経済産業委員会

2002-11-26 参議院 全155発言

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会議録情報#0
平成十四年十一月二十六日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十六日
    辞任         補欠選任
     片山虎之助君     愛知 治郎君
     直嶋 正行君     辻  泰弘君
     緒方 靖夫君     畑野 君枝君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         田浦  直君
    理 事
                魚住 汎英君
                加納 時男君
                松田 岩夫君
                木俣 佳丈君
                平田 健二君
    委 員
                愛知 治郎君
                小林  温君
                近藤  剛君
                斉藤 滋宣君
                関谷 勝嗣君
                保坂 三蔵君
                辻  泰弘君
                直嶋 正行君
                藤原 正司君
                簗瀬  進君
                若林 秀樹君
                鶴岡  洋君
                松 あきら君
                西山登紀子君
                畑野 君枝君
                広野ただし君
   国務大臣
       経済産業大臣   平沼 赳夫君
   副大臣
       農林水産副大臣  太田 豊秋君
       経済産業副大臣  高市 早苗君
       経済産業副大臣  西川太一郎君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  中野  清君
       厚生労働大臣政
       務官       渡辺 具能君
       経済産業大臣政
       務官       桜田 義孝君
       経済産業大臣政
       務官       西川 公也君
       国土交通大臣政
       務官       高木 陽介君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        塩入 武三君
   政府参考人
       内閣官房内閣審
       議官       平井 敏文君
       文部科学大臣官
       房審議官     坂田 東一君
       文部科学省初等
       中等教育局長   矢野 重典君
       文部科学省高等
       教育局長     工藤 智規君
       文部科学省科学
       技術・学術政策
       局長       山元 孝二君
       文化庁次長    銭谷 眞美君
       経済産業大臣官
       房審議官     桑田  始君
       経済産業省産業
       技術環境局長   中村  薫君
       特許庁長官    太田信一郎君
       気象庁長官    山本 孝二君
   参考人
       東京大学名誉教
       授        小柴 昌俊君
       三菱電機株式会
       社代表取締役社
       長        野間口 有君
       弁護士
       弁理士
       知的財産戦略会
       議委員      松尾 和子君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○知的財産基本法案(内閣提出、衆議院送付)
○政府参考人の出席要求に関する件



    ─────────────
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田浦直#1
○委員長(田浦直君) ただいまから経済産業委員会を開会します。
 知的財産基本法案を議題とし、参考人の皆様から御意見を伺います。
 本日は、本案の審査のため、参考人として東京大学名誉教授小柴昌俊君、三菱電機株式会社代表取締役社長野間口有君及び弁護士・弁理士・知的財産戦略会議委員松尾和子君の三名の御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様には、御多忙中のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、参考人の方々の御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず小柴参考人にお願いをしたいと思います。小柴参考人。
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小柴昌俊#2
○参考人(小柴昌俊君) 私、この会に呼ばれて大変光栄に存じております。ただ、気になりますのは、ほかの二人の参考人の方々はこの法案の内容にいろいろと詳しい御意見をお持ちだと思われますけれども、私、実はここにある内容に果たして関連のある意見を述べられるかどうか、大変自分で心もとなく思っておる次第でございます。
 といいますのは、私、ほとんど全生涯にわたって特許とかそういうこととは全然関係のない仕事をしてまいりましたもので、余り考えたことがございません。ただ、この渡していただいた文献をちらちらと拝見しまして、少し感じたことを述べさせていただきます。それで、もし何か後で御質問がございましたらお答えできるだけのことをしたいと思います。
 まず申し上げたいことは、ここでまず冒頭に書かれてある日本の経済の停滞ということでございますけれども、私の素人考えかもしれませんけれども、数年前、もう十年ぐらい前になりますか、日本でMBAでしたか、そういう経営学修士というのが非常にもてはやされて、それでアメリカでももちろんそうだったわけですけれども、その人たちの願いはやはり自分が責任者になった企業の業績を任期中に高めて、そしてその利益率の増大で自分も十分な収入を得るというようなことで、一時的にはブームになるんですけれども、どんなことでも同じだと思いますけれども、二、三年先にどうなるかという見通しと、それが終わった後で十年先、二十年先にどういうふうになるだろうかという見通しとは違う場合が多々あると思うんです。その点をはっきりと認識していただけば、日本の企業が十年先、二十年先というのを見据えてさてどうするかということを考えていただくことが大事ではないかと私は思います。
 その理由は、すぐ研究成果が産業的な利益とか特許に結び付くかどうかという種類の研究ももちろん大事ですけれども、私どものやっている基礎科学というのは、腰を据えて十年、二十年と努力を続けなくては結果が得られないというようなものでございます。そういうことをたゆみなく続けていくということが、その事の性質上企業からの応援を得られない分野としては、国家の支援というものがどうしても必要になる。
 問題は、そういうふうにして得られた結果というのは、先ほども申し上げましたように、産業界の利益に直接結び付くものではなくて、ただ人類の共通な知的財産に何らかのプラスをしたという国民的な喜びといいますか、それだけで終わるものです。そういうものをどれだけ評価するかというのが、やはりその国の国民の文明の程度だと、そういうふうに私は理解しております。
 話が少し横にずれていったのではないかと思いますので、元に戻そうと思うんですが、ここにも書いてありますとおり、日本の大学の特許の申請件数というのはアメリカの同じ程度の大学に比べて随分低いようです。これは一つには、私の考えでは、日本で特許を出すということは相当難しい面倒くさいことだという感覚が研究者や学生の間にあるんだと思います。それが事実かどうかは別として、そういう感じというのがあって、それを、何か大学の中に適当な部門を配置して、それで特許というものを取りやすい手助けをしてやるようなことをやってやると、目に見えて増えてくるんじゃないかと思います。
 もう一つその点に関連して私が感じますことは、日本の大学は、国立大学特にそうですけれども、閉鎖的であったということを反省しなきゃならないと思います。というのは、例えば国立大学は教育公務員であるから日本国民でなくてはならないと。非常にもっともらしいようですけれども、大学がやっぱりフルに発展していくためには、国籍を問わずやはり立派な人を教員に迎え、大学院学生にもどんどん外国の優秀な人材をそろえていく、こういうことがどうしても必要だと思われます。そういう点で、少しずつ事情は改善されているとは思いますけれども、なお一層の努力をこの面で必要とするのではないかと考えております。
 時間が与えられたのが十五分で、今十分になりました。そこで、私は一応ここで私の述べることを終わらせていただいて、もし御質問がありましたら、それにお答えしたいと思います。
 どうもありがとうございました。
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田浦直#3
○委員長(田浦直君) どうもありがとうございました。
 次に、野間口参考人にお願いいたします。野間口参考人。
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野間口有#4
○参考人(野間口有君) 三菱電機の野間口でございます。座らせていただきます。
 私は、総合科学技術会議知財戦略専門委員会の委員として、今後の我が国における知財戦略の在り方につきまして意見を述べさせていただく立場にありましたけれども、本日は、国会の場において産業界の立場から意見を陳述させていただく機会を与えていただき、誠に光栄に存ずる次第でございます。
 それでは、本法案に関する意見を述べさせていただきたいと思います。
 このたびの国を挙げての知財立国への取組といいますのは、明治に特許制度が創設されて以来初めての画期的なことと私どもは考えております。現在、産業界は中国等の台頭に伴うメガコンペティションの一層の激化、IT不況の深刻化、世界同時的景気減速などによりまして、例を見ない厳しい生き残りの競争の局面に立たされております。こうした中で、企業は今その生き残りを懸けまして日々懸命の努力を行っているところでありますが、中長期的に見ますと、我が国産業の競争力を図っていくためには、世界に通用する、世界と戦える新技術を創造し、この知の創出という、それと蓄積でもって戦っていく必要があると認識しております。
 企業は、今や知的財産権を単なる無体財産権というのではなく重要な経営資源としてとらえ、知的財産戦略を経営戦略の柱の一つとして位置付けておりまして、知的財産権問題に非常に真剣に取り組んでいるところであります。こうした時期に本法案が国会の場において審議される運びとなりましたことは、産業界としては極めて適切かつ時宜を得たものと高く評価しております。本法案の一日も早い成立を期待しております。
 また、本法案では第四章におきまして、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策の集中的かつ計画的な推進のために内閣に知的財産権本部を置くことを規定し、本部長には内閣総理大臣をもって充てるということになっておりますが、これらの施策の推進に当たっては、国の組織としても内閣官房を始めとし、多くの省庁の協力が必須であると考えておりまして、かかる観点から総理自らが本部長として関係各省庁の総力を結集して対処していただくということは大いに評価できると考えておりますし、期待しております。
 さらに、第三章におきまして、本部が推進計画を作成し、その実施を推進するということになっておりますが、産業界といたしましては、本推進計画が競争力強化の観点から実のある形で立案され、本部の主導の下で強力に推進されることを期待しております。
 去る七月に決定、公表されました知的財産大綱によりますと、二〇〇五年度までの長きにわたって多くの課題に取り組むことになっておりますが、産業界としましても推進計画の策定に当たり、必要に応じ積極的に提言させていただく所存でございます。また、国、地方公共団体、大学等及び事業者間で連携を強化するとともに、推進母体である知的財産権本部の陣容を充実することが特に重要であると考えております。
 さて、先ほど述べましたように、国際競争が激化する中で、私ども企業は競争力確保のため事業の集中と選択を進め、世界で勝ち得る強い事業作りを志向しております。研究開発と知的財産戦略を柱にした経営戦略をそういった考えで推進しているところであります。そのような立場から、知的財産戦略上重要と考えております三点に関連しまして、本日は要望を及び意見を述べさせていただきたいと思います。
 第一は、知的財産創造へ向けての産学連携の強化でございます。小柴先生の方からもお話がございましたが、この産学連携の強化というのが大変重要と考えております。
 御高承のとおり、国際競争の変化に伴い、今、我が国の企業は苦戦を強いられておりまして、研究開発につきましても、集中と選択、取組の重点化を余儀なくされております。こうした背景から、技術革新の急速な進展をリードする基礎研究につきましては、企業が自前で行うことが資金的、人的にも困難となってきておりまして、大学等が基本特許につながる革新的ブレークスルーを担うことに対する期待は一段と高まってきております。
 また、応用技術分野におきましても、企業としましては産学連携を強化し、大学等の力をかりることが不可欠と考えております。この点に関連しまして、幾つか付け加えたいと思います。
 まず、大学における知的財産創造のための体制構築ということでございますが、日本の大学は従来、一般に産業の発展に資する知的財産の創造への関心が欧米と比較して低かったと考えております。大学において知的財産を創造する仕組みを早急に構築していただきたいと思います。
 現在、大学発の知的財産の産業界への移転促進を図るためのTLOの活動が開始されておりますが、知的財産の創造を促進するための取組も必要と考えております。この場合、企業の立場から見ますと、知的財産の創造から活用といいますのは一連の活動として密接に連携すべきものでありまして、大学における知的財産体制におきましても、知的財産の創造等の目的で現在設置が検討されている大学内の知的財産権本部とTLOの連携を是非とも強化していただく必要があると考えております。
 もう一つは、大学発知財権の産業界移転を円滑にする制度の構築でございます。移転を円滑にするためには、知的財産権の帰属の問題が重要であります。現在、国立大学等における発明の帰属は国帰属が主体となっておりまして、利用する際には、その都度時間の掛かる手続を踏んで国の許可を得る必要があります。産業界から見ますと、このことが権利の幅広い活用の障害となっていると考えられます。かかる観点から、今後、欧米と同様に大学又はTLOに帰属させるいわゆる機関帰属としていただき、移転の促進を図っていただきたいと思います。
 また、大学等における知的財産の創造を促進するためには、これも外国では一般的なことでありますが、海外から優秀な研究者を受け入れて一緒に研究を行う方向をもっと志向すべきと考えております。そのような場合、日本の研究者と一緒に海外の研究者も入って新しい知的財産権が生まれますが、それらの取扱いの仕組みも検討しておいた方が良いと思います。
 知的財産戦略上重要な第二のポイントは、先端技術分野における国際標準化と関連知財活動の強化であります。先端技術分野、特に、例えば情報通信分野等においては、国際標準などがビジネスと直結する場合が非常に多くなってきております。国際標準を支える知的財産権が企業の競争力の重要な要素となってきております。
 例を申しますと、携帯電話では欧州、アジア諸国において欧州メーカー主導のGSM方式が標準に採用されていることから、日本の技術及び知的財産権を生かせず、日本製がビジネス上劣勢に立たされているのが現状であります。また、次世代であります第三世代の国際標準におきましても、基本特許の多くを欧米企業が取得しておりまして、今後第三世代製品の普及が始まりますとロイヤルティー支出の増大が見込まれ、携帯電話事業そのものに少なからぬ影響があると考えております。
 ところで、欧米の国際標準化活動を見てみますと、米国の場合、標準化機関に当たるNISTが商務省等の政府機関と緊密に連携し、財政支援も受けて、産業界を全面的にバックアップする標準化活動を展開しており、また欧州の場合も、学界の積極的な参画と関係国政府の支援を受けて標準化活動を行っております。
 一方、我が国におきましては、企業の自主的活動が主であり、政府の関与、支援と学界の参画も欧米に比べて弱く、日本発の技術の国際標準化活動において後れを取る傾向にあります。このため、優秀な技術であっても、国際標準にして世界に向けて普及させることが難しく、知的財産戦略において日本が劣勢に立たされることが多いわけでございます。このような状況にかんがみ、日本発技術の国際標準の取得を促進するため、民間企業及び大学が国内外の標準化作業の場で強く連携し、これに国が積極的に関与するということが望ましいと考えております。
 また、国際標準、特にデファクトスタンダードに関連した知的財産権の運用に関し、動画圧縮技術であるMPEG、デジタルビデオ記録に関するDVD、あるいは第三世代携帯電話等にかかわる国際的な特許プール機構が設立され、又はされようとしておりますが、これは技術の標準化による利益と特許独占による弊害の調和を図る大変適切な仕組みではないかと考えておりまして、このような取組に対しても、民間企業が努力することは当たり前でありますが、国の理解と支援も大変重要と考えております。
 知的財産戦略上重要な点の第三を申し上げます。海外における知的財産の創造、保護及び活用の強化でございます。
 企業にとって知的財産の創造、保護及び活用を図るためには、グローバルに権利を取得することが不可欠であります。このため企業は、欧米はもちろんのこと、事業と密接な関係にある多数の国に特許を出願することを余儀なくされておりますが、このための費用、手間は膨大なものとなっております。当社の場合、海外での特許取得をする費用は全特許経費の約三分の二を占めるに至っております。
 また、日米欧等の各国特許庁では、年々増加する各国企業からの海外出願の増加に伴う審査滞貨の急増が審査処理を圧迫し、適時適切な権利の発生を妨げ、知的財産の創造を損なう状況にあります。かかる状況にかんがみ、海外出願のコストの削減及び各国における権利化の促進のために知的財産制度の国際調和に向けた更なる努力をお願いしたいと思います。各国制度の統一が究極の理想の姿でありますが、これには時間が掛かると思いますので、当面は主要先進国間での審査結果の積極的活用など、早期審査に資する取組を是非お願いしたいと思います。
 また、今日、中国などのアジア諸国は世界においても数少ない成長市場であります。携帯電話、自動車それから家庭電器品など、市場としての成長性は極めて高く、我が国企業の将来の成長もここでの活躍に左右されると言っても過言ではありません。しかしながら、これらの国の知的財産制度は、法制度の形式面では整いつつもありますが、全体としてはなお多くの問題を抱えております。このような知的財産の保護に関する制度の整備が十分に行われていない国では、我が国企業による現地での事業を知的財産で保護することができず、大きな不利益を被る結果となります。
 したがって、我が国の企業がこれらの国において迅速かつ確実に知的財産を取得し、またその権利を行使できるよう、例えば特許庁での審査体制の支援協力、現地審査官の我が国特許庁での研修等必要な措置を、現在もやっていただいておりますが、更に積極的に講じていただきたいと考えます。
 さらに、例えば中国等におきましては、今日模倣品問題が大変大きな問題となっておりまして、これらにつきまして私どもは日々努力しております。この対策を努力しておりますが、国としても関係当事国と積極的な交渉を行うなど適切な対応をお願いしたいと考えます。
 以上、産業界の立場から本法案に対し意見を陳述させていただきました。重ねて、本法案の一日も早い成立をお願い申し上げます。
 以上で終わります。
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田浦直#5
○委員長(田浦直君) ありがとうございました。
 次に、松尾参考人にお願いします。松尾参考人。
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松尾和子#6
○参考人(松尾和子君) 弁護士・弁理士の松尾和子でございます。知的財産戦略会議の委員も務めましたので、そのときの議論も踏まえまして意見を述べさせていただきます。
 お手元にレジュメを配らせていただきましたけれども、この知的財産戦略会議は、この三月、春に設置されたわけです。七月には知的財産戦略大綱が公表され、十一月には、はや知的財産基本法案が国会で審議されることになりまして、停滞気味の日本社会においては異例の速さだろうと思っております。しかし、このような迅速な対応というのは知的財産の特質、我が国の国際競争力が低下している現状、それからこれから山積みされた解決課題を考えますと、当然に必要なことであるというふうに思います。
 基本法の第二条を見ますと、知的財産あるいは知的財産権とはという定義がございます。広く技術、デザイン、ブランドあるいは音楽、映像などのコンテンツ、ノウハウ等、付加価値の高い無形財産、情報というものを包含しております。戦略大綱は、このような無体財産を経済社会の再活性化の基礎に据えることを目的としているわけです。このような目的にふさわしい知的財産創造の環境整備また知的財産活用のための経済社会基盤、またこの作られた知的財産を保護し、この権利を実現するためには、それに相応した関連法規の整備、司法制度の構造改革が必要であると思います。このような新境地を築くような改革というのは、国家として集中的に、計画的に、総合的に実施していただく必要がありますので、是非この知的財産基本法の早期成立をお願いしたいと思います。
 また、既にこの戦略大綱に具体的な施策、改革の項目、期限が付けられておりますので、これに向けた審議や検討が進められております。したがいまして、それとの関係におきましても、この知的財産基本法の早期成立が必要であろうと思います。
 基本法の第一章は、今言いましたような目的とか基本的な理念、それから国、大学、産業界の責任及びその連携の必要性というのを説いております。第二章に行きまして、基本的施策になります。研究開発とか産業界との関係というのは、今までお二人の参考人が述べられると思っておりましたらやはり述べていただきましたので、私はこの中の法的措置に関係するものにつきまして、私自身、戦略大綱の下で産構審が行っておりますいろいろな今までの検討事項につきまして御説明いたしまして、意見を述べたいと思います。
 産構審の下に紛争処理小委員会、特許制度小委員会、不正競争小委員会というのがございます。私、いずれもこれに出ておりますので、そのポイントを次のところに、二ページに述べておきました。問題は、まず基本法の十四条関係ですが、ここでは特許等知的財産権付与の迅速化ということで、まず迅速的確な審査制度が問題になります。
 今、野間口参考人が言われましたように、これは国際的な状況ですが、出願・審査請求というのが増加しております。特許の内容は技術の進歩に伴い複雑かつ高度化しておりますので、審査にも時間が掛かります。ということで、ここにおきましたように、出願してから待つ時間、審査まで待つ時間でも二十二か月掛かっているというような状況です。また、国際出願がなされますと、その調査や国際予備審査のために特許庁で作業が必要になります。ということで、迅速かつ国際的に調和の取れた的確な審査制度というのが要求されると思います。そのために、どうしても人員の増加というのを考えざるを得ないかと思います。
 また、先行技術文献調査につきましては、どうやって外注を拡大し民間の知的財産の調査機関を育てるか、それをどう利用するかという問題もございます。審査基準の国際的調和というのもあります。また、日米、三極等の国際機関との調査協力の推進も必要です。審査結果を共同で利用するということも必要です。そのほか、今まで行えなかった官じゃなくて官民の意思疎通によって審査を有効に促進するということも必要であり、法制面、それから運用面の双方からの改革が要求されると思います。
 出願人の方も、この基本法の十四条の二に書いてありますように、発明の内容を高める、それから出願を厳選する、あるいは現在ある早期審査制度を利用する等、審査に協力する必要があろうかと思います。
 また現在、これらと関係しまして、出願料や登録料の値下げ、審査請求の値上げというようなことが議論されております。発明は、先願主義の日本の下では早く出願されなければなりませんけれども、出願だけではなく権利を取らなければならないと思います。その出願から権利取得までの全体の流れの中で、この知的財産立国にふさわしいような特許行政というものを根本的に考え直す必要があろうかと思います。
 ちょっと飛びますが、この十八条に、「新分野における知的財産の保護等」というのが基本法の十八条にあります。これに関連しまして、現在、医療行為と特許権等の検討もなされております。
 それから、これらが特許制度小委員会で検討していることですが、紛争処理委員会の方では、特許が、権利付与の過程、あるいは権利付与後の権利の有効性の早期確立というところで、審判制度を議論しております。その結果、例えば異議申立てと無効審判制度を一本化するとか、新無効審判制度をどういう構造にするかとか、裁判所に対して特許庁の審決の取消し訴訟がありますが、それとの関係をどうやって行い、裁判所と特許庁の連携をどのようにして促進していくかということも検討されております。
 ここでは、訂正審判制度の廃止、これを民間の仲裁センター、ADRに移行するようなことも議論されておりますが、ADRにつきましては、基本法、知的戦略大綱ですね、そこにも規定されておりますけれども、なかなかADRに対する一般の認識といいますか、あるいは産業界の要望といいますか、そういうものがまだつかみ切れない、あるいは形成され切っていないということで、なかなかこういうADRの活用というのは難しい状況ではないかと思いますので、こういうものは一般に裁判とADRの関係として検討する必要があろうかと思います。
 また、戻りますけれども、特許制度小委員会の方では職務発明についても検討することになっております。しかし、これにつきましては、現在、アンケート調査その他、外国法制及びその運用、問題点というのを調査中なので、こういう資料が集まりましてから早急に制度の確立のために検討を始めることになり、その必要があろうと思います。
 次に、基本法の十五条ですが、ここでは「訴訟手続の充実及び迅速化等」というのが問題になっております。
 知的財産訴訟の迅速化につきましては、早くから産業界からも法曹からも要求がありました。それで、裁判官や調査官の増員等行われてきましたが、現在、東京、大阪の裁判所で見る限り、一般の民事訴訟よりも下回る審査の期間というのを示しております。司法制度改革推進本部では、一般の訴訟事件について、裁判所、訴訟当事者に二年以内に第一審判決をということを努力義務として課すると言っておりますが、知的財産訴訟につきましては、東京では十五か月、大阪地裁でも十八・五か月というように努力の結果が見られております。
 しかし、この知的財産訴訟につきましては、迅速だけではなくて充実と信頼性の向上というのがもちろん必要となります。これにつきましては、技術専門家の関与というのをどういう形で認めていくか、それから訴訟の管轄の集中化ということが問題になろうと思います。また、証拠収集の充実化、拡大というのも重要なポイントでございますけれども、これにつきましては、現在、憲法の下に裁判公開の原則というのがございます。それとの関係で、どういう範囲でどのようにして非公開のインカメラ手続を認め、一部は認められておりますが、あるいはこれを今以上に有効にして、どのようにして相手方から証拠の提出の促進をするかということが議論中であります。これにつきましては、新しく設けられました司法制度改革推進本部知的財産訴訟検討会が担当しております。
 日弁連でも、八月になりましてようやく知的財産政策推進本部というものを設置しまして、こういうところに代表を送りまして、また、その推進本部におきましても、それから従来からある知的所有権委員会におきましても、すべて今問題に挙げましたような課題について検討しているところでございます。
 次に、戦略大綱にも盛られました営業秘密の保護の問題です。
 まず、これは不正競争防止法に規定がございます。不正競争防止法というところに、まず、今問題になっておりますのは、営業秘密について刑事的制裁を設ける規定を置こうということです。大分議論されておりますけれども、まだいろいろ、民事救済で今までの制度で補えないところといいますか、新しく競争秩序に反するものとして問題になるようなところに刑事的制裁を課すべきであるという観点から、どの範囲で刑事的制裁を課するか、あるいは裁判の公開の原則、それから刑事被告人の権利の保護との関係でどのようにバランスを取っていくべきかが検討されております。
 また、不正競争防止法の民事的救済規定には、これは特許法よりもその損害賠償とか証拠収集についての規定が後れているといいますか弱かったわけなので、こういうものを少なくとも特許法並みに拡充しようということがほぼ決まっております。同じような問題は著作権法についてもあると思います。
 次に、第十六条にあります権利侵害への措置ということで、先ほど野間口委員も言及されたところです。
 これにつきまして、まず国内では水際措置と言われる措置で、関税定率法に規定はございます。しかし、この知的財産侵害品や輸入禁制品につきましては、輸入差止めの認定手続を取るべく税関長に申請する権利というのは、現在のところ商標権者、著作権者、著作隣接権者に限られております。商標権という、ブランドですね、見れば分かると思うんですけれども、しかしその侵害の有無の判断になりますと法律的判断が必要になりまして、簡単ではございません。
 現在、特許権者や種苗法による育成権者、あるいは意匠権者についてもこの申立て権を認める提案というのがなされておりますけれども、そうなりますと商標権の場合以上に法律的判断が必要となります。そういうことで、私は是非、準司法的な組織というものを税関に設けていただきたいと思っております。
 それから、海外における模造品や侵害品の排除のためには、今のところ民間で模倣対策措置というのを盛んに行っておりますけれども、これを民間だけではなく国が支援していただきたく思います。また、外国の法制の後れたところにつきましては、これは民間ではどうにもなりませんので、是非国の方でバックアップしていただきたいと思います。
 二十二条に人材の確保というのがあります。日弁連関係だけで申しますと、法科大学院の中で教える知的財産法の問題、それから今、弁理士に対して知的財産訴訟が一定範囲で認められておりますが、その支援につきましてカリキュラムを組んだりいろいろ努力をしております。
 最後に、この基本法ですが、第三章は戦略本部が置かれたときの問題ですが、戦略本部につきましては是非強力な本部を作っていただきまして、この知的財産戦略の司令塔になっていただきたいと思います。
 それに関連しまして、三点だけ挙げておきましたが、八ページですが、この一は読んでいただいたとおりですが、二番目に、達成状況を適切に調査の上公表し、各界の意見を吸収して効果的に推進していただきたいと思います。目的が具体的に決まっており時間も決められますので小さくまとまりがちですが、そういうことがなく、戦略大綱にのっとって、あるいは基本法にのっとって大きな改革を遂げていただきたいと思います。
 そして、この改革が終局的には国民を文化的に精神的に豊かにし、国民が喜ぶものにしていただきたいと思います。日弁連としましても、私個人としましてもいろいろ本部の活動にも協力したいと思います。よろしくお願いいたします。
 以上です。
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田浦直#7
○委員長(田浦直君) ありがとうございました。
 以上で参考人各位の御意見の陳述は終わります。
    ─────────────
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田浦直#8
○委員長(田浦直君) 委員の異動について御報告をいたします。
 本日、緒方靖夫君が委員を辞任され、その補欠として畑野君枝君が選任されました。
    ─────────────
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田浦直#9
○委員長(田浦直君) それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言をお願いします。
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加納時男#10
○加納時男君 自由民主党の加納時男でございます。
 小柴昌俊先生、野間口有先生、松尾和子先生、三人の参考人の方、今日はありがとうございました。大変示唆に富んだ有意義なお話をいただきました。ありがとうございました。このお話に基づきまして質問させていただきたいと思います。
 初めに小柴先生でございますが、お話の中で、冒頭に、企業の目先の利益に資する技術開発も大事だろうが、それだけではない、国民的観点から見るともっと長期の、十年、二十年、三十年先の人類の知的財産、これに関する基礎研究も大事だよと、こういった分野はむしろ国が非常に大事な役割を果たすよというお話、私も小柴先生と同じ大学で教師を十三年やっておりましたので痛感するところでございます。全く大事なことだと思っております。
 その上で御質問したいと思いますが、大学と企業の関係について、特に大学の基礎研究と企業の技術開発の関係について伺いたいと思います。
 先生、ノーベル賞お取りになられましたカミオカンデの検出装置のことでございますが、ニュートリノが水分子中の電子に衝突する際に発するチェレンコフ光をとらえる装置として使われたのが実は浜松ホトニクスという企業の光電子増倍管だというふうに新聞で読んだわけでございますが、こういったことを一つの事例として、大学の先生のような長期にわたる基礎研究と企業の技術開発がうまく結び付いた例かなと思いますが、その関係について先生、どのようなお考えをお持ちでしょうか。
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小柴昌俊#11
○参考人(小柴昌俊君) 御指摘の浜松ホトニクスとの関係は次のようなものでございます。
 浜松ホトニクスという会社と最初に私どもが縁ができましたのは、その数年前、私どもがヨーロッパで電子と陽電子の衝突を国際共同実験として実施するということを始めたときです。
 そのときに新しい測定装置としてあるものを考えたのですが、それに使う光電子増倍管、それがたまたま強い磁石のそばで使わなければならないという事態になったもので、そういう光電増倍管は世界じゅうどこを探してもなかったわけです。
 そこで、今、残念なことに亡くなってしまいましたけれども、折戸という教授が中心になって磁石のそばでも使える光電増倍管を開発しようということで、当時浜松テレビと言っていた会社と協力して、そういう新しいタイプの光電増倍管を開発するのに成功したわけです。
 そういうことがありましたものですから、私が世界でいまだ存在しない極めて大きい光電増倍管が欲しいと思ったときに、そこの会社の社長と技術部長に来ていただいて、いろいろ長いこと掛けて説得をし、更には私の研究室の二人を開発のための共同研究に派遣するからということで、浜松ホトニクスの方も納得してくれて開発に踏み切ったということでございます。
 また、この法案に関連するようなこととして、特許とかそういうことというのは我々全然疎いものですから、浜松ホトニクスの方で取ったかどうかは私、存じません。
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加納時男#12
○加納時男君 ありがとうございました。
 大学の方で先生が、世界にまだない磁石のそばでも使える光電増倍管を開発したいという強いニーズを申され、それをまた開発しようという企業の強い意欲があって、これが結び付いて先生のまたノーベル賞にもなられたと思っております。すばらしいお話だと思います。
 こういう理科に関する、自然科学に関する話というのはとっても幅が広く、奥行き深いんでございますが、私、この一年間、実は文部科学省というところで大臣政務官をやらせていただきました。そのときに私が一番やりたかったことの一つが理科教育でございます、理科の教育。日本人がどうも理科離れ、自然科学離れをする。大学を受けるときにも理科とか数学は当然私は入学試験であっていいと思うんですが、そういうことがなくても大学生になれる、それで卒業した後、いろんな科学について怖いとか危険だとかって文学的に言っているような時代があります。今日はその話じゃないんですけれども、基本的に言いますと理科離れというのは大変なことだと。理科を大好きになるプランを作ろうということを文部科学省でやりまして、実現しつつあるんですけれども、そういう意味で、理科教育について先生のお考えを伺いたいと思っております。
 先生は中学生時代に学校の先生から「物理学はいかに創られたか」という本を読むように薦められて、それを先生が読まれて、御自身の自然科学への、物理への興味がわかれたということを新聞で読んだことがございます。こういう自然との触れ合いですとか未知との出会いというのはとっても人間にとって刺激的なことでございまして、驚きとかときめきというのは言わば科学する心だろうというふうに思うわけでありますが、こういうことについて、理科教育について先生、何か御示唆いただけたら有り難いと思います。
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小柴昌俊#13
○参考人(小柴昌俊君) 私、ほかでも申し上げたことがあるんですけれども、大人になった人を見ますと、理科嫌いという人と理科好きという人ははっきり分かれちゃっているんですね。じゃ、どのくらいの年のときにそれが分かれちゃうのかと自分の経験も照らして考えてみますと、どうも十二、三歳ごろというのが分かれ目じゃないかという気がするんです。そのころに理科の先生にいい先生がいて、その先生を好きになると理科が好きになるということが大分効いているようなんですね。
 理科というのは変な学問で、これ音楽と同じじゃないかと思うんですけれども、自分でやってみないと面白みが分からない、こういうところがあると思うんです。
 私、あるところでも申し上げたんですけれども、アメリカ、私の見たのはボルティモアですけれども、科学博物館がありまして、その科学博物館の相当広い面積というのが幾つかのコーナーに分かれていて、そこに子供が勝手に行って自分でいろんな実験をやれるようになっているんですね。それで、別に指導員がそばにしょっちゅう付いているわけじゃない。相談に行けば相談に乗ってくれるんですけれども。子供たち、開館と同時にわっと入って、それぞれ自分の気に入ったところへ行って、自分の好きなように実験をやって遊んでいるんですね。実に楽しそうなんです。
 そういうことというのは、理科を自分でやる楽しさを味わわせるということでとっても大事なことだと思うんです。ですから、我が国でも、ただ大きなダイナソアのあれを見せるだけじゃなくて、子供たちが自分で実験を楽しめるようなそういう博物館を是非ともいろんな県で作ってやってほしいと、こういうふうに私は考えております。
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加納時男#14
○加納時男君 ありがとうございます。
 先生おっしゃったとおり、小学校から中学校に進むときがやっぱり変化があると思います。いろんな世論調査をやりましても、あるいは国際比較をしても、小学校では理科、算数ともに決して悪くない。できはいいんですね。ところが、中学生にアンケートを取ると理科が面白くないとか嫌いとかいうのが増えてきまして、高校になると非常に増えちゃうと。これ、やっぱり改善のヒントがそこにあると思いますので、先生のお話をこれから参考にさせていただいて、是非教育の改善にも政治家として取り組んでまいりたいと思います。
 次に、産学の連携についてもうちょっと伺いたいと思いますが、先ほど野間口参考人の方から産業競争力強化のための産学連携の強化が不可欠だということ、そのための方策幾つか言われた中で、大学における海外からの研究者の受入れの促進が大事だと言われました。
 また、小柴先生も長い間国立大学におられて、国立大学では、国立大学の教員は公務員だと、公務員は日本人じゃなきゃならないというので海外からの優秀な研究員の受入れが難しいということになっていました。これから国立大学法人になり、さらに国立大学のより民営化に近い方向を我々は目指しているわけでありますけれども、そういった中において、こういった海外からの研究者の受入れの促進について、小柴先生、そして野間口先生から一言ずついただけたらと思います。
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小柴昌俊#15
○参考人(小柴昌俊君) 先ほども申し上げましたように、学問というのはどの国の人間にも理解できて、どの国の人間にもプラスになるということが本質的な問題だと思うんです。そういった意味で、どこかの国の大学がその国の人間だけで作り上げなきゃならないというのはちょっとおかしな話で、元々。
 ですから、先ほども申し上げましたように、優秀な人材はどんどん採って、またこちらの優秀な人材も外国へどんどん派遣するということがもっと行われていいし、さらには、今度の化学賞をいただいた田中さんのように、民間でやっておられて学位も取っていないけれども立派な仕事をなさった方というのは、方々の大学が競ってうちに来て学生を教えてくださいということが出てきて当然なはずだと私は思っているんです。
 ですから、大学と産業界の人間の交流というのはもっと本気で考えてしかるべき問題だと私は思います。
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野間口有#16
○参考人(野間口有君) 海外からの研究者の受入れということにつきまして述べさせていただきたいと思いますが、私、こういう立場になります前から三菱電機で開発部隊を率いておりまして、二千人ほど国内に研究者がおります。海外にも百五十人ぐらい、ヨーロッパ、アメリカ合わせて、合計しますと研究者がおりますが、そういうこともありまして、アジア各地、欧米各地いろいろ回りまして、その地域の政府機関あるいは大学とも交流をやる機会が多かったわけですけれども、そこで感じますのは、非常に外国の優秀なトップクオリティーの人材を受け入れるというのに対して積極的、壁が低いというふうに感じます。
 そこへいきますと、日本では空洞化とか産業競争力とかいいますけれども、何か日本が非常に高いところにあって常に流出を心配しているというような感じがしまして、流出は結構、その代わりどんどん俊英を受け入れますよというようなことで考えなければ、これから日本の知的創造力というのは非常に大きな問題になっていくんじゃないかなと思います。
 そういった意味で、一番それが弱いのは大学じゃないかと。企業はやはりそれなりの工夫をしてできる範囲で努力はしておりますが、やはりアカデミアのところでもう少し踏み切った海外からの俊英の受入れの仕組みを考えていただきたい。これはマインドの問題もありますし、仕組みの問題もあります。
 それから、先ほども申しましたけれども、そこで出てきました知的財産をどういうふうにシェアしていくかと。日本がテークリードすることによって生まれた財産でございますので、日本が生み出したと言ってもいいわけですね。日本の研究者も参加し、海外の研究者も参加し、それで一緒に新しい知的財産を生み出すと、こういうものにもっと意を砕くべきだというふうに思います。
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加納時男#17
○加納時男君 ありがとうございました。
 海外から大学と企業等によって研究員もどんどん受け入れていこうということ、そのときの問題としてはマインドと、それからレジームといいますか、仕組みですね、これが大事だということは大変よく分かりました。
 野間口参考人に伺いたいと思いますが、いわゆる死の谷という言葉がございます。これは、大学でせっかく取った特許が企業の方にうまく移転して活用されずに、その間のところにおっこってしまう。これはデスバレーといいますか、シリコンバレーじゃなくて死の谷と、こう言っておるのでございますが、この死の谷をどうやったならば越えることができるかというのが知的財産戦略として大事かと思うんですけれども、これは企業経営者として、どういうふうなことを企業としては努力し、大学には望まれるでしょうか。
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野間口有#18
○参考人(野間口有君) ありがとうございます。
 デスバレーという言葉が出てまいりまして、本当にRアンドDをいかに生かすかということで日夜考えておられる先生らしいなと思いました。
 私ども、実を言いますと、開発にはいろいろチャレンジしますけれども、それが事業につながるというところで大きな関門がございまして、アメリカでは私は最初、企業の中における開発投資と事業化の壁をデスバレーと言ったように思うんですが、今日の御指摘では、大学で生まれる知的財産が事業につながらないという意味で、もっと大きなデスバレーがあるんじゃないかという御指摘だろうと思いますが、そういう観点でいきますと、先ほども述べさせていただきましたのとちょっと繰り返しになりますが、大学における知的財産の創造の体制構築でございますね、これは大変今新しい動きになっておりまして、知的財産権本部を考えようとか、そういう一元的に知的財産の創造と活用を考えるような仕組みを考えようとか、取組が始まっておりますけれども、そういったものも是非強化していただきたいと思います。
 それから、これも繰り返しになりますが、知的財産を民間に移管しますときに、今、国の財産というのは、国家財産を軽々に扱えませんので、大変な手間と時間が掛かりまして、これはやはり機関帰属にしていただいて、事業本位で、競争本位でタイムリーにそれがうまくシフトできるように考えていただくと、こういう改善を図るべきだと思います。
 それからもう一つは、大学の優秀な先生方の企業への、あるいは企業から大学への人材のシフト、こういう人材の相互交流でございますね、これが正直言いまして、国家公務員法との問題もありますでしょうし、余りレベルが高くないと思っておりまして、先生方の例えばインターンシップ制度とか、ああいうのをもっと拡充していただいて、企業における企業家を目指した第一線の生の経験もしていただくと更に実効的な知的財産権の発掘につながるんじゃないかと思いますので、そういった点も考慮していきますと、死の谷というのは必ず存在するものでございますけれども、その谷を埋めて、少しでも効率の良いRアンドDができるんじゃないかと、私はそういうふうに考えております。
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加納時男#19
○加納時男君 ありがとうございました。
 松尾先生への御質問、いろいろ考えておりましたけれども、私の質問の仕方がうまくなくて時間がなくてごめんなさい。同僚議員が質問いたしますので、よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
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若林秀樹#20
○若林秀樹君 民主党・新緑風会の若林でございます。
 私の方からも質問させていただきたいと思います。
 今日は、大変お忙しいところ、三人の御参考人の方においでいただきまして、ありがとうございました。
 小柴教授におかれましては、本当にノーベル賞受賞、本当におめでとうございます。私の名前は若林秀樹と申しまして、秀樹というのは小さいころから湯川秀樹にちなんで付けられたと。気が付いたら全然違う世界にちょっと来ていたんじゃないかなという感じはしますけれども、そういう意味で、私も小さいときからそのノーベル賞というものが常に何か身近に感じながらこれまで来たわけでございますけれども、今回、あれから五十年という年月を経てダブル受賞ということで、やっぱりちょっと今元気のない日本において、非常にそういう元気を取り戻す自信にやっぱりつながったんではないかなという感じはしているわけでございます。
 そこで、最初の質問なんですけれども、小柴教授から見て、今、我が国の基礎技術レベルというんでしょうか、どんなふうにとらえて、ちょっと一般論で難しいかもしれませんけれども、まだまだノーベル賞受賞にふさわしい技術は一杯あるんだというふうにお思いなのか、いや、そうじゃない、まだまだここで安心しちゃいけない、まだまだこれからどんどんやっぱり日本はもっと基礎技術、その開発に力を向けなきゃいけないのかという、一般的なちょっと質問で恐縮ですが、お答えいただければ有り難いと思います。
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小柴昌俊#21
○参考人(小柴昌俊君) 私、別に誇張して言うわけではございませんけれども、あと三、四年、あるいは四、五年かもしれませんけれども、少なくとももう一つの物理学賞は神岡の実験から出ると思っております、ほかの、化学とかほかの分野のことは私、存じませんから。
 さらに、今、私どもの分野の若い人たちが一生懸命に推している将来計画というのが国の応援を得て実施されるのであれば、十年後にもう一つ物理学賞が来るという可能性は極めて高いと私は思っております。それから先のことは私には分かりません。
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若林秀樹#22
○若林秀樹君 ありがとうございました。
 ある意味では、国の支援というのか、そういうのがやっぱり必要だということだというふうに思っているところでございます。
 先ほど自由な発想というんでしょうか、そういうものも必要だというふうにおっしゃられたんではないかなと思いますが、産学の連携で、基礎技術というのはやはり大学でしっかりそれを育てて応用的なものは企業でという、その辺の産学連携をすると、それが何かちょっと侵食されるというんでしょうか、やっぱり応用技術にちょっとシフトしやすくなっちゃうんではないかなという感じも危惧しているんですけれども、その辺のバランスの取り方というのはどんなふうに小柴参考人はお考えでしょうか。
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小柴昌俊#23
○参考人(小柴昌俊君) よく聞いていただけたと思います。
 最近、新聞などで見ますと、科学技術を振興しなくてはならないということが非常に強く言われて、うれしいことには違いないんですけれども、その科学技術というのが役に立つ技術のための科学だというふうに理解されているんじゃないかと思われる節が多くの面で見られます。
 確かに、技術に役立つような科学の研究というのが我が国の産業の将来にとって極めて大事なことはだれも疑わないことです。ですけれども、国全体としての科学政策というのが技術に役に立つ科学だけに集中されて、技術にすぐ役立つのでない、もっともっと基礎的な科学、先ほど私が申し上げましたように、十年、二十年たってみなければ役に立つかどうか分からないような、そういう基礎的な学問に対する国の応援というのが景気、不景気によらずある割合で保ち続けていかなければこの国のそういった基礎科学の将来はなくなってしまうと思うんです。是非そのことを議員の先生方に頭に置いていただきたい、そういうふうにお願いいたします。
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若林秀樹#24
○若林秀樹君 ありがとうございました。
 私も議員の一人としてそういうことに対する理解をより深めていきたいなというふうに思っております。
 続いて、野間口参考人にお伺いしたいと思います。
 野間口参考人は三菱電機の社長になられたということで、研究畑、技術畑出身の社長という意味では、何というんでしょうか、時代の要請というんでしょうか、これからの三菱電機さんの方向性を示唆するようなものではないかなというふうに思います。
 その中で、この前、世界経済フォーラムの競争力の発表がありまして、そこでは全体的には二十一位から十三位へ上がったということなんですが、その中で特筆すべきことは、企業の革新性というものが一応世界で一位にランクされたというところでございます。そういう意味では、せっかくの企業の革新性、技術がありながら実績になかなか結び付きにくいというのは、もちろんその企業内の問題もあるかもしれませんけれども、社会やあるいは政府の役割として、御自身の実感としてどういう面を改善すべきだというふうに考えていらっしゃるか、ちょっとお聞かせいただければと思います。
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野間口有#25
○参考人(野間口有君) 私どもは、八〇年代後半それから九〇年代前半にかけまして、グローバルな意味で大変な成長をさせていただいたと思っておるわけですが、今の御指摘で、ここ九〇年代の終盤から今日にかけまして大変な苦境の中にありますが、これは一つには、日本企業としての八〇年代後半から九〇年代にかけて成長してきたモデルが少し古くなったと、新しい競争モデルを確立する今産みの苦しみの時期かなと私は思っております。
 そういうことも背景にありまして、この知的財産大綱とか本法案等が検討されるというんじゃないかと思いますが、欧米もそうですし、アジア各国へ行きますと、私どももそうですが、日本企業が進出しましてどんどん効率的な生産をやっております。これが一〇〇%の資本の場合もありますし、現地企業とジョイントベンチャーでやる形もありますが、そこのドライビングフォースになっておりますのはやはり技術でございまして、日本生まれの技術がそういった競争力のある製品群を市場に提供していると。しかも、それが日本で次々に新しい、例えば環境対策とかあるいはエネルギー問題とか、そういう新しい課題が出るたびに新しい技術レベルに到達しまして次々に生み出しているがゆえに、日本企業は今現在、損益的な目で見ますと一見苦しいようには見えますけれども、この知的財産的なプレステージでいいますと、大変なやはり存在感を示しながら経営ができていると。
 この辺を軸にして、再度世界における経営モデル、こういったものを主張し確立していくような今前夜じゃないかなと、そういうふうに思って日々経営しているところでございます。
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若林秀樹#26
○若林秀樹君 ありがとうございました。
 最後の五分間は同僚の簗瀬議員の方から質問させていただきますので、私としては時間は最後になると思いますが、松尾参考人にお伺いしたいなというふうに思います。
 松尾参考人、弁護士であり弁理士ということで、まだまだそういう方は日本ではやっぱり少ないのかなという感じがしていますし、圧倒的な人数として、こういう知的財産に詳しい方が私はやっぱり少ないんではないかなというふうに思います。
 そういう意味では、もっともっと弁護士、弁理士の方が増えるということが必要だと思いますが、弁理士の方は訴訟代理権が拡大したとかということで徐々にそういう仕事の領域が広がってはいると思うんですけれども、将来を見据えたときに、この知的財産をどうやってやっぱり活用し保護していくかというときに、弁理士と弁護士の役割分担というんでしょうか、どんな具合な形が一番理想かなというふうに考えていらっしゃるか、ちょっとお伺いしたいと思います。
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松尾和子#27
○参考人(松尾和子君) お答えします。
 私としましては、弁理士の方に嫌われるかもしれませんけれども、弁理士が訴訟代理権の方で活躍する、これも結構ですけれども、まず優れた明細書を作っていただきたいと思います。そして、そのためには、早い段階で、これは大学や企業の方にも提携していただく必要がありますけれども、発明の早い段階でその問題になっている技術を知って、そして早くから明細書の準備をして、しかもその明細書は、特許でいえば権利を取るだけではなくて最終的に実行できるような、訴訟でも問題なく実行できるような、そういうところを見据えたものをまず作っていただく。技術の方でもっと、何といいますか、訓練を積んでいただきたいと思います。そして、その上で、我々弁護士、これまた技術的な面で欠けておりますから、そこで大いに協力して、お互いに協力して訴訟を遂行していったらいかがかと思います。
 そういう意味で、法曹の人間、今少な過ぎますので、弁理士、弁護士が協力して法曹の層を厚くする必要があろうかと思っております。
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若林秀樹#28
○若林秀樹君 ということで、質問の方は簗瀬議員の方からまた残りの五分をさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
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簗瀬進#29
○簗瀬進君 若林議員にお許しをいただきまして、五分間だけいただきたいというふうにお願いをさせていただきました。お許しいただき、ありがとうございました。
 私は、三年前、神岡にございますカミオカンデに行ってまいりまして、チェレンコフ光が反応をする純水を間近に見させていただきました。そして、予算委員会でそのことを当時の小渕総理に質問をさせていただきまして、そういう過程でずっと知財の重要性というのが皆さんに認識され、このたび知財基本法あるいは内閣府に知財戦略本部が常設のものとして置かれると。大変そういう意味では、私のこの分野でのきっかけを作ってくれたのは神岡にあるスーパーカミオカンデでございました。
 その研究成果で小柴先生がノーベル賞を御受賞なさると、大変私として本当にうれしく思っております。また、こうして知財基本法の審議の中で参考人として御参加いただいているということは、本当にうれしく思っておる次第であります。
 時間が限られておりますので、もう同僚議員から大変すばらしい質問と、またそれぞれの参考人の皆さんから大変示唆に富む御意見をいただけたなと思っておりますけれども、私は、小柴参考人、非常にこの知財基本法について大変重要な示唆といいますか、ある意味では一種の警鐘を私たちに与えてくれているんではないのかなと。言うならば、知財は銭になるとかあるいは知財は金になるとか、そういうふうなある意味での近視眼的な取組をしてしまいますと、結果としては本当にこの法律の意味が大変低いものになってしまうと。正にそういう意味では、この人類の共通の知的財産に我が国が貢献をするんだと、そういう大きな目標を持ってやるべきだと、小柴先生のおっしゃられるとおりだと私も思っております。
 そういう中で、日本の知的創造力を高めていくためには何をしたらいいのか。私は、いろんな創造、保護、活用のプロセスがありますけれども、その中で一番大切なのはやっぱり知財の創造だろうと思います。その創造力を高めていく一番の拠点として大学があるであろうと思いますけれども、先ほど先生御自身のお言葉の中にも閉鎖的というような言葉がありましたし、また野間口参考人からももっともっと人事交流をと、こういうふうなお話もあったところであります。私は、組織とやっぱり研究資金の問題なんだろうかと思います。
 現在は随分力が入っておりますので、大学を始めとしていろいろな研究の助成が講じられておりますけれども、特に組織の問題とそれからお金の問題で、先ほど言った閉鎖性というようなものが更に今後開かれたものになっていくのかということを、正に研究体制といいますか、研究の組織をどうするんだろうかということと、研究資金というようなもの、いろんな助成が来る。それをどういうふうな形で流していくんだろうかということに非常な意味があると思います。
 そういう意味では、大学の創造力を高めていくポイントとして、この組織の問題とそれから研究費の配分の問題等について先生の御意見があれば聞かせていただいて、私の質問とさせていただきたいと思います。
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