畑中美樹の発言 (国際問題に関する調査会)
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○参考人(畑中美樹君) 御紹介いただきました畑中でございます。よろしくお願いいたします。
ただいま宮田参考人から主に政治を中心としたお話がございましたので、私は経済に焦点を当てまして、イスラム諸国と国際資源問題につき、御説明させていただきます。
経済の話ですとどうしても数字が出てまいりますので、お手元の資料、この緑表紙の「イスラム世界と日本の対応」資料ナンバー5というのを時折使いながら話を進めさせていただきたいと思います。全部で五つの柱を立てております。
第一は、世界の中でのイスラム諸国あるいは中東のイスラム諸国の経済力がどのぐらいあるかというお話でございます。
その中で、まず人口でございますけれども、世界の人口というのは大体六十億人ぐらい。その中で、発展途上国の人口が大体五十億人ぐらいでございますが、イスラムというのはイスラム諸国会議機構というのを五十七か国で構成しておりまして、その加盟国の人口が約十二億人でございますので、世界の人口の大体二割ぐらい、また発展途上国の総人口の四分の一弱ということでございます。そのイスラムの中での中東のイスラムの人口というのは、大体その三分の一ぐらいの四億人弱というのが現状でございます。
次に、GNPでございますけれども、現在の世界の全体のGNPというのが三十兆ドルぐらいで、その中での途上国のGNPというのが七兆ドルでございますが、その中でイスラム諸国のGNPというのは大体一兆三千億ドルぐらいでございますので、世界の全体のGNPの四%、途上国の全体のGNPの一八%ということでございますので、人口の比率と比べると経済の規模は小さいということがお分かりいただけると思います。
ただ、このイスラム諸国のGNP、一兆三千億ドルの中で中東のGNPが約六割の八千億ドルということでございますので、人口に比べてイスラムの中での中東の経済の規模の大きさというのが、後ほど御説明いたします石油資源もあることもありまして、高いと、大きいということがお分かりいただけるかと思います。
次に、一人当たりのGNPでございますが、イスラム世界の一人当たりのGNPというのはおよそ一千百ドルでございます。これは途上国の単純の平均のGNPと、一人当たりGNPというのが千四百ドルでございますから、それより約四分の一ぐらい小さいということになります。また、イスラム諸国会議機構、五十七か国ございますが、この中で統計がしっかりしておって、一人当たりGNPが分かっている国というのが五十か国あるんですけれども、実はその中の二十三か国というのは一人当たりGNPが七百八十五ドル、これは世界銀行が規定した低所得国という分類ですけれども、この七百八十五ドル以下の分類にあります。それでも全体の平均が千百ドルに少しかさ上げになっておりますのは、中東の産油国、例えばクウェートですとかアラブ首長国連邦ですとかカタールですとか、あるいはアジアのブルネイといったところが二万ドル内外の一人当たりGNPがあるからということによるものでございます。
第四といたしまして、貿易その他でのイスラム諸国の世界に占める経済力でございますけれども、輸出入とも大体三千三百億ドルぐらい、合計して大体七千億ドル弱ぐらいでございます。これ世界の大体の貿易量というのが十一兆ドルぐらい。このうち途上国の貿易量というのは四兆ドルぐらいですから、世界全体で見ると六%ぐらい、また途上国全体で見ると一六%ぐらいということでございますので、この面から見ましても、やはり人口の比率から見るとイスラム諸国の経済力というのは相対的に弱いということがお分かりいただけるかと思います。
また、その他というところでございますけれども、これ債務の問題なんですけれども、今から三年ほど前の九九年の六月のケルンで開かれましたサミットで、重債務貧困国、この救済をしようということでこのプログラムの拡大が決定をいたしまして、四十一か国、世界の四十一か国はその対象になったわけですけれども、その中の実は十五か国がイスラム諸国ということで、全体の四割ぐらいがイスラム諸国だったということでございますので、それだけ経済的にはイスラム諸国というのは弱体な存在だということが言えるかと思います。
次に、第二と第三と第四の柱でございますけれども、水と油の話でございまして、豊富な油資源と貴重な水資源についてでございます。
恐縮ですけれども、お手元のこの先ほどの資料ナンバー5の三十八ページというところに、現在の世界の原油の確認埋蔵量というものを示したものがございます。大体、現在、世界では石油というのは一兆バレルぐらいあるんですけれども、その一兆バレルのうちの大体七〇%ぐらいが中東に偏在しています。しかも、約三分の二、六五、六%がアラビア湾、あるいはペルシャ湾とも呼びますが、この湾岸の五か国に集中しております。
お手元の三十八ページのこの図を見ていただければお分かりいただけますように、実は世界の石油の二六%がサウジアラビア一国にあります。続いて、イラク一一%、アラブ首長国連邦大体一〇%ぐらい、クウェート九%、イラン九%ということで、この五か国だけで実は世界の石油の六五%があります。
中東に石油が偏在しているのみならず、実は毎年の生産量を埋蔵量で割るとあと何年石油がもつかというのが出てくるわけですけれども、世界全体では現在四十二年あるわけですが、ところがこれを中東だけを見ますと、実は中東は八十七年もあります。したがって、いかにその他の地域の石油が少ないかということがお分かりいただけるかと思います。
例えば、旧ソ連、東欧というのは、現在、ロシアが世界第二の産油国ですけれども、旧ソ連、東欧の石油の寿命というのは二十一年でございますし、中南米、これが中東に続いて長いんですけれども三十六年、アフリカ三十一年でございます。また、アメリカというのは大変、ここにもございますように、二百二十億バレルぐらいの埋蔵量を持っているんですけれども、じゃ、あと何年もつかという観点から見ますと、たった九年しかございません。
他方、中東は八十七年もあると。その中東の中でも、例えばアラブ首長国連邦、イラク、クウェート等は大体百二十年ぐらいはもつ石油があるということでございますので、埋蔵量が多いと同時に、大変先々まだ長もちする石油を持っている国々が多いということがお分かりいただけるかと思います。
続きまして、お手元の資料、少し戻っていただいて、二十五ページ目なんですけれども、埋蔵量があって長くまだ使えるということに加えまして、現在の石油の生産の能力の余っている力、余力がどのぐらいあるかというのを見ましたものが二十五ページ目の左側の図表の1というもの、この棒線の図でございます。
これごらんいただきますと、八〇年代には、多いときには一千万バレル・パー・デー超ぐらい、一日当たり一千万バレル超ぐらい、少ないときでも一日当たり六百万バレルぐらいございましたんですけれども、これが今日現在は三百八十万バレル・パー・デーぐらいというように余剰の生産能力が下がってきております。
しかも、この少なくなってきた余剰の生産能力のうちの八割が、先ほど申し上げた石油の埋蔵量が多い五か国に偏在をしておりますし、さらに言えば、三百八十万バレル・パー・デーある余剰能力のうちの四五%に当たる百七十万バレル・パー・デーがサウジアラビア一国に集中しているというのが現状であります。
同時に、四番目の話でございますが、中東に石油が偏在しておって、長くまだまだこれから掘れると。しかも、余っている設備の生産能力も中東に偏在している中で、これから新しいところを見付けて開発をして生産をするという場合にコストが問題になってくるわけでございますが、中東地域は総じて低コストでございまして、大体一ドルから八ドルぐらいで済みます。ところが、これが中東以外になりますと、十ドルから十五ドルぐらいということで、相対的に高いということでございますので、中東の石油をそれだけ掘った方が石油会社からいえば経済性があるんだということになるわけでございます。
そうした中東の石油資源をめぐりまして、かつてはアメリカ、ヨーロッパのいわゆる欧米のメジャーズという石油会社が中東の産油国の探鉱、開発、生産に当たってきたわけでございます。ところが、一九五〇年代後半からの様々な資源のナショナリズムということで各国国有化をいたしまして、大体一九八〇年代の初頭には中東の主要な産油国でも国営の石油会社というのができまして、これによりまして、欧米のメジャーズというのは石油の探鉱、開発の権利から離れていったわけであります。
ところが、それから十数年たちまして一九九〇年代の中ごろになりまして、再び中東の産油国が外国資本の再導入に動いてきております。先ほど、二十五ページでOPECの余剰生産能力を見ていただきました右の方にございますけれども、それぞれの国がそれぞれの理由で再び外国の手をかりて油田の探鉱、開発、生産に当たろうとしております。この中で、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア等の大手の石油会社は、積極的に中東の産油国の呼び掛けに応じる形で進出をしておるか、しようとしているところでございます。
他方、残念ながら日本の石油会社につきましては、資本的な問題あるいは技術的な問題もありまして、欧米の大手のメジャーズと比べますと出遅れているというのが現在のところでございます。
どのような国が現在外国資本の再導入に動いているかということでございますが、一番初めに動きましたのは、お手元の資料ですとこの3の実は(2)になりますけれども、イランでございます。イランというのは、一九七九年の革命、その後のイラクとの戦争、さらには九〇年代に入りましてからのアメリカの制裁というものがございましたもので、自分の国の技術と自分の国のお金で油田の保全をしたり新しいものを開発をしてきたわけでございます。
ところが、どうしても欧米の大手の石油会社との間の技術の格差というのがありまして、イランは現在石油の生産能力が頭打ちになってきております。それと同時に、アメリカによる制裁ですね、これを打破したいという政治的な考え方もございまして、石油利権を一部買い戻す、バイバック契約というものを提示することによって、欧米の石油会社を入れて再びイランの石油の生産力を高めようということを図っております。
これは、イラン、一九九五年から始めまして、これが先鞭になりまして、次にそこの(3)にありますイラク、リビア、これはどちらも現在国連の経済制裁下にあるわけですけれども、この国連の経済制裁を緩和する、あるいは最終的にはこの国連の経済制裁を撤廃するための政治的な手だてとしてこの油田への外国資本の導入というのを持ち出しておりまして、例えば、イラクの場合ですと、これに呼応してロシアですとか中国ですとかフランスですとか、あるいはその他のヨーロッパ諸国、更にはマレーシア等のアジアの産油会社が進出を決めようとしているところであります。
また、リビアにつきましては、やはり英国、イタリア等の欧州勢を中心に、また一部のアジアの国々が、この国、リビアの油田の探鉱、開発を行おうということで現在進出しようという姿勢を示しているところでございます。
それに続きましたのが1のクウェートでございまして、クウェートの場合には再び外国の資本の再導入を決めた理由がほかの国と少し違います。これは、御存じのように九〇年の八月にイラクに侵攻されました。したがって、現在でも安全保障上の懸念があるということで、クウェートはイラクとの国境に並んでいる油田地帯をアメリカとイギリスとフランスとイタリアの石油会社に権利を与えれば、当然それぞれの国の石油会社がそれぞれの国の政府に働き掛けて万が一のときには防いでくれるだろうという、そういう安全保障上の対策という観点からクウェートもこの九七年から外資を再導入するという動きを見せております。
最後に、こうしたイラン、イラク、リビア、クウェートというのが再び外資の導入に走りました中で、サウジアラビアはこれを黙って見ていたわけでありますけれども、ほかの国が、近隣のほかの国が外資を導入し、自分の国が外資を導入しないとなりますと、欧米の有力メジャーズが自分以外の国に行ってしまって自分以外の国の資源を買うということになると、そうなりますと取り残されるということがございまして、サウジアラビアも、これは石油ではなくてガスなんですけれども、ガスを欧米のメジャーズに開発してもらうという契約を現在交渉中でございます。この外国といった場合には、今のところアメリカとイギリスとフランスが入っておりまして、残念ながら日本には話が十分伝わっておりませんで、日本は入れてもらっておりません。
こうしたサウジアラビアと同様の動きを、北アフリカのアラブの盟主と言われておるエジプトも現在行っております。
エジプトにつきましては、若干日本も進出の意向を持って交渉を進めておりますけれども、やはり資本力、技術力に格差があるものですから、なかなか先方から色よい返事をもらえていないのが現状でございます。要は、この中東の産油国は再び外国資本の再導入に動いており、そうした中で、欧米の大手の石油会社は積極的にそれに呼応しておるけれども、日本はやや一歩も二歩も後れているのが現状だということでございます。
次に、貴重な水資源の話でございますけれども、中東で水資源を語る場合に紛争と関連した三つの地域がございます。
一つはトルコを中心とした地域でございまして、二つ目がイスラエルを中心とした地域、そして三つ目がエジプトを中心とした地域と。そして、元々砂漠地帯でお水がないということで、サウジアラビアを中心とする湾岸協力会議という国々についても水の問題がございます。
順に簡単に御説明をさせていただきますけれども、世界四大文明の発祥の地の一つでありますメソポタミアにはチグリス川とユーフラテス川というのが流れておりますけれども、この水源というのはどちらもトルコの東部の山の中にあります。このことが、水資源の上流国でありますトルコと下流国でありますシリアとイラクという関係を形作っておりまして、この三十年間、トルコ対シリア、トルコ対イラクの関係が政治問題とも絡んで非常に微妙な問題となってきております。
そもそも、約三十年ほど前にトルコが自分の国の農業用あるいは工業用に、これらチグリス・ユーフラテス川の河川の水を活用する計画を立てましたことから、その下流にありますシリア、イラクが、それでは自国に流れてくる水の供給量が制限されてしまうということで反発をいたしまして、両国間には水の供給量の約束ができたわけでございますが、その後、トルコが八〇年代になりまして、トルコの東部というのはクルド人というものが、人たちが多く住んでおりまして比較的開発が遅れているものですから、そこを積極的に開発したいということでトルコ東南部地方開発計画というのを進めまして、これに伴いまして河川部に多くの発電所ですとかダムを造りました。このために自然に流れる水量がやはり減ってきたということでイラクとシリアが反発をしておりまして、現在も毎年供給される水量をめぐる政治的な争い事が続いております。
次に、イスラエルとその周辺の情勢でございますが、元来、ガリラヤ湖というところから死海に至るヨルダン川の西岸の地域というのは水の資源に恵まれた地域なんですけれども、これを第三次中東戦争、一九六七年のイスラエルとアラブの戦争によりましてイスラエルが占領下に置きました。その結果、この地域からの水資源がイスラエルにとってはイスラエル国の水需要の三〇%ぐらいを供給するということになってきておりますもので、このことから、イスラエルとヨルダンあるいはイスラエルとパレスチナ自治政府との間で水の問題というのが重要な問題の一つとなってきております。
イスラエルとヨルダンにつきましては、一九九四年の十月に平和条約というのが締結されておりまして、その中できめ細かく水の問題についても規定されております。要すれば、イスラエルがヨルダンに供給する水の量を決めているわけでありますけれども、ただ実際には、近年天候不良のことが多うございまして干ばつぎみでございますので、イスラエルがヨルダンに供給する水が約束した水量に至っていないということで、元来非常に水の少ないヨルダンが政治的な問題を抱えているというのが一つございます。
二つ目に、イスラエルとパレスチナ自治政府でございますけれども、こちらも九五年の九月にパレスチナ暫定自治拡大協定というのが結ばれまして、その中で水について細かく規定されてきております。さらに、この二つの国同士、イスラエルとヨルダン、イスラエルとパレスチナだけでは、やはり同じ地域の水を使っているということで解決しないということで、一九九六年の二月にイスラエルとヨルダンとパレスチナ自治政府の三つの当局が水問題処理のための原則的枠組みというのに合意をいたしましたけれども、基本的に同じ水源を使っておりますものですから、やはり政治的に力の強い国がどうしても水量を多く取るということになっておりまして、現在もこの三者間での水をめぐる争いというのは絶えておりません。
最後に、イスラエルとシリアでございますけれども、イスラエルがガリラヤ湖というところに取水設備というのを一九六四年に造りました。ところが、このガリラヤ湖というものの水源がゴラン高原というところにございます。皆さんよく御存じだと思いますけれども、元来シリアの高原であったものをイスラエルが占領しております。このことがやはり両国間の和平交渉とも絡んで重要な問題となってきておりまして、御存じのように、イスラエルとシリアはまだ和平交渉を中断させたままでございますので、この水問題についても解決していないというのが現状でございます。
次に、エジプトとスーダンでございますけれども、元来エジプトというのは非常に砂漠の地域でございまして、雨に恵まれておりません。このために、水資源としてはナイル川が大変貴重なんですけれども、残念ながら、ナイル川を見た場合にはエジプトが下流国で上流国はスーダンとなります。このエジプトとスーダンの二か国というのは、歴史的に、政治的に関係が余り良好でないということで、常に水問題の争いがございます。現在は一応、一九五九年に新たに決められた水量供給協定というのがございまして、これに従ってエジプトが取る水の量が決まっています。
ただ、ざっと過去百二十年間ぐらいを振り返ってみますと、両国間で結んだ取水協定どおりに水量が供給されたというのはこの百二十年の六割に当たります七十年間ぐらいでございまして、残る四割に当たる五十年間ぐらいは十分な水が来なかったということで問題が起きております。エジプトは近年、人口増、都市化という問題もありますので、水問題が深刻化しているということでございます。
最後に、サウジアラビア等の湾岸協力会議機構の水問題ですけれども、これは元々砂漠地帯でございまして、水が希少資源でございますので、海水の淡水化ということで水を作って対処してきたわけでございます。ところが、こちらも人口増の中、財政難ということで十分な海水淡水化プラントができていないということになっておりまして、現在では首都のリヤドあるいは西部にあります商業都市ジェッダで夏になりますと断水が起きたり、あるいは給水の制限が起きたりというようなことで、アラビア半島方面におきましても水問題というのが近年大きな社会・政治問題化しているところでございます。
最後に、五つ目の柱ということで、中東産油国あるいはイスラム諸国の課題と我が国に対する期待の高まりという観点からお話をさせていただきたいと思います。
まず、中東のイスラム諸国とその他の途上国という観点で、過去三十年間の経済をざっと振り返ってみますと、一九七〇年の経済を一〇〇としますと、大体途上国の経済というのは今日四〇〇ぐらいになっています。その中で、中東の大体経済というのは三〇〇ぐらいということで、つまり、ほかの途上国に比べますと中東イスラム諸国の経済の拡大というのは後れているわけでございます。そうした中で、人口が増え、しかも人口が増える中で若い人が増え、都市化も高まっておるということで、失業問題と基礎的なインフラが足りないという問題が同時並行的に起きております。
お手元の資料を少しページを繰っていただきまして、二十八ページをごらんいただきたいと思います。
二十八ページ右上に図表7というのがございます。これは、中東の人口、中東の中でもアラビア半島の人口を見たものでございます。今から約三十年前の一九七〇年の中東の人口というのは二億人でございました。これが二〇〇〇年には二倍強の四億三千万人になっております。中でもアラビア半島の人口というのは三十年前にはわずか一千四百万人でございましたけれども、現在は三倍強の約五千万人になっております。
このように短期間に人口が増えた結果何が起きているかと申しますと、次の図表の8でございます。湾岸A国、B国。このA国というのはサウジアラビアでございまして、B国というのはクウェートでございますけれども、自国民の人口に占める若い人の比率が大変多くなっています。A国、サウジアラビアの場合を見ますと、十歳から十九歳の右の方に備考というのがございますが、累計五七%でございます。つまり、サウジアラビアでは自国民の人口のうち五七%が十九歳以下ということです。更に十歳広げますと、二十九歳以下が七三%になります。同じように横のB国、クウェートを見ますと、十九歳以下が五三%、二十九歳以下が七〇%ということになります。これは別にそのサウジアラビアとクウェート二か国に特化した話だけではございませんで、中東全体に共通する問題でございます。
そうした中、次のページ、二十九ページに行っていただきますと、図表9というのがございます。これは、中東の人々のうち都市に住んでいる人がどのぐらいかというものでございますが、これをごらんいただきますと、四十年前の一九六〇年には四人に一人でした。これが現在では五人に三人が都市に住んでいるわけでございますね。地方にいると就職の機会もないということで皆さん都会に出てくるわけですが、しかし、これだけ人口が増えている割には、先ほど申し上げましたように経済の規模が拡大していないものですから、実は都会に若い人が出てきているんだけれども職がないという状況で、つまり失業率が高くなっております。
三十ページのところにイランの場合について書いてございますが、イランの場合でございますけれども、三十ページの中ほどでございますが、推定の失業率が二五%ぐらいというふうに言われております。イランというのも日本と同じように、かつてと同じように五か年計画というのを作っておりまして、今から二年前の二〇〇〇年の三月に終わった五か年計画では、その前の五か年で四百万人、つまり一年間四十万人の人に雇用を与えようという計画を作っていました。ところが、五年終わって締めてみましたら、実際に雇用口が増えたのは百二十五万人、つまり、毎年二十五万人の人に職が与えられたにすぎませんでした。
そういう中で、その右の方に行きますと、二〇〇〇年三月から始まった、次の、現在の五か年計画なんですけれども、前の計画では実績で毎年二十五万人しか職に就けなかったんですけれども、現在の計画では五年間で三百八十万人の雇用を作ろうとしています。つまり、七十六万人ということで、実績に比べて三倍の雇用を作らなきゃいけないということでございまして、これは大変難しい問題だということがお分かりいただけると思います。これは、数字が出ているということでイランについて御説明をさせていただきましたけれども、これは中東軒並み、あるいはイスラム諸国と広げていいと思いますが、軒並みに同様の問題を抱えているところでございます。
同時に、先ほどもお水について申しましたけれども、お水と同様の問題が電力あるいは通信設備あるいは教育設備についてもございます。
人口増えているんですけれども、次第に財政が逼迫しておりますので、こうした基礎的なインフラ、ライフラインが不足ぎみになってきておると。これまではこうした基礎的なインフラ、ライフラインにつきまして政府の財政出動で、日本で言うところの公共事業に当たるかと思いますけれども、基礎インフラを整備してきたわけでございます。
ところが、これが財政難でできないということで、近年ではようやく経済改革と外資導入政策ということを導入いたしまして、BOTとかBOOTと言われておりますように、民間の資本、技術、それも特に外国の資本、技術を導入してこうした不足する基礎インフラ、ライフラインの整備に当たろうとしているわけでございます。欧米の国、欧米の企業は、これに現在積極的にこたえようとしているところでございます。
そういう中で我が国の状況なんでございますけれども、少し恐縮なんですが前の方に戻っていただいて、お手元の資料の十七ページに「湾岸産油国の現状と日本に寄せる期待」というのでまとめてございますが、天の時、地の利、人の和と、この三つに分けて我が国と中東の産油国を中心としたイスラム諸国を考えた場合、恐らく天の時と地の利というのは日本にとってだんだん有利な情勢にあるんではないかというふうに思われます。
十七ページのところに、段落目、第二の段落から「第一に、」「第二に、」というふうに書いておりますけれども、簡潔に申しますと、この中東のイスラムの産油国は次第にアメリカに対する依存からいろいろな意味で脱却をしたいと。そういう中で、やはりエネルギーの、彼らから見たマーケットとしてのアジアが重要である。その中でも、アジアの中でも経済大国であり信用できる国家ということで、日本に対する非常に期待が高まっております。
ただ、残念ながら日本は長引く経済的な低迷ということもありまして、日本のそういう期待に対する意識というのは大変低いということで、彼我のギャップが非常に大きいのが現状なんではないのかなというふうに思います。
じゃ、日本はこれからどうしていったらいいかということなんですけれども、私なりに日本と中東を中心とするイスラム諸国、あるいは欧米と中東を中心とするイスラム諸国との関係を見ていった場合、日本は何が足りないのかということでございますけれども、やはり人脈が基本的にないと。人脈がやはり希薄なためにどうしても基本的に必要な情報が入ってこない、情報がないのでその情報に基づいた的確な政策対応がどうしてもできにくいんではないかというふうに私は考えております。
二十三ページのところに、最後に「高まる日本への期待」というところでまとめてございますけれども、欧米は、王室あるいは王室のみならず王家以外の共和制の国家でも、政府高官と基本的にやはり同窓関係ですとか学友関係、これは安全保障も含めてですけれども、こういうもので、きずなでがっちりと結ばれておりまして、しかも、その王室とか政府関係者の周りにいる経済学者とか政治の政策者、そういう有力な顧問団と言われる集団をある程度欧米の場合には取り込んでおりまして、そこから適宜重要な情報を取っておる、あるいは逆にそれぞれ欧米の情報を流して自分の国の政策に沿うような形にそれらの国を動かしているということがあろうかと思うんですけれども、この点がどうも日本は後れているんではないかと思います。
ということで、これからやはり日本としては中東イスラム産油国を考えた場合には、ここ当面やはり、石油、天然ガス資源、中東地域に頼ることが続くと思われますので、これら中東イスラム諸国との人脈づくりを今からでも、やや遅いですけれども、積極的に行い、重要な情報を取りながら的確な政策展開をし、先方の求めている外資導入政策に乗る形で、石油資源の開発ですとかあるいは不足する基礎的なインフラの再整備ですとかこうした問題、あるいは失業者の解消のための雇用口の創出のための教育とか職業訓練ですね、こうした点での協力というのを行っていくことが望まれるのではないかと思います。
以上でございます。