塩野宏の発言 (法務委員会)

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○参考人(塩野宏君) まず、萎縮効果ということの意味ですが、なかなか厳密に考えると難しいことですが、私なりに理解をいたしますと、制度ができたときに、その運用の結果、その制度の相手方の活動を不当に抑制させるあるいは不当に抑止するという、そういうものと理解をいたします。
 この場合のメディアに対する関係でございますけれども、これは四十二条の四号に掲げられているものでございまして、そのうちの四十二条四号のイは、これは言わば事後の、報道された事後のことに関するものでございまして、そうしますと、ここで萎縮するというのは、報道について何事かが勧告があり、更には裁判で審理されるということになると、同種の事案についてはこれを差し控えるというようなことになったときに効果があるという、そういうふうな話になります。それから、ロの方は、当該活動自体についてそれをやめなさいというような勧告がありますというようなことでありますが、この事案が重なりますと、同種の事案のようなことについては一種差し控えると、あるいは遠慮するというように、それこそ自粛するというような意味での効果はあります。
 ただ、それらがいずれも今申し上げたような萎縮効果、不当に本来自由な活動を抑止するということになるかどうかと申しますと、委員御案内のように、不法行為、当然これは不法行為の対象となります。私の知識でも、いわゆるプライバシーの侵害と、そして損害賠償責任の対象となるものはこれよりももっともっと広いものでございますけれども、特別救済の対象ということで、これだけ絞り込んだということでございまして、当然、不法行為の対象となるというものでございます。そして、今申し上げたことと関連いたしますが、被害の対象者が限定されているということでございます。
 それから、要件が絞られているということでございます。この要件の縛り方につきましては、この答申の段階では過剰な取材、プライバシー侵害や過剰な取材というようなことを言っていたわけですけれども、これについてはいろいろ考えた末、こういった規定ぶりにしたということで、この規定の文言等についてはいろいろな見解があろうかとも思いますけれども、私の理解では審議会答申を更に絞り込んだという、それはもちろん報道の自由についての配慮あるいは取材の自由活動についての配慮ということに由来するものであろうというふうに思います。
 それからまた、勧告にとどまるということにおいて、どうもこれが萎縮効果を招くということにはならないのではないかというふうに思うわけでございます。
 ただ、制度には常に濫用というものがあります。これは、科学技術について安全性がもう完全に一〇〇%安全なものであるということが言い切れないと同様に、恐らくすべての制度についてこれは絶対濫用が起こり得ませんなどということは言えないものでございます。しかし、これはかなり要件が絞られているということと同時に、後に裁判が控えているということと、常に裁判的な批判の対象にさらされるということがございます。
 それからもう一つは、独立の行政委員会がこれを所管するということでございまして、先ほど官僚は政治家の圧力に弱いという御発言もございましたけれども、行政委員会を独立の、職権行使の独立性を保障されているものでありまして、これを通常の官僚も政治に弱いというのはまたもう少し別の問題があろうかと思いますけれども、圧力に弱いという批判は当たらないと。そして、私も現に国地方係争処理委員会の会長職を仰せ付かっており横浜市の事件等もいろいろ担当したことがございますけれども、そういったことについて、あるいは元政治家の介入なんということはあり得ないとは思いますけれども、私どもはプロフェッショナルとして職権行使の独立性を堅持しております。それが揺らいだらば、日本における独立行政委員会の存在、あるいは係争処理委員会のようなものは存在意義を失います。そういう意味において、これは私は制度に対してある意味での冒涜ではないかというふうに考える次第であります。

発言情報

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発言者: 塩野宏

speaker_id: 31194

日付: 2002-11-12

院: 参議院

会議名: 法務委員会