中西啓之の発言 (予算委員会公聴会)
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○中西公述人 おはようございます。御紹介いただきました都留文科大学の中西でございます。
本日は、平成十五年度予算に関連いたしまして、三つの問題について、私の意見を申し述べたいというふうに考えております。第一は、所得税制の改革方向についてであります。第二番目は、公共事業と社会保障の問題であります。第三番目は、地方財政、特に地方交付税財源との関連で、市町村合併の問題について申し述べたいというふうに考えております。
私は、たまたま一昨年の三月から八月にかけまして、オランダのハーグのISSという、これは国立社会科学研究所というふうに一応訳されておりますけれども、そこの客員研究員として半年留学する機会がございまして、オランダの福祉や税制について若干調べてまいりました。
福祉国家といいますと、日本ではスウェーデンやデンマーク等々が主に紹介されているようでありますが、オランダも一味違った非常にユニークな福祉国家でありまして、そこの国の税制であるとか福祉のあり方について、多々参考にすべき制度をつくっているんじゃないかというふうに思いまして、現在も私研究中でございますけれども、その一端を御紹介しながら、日本の財政問題というのを考えていきたいと思っております。
表がお配りしてございます。表一は、オランダの所得税の税率表であります。
日本の所得税の税率につきましては、もう既に皆さん方御承知のように、一〇%から三七%まで四段階の税率区分になっておりますけれども、表一はオランダの所得税の税率表でございまして、ここにございますように、最低税率が三二・三五%。オランダでは、いわゆる住民税、日本の住民税に当たる地方の所得課税はございませんで、所得課税はすべて国税の所得税でやられているわけですね。最低税率が三二・三五%、最高税率が五二%で、四段階に分かれております。ここで一万五千三百三十一ユーロ以下の所得については三二・三五%というふうに書いてございますが、これは日本円で大体二百万円弱の所得について三二・三五%の税率を掛ける。
ところで、この三二・三五%、その次が三七・八五%でありますが、この最初の二段階の税率で課税されて国に納められた税収のうち、一〇・五%が特別医療保険会計、つまり日本で言う介護保険の財源にこの最初の二段階の一〇・五%がそっくり充てられる、こういう構造になっております。さらに、この最初の二段階の所得課税の一七・九%がAOWという国民年金の財源に充てられる、こういう構造になっております。
ここの注一に書いてございますように、現在、オランダは二〇〇一年度から税制改正が行われまして、それまではいわゆる所得控除、日本式の所得控除をやっていたのですが、税額控除という制度に変更いたしました。この日本の基礎控除に当たる税額控除が千六百四十七ユーロでございますが、これを今の為替レートで日本円に換算すると二十万円程度になります。これは税額控除でありまして、例えば、税率が三二・三五%でありますから、割り戻しますと、基礎控除に換算すると大体六十万円程度になるということであります。
問題は、今の為替レートで所得六十万以下の人には、日本の介護保険料であるとか国民年金の保険料に当たるとか、そういうものがかからないという仕組みになっているわけですね。逆に言いますと、日本の場合、ほとんどの低所得者に介護保険料あるいは国民年金の保険料というのがかかっているわけですけれども、これは、日本で言う課税最低限以下の世帯にはこれをかけない。かけないけれども、この制度を受ける権利は与える、こういう仕組みになっているわけですね。したがって、現在の日本のように、膨大な国民年金のいわゆる未納であるとか、あるいは介護保険の保険料の重圧であるとか、そういうことから低所得者は解放されているということであります。
さらに、いわゆる国民年金部分とそれから介護保険部分、さらにもう一つ、孤児手当という片親の子供に対する手当が一・二五%この財源から出るわけですが、それ以外がいわゆる日本で言う普通税収入、一般財源ということになるわけですね。そうしますと、最低税率が、実質的には最初の段階の税率が二・九五%、次の第二段階が八・四五%、さらに四二%、五二%というふうな税率になるわけでありまして、非常に累進度が高いということが言えるわけであります。
翻って日本の税制はどうかというふうに考えておりますと、表二で、一九八六年当時の日本の所得税の税率を資料に出してみました。このときは、日本の所得税におきましては、最高税率が七〇%でありまして、これを六〇%に下げ、五〇%に下げ、三七%に下げ、どんどん高額所得者についての減税を景気対策として行ってきた、こういう経過がございます。
私は、先ほど来指摘がございますように、所得減税と公共投資の増大という景気対策は失敗をしたのではないか、こういうふうに考えているわけですね。そうすると、国民一般の所得、特に低所得者を含めた中低所得者の所得をいかに高めていくかということを真剣に考えないと、日本経済というのは依然としてうまくいかないのではないか、こういうふうに考えております。
そういう意味で、私は、所得税の最高税率を八六年当時に戻すということを考える必要があるんじゃないか。これは、アメリカがレーガン政権のときに三五%に引き下げて、これはちょっと下げ過ぎたということで、その後、クリントンのときに引き上げたという経過があるわけでございまして、一挙に八六年当時まで戻さなくても、それに近づけるということをまず試みるということが私は必要ではないか。
翻って、ことしの平成十五年度予算の国民の負担増というのを一覧にしたのが表の三でございますけれども、これは、医療保険制度を変えるとか、あるいは介護保険料を引き上げるとか、あるいは年金給付額を引き下げるとかいう形で、合計いたしまして四兆四千億の国民負担増になっております。
先ほど来も話に出ております、九七年のときの消費税率の引き上げと医療保険制度の改正によって九兆円の負担増、あれで消費不況が進んだわけですけれども、現在は、給与が引き下げられるというふうな傾向とあわせて、この十五年度予算における負担増がさらなる不況の原因になるんじゃないかということを大変心配しているわけであります。
したがって、私は、所得税制の改革が重要であって、これはやはり最高税率を引き上げていくという方向で考える、それを財源にしていくべきじゃないかというのが私の意見であります。
第二番目に、社会保障と公共事業について申し上げたいわけでございます。
表の五に、各先進国の総固定資本形成対GDP比の国際比較というのがございまして、黒い部分が公的固定資本形成でございますから、いわゆる公共事業費に当たるものですね。これは、日本が五・一%、アメリカが一・九%、イギリスが一・三%、ドイツが一・八%、フランスが三%で、依然として日本の公共事業費、これは二〇〇〇年度の数字でありますけれども、非常に高いわけです。
これが平成十五年度の予算でどういうふうに変わったかということを見てみたわけでございますが、私のレジュメ、公述要旨に書いてございますが、公共事業費の比率が三・数%減少しております。
これは、一見、公共事業費を減少させようという御努力をやったかのように思われるわけですけれども、しかしながら、中身をよく分析していきますと、例の本四架橋の膨大な赤字が発生しております。道路特定財源を一般財源に変えるという措置が行われたわけですけれども、その道路特定財源を一般財源に変えた部分が公債費に変わって、本四架橋の借入金の返済に充てられるという形で予算に組まれておりまして、これが二千二百四十五億円ございます。さらに、先ほど来指摘されております、デフレによって公共事業の経費そのものが縮小しているというふうなことを考慮に入れますと、数字上は公共事業費が減らされているように見えるけれども、実質的には余り減っていないんじゃないか。
ここにつきましては、今後とも、高速道路でありますとか新幹線でありますとか空港でありますとか、こういう大規模公共事業が本当に今緊急に必要なのかどうかということについての十分な見直しが必要であろう、こういうふうに考えるわけであります。
これに関連いたしまして、私がオランダで調査いたしましたことを一つ御紹介しておきたいわけです。
オランダは干拓によってできた国であります。この干拓事業を最近は中止しております。
何で中止したのかということを調べて、ヒアリングをしてきたわけでありますが、これは、財政問題もあるけれども、一つは環境保全の問題がある。もう一つは、本当に干拓による土地が現在必要かどうか、ここを我々はよく考えなきゃいかぬ。現在、EUでの食糧需給といいますか食糧供給はもう飽和状態になっていて、これ以上農地をふやす必要はない。環境保全の上からも食糧供給の上からも、これ以上干拓の必要が認められないから、国会で論議をした結果、中止にしている。これは廃止とまではいかないけれども、もう非常に長い間中止をしている。こういうふうな回答がございまして、やはり本当に公共事業が必要かどうかという判断が大変大事かというふうに思うわけであります。
三番目の問題は、最近の地方財政の状況でございます。
これは、国の財政危機と連動いたしまして、特に、国税五税の一定割合を交付税の財源にするというふうにやっておりますけれども、国税五税そのものの税収が低下するというふうなこともございまして、いわゆる地方財政計画における歳出に交付税法で規定されている国税五税が決定的に足りない、不足する。従来は借入金をやってまいりましたけれども、それだけでは不足するということで、このところ、臨時財政対策債というふうな地方債を発行して、その償還を後年度の交付税に繰り入れる、こういうふうな措置をとっております。
これが市町村では非常に大きな誤解を生みまして、交付税が減った減ったというふうなことが広がって、今後は交付税の見通しがないということで合併に走るというふうなことがございますが、私は、合併が一体地域に何をもたらすかということについて、一言申し上げておきたいわけです。
皆さん方にお配りしております表の四ですね、これをごらんいただきたいと思います。これは、一九五〇年代のいわゆる昭和の大合併が地域に何をもたらしたのかということを調査して表にしたものでございます。
新潟県で一番小さな自治体が粟島浦村と申しまして、二〇〇二年の人口は四百八人であります。一九五五年当時、粟島浦村の人口は八百二十九人でございました。そのすぐ近くに、これは山形県でございますが、飛島という島がございます。これは五〇年代の昭和の大合併で酒田市に合併いたしました。この五〇年代当時、この飛島の人口が千六百二十一人ございました。当時、粟島浦村の人口が八百二十九人ですから、二倍の人口があったわけですね。
これが五〇年代に酒田市に合併されて、その後どういう運命をたどったかということでございますが、二〇〇二年の数字で比較いたしますと、粟島浦村の人口が四百八人、飛島の人口が三百四十一人。しかも、二十歳以下の人口を見ていきますと、飛島の二十歳以下の人口が三人、粟島浦村の人口が七十二人。保育園児は、飛島がゼロ、粟島浦村が八人。小学生は、飛島がゼロ、粟島浦村が二十二人。中学生が、飛島が一人、粟島浦村が十三人。役場職員が、粟島浦村が二十七人に対して飛島は四人。こういう状況でございまして、合併というのがいかに地域を崩壊させ、若者が住めなくなる地域にしてしまうかという、これが非常に明瞭に示されております。
昨年の十一月、地方制度調査会の西尾私案というのが発表されまして、これが全国の町村に大変な衝撃を与えております。一定の、例えば人口一万以下の小規模自治体は、事務を取り上げて、府県に委託させるか、あるいは近辺の市に委託させるかというふうな形で、もう少しずばり申し上げますと、こういう小規模町村に対する交付税を交付しないということをねらっているのではないか、こういうふうに思われる節があるわけでございまして、これが現在大変な反響を呼んでおります。
私は、この日本の小規模町村というのは、二十一世紀の日本を考えた場合に、食糧供給の面からも、あるいは環境保全の面からも、あるいは伝統文化の保存という点からも、非常に重要な役割を果たすわけでございまして、これを財政的な誘導によって合併に追い込まないということが非常に大事なことではないかというふうに考えておりますので、議員先生方もこの問題について御検討いただければ幸いだというふうに思っております。
御清聴ありがとうございました。(拍手)