畑中美樹の発言 (外務委員会)
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○畑中参考人 御紹介いただきました畑中でございます。
本日は、私の方では、イラクの石油の生産、開発の動向を国際石油情勢との関係でお話しさせていただきます。よろしくお願いいたします。
私は、主に四点、最近の石油価格の動向、イラクの石油生産停止時の影響、過去十年余りのイラクの石油生産量の推移、イラクの新規石油開発の動きについて御説明をさせていただきまして、最後に若干、我が国への影響あるいはインプリケーションについて述べたいと思います。
まず、最近の石油価格の動向でございますが、石油輸出国機構、OPECは、指標として、OPECの六カ国とメキシコの合計七カ国の代表的な原油で構成されますOPECバスケット価格というものを目標としてつくっておりまして、これが一バレル当たり二十二ドルから二十八ドルの範囲におさまることを目標としております。
お手元に配付をさせていただきました資料の一ページをごらんいただきますと、過去数年間のこのOPECバスケット価格の推移が出ております。
この動向を簡単に振り返ってみますと、一九九七年に十八・六八ドルでありましたものが、九八年には十二・二八ドルに低下し、その後、九九年十七・四七ドル、二〇〇〇年二十七・六〇ドル、二〇〇一年二十三・一二ドル、そして二〇〇二年は、これまでのところおおよそ二十四ドル弱と、年ごとに変動しております。ただし、二〇〇〇年以降は、需要の増加とOPEC自身による生産量の削減の結果、OPECの目標とする範囲におさまっております。
次に、二ページ目で、この一年のOPECバスケット価格の推移を見てみたいと思います。
昨年の十一月からことしの二月にかけまして、OPECバスケット価格は、おおよそ十七ドル台から十八ドル台で推移しておりました。それがその後、三月から六月までは、イスラエルとパレスチナ情勢の緊迫化もありまして上昇いたしまして、二十二ドルから二十五ドルの範囲での変動となりました。さらにその後は、イラクをめぐる情勢を背景としまして一段の上昇となりまして、七月、八月の二十五ドル台を経まして、九月、十月は二十七ドル台にまで上がりました。十一月になりますと、御承知のように、国連の安全保障理事会でのイラクに対する大量破壊兵器の査察を求める決議一四四一号が採択されたことを受けまして、若干下がっておりまして、二十四ドル台へとなっております。
しかし、査察の行方が判然としていないこともありまして、石油価格の先行きにも不透明感が増しているのが現状でございます。
次に、イラクの石油生産が停止した場合の影響についてお話をさせていただきたいと思います。
この十月から十二月の世界の石油の需給バランスというものを国際エネルギー機関、IEAの資料をもとに考えてみますと、お手元の資料ですと三ページになりますけれども、仮にOPECが十月と同様の生産を続けることができるとすれば、この第四・四半期、十—十二月にはプラス五十三万バレル・パー・デー、つまり一日当たり五十三万バレルの余剰となります。
その状況下で、仮にイラクの石油生産が停止した場合ですけれども、石油の需給バランスは、その右にありますように、一日当たり百九十二万バレルの不足となります。ただし、その場合でも、OPECは現在、一日当たり大体三百二十万バレル強ぐらいの余剰生産能力を持っておりますので、その六〇%を稼働させれば需給は均衡いたします。
同様に考えますと、来年の第一・四半期、一—三月はOPECが余剰生産能力の約四分の一ほどを稼働させれば需給は均衡いたしますし、さらに、来年の四—六月、第二・四半期は不需要期となりますので、イラクの生産が停止した状態でも、一日当たり七十万バレル弱の余剰となるというふうに予想されます。
したがいまして、仮にイラクの石油の生産が何らかの事情によって停止しましても、OPECが余剰生産能力を稼働させれば石油の不足にはならないということになります。
ただ、例外がございます。
資料の三の一番右にございますように、OPECの余剰生産能力のほぼ半分がサウジアラビアという国に集中しております。したがいまして、何らかの理由でサウジアラビアが余剰生産能力を活用できない事態があった場合には、時期にもよりますけれども、サウジアラビア以外の諸国が余剰生産能力を稼働させても不足分を充足できない、そういう事態はあり得るかと思います。
ただ、もっとも、その場合でも、三ページの下の方に付記してございますけれども、日米欧等のOECD諸国全体でことしの九月末時点で約十二億五千万バレルの政府備蓄がございますので、これを放出すれば、世界全体としては石油不足は回避できることになると思います。
次に、第三点でございますけれども、過去十年余りのイラクの石油生産量の推移について若干御説明させていただきます。
お手元の資料四ページになります。
イラクで現在のサダム・フセイン大統領が政権の座につきましたのが一九七九年でございますけれども、イラクの石油の生産量は、ちょうどその年が大体三百五十万バレル・パー・デー、一日当たり三百五十万バレルということでピークでございました。
その後は、八〇年九月から八八年八月までのイランとの約八年に及ぶ戦争、その後の九〇年八月の湾岸危機、そして九一年一月から三月までの湾岸戦争、さらにそれ以降今日まで続く国連の経済制裁によりまして、生産量は大きく上下変動してきました。
ただし、過去三年ほどは一日当たり約二百五十万バレルの生産量となっています。そうはいいましても、この間、石油関連設備の老朽化がありますものですから、生産能力は次第に落ちてきております。なお、ことしにつきましては、これまでのところ一日当たり約二百三十万バレルの生産量にとどまっております。
第四点として、イラクの新規の石油開発の動きについて御説明をさせていただきたいと思います。
お手元の資料で五ページ目から七ページ目がその資料になりますけれども、イラクの現在の石油資源の確認埋蔵量ですが、これは約一千百二十億バレルと、サウジアラビアに次ぎまして世界第二位でございます。このほかに、さらに潜在埋蔵量ということで二千二百億バレルがあると言われております。
このように、イラクにつきましては、石油の資源埋蔵量は大きいのですけれども、これまで外国企業による大規模な開発は行われてまいりませんでした。このため、イラクには現在、約七十四もの発見された油田があるのですけれども、この中で本格的に生産に移行しているのはわずか十五油田にすぎません。
資料七ページにございますように、一番上でございますが、確認埋蔵量が百八十億バレルと見られる、大変大規模なウエスト・クルナ、さらに、それを上回るような規模があると言われておるマジュヌーンその他、未開発の巨大油田がメジロ押しの状況でございます。
この中で一番目の、今申し上げましたウエスト・クルナの開発は、ルクオイルというロシアの企業を初めとするロシア勢と契約が既に行われておりますし、その下のマジュヌーンですとか、あるいは、いま少し下に行きますと、ナハル・ウマルというのがございますが、このあたりはフランスのトタール・フィナ・エルフという会社が押さえております。このほか、中国勢ですとかマレーシア勢などもイラクとの交渉を行ってきております。
これらの諸国の中で最大手は、申すまでもなくロシアとフランスでございます。両国は、イラクに対しまして、石油の利権のみならず、過去の武器輸出に関連した巨額の債権も保有しております。未回収代金は、ロシアが、これは判然としませんが、大体七十から九十億ドルぐらい、フランスが約四十五億ドルぐらいではないかと言われております。
各国は一様に、こうした石油の権益ですとか債権の今後の行方を懸念しているところでございます。
最後に、我が国への影響、インプリケーションということでございますけれども、振り返ってみますと、九一年一月に始まりました湾岸戦争のときですが、開戦と同時に石油価格は低下をいたしまして、しかも、その後の数週間では、結局、約五〇%下落いたしました。
今回についてでございますが、先行きどうなるかわかりませんけれども、中東の経済・石油専門誌は、仮に軍事攻撃に至ったとしても油価については湾岸戦争時と同様の事態が再び起きるというふうに見ております。また、ワシントンにございます石油の専門会社も、来年、二〇〇三年には、石油価格については下方、つまり下がる方への圧力が働くというふうに見ております。
さらに、このワシントンの石油専門の企業は、今後数年間という期間で見ますと、イラクの輸出量が最低でも今より一日当たり百万バレル増加しますし、仮に安定した親西側の政権がイラクに樹立されるとすれば、イラクの石油生産量は、現在二百三十とか二百五十万バレル・パー・デーなんですけれども、これが約倍増の一日当たり五百万バレル超へと著しく増加するというふうに分析しておりまして、いずれにしましても、今後数年間で見た場合には石油価格は下落する可能性が高いというふうに予測しております。
なお、第一次石油危機が石油武器の発動によって引き起こされたということで、アラブの産油国が再び石油を武器として使用するのではないかという懸念の声も聞かれますけれども、この秋ロンドンを訪問したベネズエラのチャベス大統領は、石油というのが民生用、特に暖房、発電、運輸等に使われている、そういう戦略的資源であるということにかんがみて、OPECとしてこれを政治的武器として使用すべきではないという考えをはっきりと述べております。
また、むしろ、サウジアラビアを初めとします湾岸の産油国は、不測の事態に備える意味で、この秋に増産をしまして、ひそかに備蓄を行っているような状況でございます。
したがいまして、我が国としましては、我が国に石油備蓄が十分にあることを周知徹底することで国民の不安をなくするとともに、不測の事態に備えまして、石油不足の発生を未然に防ぐための備蓄の放出体制の点検を改めて行っていくことが肝要ではないかと思います。
以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)