葉梨信行の発言 (憲法調査会)
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○葉梨委員 自由民主党の葉梨信行であります。
私は、明治憲法の制定過程やその運用に着目しながら、どのような方向で新しい憲法を制定すべきかについて意見を申し述べたいと思います。
まず、憲法の制定に当たっては、新しい国家の創出という視点を失ってはならないと思います。
幕末の開国によって、我が国は、長く続いた鎖国の時代に幕をおろし、新たな近代国家として出発することとなったわけであります。その際、明治天皇が神明に対して誓われた五カ条の御誓文は、まさに近代国家の創出に当たっての決意にふさわしいものでありました。私は、この五カ条の御誓文こそが明治国家の国是であり、明治憲法の基礎となったと思います。
また、憲法の制定に際しましては、自国の歴史、国柄といったものを十分に考慮することが重要であると考えます。なぜならば、憲法の英訳はコンスティチューションでございますが、このコンスティチューションとは、国の仕組みやら成り立ち、すなわち国柄という意味があるからであります。
明治憲法の制定過程を見てまいりますと、西欧近代国家に伍していくために、西欧の近代的な立憲主義の思想を学ぶと同時に、これと我が国の国柄を調和させるという難しい課題に直面し、明治二十二年の明治憲法発布に至るまで、起草者たちがさまざまな苦悩をした姿に十分に思いをいたさなければなりません。こうした明治憲法の起草者の姿勢を私どもは改めて認識しておく必要があると思います。
翻って、現在の日本国憲法の制定過程を見ますと、そこには我が国独自の立場からの新しい国家の創出へ向けた決意であるとか自国の歴史や国柄といったものについての議論が全くと言ってよいほど感じられません。なぜならば、それは、日本国憲法がGHQによって押しつけられたものであるからにほかなりません。
今日、明治憲法は天皇制絶対主義を掲げていたように理解されており、その評価は甚だしく低いものとなっているように感じます。明治憲法の実際の解釈、運用を見ればおわかりになりますように、明治憲法は決して天皇制絶対主義などという思想を持っておりません。私は、むしろイギリス型の立憲君主制を採用した憲法であったと考えております。
この点につきましては、坂野参考人から、明治憲法の基礎となった岩倉具視の大綱領は、実際には交詢社の起草した私擬憲法案を井上毅が保守的な方向で手直ししたものであって、その交詢社による草案が採用しておりましたのはイギリス型の議院内閣制であったというお話があったわけでありまして、改めてその思いを強くした次第であります。
戦後から半世紀以上を経た今日、我が国を取り巻く情勢は、東西冷戦の終結、グローバル化、情報化、少子高齢化など、大きく変わりつつあるわけであります。そのような中にありまして、むしろ我が国としてのアイデンティティーを重視して、歴史や文化を盛り込んだ憲法の制定こそが必要なのではないでしょうか。
日本国憲法は、憲法研究会という民間の団体が起草した憲法草案要綱がGHQの目にとまり、これがマッカーサー草案の基礎となったという事実は私も承知いたしておりますが、実質はほとんどGHQによって作成され、押しつけられたものであります。そもそも憲法の制定はその時代の国民の英知を結集する形でなされるべきものであるにもかかわらず、昭和二十年の敗戦後に外国からの押しつけによって制定された苦い経験を心に銘ずべきであります。
明治憲法の制定過程にあって、官民挙げての憲法創出の時期があったように、新たな憲法の制定に向けて、国民の中から再びそのような動きがほうはいと沸き起こってくることを期待するものであることを表明して、私からの発言を終わります。