正村公宏の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(正村公宏君) 構造改革という言葉については、私も理解しかねているところでございます。
いろいろな使われ方をしておりますし、十人十様に、百人百様に解釈があると思いますが、しかし、今までの日本の社会経済システム全体に問題があることは明らかでございますし、財政が病んでいることもこれは否定し難いところでございます。
行政の仕組みも状況に対応できなくなっていると。行政改革をおやりになって省庁再編をなさいましたけれども、国家公務員をこれから本当に必要とされている分野に再配分するということはおやりになっていないように思うんですね。通産省の延長でそのままいいのかどうか。
後発国型の成長を優先していた時代に作られた官庁の仕組みの中で、公務員の配分もそれで作られているわけですけれども、せっかく省庁再編をおやりになったならば、環境問題とか教育問題とかあるいは社会保障、社会福祉とか、そういうところの総合的な戦略を推進できるようにする。あるいはどうしても物事が産業保護的になってしまっていて、例えば先ごろのいわゆる狂牛病事件を見ましても、国民の生命の安全を優先するような規制をおやりになっていない。生産者の側を見ていらっしゃると。生産者が成り立つようにするということも重要ですけれども、生命の安全こそが第一であります。薬害問題もしかりであります。医薬品産業の育成にあるいは国際競争力に関心を持っている官庁がそのまま医薬品の安全審査をやるようなことでは駄目だということですね。
こういう、本当の意味の改革、国民の、私は規制緩和論に近いものを七〇年代から言ってきたんですけれども、規制緩和ではなくて規制改革なんです。金融自由化ではなくて金融の改革なんです。政府が監視しなきゃいけないんですね。そういうことの理解がしっかりでき上がっていないと。緩和ではないと、改革なんだと。生命の安全と国民生活の安定にかかわる分野については規制を強化しなきゃいけないということをしっかり踏まえないといけないというふうに考えるわけでありますので、何のための改革なのかということを考えないといけないと。もちろん、景気回復のための改革ではありません。需要不足が不況の直接の原因なわけですから、需要をどんどん縮こめるようなことをやったら、景気が底割れして構造改革どころではなくなります。不良債権は激増してしまいます。
そういう仕組みがよく分からないんです、政府の御説明を聞いていても。構造改革なくして景気回復なしとおっしゃるけれども、あるいは経済の安定成長なしとおっしゃる、どういうメカニズムが想定されてそういう主張をなさっているのかということがよく分かりませんので、是非そういう御議論を皆さん方になさっていただけると有り難いと思います。
ついでに一言申し上げますと、高コスト構造云々という議論に対して、私は根底から疑問は持っております。日本の賃金は高いとか日本の物価は高いとかという議論は一〇〇%誤っております。円が高過ぎるんです。
先ほど、先ごろ日経連から送られてきた資料をちょっと見ておりましたら、日本の賃金はアメリカの賃金より高いと書いてあるんですね。幾らで計算しているのかなと思って見ましたら、一ドル百二十円のレートでもって換算するとそうなるわけです。でも、私がちょっちょっと計算しましたら、一ドル百三十五円になったらパーになるんです。一ドル百四十円になったら日本の賃金は安くなるんです。為替レートが十円とか二十円とかの幅でもって大きく動くような時代に物価が高い安いという議論がそもそも間違っているんです。
日本の物価を下げなきゃならないと、規制緩和をやって価格破壊をやって日本の物価が一割下がったら実質所得が一割増えるからやりましょうという主張をなさった経済学者が数年前におられたんですけれども、私は仰天いたしました。物価が一割下がるというのは大デフレなんですよ。これは大デフレになりますよ、これをやったら。失業が増えますよと私はそのとき警告していたんですけれども、そのとおりになっているじゃないですか。
つまり、七〇年代、八〇年代の政策の誤りによって輸出競争力を付け過ぎちゃったために円が高くなり過ぎちゃって、単純に円レートで計算すると、日本の物価は国際比較すると高いんです。そのことを基準にして物価を下げろとか賃金下げろとかと言うのはおかしいんです。
ただし、私は賃上げが正当だと言うつもりはありません。賃上げは優先課題ではないんです。労働時間を短くするとか、生活環境を改善することが優先課題であって、もう賃金上げなくてもよろしいと、下げてもいいというふうに思っております。