野間口有の発言 (経済産業委員会)
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○参考人(野間口有君) 三菱電機の野間口でございます。座らせていただきます。
私は、総合科学技術会議知財戦略専門委員会の委員として、今後の我が国における知財戦略の在り方につきまして意見を述べさせていただく立場にありましたけれども、本日は、国会の場において産業界の立場から意見を陳述させていただく機会を与えていただき、誠に光栄に存ずる次第でございます。
それでは、本法案に関する意見を述べさせていただきたいと思います。
このたびの国を挙げての知財立国への取組といいますのは、明治に特許制度が創設されて以来初めての画期的なことと私どもは考えております。現在、産業界は中国等の台頭に伴うメガコンペティションの一層の激化、IT不況の深刻化、世界同時的景気減速などによりまして、例を見ない厳しい生き残りの競争の局面に立たされております。こうした中で、企業は今その生き残りを懸けまして日々懸命の努力を行っているところでありますが、中長期的に見ますと、我が国産業の競争力を図っていくためには、世界に通用する、世界と戦える新技術を創造し、この知の創出という、それと蓄積でもって戦っていく必要があると認識しております。
企業は、今や知的財産権を単なる無体財産権というのではなく重要な経営資源としてとらえ、知的財産戦略を経営戦略の柱の一つとして位置付けておりまして、知的財産権問題に非常に真剣に取り組んでいるところであります。こうした時期に本法案が国会の場において審議される運びとなりましたことは、産業界としては極めて適切かつ時宜を得たものと高く評価しております。本法案の一日も早い成立を期待しております。
また、本法案では第四章におきまして、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策の集中的かつ計画的な推進のために内閣に知的財産権本部を置くことを規定し、本部長には内閣総理大臣をもって充てるということになっておりますが、これらの施策の推進に当たっては、国の組織としても内閣官房を始めとし、多くの省庁の協力が必須であると考えておりまして、かかる観点から総理自らが本部長として関係各省庁の総力を結集して対処していただくということは大いに評価できると考えておりますし、期待しております。
さらに、第三章におきまして、本部が推進計画を作成し、その実施を推進するということになっておりますが、産業界といたしましては、本推進計画が競争力強化の観点から実のある形で立案され、本部の主導の下で強力に推進されることを期待しております。
去る七月に決定、公表されました知的財産大綱によりますと、二〇〇五年度までの長きにわたって多くの課題に取り組むことになっておりますが、産業界としましても推進計画の策定に当たり、必要に応じ積極的に提言させていただく所存でございます。また、国、地方公共団体、大学等及び事業者間で連携を強化するとともに、推進母体である知的財産権本部の陣容を充実することが特に重要であると考えております。
さて、先ほど述べましたように、国際競争が激化する中で、私ども企業は競争力確保のため事業の集中と選択を進め、世界で勝ち得る強い事業作りを志向しております。研究開発と知的財産戦略を柱にした経営戦略をそういった考えで推進しているところであります。そのような立場から、知的財産戦略上重要と考えております三点に関連しまして、本日は要望を及び意見を述べさせていただきたいと思います。
第一は、知的財産創造へ向けての産学連携の強化でございます。小柴先生の方からもお話がございましたが、この産学連携の強化というのが大変重要と考えております。
御高承のとおり、国際競争の変化に伴い、今、我が国の企業は苦戦を強いられておりまして、研究開発につきましても、集中と選択、取組の重点化を余儀なくされております。こうした背景から、技術革新の急速な進展をリードする基礎研究につきましては、企業が自前で行うことが資金的、人的にも困難となってきておりまして、大学等が基本特許につながる革新的ブレークスルーを担うことに対する期待は一段と高まってきております。
また、応用技術分野におきましても、企業としましては産学連携を強化し、大学等の力をかりることが不可欠と考えております。この点に関連しまして、幾つか付け加えたいと思います。
まず、大学における知的財産創造のための体制構築ということでございますが、日本の大学は従来、一般に産業の発展に資する知的財産の創造への関心が欧米と比較して低かったと考えております。大学において知的財産を創造する仕組みを早急に構築していただきたいと思います。
現在、大学発の知的財産の産業界への移転促進を図るためのTLOの活動が開始されておりますが、知的財産の創造を促進するための取組も必要と考えております。この場合、企業の立場から見ますと、知的財産の創造から活用といいますのは一連の活動として密接に連携すべきものでありまして、大学における知的財産体制におきましても、知的財産の創造等の目的で現在設置が検討されている大学内の知的財産権本部とTLOの連携を是非とも強化していただく必要があると考えております。
もう一つは、大学発知財権の産業界移転を円滑にする制度の構築でございます。移転を円滑にするためには、知的財産権の帰属の問題が重要であります。現在、国立大学等における発明の帰属は国帰属が主体となっておりまして、利用する際には、その都度時間の掛かる手続を踏んで国の許可を得る必要があります。産業界から見ますと、このことが権利の幅広い活用の障害となっていると考えられます。かかる観点から、今後、欧米と同様に大学又はTLOに帰属させるいわゆる機関帰属としていただき、移転の促進を図っていただきたいと思います。
また、大学等における知的財産の創造を促進するためには、これも外国では一般的なことでありますが、海外から優秀な研究者を受け入れて一緒に研究を行う方向をもっと志向すべきと考えております。そのような場合、日本の研究者と一緒に海外の研究者も入って新しい知的財産権が生まれますが、それらの取扱いの仕組みも検討しておいた方が良いと思います。
知的財産戦略上重要な第二のポイントは、先端技術分野における国際標準化と関連知財活動の強化であります。先端技術分野、特に、例えば情報通信分野等においては、国際標準などがビジネスと直結する場合が非常に多くなってきております。国際標準を支える知的財産権が企業の競争力の重要な要素となってきております。
例を申しますと、携帯電話では欧州、アジア諸国において欧州メーカー主導のGSM方式が標準に採用されていることから、日本の技術及び知的財産権を生かせず、日本製がビジネス上劣勢に立たされているのが現状であります。また、次世代であります第三世代の国際標準におきましても、基本特許の多くを欧米企業が取得しておりまして、今後第三世代製品の普及が始まりますとロイヤルティー支出の増大が見込まれ、携帯電話事業そのものに少なからぬ影響があると考えております。
ところで、欧米の国際標準化活動を見てみますと、米国の場合、標準化機関に当たるNISTが商務省等の政府機関と緊密に連携し、財政支援も受けて、産業界を全面的にバックアップする標準化活動を展開しており、また欧州の場合も、学界の積極的な参画と関係国政府の支援を受けて標準化活動を行っております。
一方、我が国におきましては、企業の自主的活動が主であり、政府の関与、支援と学界の参画も欧米に比べて弱く、日本発の技術の国際標準化活動において後れを取る傾向にあります。このため、優秀な技術であっても、国際標準にして世界に向けて普及させることが難しく、知的財産戦略において日本が劣勢に立たされることが多いわけでございます。このような状況にかんがみ、日本発技術の国際標準の取得を促進するため、民間企業及び大学が国内外の標準化作業の場で強く連携し、これに国が積極的に関与するということが望ましいと考えております。
また、国際標準、特にデファクトスタンダードに関連した知的財産権の運用に関し、動画圧縮技術であるMPEG、デジタルビデオ記録に関するDVD、あるいは第三世代携帯電話等にかかわる国際的な特許プール機構が設立され、又はされようとしておりますが、これは技術の標準化による利益と特許独占による弊害の調和を図る大変適切な仕組みではないかと考えておりまして、このような取組に対しても、民間企業が努力することは当たり前でありますが、国の理解と支援も大変重要と考えております。
知的財産戦略上重要な点の第三を申し上げます。海外における知的財産の創造、保護及び活用の強化でございます。
企業にとって知的財産の創造、保護及び活用を図るためには、グローバルに権利を取得することが不可欠であります。このため企業は、欧米はもちろんのこと、事業と密接な関係にある多数の国に特許を出願することを余儀なくされておりますが、このための費用、手間は膨大なものとなっております。当社の場合、海外での特許取得をする費用は全特許経費の約三分の二を占めるに至っております。
また、日米欧等の各国特許庁では、年々増加する各国企業からの海外出願の増加に伴う審査滞貨の急増が審査処理を圧迫し、適時適切な権利の発生を妨げ、知的財産の創造を損なう状況にあります。かかる状況にかんがみ、海外出願のコストの削減及び各国における権利化の促進のために知的財産制度の国際調和に向けた更なる努力をお願いしたいと思います。各国制度の統一が究極の理想の姿でありますが、これには時間が掛かると思いますので、当面は主要先進国間での審査結果の積極的活用など、早期審査に資する取組を是非お願いしたいと思います。
また、今日、中国などのアジア諸国は世界においても数少ない成長市場であります。携帯電話、自動車それから家庭電器品など、市場としての成長性は極めて高く、我が国企業の将来の成長もここでの活躍に左右されると言っても過言ではありません。しかしながら、これらの国の知的財産制度は、法制度の形式面では整いつつもありますが、全体としてはなお多くの問題を抱えております。このような知的財産の保護に関する制度の整備が十分に行われていない国では、我が国企業による現地での事業を知的財産で保護することができず、大きな不利益を被る結果となります。
したがって、我が国の企業がこれらの国において迅速かつ確実に知的財産を取得し、またその権利を行使できるよう、例えば特許庁での審査体制の支援協力、現地審査官の我が国特許庁での研修等必要な措置を、現在もやっていただいておりますが、更に積極的に講じていただきたいと考えます。
さらに、例えば中国等におきましては、今日模倣品問題が大変大きな問題となっておりまして、これらにつきまして私どもは日々努力しております。この対策を努力しておりますが、国としても関係当事国と積極的な交渉を行うなど適切な対応をお願いしたいと考えます。
以上、産業界の立場から本法案に対し意見を陳述させていただきました。重ねて、本法案の一日も早い成立をお願い申し上げます。
以上で終わります。