外れなことやあるいは口の悪いところがありますが、御容赦願いたいと思います。
さて、第二院である参議院は、本来、数の衆議院に対して理の府として数や力の論理に拘束されない参議院の独自性があり、その独自の役割や機能があるはずです。
しかし、参議院の現状は、衆議院のカーボンコピーと言われたり、参議院無用論まで出ています。私たち一般有権者の間でも、参議院が政党化し、多くの議員が党利党略で動いていることや、衆議院で落選した人がつなぎに参議院に回ったり、あるいは任期中にも補選で衆議院にくら替えしたりすることなど、また、民意を尊重してはっきり物を言ってくれる無所属の議員がほとんどいないことなどで、参議院は一体何しているのか、今の参議院には独自性がない、参議院の存在の必要すら感じられないと言っている人がたくさんいます。ましてや、参議院については、選挙で当選したタレントと言われる人や有名人の議員に親しみを感じる程度しか関心を持っていない人も更にたくさんいるのです。
また、次のことを言うのはちょっと気が引けるんですけれども、町の声としてお聞きいただきたいと思います。
参議院が衆議院でのごちゃごちゃした政党間の対立をそのまま引き継いで、余り審議もしないで衆議院と同じように決めてしまったり、議会中居眠りをしている議員の姿を見ると、自分たちはささいな収入を得るために毎日汗水垂らして一生懸命働いている、そしてその上がっちり税金を取られている、その税金の中から高額な議員歳費が使われていると思うと、もうやっていられない気持ちになると言っている人も結構います。
このような批判はともかくとしまして、参議院に関心を持たない有権者がたくさんいることは、まず、参議院選挙で有権者が参政権をどの程度行使しているか、また行使した一票がどのように生かされているか、あるいは生かされていないかを見れば分かると思います。
ここ十年間の参議院選挙の投票率を見ますと、一九九二年の第十六回が五〇・七%、十七回は半分も行かない四四・五%です。十八回が五八・八%、そして昨年七月の第十九回が五六・四%となっています。投票率は低く、これらの平均は五二・六%です。棄権している人が平均四七・四%もいて、半数近くの人が選挙に行っていないのです。
次に、私たち有権者が行使した一票が生かされているのか、自分たちの意思を代表してくれる代表をどの程度この参議院に送り出しているでしょうか。
お手元に配付してあります資料をごらんいただきたいと思います。資料の中に資料1、2、3と振ってありますが、資料1は第十九回、資料2は第十八回の参議院選挙の結果分析ですが、各党の得票率とそれから支持率。この支持率というのは、各党の得票数を全有権者数で割って求めた割合ですが、それと議席率を一覧表にしたもの、それからその一覧表を目で見て分かるように図にしたものです。あとは、当選された方々の選挙区における得票数と支持率とを一覧表にしたものです。
まず、十九回参議院選挙の資料として資料1の2でそれをごらんいただきたいんですが、選挙区を見ますと、当日有権者の数は一億百二十三万六千二十九人、これを一〇〇%としまして、そのうち投票に行った有権者は、つまり投票率は五六・四%です。そのうち、自分が、投票に行った人のうち、自分が投票した候補者が当選したという有権者は、生きた票ですね、これが三三・六%。つまり、この人たちが代表を送り出せた有権者です。そして、投票した候補者が落選してしまった有権者、死票ですね、これが二二・八%。この人たちは代表を送り出せなかった有権者です。そして、それから投票に行かなかった有権者がいます。この棄権率が四三・六%。この人たちは代表を送り出さなかった有権者です。つまり、わずか三三・六%の有権者が自分の意思を反映してくれる代表を参議院に送り出したのみで、有権者の六六・四%は代表を送り出していません。十八回のときはもっと低く、二二・七五%の有権者が代表を送り出しただけです。
次に、各党の議席率についてですが、たった三三・六%の有権者で支持されて当選した人たちの政党への議席配分を見ますと、自由民主党はわずか二二%の有権者の支持で定数七十三人中四十五人が当選し、議席率は六一・六%も占めています。民主党は七・五%の支持で十八人当選し、議席率二四・七%となっており、議席率は大政党に有利な結果をもたらしています。あと、公明党が五人、自由党は二人、無所属二人、共産党一人となっています。
この結果では、有権者の意思は正しく反映されていないばかりか、私はゆがめられているとさえ言えると思います。いかがでしょうか。
こうした有権者の一票を生かせない選挙結果が多くの有権者に、自分が一票入れたからといって大勢が変わるわけではないとの気持ちにさせてしまっているのです。政治に関心を持たず、お任せ主義で、選挙に行かない有権者が悪いという声もあります。確かにそれもそうです。しかし、私は、それ以上に、党利党略で改正されたと言われている選挙制度に問題があると思っています。
第一院の衆院をチェックする機能を持つ第二院としての参議院は、第一院とは異なる時期やあるいは異なる選挙方法で議員が選ばれ、有権者の多様な意思を公平に代表するはずではなかったのでしょうか。しかし、理の府であるべき参議院の選挙制度は、政党中心の数の衆議院の選挙制度と余り変わっていないのです。
例えば、参議院の選挙区においては、四十七ある選挙中、一人区が半数以上の二十七選挙区もあります。これは、大政党に有利と言われている衆議院の小選挙区制と余り変わりはありません。比例区では、議席の配分方法が単純に比例配分ではなく、やはり衆議院と同じく大政党に有利となるドント式が採用されています。これではまるで、兄弟たちの間でケーキを分けるとき、いつも力のある大きいお兄ちゃんが一番大きくて一番おいしいところを取ってしまうような、大政党のいいとこ取りの感じが私たち有権者にしますが、議員の皆さんはいかがお考えでしょうか。
また、比例区では政党しか候補者を立てることができません。一九八二年に全国区制を比例区にして参議院まで政党本位の選挙方法にしたわけです。かつて、全国区制のころ、私たち女性や若者たちが市川房枝さんを私たちの代表として、カンパを出し合い、いわゆる手弁当で、「出たい人より出したい人を」を合い言葉に参議院に推し出したことがあります。現在の比例制度では、私たち有権者は、政党に所属させなければ、所属しなければ、自分たちが出したいと思う人を立候補させることができないのです。
有権者が選挙への参加を狭められ、参政権を生かせないことはこの選挙の在り方ばかりではありません。参議院の議員定数が長年不均衡状態で放置されていることも、憲法が私たち一人一人に平等に保障している参政権にかかわる重大な問題となっています。
御参考までに、資料としまして、四十年前の一九六二年に越山康弁護士が参議院の定数是正訴訟を我が国で初めて行い、以後今日まで他の弁護士らとともに続けてこられ、日本婦人有権者同盟会員らも原告やあるいは補助参加人として参加してきました訴訟年表を資料3としてお配りしてありますので、御参考にしてください。
次に、参議院が第二院としての精神に反しないよう二院制の形骸化を阻止するために、そして参議院に対する有権者の関心と期待を増すために、私はまず、参議院の選挙区制度、定数是正を含めて、選挙区制とそれから定数是正も含めまして、有権者の意思が正しく公平に反映できるよう改正することを訴えます。このことは憲法を改正しなくてもできることです。
それから、参議院がいわゆる政党のエゴに振り回されないでその独自性の役割、機能を果たすために、政党を離れた議員が多い方が良いとも思っています。できれば参議院から大臣を出さない方が良いとも思います。
参議院は、動きの激しいいわゆる動の、動きの衆議院に対し、冷静である静の府であってほしいのです。衆議院のように絶えず躍動しているというか、悪く言えばごちゃごちゃごたごたした目まぐるしい状態ではなく、参議院の議員は有権者から六年という長い期間を託されたのですから、物事をじっくり見据え、深く考え、慎重に審議していただきたいのです。また、可能な限り自分の選挙区だけではなくもっと町に出てより広く国民の声を、汗水垂らしている人たちのたくさんの声を聞いてそのニーズにこたえるように責務を果たしてください。
特に、民主政治の基本的ルールである選挙制度の問題、未来を託す子供たちの教育問題、だれもが安心して暮らせるための平和の問題、私たちみんなが人間としての尊厳を保ち、生きていくための基本的人権にかかわる問題を、参議院が衆議院より率先して公正公平の立場でしっかりと取り組んでくれることをお願いしたいのです。
私は、一有権者として、二院制を取る我が国の衆参両院がそれぞれの自律性を保ち、その上で、国権の最高機関である国会が法制定、法政策において国民の意思、民意を広く正しく反映してくださることを、かつ、議会制民主政治確立のために邁進されることを心から期待いたします。
御清聴ありがとうございました。