宮田律の発言 (国際問題に関する調査会)

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○参考人(宮田律君) 正しくそのとおりだと思います。
 どうも九・一一のあのテロ以降、アメリカ政府あるいはアメリカのマスコミの論調を見ていますと、テロに対して、軍事的に報復するのはこれは当然だという、そういう論理ですよね。テロとその報復という次元でしかあの事件をとらえていないような、そんな気がします。なぜ自分たちがテロに遭うのかということを考えないと、また同じテロが起こるという、そういう悪循環をこれから繰り返さざるを得ないという、そんな印象です。
 なぜ反米テロが起こるのかということですけれども、これはいろんな要因がその背景にはあるというふうに考えられます。
 これは、歴史的には十九世紀以降、イスラム世界というのはヨーロッパあるいはアメリカに押されっ放しである。例えば、大英博物館に行くと中東の文化遺産が展示されたり、あるいはメトロポリタンも同様ですけれども、ああいったところにもイスラム世界の人たちはもしかすると傲慢さを感じて、欧米の傲慢さを感じているのかもしれません。
 アメリカに対する恨みというのは、一つには、よく言われますけれども、パレスチナ問題というのはやはり大きなファクターとしてあるんじゃないかなという気がしています。
 これは一九六七年の第三次中東戦争以降、イスラエルはヨルダン川西岸、それからガザ、さらにゴラン高原を占領しておりますけれども、それに対してアメリカ側は有効な圧力をイスラエルに対して加えない。他方でアメリカは、クウェートを侵攻したイラクに対しては、いち早く軍隊をサウジアラビアに展開してイラクを軍事攻撃する。その湾岸戦争の中でイラクの一般市民が亡くなる。さらに、湾岸戦争後、イラクに対して経済制裁を加えて、その結果、イラクの少年たち、子供たちが亡くなったりしております。
 そうしたアメリカのイスラム世界に対する干渉姿勢に対する憎悪というのが強いと思うんですよね。パレスチナ人はなかなかパレスチナ国家を持てない、その背景にはもちろんイスラエルの軍事占領があって、アメリカがそのイスラエルを擁護している、そういうアメリカの姿勢に対する憎悪というのは大変根深いと思います。
 イスラムでは、これはもしかすると以前のこの調査会でどなたかおっしゃったかもしれませんけれども、イスラム世界では、外部の敵が軍事力でもって侵入してきたときにはこれは撃退する、これを、イスラム世界を守るのは、これはイスラムの宗教的な義務であるという、そういうイスラム法の古典的な解釈もありますので、アメリカがイスラム世界に軍事的に乗り込んでくることについては、宗教的な感情からもこれはやはり容認できないということだと思うんですよね。
 この間のイランの武器の密輸事件にしても、イランの武器密輸についてはアメリカは怒りますけれども、他方、これはパレスチナの側から見れば、だったらアメリカがこれまでイスラエルに大量に武器を輸出してきたのは一体何だということになるとは思うんですよね。そういう何かアメリカのイスラム世界に対するダブルスタンダードに対する憤りって非常に強いと思います。
 それから、イスラム世界内部の問題として、なかなかイスラム世界の人々の経済状態が良くならない、大勢の貧しい人たちがいる。ごく一部の富裕層が、特権階級が欧米流の生活を享受していることに対する恨みとか憤りというのはあると思うんですね。そういう貧しい人たちは、欧米の文化が入ってくることによって自分たちの伝統的な価値観がどうも埋没してしまうような、そういう不安感に駆られてしまうということですね。そこからもまた、文化的にもアメリカあるいはヨーロッパに対する恨みというものが生まれてくる。
 さらに、イスラム世界内部の問題として、イスラム諸国というのはどこも政治体制がお粗末な体制で、独裁体制か権威主義体制しかない。一般の大衆を政治的に弾圧する、そういう体制をアメリカが支援している。例えばエジプトとかあるいはサウジアラビアといった民主的な国家でない政府をアメリカが支援していることに対する恨みというのもあると思うんですね。
 ですから、自分たちのその憤りというものを自由に表現できないという、そういう中東の政治風土も一つの背景としてあってテロが行われるということですけれども、特に反米テロが起こるようになったのは九〇年代だと思うんですね。それは、湾岸戦争においてアメリカのハイテク兵器の威力を見せ付けられて、それに対抗し得るイスラム世界の手段とすれば、もうこれはテロしかないという結論に彼らは至ったと思うんですね。
 ですから、そんないろんな要素が、ファクターが重なり合って現在の反米テロが行われている。特に反米テロの直接的な動機になるのは、ビンラーデンが、米英の空爆が始まった後、直後に声明を出していましたけれども、これはアメリカがイスラム世界に対して軍事的な干渉を行ってきたことだと思うんですね。それをアフガニスタンでやって、またこれからイラクに対しても行おうとしているわけですから、また同じようなテロが起こる可能性というのは非常に私は高いというふうに考えております。

発言情報

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発言者: 宮田律

speaker_id: 25035

日付: 2002-02-20

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会