中村芳夫の発言 (財政金融委員会)
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○参考人(中村芳夫君) 日本経済団体連合会の専務理事を務めております中村でございます。着席させていただき、失礼いたします。
連結納税制度を導入するための法人税法等の一部を改正する法律案を支持しまして、その早期成立を期待する立場から意見を申し述べさしていただきたいと思います。
初めに、連結納税制度の必要性につきまして、経団連の考えを御説明いたします。
経団連では、アメリカが一九六六年に本格的な連結納税制度を導入いたしましたのをきっかけに、その制度内容を子細に分析いたしまして、我が国にとりましても連結納税制度を導入することが望ましいと考えて、一九七〇年代早々より今に至るまで、数次にわたりまして具体的な提言を繰り返してまいりました。
しかし、我が国におきましては、グループ経営の重要性が本当に強く認識されるようになりましたのは、実はここ数年のことではないかと思います。
その直接のきっかけは、平成九年の独占禁止法改正によりまして、それまで長らく禁止されておりました純粋持ち株会社が解禁されたことでございます。これによりまして、単なる親会社、子会社の関係ではなく、企業グループ全体を戦略単位として経営を考えることが制度的にもできるようになりまして、日本企業にとって本格的なグループ経営の時代が開かれるようになりました。
その後、今に至るまで、株式交換・移転制度、会社分割制度の創設など相次ぐ商法の改正が実現しまして、企業会計制度におきましても、従来の単体企業中心から連結主体への転換が図られて、企業経営の在り方が、もはや個別企業によるものではなく、グループ全体としての効率性を追求する時代に入ったことが、企業規模の大小を問わず広く認識されるに至っております。
さらに、企業は、厳しい国際競争の中で生き延びていくために、その時々の経済環境や需要構造の変化に迅速に対応して、戦略的な分社化や経営統合によりグループを再編し、グループ全体の姿を柔軟に変えてその活力を高めていくことが必要になっております。
しかし、日本の法人税制は長らく個別企業をその課税単位とするものでありましたことが、グループを一体とした課税制度を持つ欧米企業との間で大きなハンディキャップとなっておりました。
確かに、税制におきましても、平成十一年度改正におきます株式交換・移転制度の創設に対応しました税制の整備や、昨年、平成十三年度改正におきます新しい合併、会社分割、現物出資などの税制の整備によりまして、企業組織再編成についての環境は整えられてまいりましたが、グループを一体として課税する仕組みであります連結納税制度がなければ、本格的なグループ経営への移行はかなわないものと考えております。
連結納税制度は、一つの企業の中で、事業部門によって事業を行う形態と分社化によって事業を進める形態との間で、税負担の中立を保つために不可欠な仕組みと考えております。
特に、グループ経営のメリットを生かして新規事業分野への展開を行ったり、既存事業の再構築を行うに際しまして、税制を組織形態に対して中立的なものとして事業組織形態選択の自由度を広げるためにも、是非とも必要なツールと考えております。
その意味で、連結納税制度は、単に法人税制の大改革ということのみならず、我が国の企業経営の在り方に新天地を開くものと言っても過言ではないと考えております。
経済構造改革の必要性が言われて久しいわけでありますけれども、構造改革を進める中で、国内における雇用を維持しまして経済を着実に回復軌道に戻していくためには、活力と創造性に優れ、厳しい国際競争の中でも積極的な事業展開をできる企業の存在が欠かすことができません。
そのためにも、連結納税制度を活用することによりまして、国際的に遜色のないグループ経営を築いていくことが期待されております。経団連がこの連結納税制度の導入を待望してやまなかった理由はここにございます。
次に、ただいま御審議いただいております法人税法等の一部を改正する法律案につきまして、この法律案の内容を基本的に支持する立場から何点かコメントをさせていただきたいと思います。非常に膨大な内容であり、まず、この場をかりまして、法案を作成されました財務省主税局の方々の御苦労に厚く御礼を申し述べたいと思います。
初めに、連結納税制度の導入に係る部分を全体として見れば、私どもが求めてまいりました連結納税制度の姿として支持できる内容であると思います。
子会社の範囲につきましては、少数株主の利益との調整の問題が生じますので、導入当初は、直接、間接にも一〇〇%となるというふうに考えております。
また、グループ内部での寄附金の扱いや中小法人の交際費の損金算入枠や同族会社の留保金課税の適用方法など、連結納税制度の採用によって不利になるとされている点につきましても、企業グループを一体とした課税の仕組みであるということから、やむを得ないものと考えております。
ただ、幾つかの点では私どもの求めるものとは異なる内容となっておりますが、それは、先ほどお話ありましたように、主として財源措置によるものだと考えております。
具体的には、子会社が連結納税制度に入る前に有しておりました繰越欠損金が否認されること、さらに、買収して一〇〇%子会社となる会社などにつきまして、その含み損益を時価で評価して課税した上で連結計算への加入を一年間制限することにつきましては、決して喜ばしい内容ではありません。
続いて、今回の法案審議の中で非常に大きくお取り上げいただいております、いわゆる連結付加税を始めとする連結納税制度導入に伴います財源措置についての考えを申し述べたいと思っております。
連結納税制度の本質は、第一に、企業グループの中で損益を通算して課税する仕組み、第二に、グループ内での取引につきましては譲渡損益を売手側で繰り延べる仕組みでございます。
前者は、今まで法人税では、個別企業の赤字を繰越欠損金として翌期以降の黒字と通算するのと、連結納税で同じ期にグループ内の黒字企業と通算するのとでは、中長期的にはその分の税収は変わらないはずであります。
また、後者につきましても、グループの外にその資産を売却されたり、グループの内部でも二回目の取引がなされれば最初の譲渡損益は課税されるということから、永久に課税がなされないわけではありません。
しかし、導入当初数年間は減収になるということが明らかでありまして、厳しい財政事情の中でこれを放置できないことは理解できるということから、経団連でも、この導入当初の減収につきましては真剣に対応すべく経済界内部のコンセンサスづくりに努めてまいりました。とりわけ、連結納税制度自体が広い意味での課税ベースの適正化であることから、その導入によります減収は、やはり法人税の課税ベースの拡大で補うことが必要であると考えております。
加えまして、連結納税制度を活用してメリットを受ける企業に対しましても、子会社の繰越欠損金を連結の中に持ち込めないようにしたり、あるいは、連結納税制度のメリットを受けんがために子会社を買収によって増やす場合につきましては、連結に入る前に含み損益の清算を求めるとの仕組みにつきましては、当面の間との限定付きのつもりではありますが、やむを得ないと考えております。
このように、経団連といたしましても、法人税の課税ベースの拡大あるいは連結納税制度の仕組みの中での財源対策を真剣に考えまして、我々が連結納税制度導入による減収額として想定いたしました六千億円弱につきましては、協力するということで経済界のコンセンサスをほぼ得ておりました。
しかし、財務省は、三千社余りのアンケート調査の回答から得られました数字を全法人レベルに敷衍いたしまして、さらに、今後、一〇〇%子会社の数は四割程度増えるという想定の下で減収額を八千億円程度と試算し、更なる財源策といたしまして、連結納税採用企業に対しまして法人税率を二%付加する、いわゆる付加税の導入を提案されました。
この付加税の導入は、連結ベースでの所得が大きい優良企業であればあるほど連結納税制度を活用しにくくするものでありまして、企業のグループ経営を支え、その活力を高めていくという連結納税制度導入そのものの趣旨に反するものでございます。
事実、大和総研が三月に公表いたしました調査では、主要企業の中で、せっかくの連結納税制度につきまして、本年度から適用を行おうとする企業、また前向きに検討するものも含めましても二割に達しておりません。また、使わないとする企業の九三%が付加税の存在を理由として挙げております。
経団連といたしましては、付加税につきましては容認し難いものであり、是非とも速やかに撤廃をしていただきたいと考えております。
しかしながら、付加税は、この連結納税制度導入と一体のものとしてただいま御審議中の法案になっておりますので、先ほど、今年度から連結納税制度適用を考えている企業は二割と申し上げましたけれども、逆に言えば、二割の企業が厳しい条件の中でも連結納税制度を今年度から活用できるということを求めておりますわけで、その中には日本経済や地域の雇用にとって極めて重要な企業も含まれております。したがいまして、連結納税制度を予定どおり今年度から活用できるものにしていただくことが企業活力再生のために最も大切な課題であり、是非とも、今回におきましてこの法案の成立をお願いしたいと思っております。
以上でございます。ありがとうございました。