吉野直行の発言 (財政金融委員会)

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○参考人(吉野直行君) 慶應大学の吉野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。座りながら御報告させていただきたいと思います。
 お手元に、少し大きな字で三枚ほど私のレジュメがございます。十分以内ですので簡潔に述べさせていただきたいと思います。
 内容につきましては、日本経済の現状と、それに対する私なりの処方せんというものでございます。全部で七項目ございますが、まず一番目から御説明させていただきたいと思います。
 日本経済の低迷が十年以上続いているわけでございますが、この中で、アメリカ、イギリスは九〇年代非常に成長が高かったわけです。産業構造を見てみますと、どこの国も、(1)の(Ⅰ)のところでございますが、製造業のシェアは低下いたしております。その中で、(1)の(Ⅱ)のところでございますけれども、金融サービス業の生産性が上がったか上がらないかが、やはり日本、アメリカ、英国の違いであります。日本の低迷の原因というのは、やはり金融サービス業がこの九〇年から最近まで製造業が落ちてくる中でそれを補うほどの生産力がなかったということが一つございます。
 それから、(1)の(Ⅰ)のところでございますが、もう一点は、御承知のように、日本からの海外への直接投資が非常に増えているということであります。それと対比しますと、(1)の(Ⅲ)ですが、海外から日本に入ってくる対内直接投資、これが少ないわけです。対外から日本に入ってきます対外直接投資が少ないということであります。これは(1)の(Ⅲ)のところを見ていただきますと、日本はGDP比ではたった〇・二%しか海外から入ってきておりません。それに比べますと、英国は八・五%、ドイツは一〇・〇%でございます。ですから、後でも申し上げますが、いかに海外から日本に投資をしていただくかと、こういう方策も今後必要だと思います。
 それから、(1)の(Ⅳ)でございますが、設備投資が日本の場合には金利が幾ら低くても上向かない、いわゆる設備投資の利子弾力性がゼロであると、こういう状況が現在のもう一つの問題点でございます。
 それから次に、ちょっと(Ⅵ)と書いてございますが、金融政策に関しましては、日本銀行券は非常に高いペースで増発されておりますが、それがマネーサプライ、M2あるいはM2プラスCDに結び付かない。これが信用乗数の低下につながっておりますが、これはやはり金融、銀行部門がうまくワークしていないというところが多いわけでございます。
 次に、二番目といたしまして、不良債権対策と金融業の収益性の向上ということでございます。
 不良債権対策に関しましては、(2)の(Ⅰ)ですが、一九九九年に八兆円の公的資金が注入されました。しかし、その後、金融機関の収益の改善はありませんで、また今回の公的資金の注入というふうになっているわけであります。その大きな原因は、(Ⅲ)のところに参りますが、金融業の収益性が向上していないということにあると思います。アジアの諸外国を見ますと、やはり不良債権はあったわけですが、韓国あるいはマレーシアなどでは銀行業が収益をその後改善いたしております。
 ですから、やはり日本の一番の問題点は、銀行業あるいは金融業の収益を今後どうやったら回復できるかと。これがない限りは、幾ら不良債権対策をやりましても、また三年前と同じ状況で、またつぎ込むと、こういうことになってしまいます。
 (Ⅲ)のところ、一ページ目の一番下でございますが、私なりに四つのことを考えております。
 一つは、海外のグローバルな情報をもっと日本の金融機関は収集しなくてはいけない。現状では逆に動いております。多くの金融機関はアジアなどの店舗を閉めて国内に回帰すると、こういう形になっております。その場合には、日本という経済がだんだんしぼんでくる中で全額の資金を日本で運用しよう、こういうふうになりますと、どうしても不良債権は増加するわけであります。むしろ、成長するアジアなどでやはりもっと運用すると。そのためには、(Ⅲ)の①のところですが、海外のもっと情報を集めなくちゃいけないというふうに思います。
 それから、下のところ、二番目でありますが、海外で最も利益が上げられる場所で運用すると。これは、外資系のシティバンクなどは正にこの方針であります。日本からは資金を集め、それで最も収益率の高いところで運用すると、こういう姿勢を取っております。
 それから三番目は、日本の金融機関は、これまでは日本の企業の海外進出に追っていく、それに後追いをすると、こういう形で発展してきたわけですが、今後は、海外への進出の援助と同時に、やはり独自で地元のお客さん、アジア諸国のお客さんを探すと、こういうことではないかと思います。
 日本の金融機関に勝ち目があるかと申しますと、④のところでありますが、日本の場合にはアジアと時差がございません。そういう意味では日本の金融機関のメリットもございますし、アジアは銀行中心の経済ということでありますので、日本に随分似た部分がございます。
 次に、二ページ目に行っていただきたいと思います。三番目の公共投資・社会資本の効率性の問題であります。
 ここも私の少し研究分野でございますので述べさせていただきますが、よく、景気対策と言われますと必ず公共投資、社会資本が挙げられます。よく、アメリカの一九三〇年代のケインズ政策と言われるわけですが、アメリカの歴史を見てみますと、三〇年代の中ごろに一時的にケインズ政策が取られましたが、その後は、財政規律を引き締める、つまり増税をするというふうに動いておりまして、アメリカの長い歴史ではケインズ政策はほとんど取られたことがございません。日本を見てみますと、社会資本の整備がこれだけ行われたにもかかわらずなぜ景気が良くならないかと申しますと、(3)の(Ⅰ)の①でありますが、間接効果が小さい、つまり社会資本が整備されたにもかかわらず民間の設備投資がその地域に来ない、つまり社会資本をどんどんどんどんやり続けないとその経済が持ち上がらないということであります。
 ですから、一番のポイントは、どういう社会資本がその地域の民間の設備投資あるいは民間の企業を活性化させるのかと、これが私は一番のポイントだと思います。
 それから二番目、(3)の(Ⅱ)のところでありますが、海外から日本に入ってくる企業が少ないということが現在の日本の問題でもあります。特にアメリカなどでは、クリントン大統領がアーカンソーの知事のときには非常に日本に来られまして、アーカンソーに投資をしてくれと、こういうような政治的なリーダーシップを取られながら、自分の州にいろいろな日本企業を持ってこようと、こういうことをされたわけであります。
 ですから、今後私がお願いしたいのは、それぞれの地方の政治の方、自治体の方が、海外企業も含めて、どうやったらそこに民間の企業を誘致できるかと、こういうことも考えていただきたいと思います。
 次は四番目でありますが、円の国際化と東京市場の再活性化であります。
 これは、長年、何とか東京市場をアジアの中心にしようというふうに音頭は取られたわけですが、これがなかなかこれまで実現しておりません。ただ、もしこれができますと、東京あるいは大阪の市場が非常に経済波及効果は大きいと思います、情報の蓄積になりますし。
 そのためには、(4)の(Ⅲ)のところでありますが、円の国際化を進めると。これは円の利用度を高めるということでありまして、各国の中央銀行などにバスケット通貨制でリザーブとして円を持っていただく。
 特に強調させていただきたいのは、やはり政治的リーダーシップが特に必要だと思います。それから情報通信、その他のインフラが必要であります。
 次、三ページ目に、最後に三点ほど述べさせていただきます。
 中小企業対策でございますが、ここは、やはり民間の融資をなるべく促しながら、それで政府が助けていくということが重要だと思いまして、信用保証制度はいい制度だと思います。ただ、それを特別信用保証のように全額、一〇〇%保証するということはモラルハザードを生みます。つまり、悪い債権は信用保険機構に持っていこうと、そういう形で民間金融機関が悪い債権ばかり信用保証を付けますので赤字がたまります。ですから、そういう意味では部分信用保証制度、例えば九〇%保証するなどのやり方が必要だと思います。
 それから、五番目の(5)の(V)でございますが、貸出しだけで中小企業は育成できません。やはりファンドというような、投資信託のようなリスクを伴う金融資産での中小企業への支援ということも、是非両方のチャネルから考えていただければと思います。
 それから六番目は、預貯金中心からいかに債券、株式に持っていくかということであります。これは、ドイツは一九七五年の辺りには日本と非常に似ておりまして、預貯金中心でありました。ところが、それが最近では株式、債券の方に随分動いております。
 そこは幾つか理由がございますが、その中で、やっぱり収益の高い商品の提供、三番目、これが一つ重要だと思います。これも、日本の金融機関が国内だけで運用していますから、どうしてもいい株式が国民に紹介できないわけです。ここも、金融機関がアジアなどのいい商品を国民に紹介することによって、高い収益率の株式あるいは債券を販売するということが必要だと思います。
 最後、七番目でございますが、財政赤字と大量国債の発行であります。
 やっぱり大量国債の発行によりまして、日本は欧米諸国よりもGDP比で相当増えております。私個人といたしましては、これ以上の財政赤字は無理であると思います。
 そのためには、(7)の(I)でありますが、公共投資の予算は削減すると、しかし、間接効果が大きく、民間の経済活動は活性化できるような、そういう社会資本をなるべく拡大させると、こういうことが必要だと思います。
 時間の関係で以上にさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 吉野直行

speaker_id: 16667

日付: 2002-11-14

院: 参議院

会議名: 財政金融委員会