米倉誠一郎の発言 (国民生活・経済に関する調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(米倉誠一郎君) こんにちは。一橋大学の米倉です。
私が言いたいことは二つで、新しい産業支援、ベンチャー支援は国家戦略の一つに位置付けるべきだということと、それはシステム対応ですからかなり精緻なシステムとして考える、アドホックな対応はできないというこの二つです。
多くのところはちょっと話が長い田坂参考人とほとんど一緒なんですが、最後の部分は大きく違いまして、日本型という前に、我々はもっと謙虚にアメリカで起こっているシステムワイズなロジックを学ぶべきだと。それをやれば必然的に日本型になるんで、あえて今ここで日本型というと結局進歩を妨げるというふうに私は思います。
なぜベンチャー支援が国家戦略かというのが私のレジュメの一番始めに書いてありますが、一つは、グローバルなコンペティションの、要するに、グローバルな競争をやっていると大企業が雇用創出力を必然的に失っていく、ですから雇用を作るという必然性が出てくる、それは大企業以外からしか生まれないというロジックがあります。これは後で説明します。
もう一つは、新しいビジネスフロンティアはかつてに比べて物すごく不確実性が高い。今、田坂さんが言われたように、ニーズオリエンテッドですからニーズは非常に変わります。どこに何があるかも分からない、テクノロジーもどうなるか分からない、そういう中で起業するんですから不確実性が高いと。これにはある種特殊なシステムが必要であると。
二つ目が、これが、今日是非皆さんにお考えいただきたいのは、ベンチャービジネス支援というのは小さな企業を創出することではない、五年から十年の間にグローバルな百社に入るような大企業を創出するということが基本的な眼目なんですね。そこでは、特に国会議員の皆さんにお願いしたいのは、ベンチャー支援策と中小企業支援、それを混同されないことだと思うんですね。
私の参考資料の一番最後に追加資料が付いておりますが、これは二月二十六日の世界ランキング企業です。一番上の左側がニューヨーク・ストック・エクスチェンジ。これの時価総額で見ますと、GEがトップに入って、二位がエクソン、三位がウォルマートとなっていますが、同じくナスダックの方では、マイクロソフト、インテル、シスコ・システムズ、オラクル、デル・コンピュータと、この十年から二十年の間にできた企業がこれだけいますが、ここを見ていただければ分かりますように、ナスダックではこの十年から二十年の間に出た企業がグローバルな全世界の百社に入る企業をこれだけ輩出していると。
それに比べて、日本を見ていただきますと、NTTドコモに始まりまして最後のセブン—イレブン。NTTドコモはグローバルランキングでまだ二十六位なんですね。ところが、我々で、日本で数少ないベンチャーと言われるソニーと本田はやっぱり九十一位と百十七位に入っていますから、そういう点では日本にも短期間に成長したすばらしい企業がいるんですが、重要なポイントは、このナスダック、右の上のマイクロソフト、インテル、シスコ、オラクル、デル、アムジェン、アプライド・マテリアルのような企業を短期間に作り上げて、国際競争力のある国あるいは企業を育て上げるということがベンチャーの基本的な眼目である、小さな企業をぽつぽつ育てることではないということを是非御理解いただきたい。
次のポイントは、なぜグローバルコンペティションが出てくると大企業が雇用創出力を失うかというと、競争が世界規模になるんではなくて、一番重要なところは、競争に必要な経営資源、人、物、金、情報が世界規模で調達されなければならない。これがグローバルコンペティションの原則です。そうすると、人、物、金、情報の中で一番重要なのはお金ですが、資金が世界規模で供給されると、資金が世界規模で供給された場合にどういう状況が起こるかといいますと、その資金を有効活用するためのグローバルなスタンダード、これは日本語なんですが、それが必要になってくると。残念ながら、世界国際経営機関とかいうのはありませんから、国際標準を決定する機関はないので、実質的にスタンダードを取るという意味ではデファクトスタンダードなんですが、それを取ったのは今のところアメリカ型の経営であると。アメリカ型の経営の何が取ったのかというと、株主を非常に重要視する経営スタイルというのが今世界のグローバルなコンペティションをやっている企業の基準にもうなりつつあると。
なぜそういうことが起こるのかといいますと、例えば、ソニーという会社は、約四六%を外国人が持っています。ところが、全株主数に占める外国人の比率は九%です。九%ということは、わずか九%の人間が半分近い株を持っている。そうすると、この人たちの正体というのは機関投資家なんですね。機関投資家というのはどういう人たちかといいますと、決してジョージ・ソロスやウォーレン・バフェットという人たちではなくて、実は我々なんですね。我々というのは、普通に勤めていた人間が、退職金、それをまた、老後の年金をもらうために積み立てているお金を世界じゅうで最も効率的な企業に投資していく、これが機関投資家の本当の姿です。
そうすると、我々もう既に残念ながら年金が破綻していますから、近いうちに四〇一kプランに移行していくわけですが、私が一生懸命積み立てている年金をどう有効的に活用していただけるかというのが全国民のこれ真剣なる希望になるわけですね。そうすると、そういう人たちのエージェントとなっている機関投資家は、やっぱり世界で一番株主を大事にしてくれるところに投資をしていく。これを集めないと実はキャピタル界の大企業は資本調達ができなくなっているという構造をお話ししたいんですね。
そうすると、例えばソニーのような会社が、うちは従業員が一番で株主は二の次ですよと言うと、株の半分が売られてしまう。ソニーの株は暴落する。トヨタ自動車も二〇%、松下も三〇%、既に外国人が持っている。こういう巨大企業は、次のページに行きますが、残された選択というのは非常に限られてくる。
それは、皆さんがよく御存じのジャック・ウェルチが提唱しているような選択と集中、資本効率を最も上げる分野に選択的あるいは集中的に資本投下をしていくビジネスを展開する。そのプロセスでリエンジニアリング、リストラクチャリングとかキャッシュフロー経営に努めていくというのが、実は非常に世界的な大企業の取らざるを得ない方針になってくる。そうすると、皆さん御存じのようにジャック・ウェルチはすばらしい経営者です。GEもすばらしい会社ですが、あそこから、あそこの利益の五〇%は既にGEキャピタルというノンバンクから来ているわけですね。ということは、GEが新しい産業を創造する、新しい事業分野を新たに開拓するという可能性はほとんどないです。
同じようにいえば、松下とか日立とかNECが全く不確実な分野に、しかも二十年も掛かるような、リターンを生むのに二十年も掛かるような分野に出ていくということは構造的にできにくくなっている。むしろ、事業分野を絞り込んで、人を絞り込んで、キャッシュフローを高めて利益率を上げていくという方向に行きますから、もし日本経済が良くなるとどういうことが起こるかというと、雇用なき回復が起こると思います。経済が良くなるけれども雇用は生まれてこない。それを一体じゃどういう企業が雇用を作っていくのか。
その一つはサービス産業、これは大きいと思いますが、サービス産業だけではいずれ飽和するのは間違いないですから、今、田坂さんがおっしゃったような新しい産業を作らざるを得ない。新しい産業が今どういうところにいるかといいますと、次のページにありますように、技術が物すごく不確実でマーケットニーズもほとんど不確実なところにいる。
例えば、コンピューターでも技術的には三か月に一回変わってしまうとか、皆さん、先ほど田坂さんが最後に、あるいは高柳さんがおっしゃったように、IT、インターネット、非常に重要ですが、インターネットのスタンダードアイゼーションというんですか、標準化はまだ全然できていないんですね。我々、多分二十一世紀はインターネット家電を使うだろう。しかし、そのインターネット家電であるテレビの裏側が一体何につながっているんだ。光ファイバーなのか、あるいはデジタルで空から降ってくるのか、あるいはもう電線に直接つなぐのか、あるいはADSLが進化していって電話線の上でまだ行くのか、その技術すらも決まっていないんですね。
それから、マーケットニーズでも、一九九三年に産業構造審議会そのほか、通産省が立派なものを出しましたが、一九九三年の中でインターネットのイの字もないですね。ノーマークでした。もちろんその中にはコーヒーチェーン店も古本屋も、更に言えば千九百八十円のフリース屋さんも伸びる産業とは書いていなかった。でも、現実に伸びているのはスターバックスコーヒーであり、ブックオフという古本屋であり、ユニクロという洋服屋さんなんですね。
これは、ニーズというのはほとんど予測不可能である。人がどこへ行くのか、これを探り当てていく、あるいはテクノロジーも一体次に何が来るのか、これを探り当てるという努力は、技術がいいから伸びるんじゃないんですね。
皆さん御存じのように、私もマッキントッシュというのを使っていますが、多分マッキントッシュはウィンドウズの百万倍賢かったと思います。でも、デファクトを取ったのはウィンドウズなんですね。技術がいいからデファクトを取れるとは限らない。NHKのプロのカメラマンはほとんど皆さんベータを使っています。でも、実質的に標準を取ったのはVHSです。
市場を席巻する、あるいは国際競争力のある企業になるというのは、テクノロジーがいいからとは限らない。ということは、そこを何とかビジネスにしていくという力が必要なんですね。そのことを、言いたいことはこういうことなんです、事前に予測することはほとんど不可能である。
事前に予測することが不可能であるならば、次は何が必要なのか。ここが次に、六ページに書いてあるように、数を打つということが非常に重要なんです。要するに、たくさんのトライアル・アンド・エラーを重ねるということが新しい産業を掘り当てる唯一の道だというふうに理解していただくことが重要で、シリコンバレーというのは場所の名前ではなくて、不確実性の中で数を打つということをシステムにした、システムの名前だというのが私の長年の主張であります。
国会議員の皆さんが宝くじをお買いになるかどうかは知らないんですが、宝くじを買ったことがある方、おられますか。──おお、いいですね。じゃ、ついでにお聞きしたいんですが、この中で一億五千万円当たった方というのはおられますか。──これはどんな広いところでやってもそうなんですが、宝くじを買った方というのはたくさんおられるんですが、めったに三億円当たったという方に、僕は一度もまだお目に掛かっていませんから、本当に会わないんですね。
人はなぜこんな不確実な行為をするのか、これが非常に重要なポイントなんですが、あの宝くじが一本三百万円だったらば絶対にこういうことは起こらないんですね。あれが一本三百円であるということが非常に重要。同じ三百円であっても、当たりくじが、一等賞金が一万五千円でもこういうことは起こらないんですね。あれが一億五千万円あるいは三億円という一等賞金にしているから、この不確実な中でも試行錯誤が起こるわけです。
重要なポイントは次なんですが、いかにローエントリーリスク、リスクを物すごく低くしてあげてリターンを高くするかということを、そういうゲームを作ってやると参加者が物すごく増えると。
そのローエントリーリスクなんですが、ここでの問題は、日本の教育で一番間違っているのは、非常に早い段階からベンチャーキャピタルはリスクマネーだと教えることなんですね。
起業家にとってみれば、一番のリスクマネーは銀行融資です。銀行からお金を借りて返さなくていい人というのは非常に限られていますから、多くの我々一般ピープルは、銀行からお金を借りたら絶対に返さなければいけない。返せない場合は担保を取られ、抵当を取られ、まあ身ぐるみはがれる。先ほど言いましたように、非常に不確実性の高いところで事業を起こすときに、銀行融資というのはあり得ない選択なんですね、リスクが高過ぎて。ということは、間接金融はあり得ない。直接金融以外あり得ないということです。
その中でもベンチャーキャピタルというものが最もローリスク。要するに、日本のベンチャーキャピタルには個人保証を取ったりするのがいますが、基本的にはそのビジネスのアイデア、モデル、そして人、物、金、情報、すべてを注ぎ込んでそれを物にするというのがベンチャーキャピタルですから、基本的にはリターン、保証金とか担保は取らないと。そうすると、エントリーリスクは低いんですね。起業家にとってベンチャーキャピタルが付いたということは、非常にローリスクマネーをいただいたと。
もう一方で、簡便な公開市場。これが先ほど右の上にありましたナスダックという、とても透明性が高くて、流通量が多くて、上場基準が緩い。これは、上場基準が甘いということではなくて、緩いということは、前歴、要するに過去の経験を大きく問わないということなんですね。こういうしっかりした市場を作ってやると、例えばネットスケープのように千倍とか、そういうリターンが生まれることがあると。
私の後輩である三木谷くんも、一時、千二百倍という株価が付きましたが、千倍というのはどういうお金かといいますと、百万円投資すると十億円になるというお金です。これはもう想像のように、物すごく大きなリターンですね。
こういうものを作ってあげると参加者が増えると。問題は、この参加者の質で実は国の競争力が決まると。おれは勉強も嫌いだし、一発ベンチャーで当てるぞと言っているようなビットバレーお兄ちゃんたちが参加していると、実は日本の国の競争力がこの辺で決まると。
しかし、先ほど来出ているスタンフォードとかMITとかハーバードで、こいつはできると。例えばサン・マイクロシステムズのビル・ジョイという人は、二十四歳、大学院生、バークレーの大学院生のときに、ほとんどの同僚、先生、後輩がこの人はもうこのままバークレーのコンピューターサイエンスの教授になるんだと思い込んでいたぐらい優秀な人間が、一万ドルでサーバーを作るっておもしろいねと言って、このゲームに参加してくるんですね。そうすると、国の競争力はここで決まると。いかにこのゲームに競争力を増やしていくか、それが多分今話題になっている大学発のベンチャーをどうやって作るかということだと思います。
この取組がやっぱりアメリカは非常に早くて、次のページにありますように、一九四六年、アメリカ発の本格的なベンチャーキャピタル、アメリカン・リサーチ・アンド・ディベロプメントのラルフ・フランダースという人が、アメリカのビジネス、アメリカの雇用、アメリカの国民の繁栄は、自由な企業体制の下で新しい企業が続々と生まれてくることで保証されると。将来にわたって既存大企業の成長だけに依存することはできない。新しい力、エネルギー、才能を求める新しいアイデアのために、莫大な機関投資家資金の一部を投資するための仕組みを作らなければならないと。これは昭和二十一年、一九四六年という早い段階から、この種の仕組みを作らないとアメリカはあり得ないと。このアメリカという文字を日本に変えていただいても全く同じことが言える、これはもう明らかだと思うんですね。
先ほど言いましたように、ベンチャー支援の五つの前提というのは、まずお金がなければ話は始まりませんから、豊富な資金。
豊富な資金は一体何なのかといいますと、これは先ほど言いましたように機関投資家の一部なんですね。要するに、機関投資家資金というのは我々の年金。例えば、皆さんもそうですが、我々国家公務員あるいは地方公務員の全年金の残高、あるいは要するに運用している資金、ばらつきがありますけれども、大体四十兆ぐらいあるんですね。それに普通の民間企業の資金を合わせると、百五十兆とか二百兆ぐらい。そういうお金が実は日本の中にも機関投資家資金としてあるんですね。それの一〇%でも新しい産業に向かう仕組みを作ると、二十兆の規模が常に新しい企業、この試行錯誤に回るというシステムができると。
それをアメリカの場合は、一九七九年、八〇年のERISA法、エンプロイーズ・リタイアメント・インカム・セキュリティー・アクトの改正をして、それを自由にしたと。是非この辺の改正を、もう既に実は起こっているんですが、もっと大きな声で、年金基金あるいは機関投資家の資金を新しい産業に向けましょうと。そのためのいろんなインセンティブを国が作るというのは非常に重要だと思います。
ハイリターンも、一九八二年にナショナル・マーケット・システムというコンピューターを非常に整備してナスダック市場を良くしたために、物すごい量の資金量、しかも日本みたく百万円とかそんな単位ではなくて、一万円とか五千円から投資ができるような仕組みを作ったと。
同じように、リスク分散型組織であるベンチャーキャピタルの組織を整備して、二重課税を避けるような半ゾーン型の組合型のシステムを整備したと。ここには、いわゆるゼネラルパートナーであるベンチャーキャピタリストに物すごい大きなインセンティブを与えています。
同じように、そこに向かうためにはある種の優遇が必要ですから、優遇。まず、例えば今言ったリミテッドパートナーシップであるベンチャーキャピタルの出資組合には法人税を掛けないと。法人税を掛けない代わりに、キャピタルゲインが生じたときだけに税金を掛けますよという、二重課税を回避してそういう組織を作りやすくする。あるいは、先ほど田坂さんがおっしゃったように、非常に初期の危険なときにポケットマネーで一千万とか新しい産業を起こすために投資した人には、それが破綻した場合には所得控除をしてやるというエンジェル税制とかですね、これらが重要で。
五つ目はチャプターイレブン。チャプターイレブンは本当はベンチャーには余り必要ないんですが、基本的なことは先ほどの宝くじと同じで、全員が当たるわけがないと、失敗の方が多いという前提ですね。失敗をいかにうまく傷を少なくさせるか。日本の場合は、失敗、要するに倒産が物すごく重いために、倒産に至らないために非常に高利貸しに走ったり粉飾決済をしたり、いろんなことをやって傷を深めるんですね。チャプターイレブンは、早い段階で手を挙げさせて、ちょっと今の状況は難しいと、一回そこで損切りをして、その同じ人間がまた経営再建に当たれるとか、いろんな失敗を非常にポジティブにする法律をやったと。
もう一つ、今、日本でも話題になっていますが、大学、大学が非常に重要な役割を果たすと。これも一九八〇年のバーチ・バイとボブ・ドール、この二人の上院議員が、フェデラルで使っているお金、要するに連邦資金で研究したものに対してはそれを何とか市場に還元しようじゃないかと。出てきたアイデアが大学や研究所という非営利組織に特許権を持たせる、その特許を販売してもいい。それがTLO、テクノロジー・ライセンシング・オフィスだと思います。このことをシステム化したおかげで非常に大学の中でもビジネスに直結しようという雰囲気が出てきましたし、TLOもプロが育っています。
日本の場合は非常に問題なのは、いいアイデアを文部省とか経産省は時々持ってくるんですが、アイデアだけで人を付けないんですね。どういうことが起こるかというと、これをやりなさいと。それを研究者がやる。研究者がやると、研究者は本当は研究しなきゃいけないのに、研究の時間を割いてこういう書類を作ったりする。
そのために是非こういう、国の政策で一番重要なのは、大学支援の場合はいいアイデアに対してプロフェッショナルを付けていただくということが大事だと思います。それはアドミニストレーターの拡充です。例えば、ここにあります白川英樹氏、ノーベル化学賞学者ですが、彼は、日本の大学と欧米の大学、そんなに差はないと、研究レベルに。一番の差は何かというと、欧米の大学では大体一人に対して一人のアドミニストレーターあるいは補助者が付くと。日本の場合は八人の研究者に対して一人しか付かない。その非生産性ですね。要するに、効率の悪さがやっぱり研究者の研究レベルを下げている。
ですから、大学の中身を、先生たちの競争心を高めるのも重要ですが、システムを拡充していく。実はこれが雇用を生むと。要するに、教育産業に投資をするということは一番今重要なことです。
我が愛すべき文部科学省はすばらしいアイデアを思い付きまして、この四月から我々の初等教育の三割を削減するという、一体どこから出てきたかと思うぐらいすばらしいアイデアを言ってくれたんですが、今、日本が考えるべきことは、みんなが百点取れるように三割を削減するのではなくて、今の教育内容を要するに倍にしても、今までの労力の半分で子供たちが覚えられるイノベーションをどうやって作るかということなんですね。それは一学級に担任が一人なんてあり得ない。一学級に担任が七人とか十人付く。大学も先生に対して補助者が付く。要するに、教育の生産性を上げるということなんです。これは物すごい雇用を生むのでありまして、言いにくい話ですが、北海道とかだれも通らない道路を造るよりもはるかに重要な公共政策だと思います。
十ページは、これはベンチャーキャピタルのシミュレーションなんですが、要するに、ベンチャーキャピタルは、六年とか八年の間に十倍の価値あるいは二十倍の価値を生まない限りは投資はしないということなんですね。それが分かっていると、何が重要かというと、販拡期とか上場準備期、売上げが何十倍も立っていくときに一番必要な人材は経営者だということですね。
次のことに書いてありますように、シリコンバレーの創業者の七割は六年から八年後のIPOあるいは企業売却の時点で社長を辞めています。辞めるという理由は、自分はチーフサイエンティストになりまして、基本的にはプロのCEO、経営者が入ってくる。私の知っているテクノロジーベンチャーは社長が交代する確率は九二%、八%しか残らないんですね。なぜかといいますと、先ほど言いましたように、ベンチャー企業を支援するというのは、五年から十年の間にグローバルトップ、世界ランキング百に入る企業を作るということですから、百に入る企業を作るためには、それは大学の先生とかエンジニアが企業を経営できるわけがないわけですね、何万人規模の経営を作るわけですから。そうすると、それはプロだと。プロの経営者というのは二つの道から来る。一つは大企業からの人材流入であり、もう一つはビジネススクールの拡充であります。
最後に言いたいことは、今までお話を見て分かるように、アメリカの大体コアコンセプトが固まるのが八〇年代です。それが花開くのが九〇年代の半ばですから、十五年ぐらい掛かると。ということは、日本も今からこれに本気で取り組んで、多分、今から早くて五年後あるいは十年後に花が開くということですから、是非今から真剣な取り組みをすると。
もう一つは、今ばらばらと幾つものものがたくさん出ていますが、それを統合化するということが政策的には非常に重要だと思います。
たくさん出ているベンチャー支援策を中小企業育成あるいは雇用問題とは切り離して、五年から十年以内に国際的な企業を数十社生み出すというターゲットにすると。年金改革とか直接金融、これもすべてそのために必要な手段。あるいは上場・公開市場の整備もそのリターンを大きくするという意味だと。それから、大企業のリストラ、ワークシェアリングを支援するなんてもうとんでもない話だと。ワークシェアリングとかいう後向きな話じゃなくて、リストラ、リエンジニアリングをやって企業競争力を高めている企業にインセンティブがわくように。むしろ、リストラされた人間が、リストラをとどめるんではなくて、リストラされた人間にセーフティーネットを作ると。彼らが次のところに移転するような教育制度にお金を払う。あるいは大学発ベンチャーも、基本的には大学発ベンチャーをやって、それを最終的に大企業にしていく、そのための支援の一環だと。
こんなことを、点在している力をやっぱり一つのものにしていかないと、日本の第二次世界大戦のように戦線拡大して敗退するというパターンですから、幾つか新産業を作る、新企業を作るということに焦点を絞って、点在するものを一点に集中していくというような本格的な対応が必要だと思います。
もう一つ言えば、多分、ITはなくても人間は生きていけると思います。生きていけないのは、環境と食糧とそれからエネルギー。この三つの重点分野に是非資金を徹底的に投入して、そこからいろんなトライアル・アンド・エラーが出てくるということが重要だと思います。例えば、すばらしいアイデアだった地域振興券に日本国は七千七百億円使ったわけですが、あれだけのお金を新エネルギー開発あるいは環境開発に、例えば九大、筑波あるいは東大に集中的に資源配分をしていれば、多分日本の研究状況は変わったと思います。
同じように、今回非常に面白いと思ったのは、政府の役割の中で、直接のあれはないんですが、購買というのは非常に重要で、公用車をハイブリッドカーにする、このおかげで三百台が七千台になったと。七千台になりますと一車種当たりの単価が下がりますから、より普及すると。
これと同じように、例えば、小中学校は昼間しか使わないので、小中学校は光発電にすると。そういう国家プロジェクトをやって、そのうちの一定量を中小企業あるいはベンチャー企業から購買すると。これは三つのいいことがあると思います。全国の小中学校を改装するわけですから公共需要が発生します。これは景気回復に役立つと。二つ目は、太陽光パネルが大量発注されるので安くなりますので、民生利用が進む可能性がある。三つ目がもっと重要なんですが、多分、中国、インド、そういうところの人口過大国から大量の観察屋が来ると。日本型の新しいシステムはどういう形で運営されているのかと。この分野で実はデファクトを取っていくということが日本の新企業の、あるいは新産業育成の非常に重要なポイントだと思います。そういうところに我々の貴重な税金が向けられることを祈っております。
以上です。