立山良司の発言 (外務委員会)

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○立山参考人 立山でございます。
 私は、中東・イラク情勢をこの限られた時間ですべて概説するというよりは、むしろ、政策的な観点を含めた日本の課題について、四点、お話をいたしたいと思います。
 一つは、イラク問題に対する国際的な協調体制を維持することの重要性、二番目は、もし対イラク攻撃が行われた場合の日本の対応について考えるべき基本的な課題、三番目は中東和平問題への対処、四番目は、やや中長期的な視点を含めたユーラシア大陸における地域的な安全保障体制の構築への取り組みでございます。
 まず最初に、イラク問題に対します国際的な協調体制の維持という点でございますけれども、現在行われているイラクでの査察は、御承知のとおり、十一月八日に成立いたしました国連安全保障理事会決議千四百四十一号に基づいております。この決議は、シリアを含む十五カ国の満場一致で採択されたものであり、大量破壊兵器の保有疑惑に関する明確で一致したメッセージをイラクや世界に伝えるものとなったわけでございます。このような国際的な協調体制の確立は、イラクの大量破壊兵器保有問題に対する脅威認識を国際社会が共有しているということを示すものであり、さらに、査察を含む国際社会の対処が国際的な合意に基づくものであるとの確固とした正当性を与えるものになっております。
 加えて、このイラク問題の本質の一つは、我が国にとっても非常に重要な問題であります大量破壊兵器やミサイル技術の拡散という問題にどう対処するかという点にあり、この問題に対する国際社会の統一的な取り組みを示すものとなっております。
 もちろん、決議に盛り込まれたイラクの「さらなる重大な違反」があった場合にどのように対応するかについては立場が異なっており、米国は、場合によっては新たな決議なしにでもイラクに対する軍事作戦に踏み切るとの立場を明らかにしております。しかし、もし新しい決議がなしにアメリカが軍事行動に踏み切れば、現在形成されている国際的な協調体制に重大な亀裂が生じ、十分な正当性を欠いたまま恣意的に大国が戦争を始めたという議論が起き、戦後の秩序形成は大きく阻害される可能性があります。特に、アラブ・イスラム世界では反米感情がさらに高まり、テロの増加など国際社会の不安定化をむしろ増大する結果になりかねません。
 その意味で、我が国といたしましては、現時点におきましても、米国への働きかけを含め、安保理決議千四百四十一号の成立で示された国際的な協調体制をできるだけ維持するといった外交的な働きかけを最大限に行う必要があると考えております。
 二番目に、では実際にもしイラクに対する攻撃が行われた場合について意見を述べさせていただきます。
 もちろん、イラク攻撃が行われた場合、我が国の対応も、武力行使を容認する新しい安保理決議が成立するか否かによって大きく異なってまいります。
 ただ、いずれの場合におきましても、一たん戦争となれば現在のサダム・フセイン体制が崩壊することはほぼ確実であり、このことは、イラクの将来にはもちろん、ペルシャ湾の安全保障環境や中東和平問題、さらにイスラム世界に大きなインパクトをもたらします。それゆえ、新たな安保理決議があるなしにかかわらず、もしイラクに対する軍事行動ということになれば、我が国としては、これを座視したり、あるいは単に反対を唱えるだけでなく、より積極的な対応が求められると考えます。
 まず、新たな安保理決議に基づいて軍事行動が行われるとなれば、我が国としては法的に可能な最大限の共同行動をとるべきかと考えます。さきにも申し上げましたように、国際協調体制の重要性を強く主張する以上、国際的な合意に基づいた武力による脅威の除去という行動に対し、可能な限りの協力をすることは論理的な帰結であります。その意味で、もし現行法で不十分であるとするならば、特別立法も視野に入れる必要があるかと考えます。
 他方、新たな安保理決議なしで、もし軍事行動が行われた場合、我が国の対応は極めて難しいものになります。申し上げるまでもなく、米国への反発を強める中東・イスラム世界との関係をできるだけ良好に保つ一方で、対米関係も重視しなければなりません。その意味では、中東・イスラム世界との関係維持か対米協調かという二者択一ではなく、そのいずれも一定程度満足させる必要があるわけでございます。
 そのためには、まずできるだけ目立たない形や方法で米国に対する協力を推進する一方で、人道的な観点を軸に、イラクや周辺諸国に戦争がもたらす惨禍を少しでも緩和する取り組みを行うべきかと考えます。特に後者に関しましては、短期的にイラク国民に対するさまざまな救援活動を行う、あるいは周辺諸国における難民問題への対応などが考えられるかと思います。
 より留意しなければならない問題は、決議なしで対イラク攻撃がもし行われた場合であっても、現在形成されている国際的な協調体制をできる限り維持する必要があるということでございます。もちろん、国際社会の中で意見の食い違いや対立がある程度表面化することは回避できませんが、深刻な対立や足並みの乱れが起きれば、イラクを含む中東地域、さらに世界における戦後の秩序形成に大きな悪影響を及ぼします。それゆえ、日本としては、決議なしで戦争になった場合でありましても、国際的な協調体制をできるだけ維持するための外交的な働きかけを主要国や関係国に行う必要があるかと考えます。
 三番目に、中東和平プロセスに関して意見を申し上げます。
 中東和平プロセスは、イラク問題と並行してますます重大な事態となっており、二つの問題が再び結びつくことが強く懸念されております。加えて、中東和平問題の帰趨に関しましてはイスラム世界全体が注目しているところであります。それゆえ、中東和平プロセスへの取り組みが一層大きな意味を持っていることは申し上げるまでもございません。
 我が国は、およそ十年間にわたりパレスチナに対する多くの支援を行い、また、中東和平交渉でも一定の役割を果たしてまいりました。しかし、和平交渉が停滞し、暴力の連鎖が続く中で、我が国の取り組みはすっかり影を潜めております。もちろん、中東和平プロセスの推進に決定的な役割を果たし得るのは米国だけであり、EUや日本の役割は限られています。しかし、それにしても、中東和平プロセスにおける現在の日本の姿はますます目立たないものになっております。
 例えば、現在、イスラエルとパレスチナの双方は、相互の不信感から、非公式な接触すらほとんどできないような状態が続いております。それゆえ、日本といたしましては、双方の対話促進のための枠組みを提供するといった努力、さらに、中東和平問題に関して、現在、各国は特使による外交活動を活発に行っております。その意味でも、我が国は中東和平問題に専門的に取り組む特使を任命し、関係各国との協調を図る、そうしたことで我が国の姿が中東で少しでも目に見えるようなものにすることが必要かと考えます。
 最後に、中東から中央アジアにかけての地域的な安全保障システムのことについて意見を申し上げます。
 従来、中東と中央アジア及びコーカサス地域は別々の地域とされていました。しかし、ソ連の崩壊以降、時に大中東あるいはメガ中東、グレーターミドルイーストといった表現で呼ばれるように、この三つの地域は有機的な一つの広大な地域を形成しつつあります。アフガニスタンの問題は、中央アジアと中東、さらに南アジアが政治的、軍事的に密接に連動していることを示しました。今後のイラク問題の展開も、この大中東、メガ中東地域の一体化をさらに促進すると思われます。
 一方、このメガ中東、大中東において、米国の軍事的プレゼンスがますます増大しております。米国は、一九八〇年代まではペルシャ湾における軍事的なプレゼンスをほとんど有しておりませんでしたが、湾岸戦争を契機に、現在見られるような軍事的プレゼンスを確立いたしました。また、昨年の同時多発テロ事件以降のいわゆるテロとの闘いの中で、米国は中央アジアやコーカサス地域にも米軍を派遣し、軍事的なプレゼンスを確保しつつあります。さらに、イラク情勢の今後の展開の中で、ペルシャ湾から中央アジアにかけての米国の軍事的なプレゼンスはますます増大するものと考えられます。
 こうした米国のユーラシア大陸中央部への進出は、米国とロシア、米国と中国との関係にも極めて深くかかわるものであり、日本にとっても重大な関心を持たざるを得ません。こうした視点を踏まえまして、やや中長期的な課題ではありますが、我が国としては幾つかの視点を設定しておく必要があるかと思います。
 特に、この地域は地域紛争やテロが多発しており、かつ核保有国ないし保有を疑われている国が集中しているにもかかわらず、地域的な安全保障を協議する議論の場はほとんどございません。もちろん、これだけ広大な地域であり、諸問題が錯綜している中で、地域的な安全保障の協議システムを構築するための議論を進めることは容易なことではございません。しかし、ユーラシア大陸の中央部を核とするメガ中東、大中東の安定は我が国にとって非常に重要な課題でございます。イラク問題、中東和平問題への対応と並んで、中長期的な視点からメガ中東地域における地域的な安全保障の協議体制の構築の試みに我が国が先鞭をつける必要があるかと考えます。
 以上で私の意見を終わらせていただきます。(拍手)

発言情報

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発言者: 立山良司

speaker_id: 12027

日付: 2002-12-06

院: 衆議院

会議名: 外務委員会