小柴昌俊の発言 (経済産業委員会)
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○参考人(小柴昌俊君) 私、この会に呼ばれて大変光栄に存じております。ただ、気になりますのは、ほかの二人の参考人の方々はこの法案の内容にいろいろと詳しい御意見をお持ちだと思われますけれども、私、実はここにある内容に果たして関連のある意見を述べられるかどうか、大変自分で心もとなく思っておる次第でございます。
といいますのは、私、ほとんど全生涯にわたって特許とかそういうこととは全然関係のない仕事をしてまいりましたもので、余り考えたことがございません。ただ、この渡していただいた文献をちらちらと拝見しまして、少し感じたことを述べさせていただきます。それで、もし何か後で御質問がございましたらお答えできるだけのことをしたいと思います。
まず申し上げたいことは、ここでまず冒頭に書かれてある日本の経済の停滞ということでございますけれども、私の素人考えかもしれませんけれども、数年前、もう十年ぐらい前になりますか、日本でMBAでしたか、そういう経営学修士というのが非常にもてはやされて、それでアメリカでももちろんそうだったわけですけれども、その人たちの願いはやはり自分が責任者になった企業の業績を任期中に高めて、そしてその利益率の増大で自分も十分な収入を得るというようなことで、一時的にはブームになるんですけれども、どんなことでも同じだと思いますけれども、二、三年先にどうなるかという見通しと、それが終わった後で十年先、二十年先にどういうふうになるだろうかという見通しとは違う場合が多々あると思うんです。その点をはっきりと認識していただけば、日本の企業が十年先、二十年先というのを見据えてさてどうするかということを考えていただくことが大事ではないかと私は思います。
その理由は、すぐ研究成果が産業的な利益とか特許に結び付くかどうかという種類の研究ももちろん大事ですけれども、私どものやっている基礎科学というのは、腰を据えて十年、二十年と努力を続けなくては結果が得られないというようなものでございます。そういうことをたゆみなく続けていくということが、その事の性質上企業からの応援を得られない分野としては、国家の支援というものがどうしても必要になる。
問題は、そういうふうにして得られた結果というのは、先ほども申し上げましたように、産業界の利益に直接結び付くものではなくて、ただ人類の共通な知的財産に何らかのプラスをしたという国民的な喜びといいますか、それだけで終わるものです。そういうものをどれだけ評価するかというのが、やはりその国の国民の文明の程度だと、そういうふうに私は理解しております。
話が少し横にずれていったのではないかと思いますので、元に戻そうと思うんですが、ここにも書いてありますとおり、日本の大学の特許の申請件数というのはアメリカの同じ程度の大学に比べて随分低いようです。これは一つには、私の考えでは、日本で特許を出すということは相当難しい面倒くさいことだという感覚が研究者や学生の間にあるんだと思います。それが事実かどうかは別として、そういう感じというのがあって、それを、何か大学の中に適当な部門を配置して、それで特許というものを取りやすい手助けをしてやるようなことをやってやると、目に見えて増えてくるんじゃないかと思います。
もう一つその点に関連して私が感じますことは、日本の大学は、国立大学特にそうですけれども、閉鎖的であったということを反省しなきゃならないと思います。というのは、例えば国立大学は教育公務員であるから日本国民でなくてはならないと。非常にもっともらしいようですけれども、大学がやっぱりフルに発展していくためには、国籍を問わずやはり立派な人を教員に迎え、大学院学生にもどんどん外国の優秀な人材をそろえていく、こういうことがどうしても必要だと思われます。そういう点で、少しずつ事情は改善されているとは思いますけれども、なお一層の努力をこの面で必要とするのではないかと考えております。
時間が与えられたのが十五分で、今十分になりました。そこで、私は一応ここで私の述べることを終わらせていただいて、もし御質問がありましたら、それにお答えしたいと思います。
どうもありがとうございました。