金子哲夫の発言 (憲法調査会)
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○金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
私は、これまでの論議を含めながら、憲法調査会の今後の調査活動に関しながら、意見を述べたいと思います。
私は、これまでも憲法調査会の中で、本調査会は、憲法の理念がどのように国民の中に定着し、生かされているのか、また憲法と現実の乖離があるとしたら、なぜ乖離が起こったのかを調査すべきであるということを述べてまいりましたけれども、その活動を今後も強めるべきだと考えております。
一、二、その点に関して指摘をしたいと思います。
本調査会でも、憲法でうたわれている基本的人権の尊重は重要な課題であると指摘をされており、共通の認識になっていると思います。しかし、残念ながら、現実の状況は憲法で保障された基本的人権が余りにも損なわれていると考えております。
御承知のように、近年、三万人を超える国民がみずからの命を絶つという自殺者が出ています。そして、その多くがリストラによる失業した労働者や、不況のあらしによって倒産に追い込まれた中小企業の経営者などであります。極めて深刻な事態と言わなければなりません。
憲法は、第二十五条で、生存権及び国民の社会的進歩、向上に努める国の義務を定め、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とし、さらに「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」としています。つまり、憲法二十五条を見る限り、この条文が生かされた政治が行われておれば、少なくとも経済的理由によって自殺をするような事態はあってはならないということになると思うわけであります。
また、第二十七条では「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」としていますが、現状はどうでしょうか。完全失業率は政府の統計でも五・五%、完全失業者は三百六十五万人を超えると言われております。現実には二けた台の失業率とも言われております。失業者に対する雇用保険制度でも、雇用保険の給付期間が過ぎても再就職先が見つからないという人たちが多くなっております。その多くが世帯主だということも深刻であります。これでは、政治が勤労の権利を保障しているということにはなりません。
さらに、第二十八条では「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」としていますが、公務員労働者にこれらの権利が長年にわたって奪われたままであることは御承知のとおりであります。
この問題では、今進められている公務員制度改革でも大きな議論となっているところですが、去る十一月にILO結社の自由委員会は第三百二十九次報告を行い、消防職員の団結権の保障、国家の運営に直接関与しない公務員に、結社の自由の原則にのっとって団体交渉権とスト権を与えることなどの勧告を行っております。
これに対して、総務省は、「未だ実施途上である公務員制度改革の具体的内容を決めることは、純粋に国内問題であり、先に閣議決定した公務員の労働基本権制約を維持するとの政府の方針に対しこれを再考すべきとしたことについては、不適切なものであると考えている。」と、極めて許されざる態度を表明しています。
例えば、消防職員の団結権は、先進国はもとより、日本を除くほとんどすべての国が認めているものであります。ですから、この問題は、さきに述べました憲法二十八条のみならず、憲法第九十八条の二項で、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」という内容にも違反するものと言わざるを得ません。
こうした憲法と現実の乖離の問題について、なぜそのようなことが起き、また、どう現実を憲法の理念に近づけるべきかを今後さらに調査することが本調査会の任務であるということを改めて強調して述べ、私の発言を終わります。