田久保忠衛の発言 (安全保障委員会)

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○田久保参考人 おはようございます。お招きいただきまして、大変ありがとうございました。大変光栄に存じております。
 今委員長から、忌憚のない意見をということでございますので、四点にわたりまして、いろいろ申し上げてみたいと思うのでございます。
 先日、ある全国紙を見ておりましたら、数日前でございますけれども、ある著名な学者が、今回のイラク攻撃は強い国が弱い国をいじめるんだ、保安官がこの指たかれと号令をかけて、補佐官がみんな集まってたたくんだというようなとんちんかんな議論がございました。これはとんでもないことではないかなと思います。こういう意見を載せる新聞もどうかしておりますけれども、根本的な国際情勢の認識が間違っているのではないかと。
 去年、九・一一テロでございますけれども、これがブッシュ政権に与えた衝撃、並びに自由世界、民主主義を標榜する国家に与えた衝撃というものをこの人は考えていない。それからもう一つはサダム・フセインでございますけれども、サダム・フセインが湾岸戦争以後どれだけ国連決議に反してきたか。それから生物化学兵器、核は持っていないと思われるのでございますけれども、生物化学兵器、これがどれだけ危険な存在であったかということを完全に無視しているのではないかなというふうに思います。
 私が申し上げたいのは、この意義でございますけれども、アメリカを中心とした世界でございますが、フェーズ1、フェーズ1はアルカイーダ、これをたたいた。アフガニスタン戦争でこれは一段落したわけでございますが、残党をたたいている段階だ。これも大変私は困難な仕事だと思うのでございますけれども、局面はフェーズ2に入った。フェーズ2のスタートは、一月二十九日、ブッシュが年頭の一般教書で強調いたしました悪の枢軸でございます。その筆頭に来るのがイラク、次がイラン、三番目が北朝鮮ということで、その筆頭のイラクをたたき始めたんだと。こういう概念が、概念というか受け取り方が、日本の社会では甚だ乏しいのではないかなというふうに考えております。
 アメリカの決意でございますけれども、これは容易ならざる決意でございます。皆様先生方は御案内のとおりだと思いますけれども、ホームランド・セキュリティー・デパートメント、これはあっという間に上下両院を通りました。これは実にペンタゴン、復員省、それから三番目がこのホームランド・セキュリティー・デパートメントでありまして、十二省庁を網羅した十七万人の人員を擁する対テロの組織というか、大きな官庁機構でございます。これは一月一日からスタートするでしょう。日本の行政改革でございますか、この遅々と進まない様子を見ておりますと、私はすごい国だなと、舌を巻かざるを得ないというふうに思うのでございます。
 それから、これに伴いまして、いつどこからいかなる手段でだれに襲いかかってくるかわからない、この敵に対しまして、従来のアメリカの戦略、戦術はこれは意味をなさない。テロに関する限り、事前にかなりの動きを察知した場合は先制攻撃もあり得る、これはアメリカの建国以来の戦略、戦術の大転換でございます。
 こういうふうにアメリカの、超大国が大きく方針それから体制、これを転換して、これに世界全体が動いていこう、連れて動いていこうという、この意義がどうして一部の人にはわからないのかなということでございます。これが私がまず第一点で申し上げたかった点でございます。
 それから、第二点でございますけれども、アメリカ政府の考え方でございますね。あるいはアメリカ国内と言ってもいいと思います。
 アメリカ政府は、これまたわかり切ったことを申し上げるのでございますけれども、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ウォルフォビッツ国防副長官、こういったネオコンサーバティブ、新保守主義という人たちがいらっしゃる。これに対しまして、国務省でございますけれども、コリン・パウエル国務長官、我々にとって非常に親しいアーミテージ国務副長官、こういった方々が国際派と言われて、両方の意見が対立している。その真ん中にコンドリーザ・ライス女史が大統領補佐官、うまい調整を図りまして、一番上でブッシュ大統領が極めて適切なジャッジメントを下している、こういうことでございます。
 当初は、ネオコンサーバティブ、同盟国に別に相談しなくても単独でたたけるというような強硬論があったわけでございますけれども、これはどうもいかぬよということで上下両院の決議をとった。この決議をとりまして、ニューヨーク・タイムズとウォールストリート・ジャーナルが、ネオコンがウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズが国際派を代弁して、大激論が一カ月にわたって展開された。しかし、結局上下両院で決議が採択されたということでございます。これはコンドリーザ・ライスあるいはブッシュ大統領を中心とする、国内の与野党のコンセンサスを見事に取りつけたんだろうと思います。
 その後、日本では、国連決議がない以上ついていく必要はないさと、与党の大物が何人も言っておられましたけれども、国連決議、通っちゃったじゃないかということでございます。十五カ国、フランスが反対するよ、中国、ロシアは危ないよ、シリアは賛成するはずがないだろう、こういうふうに言っておられたのを私この耳で聞きましたけれども、十五カ国が全部賛成しちゃったんだ。十五対ゼロの国連決議というのは、そういうことをおっしゃった方々は今どういう感想をお漏らしになるか、私は伺ってみたいなと思うくらいでございます。
 こういうコンセンサスに基づいて、この間、プラハで開かれましたNATOの拡大委員会、東欧の七カ国が加盟したわけでございます。これが本当は目玉なんですけれども、ブッシュは、対イラク攻撃、これに対する賛成を取りつけた。それからロシアに行きまして、プーチンとの話し合いでも賛成を取りつけた、こういうことでございますね。
 したがいまして、ネオコンサーバティブが言っているような極端なことではなくて、比較的穏健な方法、実際の外交は大変高圧的だったようでございますけれども、こういう方法で、ひとまずルールにのっとって対イラク攻撃に踏み切らんとしている、これが私の認識でございます。
 こういうところに立ちまして、日本は何をすべきかということ、これは皆様先生方の御審議の対象だろうと思うのでございます。
 私、不満を申し上げますと、日本にできることは何か、できないことは何か。すべて私は役人の発想だと思います。これは今の特措法の枠内で、あるいは大きく言うと憲法の枠内で、あるいは予算の範囲内で、あるいは国民感情を考慮して、いずれも私はそれを軽視しろとは申しませんが、これは絞り込んでいくと、できることとできないこととはっきりしてくるわけでございます。
 お役所の、いかにも小ざかしげに、ここまではできます、できませんということで、アメリカにこれを要求を出す。アメリカはこれを不満とする。キャッチボールをやっているうちに、アメリカの圧力でついに向こうの言うとおりになる。この繰り返しがずっと戦後続いてきたんじゃないか。
 ブレジンスキーが言っているような、被従属国とは言いませんが、被保護国、ブレジンスキーが五年前に巨大な将棋盤という著書の中で、日本は、デファクト プロテクトリート オブ ザ ユナイテッドステーツ、アメリカの事実上の保護国だと。保護国というのは今世界に二カ国しかありませんで、これはモナコともう一つ、スペインとフランスの間にある小さな人口七万の国でございます。これ並みになってしまったというのは、外交防衛で確たる哲学がないからではないかなというふうに私は考えているわけでございます。
 私は、日米関係というのは最も重要な問題だ、これは大変重要な意義があるということを一貫して説いてきた人間でございますけれども、これは、日米関係だけでこの問題を取り扱うと、極めて小さなところに絞り込んでいって、事務的な結論以外に出ないであろうというふうに思います。したがいまして、イージス艦一隻出せないような現状が続いているのではないかなというのが私の考え方であります。
 次に私が申し上げたいのは、一番重要なことなのでございますけれども、アメリカとの同盟関係、これを抜きにして日本人として、あるいは日本の国家として来るべき二十一世紀、ずっと続いていくテロにどういうふうに対処していくのか。これは、あたかもテロリストたちは別の種類の人間で、アメリカだけを攻撃している、こういう国際社会からデタッチしたような考え方というのは、迫力を非常に弱めているのではないかと私は考えているわけでございます。
 私も月刊誌の論壇で時々論争しているわけでございますが、いわゆる保守派の間に親米、反米ということで今分かれている。反米の方々は、テロリストたちは悪い、さりとてアメリカはグローバリゼーションをやっている、あるいはユニラテラリズムでございますね、単独行動主義、これは悪いよ、したがって両方悪いんじゃないかい、こういう意見でございます。
 私は、これはとんでもない意見だと思う。特に国会の先生方、我々言論人は、自由社会、民主主義社会で生きているわけでございます。これは言論、集会、結社の自由、何よりもとうといものだと思います。この言論、集会、結社の自由は、こういうシステムは、この体制を否定しようという言論あるいは思想、これにまで寛容でございますね。しかし、これを行動に移したときに、民主主義を信ずる者は立ち上がらなきゃいけないんじゃないか。冗談じゃないぞ、ここで立ち上がらなければ民主主義というのは崩壊するわけでございます。今の時代というのは、そういうことになっている。
 これにアメリカが先頭を切って、このテロリストたちと闘おう、あるいはテロリストに大量破壊兵器を提供する、あるいは提供する可能性のある国との闘いに立ち上がった以上、我々は我々の信念で立ち上がるべきだ、これが第一でありまして、第二は、日米同盟を重視する、こういうところで日米間の協議をして細かいところを決めていく、これが順序ではないかなというふうに考えております。
 ちょうど十五分でございますので、これで私の意見開陳を終わらせていただきたいと思います。大変失礼いたしました。(拍手)

発言情報

speech_id: 115503815X00620021126_002

発言者: 田久保忠衛

speaker_id: 4757

日付: 2002-11-26

院: 衆議院

会議名: 安全保障委員会