渡部梢の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(渡部梢君) 「ハンド・イン・ハンドの会」という離婚女性のネットワークの世話人をしております渡部と申します。よろしくお願いします。
私自身は、昭和五十八年十月に、やはりDVが理由で当時三歳の娘を引き取って調停離婚いたしました。現在は民間企業で正社員として働いています。「ハンド・イン・ハンドの会」の活動は、そういう離婚に際して情報がない女性たちのために法律や公的扶助、就労、生活支援などの情報を提供するための講座と参加者のネットワーク作りを目的として活動しています。
自己決定をするときに、情報というのは非常に判断に大きく作用しますし、ともに支え合える仲間がいるということはエンパワーメントに役立つという思いで二十年近くこの活動を続けてきた中で感じたことを今日は三点に絞ってお話ししたいと思います。
まずは、生活設計を立てる上で重要な要素となりますのが支出と収入のバランスです。幾ら収入を増やしても支出を抑え切れなければどうにもなりませんが、その支出の中で最大のネックになりますのが住居費だと思うんです。持家があれば家賃の負担というのがないので、支出の何割も削減できます。大阪では、現在で新たに住宅を借りようと思えば六万円を下ることはないと思います。パートならフルに働いても賃金月額が十二万円程度、せいぜい十五万円止まりで、その中での可処分所得は多い人でも十二万円程度です。その半分が家賃に費やされるのです。
法律の中には、公営住宅の母子枠での優先入居がうたわれています。しかし、抽せん制です。抽せんというのは当たらなければ入れません。私が知る京阪神の在住メンバー六十人ほどの中でも、母子枠で入居できた人は二人だけです。私自身は、別居中から文化住宅と言われる二Kの木賃住宅に住んでいました。そして、離婚してすぐに申込みを開始して、落選を重ね、実際に市営住宅に入れたのは離婚から十五年たった一九九八年の八月です。十一回以上の多数回落選者優先入居制度というのを利用させてもらったので、母子枠でもなく、当せんでもない入居です。
それまでの住宅は、おふろはありませんでした。日の光が一年じゅうたったの一分も部屋の中に差し込むことはありませんでした。裏にガレージが近接していましたので、排気ガスが止めどなく入ってくるので、時間帯によっては窓を開けることもできませんでした。市営住宅に引っ越したときに、ベランダから入ってくる自然の光と太陽の光に私は涙が出るほど感激しました。そして、感激と同時に幸福感を感じましたけれども、そのときに感じたのは、すべての頑張っている母と子供に対して、これくらいのささやかな幸福を保障してほしい、何とかしてほしいと、自分のことだけじゃなくて、ほかの仲間のためにも切に思いました。
何で十五年間も待ち続けたのか、そう言われるかもしれませんけれども、学齢期の子供を抱えているために、子供が学校を替わるとかお友達が替わるという環境を変えたくないことと、近くに生活の支援を頼める友人が何人かおりましたけれども、その人たちを失いたくない、失ったらまた一からスタートしなきゃいけないということと、仕事場と家庭が近いというのは小さい子供を抱えて一人で頑張っているお母さんにとっては物すごく大事な要素なんです。それを失いたくなかったんです。
大阪市では、今、ドーナツ化現象を避けるために民営賃貸住宅に家賃を補助するシステムがあります。公営住宅が足りないんだったら、母子家庭には補助額を増やすなりなんなりして、できるだけ具体的な、そして有効な対策を講じてほしいと思います。
非常に恵まれた人は持家を持っていて、離婚のときに財産分与でそのまま住み続けられる人もいます。けれども、現在の状況としては住宅ローンのない持家の人はほとんどいませんし、住宅ローンがある場合は、債務者変更をしなければならないような名義の変更というのはほとんど不可能です。それと、もし処分をしてもオーバーローンの負担をどうするかでいつも問題になります。ちなみに、母子家庭の持家率は一〇%台、今日いただきました資料の中でも、九十二ページにうたわれていますが、生別家庭と死別家庭では全く率が違います。十何%しかありません。そして、だんだん減ってきている傾向にあります。
住居というのは労働力の再生産の場であり、次代を担う子供たちの健全な育成にとって必要不可欠な要素だと思いますし、離婚に際して住むところがないというのは一番高いハードルになっています。私たちの願いは、離婚や別居をしたいというときに、自分が望む地域に申請をすれば、そのときにだれでも入居できる住宅が提供されるというシステムができることを心から願っています。
あと、さきにもいろいろ出ましたが、就労支援ですが、経済的自立というのは母子家庭にとっては当たり前のことで、みんな必死で仕事を探しています。でも、就職の厳しさは御存じのとおりです。自立に対する自助努力を求められていますが、努力をすれば何とかなる状態なんでしょうか、今は。この状態でむちを打たれるのは非常につらいことです。パートだったらせいぜい十五万くらい、身分保障も将来の生活設計も何にもありません。
二十一世紀職業財団という政府関連の、行政関連の機関で働く人がいます。この人も離婚しています。勤務日数を月十五日以下と制限されているために、仕事を二つ持っています。また、将来のためにと看護学校に通う人がメンバーの中に三人います。でも、生活の支援は全部親掛かりです。でないと学校へはとても通えません。母子家庭高等技能訓練促進費の給付期間は全期間の三分の一以内で十二月以内というふうに盛り込まれていますが、せめて修学期間の全期間を対象にしてほしいと思います。
それと、教育訓練の機会が確保できるようにもっと拡充してください。大阪市に住んでいる母子家庭の母が、先般ホームへルーパー二級の取得講座に申込みをしましたが、母子家庭枠での競争率、要するに掛かる費用とかが違うんだと思うんですが、競争率は十二倍で受講できませんでした。というような厳しい状況です。
もう一つ、最後に申し上げたいのは、母子には今スポットライトが当たっているようですが、寡婦に対してはかなり厳しい状況がこれからも予想されます。それは何でかというと、年金法によって、これから先、生活設計のめどが立たないのに、働けなくなった年代のときに年金給付を受けられる額は、とてもじゃないけれども、自立できる、生活権が保障される金額ではありません。
女性というのは途中で仕事を辞めて子育てをしたりしている人がほとんどです。そのために、年金権が確立できても給付額で生活はできないんです。こういう年金法の不備によって、今後の生活のめどが立たない人に離婚後の年金分割などの法整備を、この福祉法だけでなくて年金法改正審議にまで続けて持ち越していただきたいと思います。でなければ、私たちのメンバーの中でも、将来に対する不安から心療内科の治療を受けている人あるいは薬に頼らなければ生きていけない人がこのところ際立って増えてきています。非常に憂慮すべきことだと思っています。
どうかこの法律が本当に総合的に実のあるものになるように。私は、今日大阪からこうして発言させていただく機会を与えられたことに感謝しています。よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。