大野元裕の発言 (イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○大野参考人 御紹介いただきました大野でございます。
 私は、もともとイラクのシーア派を研究している者として、あるいは湾岸戦争時に専門調査員としてイラクに赴任し、あるいは在ヨルダンのイラク班の次席としてイラクを見てきました立場から、私の経験と知識をこの特別委員会に貢献させていただければと思って、意見陳述させていただきます。
 きょう私が取り上げます主題は、イラクの治安状況でございます。
 現在、イラクの戦闘あるいは治安状況、これが話題になっておりますけれども、私は、湾岸戦争直後の掃海部隊、これを担当した者として、あるいは最後のシリアにおきまして、日本が九六年からゴラン高原に自衛隊を送っておりますが、そこで、現地でこういった自衛隊の方々の御苦労を見てきた者といたしまして、ぜひとも、もしも自衛隊がこの地域に派遣される場合には、現地の状況をきちんと把握していただいて、それに対するしっかりとした後詰めをやっていただいて派遣をいただきたいという観点から、この治安状況について述べさせていただく次第でございます。
 最初に、治安状況の悪化でございますが、現在、バグダッドが陥落して以来、その後の治安の悪化にはパターンが見られるところからお話をさせていただきたいと思います。
 お手元に資料があると思うのでございますが、そちらに表で書いてございますが、治安の悪化のパターンには四つのパターンが見られます。
 一つ目は、戦後のどさくさと申しますか、戦後ばたばたとした状況がございまして、そこでは略奪、泥棒あるいは暴行、こういった行為が行われてまいりました。
 これ自体は、発生している場所は大都市圏、例えばバグダッドでの映像が御記憶にあると思いますが、大都市圏で発生しておりますし、現在も、大都市圏の一部におきましては、子供あるいは強盗団、こういったものが略奪を行っております。あるいは、地方の石油施設等の政府関連の施設等が標的にされておりますが、これは時間がたてば安定とともに終息が期待されるものであります。
 そして二つ目には、組織的犯罪、これは、戦争の前にサダム・フセインが恩赦を行いまして、例えばギャング団、テロ組織、こういったものが監獄から出てまいりました。こういった者たちが主体となりまして襲撃、強盗、こういったものを行っています。
 これは場所としましては大都市の中、あるいは人が住んでいないところ、具体的には、例えばヨルダンとバグダッドの間の道路で、簡単に言えばホールドアップ強盗というんでしょうか、こういったものが出ております。さらには都市の周縁部でこういった強盗が出ておりますが、彼らは、行政がしっかりし、民生が安定化すれば恐らく抑えられていくものだろうと思っております。
 そして、ちょっと三つ目は後におきまして、最後に「特殊なパターン」と書いておりますが、政府が逃げるときに役人の人たちが放火を行うとか、あるいは一定の地域でこれまでの指導者層に対して報復の銃撃が行われる、こういったものが出てまいりました。最後に残された、今、米軍あるいはイギリス軍、こういったものが標的となっているテロ、狙撃、衝突行為、こういったものがございます。
 ここについて御説明をさせていただきたいんですが、発生場所、これは後ほどお話をいたしますが、特定の地域、それから大都市圏でございます。これはやはり、後ほどお話し申し上げますが、社会的、構造的不満への対処、これが不可欠であろうと私は考えております。
 今現在、最も深刻な攻撃で、自衛隊が派遣されるときに恐らく直接的に問題となるのは、この三つ目の、今アメリカが標的となっているような衝突、テロ事件だと理解しております。
 時系列で見ますと、二番目ですけれども、バグダッド陥落あるいは主要な戦闘の終結後、これが、サダム政権の残党が引き続き戦闘に加わって事態が不安定になっていたわけではないんです。五月の二十七日にファルージャというバグダッド西側の地域でアメリカ軍がデモ隊に対して発砲を行った、この日を機会として、実は、その後、死傷者を伴う襲撃事件が頻発しております。
 そこだけ見ていただきまして、三番目の、二ページ目に地図がございますが、こういった襲撃行為は、組織性があるかどうかというのは別といたしましても、実は特定の背景のある場所で発生しています。
 これは、大都市を除きますと、こちらの地図にございますけれども、西側のユーフラテス川沿いに上の方に上った地域、それからチグリス川をバグダッドから上に上った地域、この中部の地域に集中しております。この地域は、スンニ派の人たちが住んでおりまして、特に重要なことは、サダム政権とかつて連合関係にあった部族が住んでいる場所なんです。
 この人たちに今何が起こっているかというと、軍が解体され、政府が解体され、あるいはバース党がなくなった。それによって、この人たちはかつて特権層で、一定のお金と利権とそれからポストを与えられていましたが、彼らがいわゆる職を失って地元に帰っているわけです。あるいは、今後標的とされるかもしれないと考えて不安になっているわけです。ある地域、例えばラマディという地域では、ここの人たちは軍人に多く登用されていましたが、極端な言い方をすれば、この人たちが総失業状態になっている。これが現在の状況で、アメリカが入ってきたことによって状況はより悪くなっている。
 したがって、ここに、この人たちが、恐らく不満を持って何かをしている、あるいはサダム政権の残党の隠れみのとなることができる、そういう条件を提供している、こういった状況でございまして、これがまさに今発生している地域の、したがって、組織性とは申し上げませんが、一定の背景を共有しているところで事態が深刻になっています。
 こういった状況を踏まえまして、この三つ目のパターンへの評価でございますが、一つ目は、これまでの戦闘と、通常の戦争とは違って、前線を挟んで対峙するような戦闘というものはもはや発生はしていないというのが私の理解でございます。
 さらに、先ほど申し上げましたとおり、政権と連合関係にある部族は先行きの不透明感と不安を抱えています。したがって、たとえ民生が安定しても、この人たちの層がどう対処されるか、この人たちの将来がどのように処遇されるかということを見せないと、つまり社会的な、組織的な対応がなければ、この人たちの不満というものは解消されないと思っております。
 さらに、大都市にはさまざまな民族、宗教、部族が混在しております。不満を持っている層、持てる層、今後自分たちが期待とそれから希望を抱いている層、こういった人たちが混在しておりますので、何でも起こる可能性があるということです。
 それから、抑止の話が先ほども出ましたけれども、実は、標的となっているアメリカ軍は、イラクの国内でも最も装備にすぐれた軍事装備を持っていますが、残念ながら現実では抑止にはつながっていない。それよりも、残念ながら、武力を使ったことによって、ファルージャで先ほど申し上げましたとおりデモ隊に発砲したことによって、逆に民衆の不満に火をつけてしまったというのが実際に起こったことでございます。
 それから最後には、軍事的な防衛線に関してですけれども、実は、深い防衛線をしいた地域を突破して何かが起こったという事態は、南の方でイギリス軍に対して起こった事件の一件のみでございます。これは恐らく、デモ隊にイギリスが発砲したためにちょっと違った形で起きた事件なんですが、したがって、どちらかというとテロ的な行為、一発撃って逃げてしまう、こういった行為が行われておりますので、組織的に深く侵入するという行為は起こっておりません。
 それから、潜在的なアメリカ軍への不信感、これは非常に強いし、今も存在している。これは、戦前、戦中、戦後と、残念ながらアメリカの態度というのはイラク国民の関心に対してこたえ得るものではなく、逆に不信感をあおってしまった。これがアメリカが標的になっている、ポーランド軍でもなく、あるいはイギリス軍は一件だけございましたが、イギリス軍に対して多発しているわけでもなく、アメリカ軍が標的になっている理由であると思います。
 今後でございますが、シーア派層、これはシーア派層というのはイラクの人口の六割以上を占めていますけれども、このシーア派層も、実は、先ほどのスンニ派層に比較して弱いながらも不満をためていて、デモ等を行っています。実際に、アマラでイギリス軍を標的としたのはシーア派でございました。したがって、今シーア派層は抑えられていますが、今後、きっかけ次第ではシーア派層にもいろいろな事態が拡大する可能性は否定できない。そうなると、国家全土が不安定になってくる可能性も否定できないと思います。
 それから最後に、つい最近起こり始めたことでございますが、計画的で意図を持ったテロ活動の兆しも見え始めています。これは民生を安定させようとする石油に関連いたしまして、パイプラインの爆破事件、こういったものも起こっております。これまでのような場当たり的なものではなくて、組織的、計画的なものが発生していますので、今後は復興とともに、社会的、構造的な問題への対処をしないと、国家全土にこういった事態が広がることを防げないばかりではなく、あるいは、特定の地域においては、我が国の部隊あるいは協力というものをなし得る環境ができないという懸念すら出ているということでございます。
 以上をもちまして、私の陳述にさせていただきます。(拍手)

発言情報

speech_id: 115603808X00620030701_006

発言者: 大野元裕

speaker_id: 21489

日付: 2003-07-01

院: 衆議院

会議名: イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会