予算委員会公聴会

2003-02-25 衆議院 全159発言

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会議録情報#0
平成十五年二月二十五日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 藤井 孝男君
   理事 斉藤斗志二君 理事 自見庄三郎君
   理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君
   理事 宮本 一三君 理事 末松 義規君
   理事 原口 一博君 理事 細川 律夫君
   理事 石井 啓一君
      荒巻 隆三君    伊吹 文明君
      池田 行彦君    衛藤征士郎君
      尾身 幸次君    大原 一三君
      奥野 誠亮君    亀井 善之君
      栗原 博久君    高木  毅君
      高鳥  修君    津島 雄二君
      中山 正暉君    丹羽 雄哉君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      原田昇左右君    松岡 利勝君
      松野 博一君    三ッ林隆志君
      持永 和見君    山口 泰明君
      上田 清司君    海江田万里君
      河村たかし君    小林 憲司君
      田中 慶秋君    中村 哲治君
      長妻  昭君    長浜 博行君
      細野 豪志君    牧  義夫君
      山田 敏雅君    吉田 公一君
      米澤  隆君    赤羽 一嘉君
      斉藤 鉄夫君    達増 拓也君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      佐々木憲昭君    中林よし子君
      藤木 洋子君    矢島 恒夫君
      金子 哲夫君    菅野 哲雄君
      中西 績介君    横光 克彦君
      井上 喜一君
    …………………………………
   公述人
   (東京大学先端科学技術研
   究センター教授)     伊藤 隆敏君
   公述人
   (専修大学名誉教授)   正村 公宏君
   公述人
   (中央大学経済学部教授) 長谷川聰哲君
   公述人
   (前都留文科大学教授)  中西 啓之君
   公述人
   (一橋大学大学院法学研究
   科教授)         水野 忠恒君
   公述人
   (東短リサーチ株式会社取
   締役チーフエコノミスト) 加藤  出君
   公述人
   (関西経済連合会理事・文
   化交流委員会委員(観光集
   客産業検討会座長))   山下 和彦君
   公述人
   (立正大学経済研究所長)
   (東京大学名誉教授)   侘美 光彦君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    —————————————
本日の公聴会で意見を聞いた案件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算

     ————◇—————
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藤井孝男#1
○藤井委員長 これより会議を開きます。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算、平成十五年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。
 この際、公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。平成十五年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。
 御意見を承る順序といたしましては、まず伊藤公述人、次に正村公述人、次に長谷川公述人、次に中西公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 それでは、伊藤公述人にお願いいたします。
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伊藤隆敏#2
○伊藤公述人 おはようございます。東京大学の伊藤隆敏であります。
 本日は、このような場にお招きいただきまして、ありがとうございます。私の方から、日本経済の現状と政策転換の必要性についてということで、二十分程度お話をさせていただきます。
 現在の日本経済について、私は次のような現状認識を持っております。
 第一に、デフレ、これは消費者物価の下落という形で定義できますけれども、このデフレは悪化しつつあり、デフレスパイラルが私は発生していると思います。これはデフレスパイラルの入り口にあると言う方もおりますが、私は既に発生していると思います。
 確認のため、図の一、これは、お手元資料の四ページに文章の後の方につけておりますが、図の一で見るとわかりますように、一九九八年半ば以降、消費者物価は下落に転じておりまして、過去三年、消費者物価は大体マイナス一%という率で下落をしております。これがデフレであります。
 二番目の認識として、伝統的な金融政策、これは金利を操作するということですが、これは、御存じのようにゼロ金利ということで最大限使われておりますが、これ以上金利を下げることはできない、名目金利をマイナスにすることはできないという意味で限界に来ているということだと思います。それで、日銀当座預金の積み増しといういわゆる量的緩和が図られてきましたが、これも余り効果がないということだと思います。
 三番目に、単に財政赤字の規模を大きくするという意味での伝統的な財政政策、これはしばしばケインズ型財政政策と呼ばれておりますが、これも余り効果を持たなくなった。これは、もちろん使ったお金の分の効果はありますけれども、それが民間の需要を派生して呼び込む、こういう派生需要のところが非常に効果が小さくなってきたというのが認識であろうかと思います。
 さらに、財政赤字を大きくしてきたために、国の債務が非常に大きくなっています。この債務・GDP比率が今年度末で一四〇%を超えると言われています。これ以上の財政赤字を積み増しというのは非常に危険ではないかというふうに私は考えております。
 これは、お手元資料四ページの図の二というところに、G7の国の一般政府債務・GDP比率の過去十二年の推移が書いてあります。一九九〇年には、日本とアメリカというのはほぼ同じGDP比の政府債務を持っておりました。六五%程度でありましたけれども、過去十二年の間に日本は非常に債務・GDP比率が高くなりまして、G7の中で最悪、一四〇%を超えていると。来年、来年というかことし末ですね、これは多分暦年だと思うんですが、OECDの資料でございます。多分暦年だと思いますが、一五〇%になるだろうと。このような状況でさらに財政赤字をどんどん拡大していくというのは、財政の危機に一歩一歩近づいているということだと思います。
 平成十五年度予算でも、前年度の当初予算に比べて財政状況というのは確実に悪化しております。歳入に占める公債発行額の割合は四四・六%、つまり、国の予算の半分が借金だということですね。発行額もふえている、税収は減っているということで、私は極めて財政状況は悪いというふうに思っております。
 四番目の認識としましては、不良債権処理。銀行のシステム不安、銀行の財務体質の脆弱性というのは、相変わらずこれは解決に向かっての進み方が非常に遅いということだと思います。
 したがって、以上の四点が私の日本経済に対する基本的な認識であります。
 先ほど、デフレスパイラルが発生していると言いましたが、これはどういう現象かということをお話ししたいと思います。
 スパイラル、これはいろいろあるんですけれども、私は、次の四つの悪循環、悪循環という意味でのスパイラルが発生していると思います。
 第一に、デフレ期待を通じたチャンネルであります。
 これは、デフレが起きている、消費者物価が下がると思えば当然デフレ期待というものが発生しまして、将来も下がるだろう、そうすれば消費を控えるということが起きます。あるいは投資を控えるということが起きます。したがって、消費のタイミング、投資のタイミングがおくれるということで、総需要が減る。したがって、総需要が減ることによって物価がさらに下がる。これで悪循環の輪が完結します。
 もう一つのチャンネルが、今言ったのはフローの意味での投資、消費を通じた効果でありますが、もう一つの効果は、積み上がったストックに対する効果であります。
 これは、デフレになりまして一般物価が下がっていくという状況の中では、これまで借りたもの、これは名目で借りています、住宅ローンにしても、設備投資のための資金にしても、これは名目の契約でありますから、その名目の契約の実質的な価値、つまり、幾ら稼いで返したらいいのかという実質的な債務が増大しているということであります。そうしますと、消費者ローンを借りている消費者にとっては、収入がどんどん減っていくのに同じ額を返していかなきゃいけないという意味で、実質負担が増加しているということで、その分消費に回す可処分所得が減っているということになります。
 したがって、このような名目の債務を負っている人にとって、物価が下落していくということは、可処分所得を減らして消費を減らす、あるいは、事業資金の場合には投資を減らすという形になって、総需要不足になってデフレになる。これで悪循環が完結するという、ストックを通じたチャンネルがございます。
 もう一つは、資産価格を通じたチャンネルでありまして、デフレであるということは、実質金利、これは名目金利マイナスインフレ率ですから、実質金利を上昇させます。インフレ率が下落するということは実質金利は上昇するということですから、これによって資産価値というものが下落していきます。金利が上昇するということは資産価値が下落するということですから、これによって住宅あるいは設備投資が抑制されるという効果がございます。
 したがって、買う人がいない、つくる人がいなければ資産価格というのは下落していきますので、資産価格の下落につながっていくということで、これで悪循環がもう一つ完結すると。
 もう一つは、実質金利の上昇、資産価格の下落から耐え切れなくなって破綻する借り手が出てきます。これが不良債権ですね。この結果として銀行の財務が悪化してまいります。これによって、御存じのとおりの銀行の貸し渋り、貸しはがしという現象につながって、中小企業の倒産あるいは総需要不足ということにつながっていくということで、さらにこれが物価を下落させると。これでもう一つのデフレのスパイラルが完結いたします。
 このように、デフレスパイラル、幾つかのチャンネルがあるわけですが、これらがすべてデフレがデフレを呼ぶという形での悪循環になっているわけです。
 そこで、このようなデフレの克服がなぜ重要かということでありますが、今説明しましたように、デフレというのは、放置しておくと、どんどんデフレがデフレを呼ぶという形で悪い方へ悪い方へ行って、自律的な回復の過程というものがないんですね。経済の多くの現象の場合には、何かショックがあった場合には自律回復機能というものがある場合が多いのですが、このデフレに一たん陥ってしまうと、それが働かなくなるという非常に危険な状況だと思います。
 それから、不良債権問題というものがそのチャンネルの一つだというふうに申し上げましたが、今既にその不良債権問題というのは非常に長い間苦しめられてきた現象でありますが、これをさらに悪化させる。つまり、過去の不良債権を処理したとしても、新しい不良債権がどんどん出てきてしまう。したがって、デフレが継続している以上、過去の不良債権を処理しても処理しても、どんどん新しい不良債権が出てきて銀行が苦しめられるということになります。
 三番目の恐ろしい点は、これは財政破綻の危険性であります。デフレが続くということは、どんどん税収が減っていく。一方、景気刺激のために財政の出動が要請される。税収は減って支出がふえるわけですから、当然赤字額はふえていく。先ほど申し上げましたように、既に政府債務・GDP比率というのはほぼ危機的な状況まで高まっているわけですから、これ以上デフレを放置するということは、さらに財政破綻の可能性を高めていくということでございます。
 もう一つは、デフレの状況では金融政策の力を発揮できないということであります。伝統的な金融政策の手段がない。つまり、実質金利を下げることができない。デフレがひどくなればなるほど実質金利は上がっていって、金融は自動的に引き締めになっていくという点がございます。
 このような点を総合して、デフレというのは経済を縮小均衡、悪い均衡へ向かわせているということが言えます。つまり、日本経済の潜在的な力を引き出すことができないというような状況をつくり出しているのがこのデフレという現象であります。
 では、このデフレというものから脱却するにはどういった政策が必要になるのかということでございます。
 今説明しましたように、伝統的な政策というものには限界があるということを申し上げました。したがって、非伝統的な政策というものを使わなくてはいけないというふうに私は考えております。
 それで、これは一つの政策でデフレから脱却できるわけではございませんで、恐らく、幾つかの政策を組み合わせるという、いわゆる政策パッケージというものが必要かと思います。
 私は、そこに五つの重要な要素を書いておきました。
 一つ目が、いわゆる非伝統的な金融政策というものでございます。これは、これまで日銀が購入していなかったような資産というものを購入して、そういう新しいチャンネルから貨幣供給を行っていくということでございます。
 二番目が、その金融政策の効果を高めるためにインフレ目標を導入するということでございます。これは、効果を早め、しかも副作用を抑えるという効果があると私は考えております。
 三番目は、非伝統的な財政政策という名前をつけましたが、いわゆる総額としての財政赤字をふやすのではなく、乗数効果の低いプロジェクトから高いプロジェクト、つまり、民間の投資を呼び込むような、誘い水となるようなものを探し出して、そこに支出を移していくということがぜひ必要だというふうに考えております。
 もう一つは、歳入の方であります税制、これの改革が必要だというふうに考えております。短期的な減税という消費刺激と、中期的には、先ほど言いましたように増税は免れないというふうに思っておりますので、中期的には増税することを組み合わせるということがぜひ必要ではないかと。消費、投資が落ち込んでいるわけですから、そこを刺激するような、住宅投資あるいは設備投資を刺激するような減税と、中期的には消費税の増税というものは私は不可避であるというふうに考えております。
 五番目は、不良債権の迅速な処理。これは皆さん口をそろえておっしゃることで、異論はないと思いますけれども、これがなぜおくれているかということは、採算がとれないような企業、債権放棄を何回やっても立ち直れない企業というものは、これには退場していただくということがぜひ必要であります。不良債権を切り離すということを行って、初めて銀行の財務は改善するというふうに思っております。
 このような五つの要素を書き出しましたけれども、これを同時に行うということが私はぜひ必要だというふうに思っています。これは、相乗効果をねらうということもございますけれども、一つだけ取り出してやると、かえってデフレは短期的には悪化するという政策、これは例えば不良債権の処理がそれに当たると思いますが、そのようなものもありますので、同時にやることによって、お互いの副作用を打ち消し合って相乗効果をもたらすという効果があるというふうに考えております。したがって、ぜひこのようなパッケージを導入して、デフレからの脱却を図っていただきたいというのが私の希望でございます。
 次に、財政規律のことについてお話しさせていただきます。
 今のままの財政赤字、これは、GDP比で七%あるいは八%というような数字になっておりますが、これをこのまま続けますと、私は、数年のうちに財政は取り返しのつかない事態になると思っております。
 それで、財政破綻が何かということと、どの数字まで行ったら危ないのかということについて、特に学界の定義があるわけではありませんし、国際的にも基準があるわけではありませんが、一般に、一般政府債務・GDP比率が二〇〇%になるということはもう実質的に破綻ですねということを言う学者の方は多いというふうに思います。
 では、この二〇〇%というのがいつ達成されるのかということですが、これは、今のままの七、八%の財政赤字を毎年出していきますと、六、七年のうちには二〇〇%になってしまうということですから、日本経済に、デフレ脱却それから財政規律のための財政再建というものに取り組むまでの時間というのはそう長くはないということでございます。したがって、今すぐにでもデフレ脱却、将来的に財政再建、すぐにはできないと思いますけれども、将来的には財政再建ということに取り組む、その道筋をつけるということは非常に大切だというふうに思っております。
 非伝統的な金融政策が重要であると申し上げましたが、その中身は何なのかというと、これまでは、国債の買い切りの増額ということを行っていわゆる量的緩和を行ってきたわけですが、これは必ずしもうまくいっていない。その理由は、銀行を通じたチャンネルということ、これが伝統的な金融政策でありますが、そこに集中していたために、銀行が不良債権に苦しんでいる中ではどうも効果が出ないということがわかってきたということだと思います。
 では、どうすればいいのか。非伝統的な政策、これは、例えば上場株式投信、いわゆるETFというものを買う、あるいは上場されている不動産投資信託、REITと呼ばれているもの、これを購入していくということによって新たな貨幣供給のチャンネルをつくり出すということを実行するということであります。
 これは、それまでETFあるいはREIT、不動産を持っていた人から資産を買い上げて貨幣供給をするわけですから、供給されたその貨幣がそれまでの投資家に渡る。彼らはまた株を買うかもしれないし、不動産を買うかもしれませんが、外債を買うかもしれないし、消費するかもしれないし、投資するかもしれない。どこに行っても悪いことはないわけですね。株に行けば株が上がるでしょうし、外債に行けば円が下落するでしょうし、消費すれば直接それで効果が出てくるということで、どこに使われるかはやってみなければわからないわけですけれども、悪いことはないという政策であります。
 つまり、ポートフォリオバランスを変えていただくということでリスクをとっていただく、あるいは、消費、投資をしていただくというためにこのような非伝統的な金融政策ということが重要だと思います。
 それから、インフレ目標政策というのはどういうことかといいますと、インフレ率が二年後に一から三%になるというようなコミットメントを行って金融政策を行うということで、これは副作用があると言う方がいらっしゃいますが、私は、むしろ副作用を抑えて、今言った非伝統的な金融政策の効果を高める効果があるというふうに考えております。
 最後に、ちょっと時間が超過しているかもしれませんが、一分だけいただきまして、円安誘導の話をさせていただきます。
 日本経済がこのようなデフレで不況になっているときに、円安をすることはいいことだということで、円安誘導したらどうかという意見がございます。円安になれば、これはもちろんデフレに対して効果的な対策になるわけですが、では、果たして円安にすることができるのか、あるいは、そういう政策を政策として行うことが適切かということでございますが、私はむしろ、先ほど言った政策パッケージというものを行えば自然に円安になる、自然に円安になったものを放置すればいいというふうに考えております。何もしないまま介入だけ行っても、恐らく円安にするのは非常に難しい、適切な政策パッケージを行えば確実に円安になると私は考えております。
 したがって、無用な摩擦を起こす必要はありませんで、適切な国内政策をとることによって自然な円安が起きて、それを放置するというのが適切な政策かと思います。
 以上でございます。どうも御清聴ありがとうございました。拍手
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藤井孝男#3
○藤井委員長 ありがとうございました。
 次に、正村公述人にお願いいたします。
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正村公宏#4
○正村公述人 正村でございます。
 時間が大変制約されておりますので、私が重要と思うことを二点だけお話ししようと思っております。
 申しわけございません。二、三日前にレジュメを渡してしまいますと、それと違う話をするリスクがありますので、ぎりぎりまで考えておりまして、お手元に何もございません。
 大きな柱になるようなお話を申し上げます。
 最初に申し上げたいのは、財政のあり方についての基本的な考え方をここらで確定する必要があるんじゃないかと。
 私が率直に疑問に思いますのは、政府という組織は過去の教訓を学ぶということができない組織なのではないか、そういう疑問を持ちます。何を言いたいかといいますと、財政というのは経済という大きなシステムのサブシステムである。しかも極めて重要なサブシステムである。したがって、財政だけを眺めて財政の再建を考えたら必ず誤るということですね。財政だけを考えて、例えば、赤字減らしのために短期間のうちに何とかしようと思って抑制的な政策をおとりになると、経済が不均衡を起こしますから、必ずそれが財政にはね返る。今まさにそういう姿になりつつあると思いますが。
 今回の場合を含めて三つのケースを申し上げたいと思います。
 まず、一九八〇年代の前半、臨調行革ということをおやりになりました。そんな古い話をするのかということをお感じになるかもしれませんが、今につながる重大な誤りをしているわけです。なぜかと。臨調行革のときに、「増税なき財政再建」をスローガンにして年々公共投資を削りましたね、物すごい勢いで。あのとき私は、こんな財政運営をやっていたら、どんな国際競争力の強い経済であっても必ずおかしくなるということをしゃべったり書いたりしていたんですね。
 数年を経ずして貿易黒字が急拡大をいたしました。アメリカのレーガノミックスと時期が重なったという不運もあったんですけれども、あんなことをやったら貿易黒字が拡大するに決まっているんです。貯蓄超過になって黒字が拡大いたします。その結果、急激な円高が起こりましたね。三年間に円の対ドル価値が二倍になるような激変がありましたね。円高不況が起こり、アメリカからの黒字削減の圧力がかかり、内需拡大だと言ってアクセルを踏んで、それがバブルを引き起こして、その反動で九〇年代の深刻な経済危機が起こったわけですね。
 財政運営の誤りが経済の不均衡を拡大させて、経済を危機に追い込むということを学ばないといけないと思うんです。
 もう一つの例を申し上げますと、これは皆さん御記憶に新しいと思いますが、九七年の橋本内閣の財政構造改革という、財政再建の計画をお出しになりました。
 あのときも私はどういうことを言っていたかというと、私のアリバイを言ってもしようがないんですけれども、どういうことを言っていたかといいますと、財政の再建は重要であり、赤字は減らさなければならないけれども、三年とか五年とかという限られた期間のうちに何とか格好をつけようと思って財政を抑制したら、日本経済の安定成長は不可能になりますよ。財政再建は、三十年かかって赤字を広げてしまったわけですから、十年、二十年、三十年かけて何とか健全化するという粘り強い取り組みをしないといけないのであって、短期間のうちに格好をつけようと思ったら経済がだめになる。経済がだめになったら、財政の再建どころではなくなりますよ、改革どころではなくなりますよというのがあのときの私の発言でありました。
 残念ながら、私の懸念は的中したのであります。私の懸念が的中したということは、私にとっては喜ばしいことでありますけれども、日本経済にとっては大変悲しいことですよね。
 ところがなぜか、その後しばらくの間景気対策をいろいろ政府はおやりになったわけですけれども、今度の小泉内閣になって、改めてこれではだめだというふうにお考えになったんでしょうけれども、基本的にまた同じことをおやりになったと思います。財政改革を棚上げにして景気対策をやるか、景気対策を棚上げにして財政改革をやるかという二者択一を入れていらっしゃるわけです、政府のやっていることは。
 それをやっていたらじり貧になります。こういうことをやっていたら、国家と社会が破滅に追いやられます。絶えず中途半端なことになって、じりじりと追い詰められて、来年度予算案を拝見しますと、国債依存率が四四%。じり貧予算ですよね。なぜそうなったのかということについてお考えいただきたいわけです。
 繰り返しになりますが、財政は経済という大きなシステムの重要なサブシステムであって、経済を無視して財政再建を急げば必ず経済がおかしくなって、その経済がおかしくなったことが財政にはね返るということをお考えいただきたいわけです。
 そのことをもう三回も、今申し上げただけでも三回間違えているわけですから、ここらあたりで、財政を再建するということを日本経済の中期、長期、超長期の展望の中での安定成長の保証ということに関連づけて、こういう危機が深ければ深いほど周到な戦略が要るわけでありますから、議会及び政府の内部においてぜひ真剣に御検討いただきたい。これは、経済専門家の私どもを含めての責任でもありますけれども、考えないといけないと。今までのいろいろなでき合いの議論では処理できない深刻な事態にあるだけに、経済と財政の関係をしっかりお考えいただきたい、考えようではありませんかということを御提案申し上げたいわけであります。
 ついでにそれとの関連で申し上げますと、財政を引っ込めなければならない、いや、財政では景気のことはもう構っていられない、財政の切り詰めが先だ、あるいは再建が先だ、赤字減らしが先だということで、財政が引くということを一方で考えておられるために、ここしばらくの間の政府のいろいろな対応を拝見していますと、金融に過大な期待をかけていらっしゃると。しかし、金融というのは、それぞれが採算性を考えて行動するはずの企業とか家計とかいうものが、自分の判断でお金を借りて投資をするかしないかということが最後に問題なんですから、財政とは違うわけです。
 こういう深刻な不況のときに、しかも、ただ数量的に縮小しているという不況ではなくて、デフレが起こっている。数年前には、物価が大幅に下がれば国民の実質所得が上昇するからいいんだという気楽な議論がはやったことがありますけれども、とんでもないということを私は言っていたわけです。物価が大幅に下がるということはデフレですよ、デフレが起こったら大量失業が発生しますよ、規制緩和、規制緩和で物価を下げればいいなどという気楽な議論はちょっとやめてほしいということを言っていたわけです。今は皆さんはデフレを心配していますよね。これも私の懸念のとおりになった。これも、私のアリバイを言っているのでちょっと恐縮なんですが、当たり前のことを無視した議論が多過ぎるんですよ。
 そういう状態のときにお金をだぶつかせて、投資が起こってきますかと思うんです。投資がなぜ起こらないか。それは、目の前で物価がどんどん下がっているわけですから、物をつくっても採算がとれない。数量も落ち込んでいるわけです。そして、先ほど申し上げたいろいろないきさつがあって円が高くなり過ぎちゃって、中国を含めた新興国に生産設備が移動している。こういう事態の中でどうして国内で投資が起こりますかと。
 お金をだぶつかせれば投資が起こるというのは幻想であります。そういう幻想に基づいて、政府は財政を消極的に運営せざるを得ないから、金融何とかしてくれよ、日銀何とかしてくれよ、資金をだぶつかせるような運営をしてくれよというのは私は筋が通らない。そういう筋の通らない議論を何回も何回も繰り返しておられるというのは、私は知的な退廃だと思います。認識のリアリズムに欠けていますよね。認識のリアリズムと実践のリアリズムということを呼び戻してほしいわけです。いや、もともとあったのかどうか疑わしいですけれども。でも、それがなかったら滅びます、本当に。そのことを私は強調したいわけです。
 第二に申し上げたいことは、そういうふうに考えるならば、財政のあり方ということについて、新しい時代に合った前向きの対応をしなきゃいけない。前向きの対応というのは、過去にあったような公共投資の大盤振る舞いを繰り返すということでは絶対にあり得ないわけです。
 そもそも公共投資については、これも私は、三十年来の持論なんですけれども、景気が悪いからといって公共投資をばんばんふやすというやり方はやめた方がよろしい、景気がよ過ぎるからといって公共投資を一挙に絞ってしまうのもやめた方がいい。公共投資というのは、未来の世代のためにどういう国土を残すか、どういう都市を残すか、どういう生活環境を構築して次の世代に渡すのか、こういうことのためにやる事業でありまして、道路をどんどんつくって、一日に何台車が通るかわからないようなところに何本も道路をつくるようなことをやっているというのであるとすれば、そのことをやることで景気が多少よくなったからといって満足するわけにいかないでしょう。公共投資というのは、長期の社会資本整備の観点からきちんと計画を立ててじっくりやる。多少の弾力性は必要ですけれども、臨調行革のときのように急に締めたり、あるいは、七〇年代後半のように大盤振る舞いをばんばんやったり、こういうことはやらない方がいい。
 私は、二十一世紀、どういう社会をつくるのかということについてのしっかりした構想をお持ちになって、ナショナルゴールというのは、政府がつくって国民に押しつけるものではございません。国民のコンセンサスに基づいて、合意に基づいて、どういう社会を目指すのかということを考えなきゃいけないわけであります。しかしながら、そのコンセンサスづくり、二十一世紀の日本、二十一世紀の世界はどうするのかということについてのコンセンサスづくりのリーダーシップを政府が発揮していただく必要があると思うんです。そういうメッセージが見えるような予算編成をやっていただきたいわけです。
 何が課題か。明らかなことは、二十世紀型の、資源浪費的、環境破壊的、そして人間破壊的なこの文明はもたないことがわかっているわけです。私たちは、厳しくても、環境と教育及び人間形成、そして生活の安全保障のための福祉、こういうところにしっかり重点を置いて、環境が守られ改善されて、そして、教育がしっかり行われて信頼できる人間が形成される。今の日本の社会の最大の問題は、子供たちが自分たちの力で社会をつくって生きていく能力を身につけるということが困難になっているということです。社会力とかいう言葉を使っている社会学者がいらっしゃいますけれども、まさにそうなんですね。社会をつくって生きていくという能力を身につけることができなくなっている。学力云々というよりも、学力を本当につけていくような意欲、動機づけがないわけですよ。目標喪失の状態に子供を置いているわけですよ。テレビとかテレビゲームが彼らの精神を破壊しているわけですよ。こういう状態からどうやって脱却するかということを真剣に考えないといけないと思います。
 ですから、私は、新しいタイプの積極財政のようなものをお示しいただくことができないだろうかと。積極財政というと古いイメージかもしれませんが、社会の安定と安全を目指すためのポジティブな、前向きのプログラムを持った財政運営、予算編成というものを考える。それが、引っ込み過ぎる、削り過ぎるということを抑えて、大事なところにお金をちゃんとかけていますよ、そういう予算編成にするということにつながると私は思うんです。
 繰り返しになりますが、環境と教育と福祉。環境は、森林の保全とか、河川、湖沼、海洋、そういうものを本当に力を入れて浄化していく。不必要な埋め立てなんかはやらないようにして、生活環境をまず保全する、あるいは改善する。それから、都市化が物すごく進んでしまって、通勤時間が長くなって住宅事情が悪くなっているわけですから、省エネルギー化を一生懸命進めて新しい都市をつくるということと、通勤時間は短くしたり、あるいは通勤しないでも済むような働き方を工夫したり、二十一世紀型の働き方をつくるということとつながりますよね。そういうビジョンを持って、どこにお金をかけるかということをお考えいただきたい。
 教育については、私は差し当たり次のようなことを御提案申し上げたいと思うんです。
 家庭の教育力を強めることは、保育力と教育力ですよね。少子化が行き過ぎているわけですし、それをサポートすることが重要であることは改めて申し上げるまでもないわけですけれども、家庭と地域社会共同体の教育力が衰弱しているという現実を踏まえて、学校教育のあり方を強化する。学力、学力という話がありますが、私は学力を軽視するものじゃありませんけれども、繰り返しになりますが、さっき申し上げたように、社会力が問題なんです。
 七〇年代に、私は、ドイツ並みに日本の小学校も二十五人学級にしたらどうですかということをある団体のプロジェクトで提案したことがあるんですけれども、まじめに聞いてもらえませんでした。でも、今思うに、先生の目が行き届くような教育にしなきゃだめなんですね。十年かけて二十五人学級をつくる、そのために優秀な人材を集めて、育てて配置する、そういうプログラムをおつくりいただけないか。成熟した社会は、成熟した社会が存続するために、明確な目的意識を持って、子育て、あるいは、子供を育てるというより子供が育つ環境、条件をつくる、そういう取り組みをする必要があると思うんです。
 それから、福祉の分野については、時間がありませんから要点だけを申し上げますけれども、何が足らないかというと、いろいろな事業は民間の主体にゆだねることは結構だと思うんです。いろいろな民間の主体が出てきて、それが介護やその他の事業を行う。そういうところにゆだねるのは結構だと思うんです。一番欠けているのは何かというと、相談なんですよ。
 ケースワーカーという仕事がありますけれども、ケース・バイ・ケース、それぞれの人の抱えている問題ごとに、あなたならこういうサービスが受けられますよ、こういう施設がありますよ、こういうことをやったらどうでしょうかという、そういう真剣に、親身になって相談してくれる人が非常に少ないんです、日本の場合には。地方公共団体の側が、ケースワークとかケアマネジメントとか、そういう仕事をする人をもっと抱えないといけません。
 現実はどうかというと、多くの自治体で、ケースワーカーというのは大変だから、大学を出たばかりの若い人をちょっと配置して、三年ぐらいここで我慢しなさい、そうしたら君の希望するところへ回してあげるからとやっているわけですよ。すべての自治体とは言いませんが、そういうことをやっているところは多いんです。しかも、人数が非常に少ないから雑務がいっぱいあって嫌がるわけですよ。こんなことをやっていて、豊かになった社会と言えるかというんです。
 この国会の中を見て愕然としますけれども、そこらじゅう階段だらけで、めちゃくちゃにバリアフリーでないですよね。昭和初年の建物だと思いますけれども。このバリアフリーでない社会が、物理的なバリアフリーだけじゃないんですよ、ヒューマンウエアの面でバリアフリーになっていないんです。家族のだれかが倒れたときに、あそこへ相談に行けば必ずちゃんとやってくれるということを、周りを見て経験して知っていれば、安心感がありますでしょう。
 そういうところに人材を育てて配置するということにお金をかける。これは、道路をつくるよりも少ないお金で効果があります。そして、短期的な経済的効果は限られているけれども、国民に安心感を与え、目標を与えるという効果がありますね。こういうメッセージをちゃんと込めた予算編成をやっていただかないと、いつまでもじり貧財政になると私は思います。
 最後に一言、哲学みたいなことを申し上げますけれども、二十世紀初頭の世界の知的状況と二十一世紀初頭の世界の知的状況の決定的な違いがあります。それは、計画経済はだめだということを、深刻な物すごい犠牲を払った二十世紀の大実験の結果、多くの人が認識しているということです。やはり、高度の文明を維持していくには市場経済を使うしかないかということをみんな思っているということです。
 しかし、市場経済には、御存じのようにたくさんの欠陥があります。放置すれば、環境を破壊し、社会を破壊し、文化を破壊する。子供の生育環境を破壊し、家族の機能を低下させるんです。だから、その市場経済をどうやって制御するか、コントロールするかということについて、しっかりした考え方を持たないといけない。小さな政府論は破産しています。政府は、小さければいいんじゃないんです。強くて信頼のできる、しっかりした、やることをきちんとやっている政府をつくっていただかないといけないんです。この思想転換をやっていただかないと、日本はじり貧に追い込まれます。そのことを御提案申し上げて、私の話を終わらせていただきます。
 御清聴どうもありがとうございました。拍手
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藤井孝男#5
○藤井委員長 ありがとうございました。
 次に、長谷川公述人にお願いいたします。
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長谷川聰哲#6
○長谷川公述人 おはようございます。中央大学の長谷川でございます。
 予算委員会の場で皆様に発言する機会を与えていただき、感謝しております。
 国際経済と産業構造を研究するエコノミストの立場から、我が国が置かれている国際経済の環境の中で、産業構造の変化、将来のあるべき姿について、政府がどのようにかかわらなければいけないかを、中長期的視野の中でお話しさせていただきます。
 経済政策としての構造改革とは、規制によってゆがみを持っている評価基準を市場の評価基準に引き戻すこと、その結果として、産業間の価値のウエートを変化させていくことではないかと考えております。そうした構造転換が進む過程で旧来の分野から解き放たれる資源は、直ちに社会的に望ましい分野で利用されずに、ある部分遊休設備となり、ある部分失業などの痛みが生じます。
 私たちの経済は、長期にわたり各国は同じような産業構造の変化を経験してまいりました。今日の先進工業国の産業構造は、G7諸国の就業人口に占める部門別雇用の割合を見ても、またGDPに占める部門別生産高の割合を見ても、サービス産業に既に七割近くの労働が投入され、国民経済の七割近くがサービス産業による付加価値によって成り立っていることが知られています。製造業のウエートは三割弱にまで縮小し、農業のウエートは雇用比率で四%弱、GDP比率で二%弱となっています。
 我が国の二〇〇〇年における農業のGDPに占めるウエートは一・四%、総労働人口に占める農林水産業従事者の比率は五・一%にまで縮小してまいりました。ちなみに、二〇〇〇年時点の農林水産業従事者の労働人口は三百二十六万人という規模になっています。
 戦前戦後の我が国の経済発展の過程で、我が国の産業は、農業から製造業へ、製造業からサービス業へと、その核となる部分は大きな変化を遂げてまいりました。先進工業国は、日本も例外なく、その経済構造はサービス産業に傾斜してきたことがわかります。これらの長期的な産業構造の変化は、既に配付してあります図五・一及び図五・二、及びその下の「戦後の日本の農業」と題した表からおわかりいただけると思います。
 ところで、こうした構造変化が起こってきたと同じ時期に、世界の経済取引は自由貿易への歩みを着実に進めてまいりました。一九四七年以来、ガットそしてWTOは、戦後一貫して、国際貿易における数量規制を禁止し、関税による産業保護を原則的に認める立場をとってまいりました。
 八回を数える多角的貿易交渉の最大の成果は、一九九四年にたどり着いたウルグアイ・ラウンドでの交渉でありました。
 WTOを成立させたこのウルグアイ・ラウンドの交渉は、農業分野における自由貿易への大きな成果を上げることになりました。農業分野における最終合意事項とは、市場アクセスとして、非関税障壁のすべてを関税化すること。そして、ミニマムアクセスとして、一部品目を初年度国内消費量の四%から六年目に八%まで拡大すること。そして、一定水準の輸入量や価格の変化に対して特別セーフガード措置を認め、追加的関税の賦課できる余地を残しました。市場アクセスを前進させたことに加えて、国内助成、輸出補助金に関しても削減していくことの合意が行われたのであります。
 我が国は、米の輸入についてこのミニマムアクセスを前倒しして、関税化を回避する交渉を図りましたが、最終的に、貿易の自由化、関税化が例外分野であった農業の分野でも、ウルグアイ・ラウンドにおいて例外のない関税化の対象とされ、これを受け入れることになりました。従量税で課されることになった米の関税は、従価関税率に評価し直すと約四九〇%の水準になり、国家統制品の大豆などの穀物も一〇〇%を超える水準を示しています。
 WTOの合意を受けての我が国政府は、ウルグアイ・ラウンド農業合意対策要綱を定め、一九九五年から二〇〇〇年までの六年間に、その内訳は、公共事業費の三兆五千五百億円、構造改善事業費八千九百億円から成る合計六兆百億円の対策費を支出してまいりました。
 先進工業国の産業の国際競争力が喪失し、製造業が縮小する原因は、開発途上国からの安い商品が流入する貿易が主因ではないと言われております。
 米国の経済学者ポール・クルーグマンによれば、実質賃金の伸び率の低下は、ほぼすべて国内要因にある、非熟練労働者の実質賃金低下も、貿易の増加に大きく起因しないと述べております。その原因は、国内生産、国内支出に占める製造業の比率の低下していること。第二に、製造業の雇用比率の低下は労働から資本への代替が起こっていること。第三、賃金の停滞は経済全体の生産性の低下していることが原因である。そして第四に、非熟練労働の需要縮小はハイテク経済の特徴であるという説明がなされています。
 日本の場合は、欧米に見られるような、途上国からの輸出攻勢に社会的ダンピングであるという批判を浴びせて、外国からの輸入制限の圧力を行使することはなかったのではないでしょうか。しかし、輸出国に対する輸入国による制裁は、非効率な産業を温存させ、経済構造の転換の促進を損なうことを意味することになります。
 ところが、我が国がこれまで採用してこなかった産業の緊急救済であるセーフガード措置が、二〇〇一年春に突如現実のものとなりました。我が国の農家との輸入品に対する利害の衝突により、中国からの輸入農産物を規制し、国内産業を保護しようとしたセーフガードの暫定措置が発動されました。農林水産省、経済産業省、財務省の三省がセーフガードの発動要件についての検討に当たり、二〇〇一年四月十日、関税引き上げ、緊急輸入制限を閣議了承、二〇〇一年四月十八日、政府は課税方法などを定めた政令を決定いたしました。
 これにより、生ネギは五千三百八十三トンを超えると一キロ当たり二百二十五円、従価税に計算し直しますと、二五五%等価分の関税を賦課することになりました。同じく生シイタケは、二六六%相当分の関税を賦課しました。そして、畳表の場合も、一〇六%相当分の関税を賦課いたしました。暫定措置が半年続いていく過程で、これに対抗する中国政府は、二〇〇一年六月二十二日、日本からの自動車、携帯電話、空調機に対し、報復関税として一〇〇%の特別関税を課す決定をいたしました。
 このように、我が国が農業保護のために価格を支持するセーフガード措置の暫定発動を行い、あわや日中間の貿易戦争かとマスメディアに報じられたことは、まだ私たちにとって記憶に新しい出来事であります。
 WTO、世界貿易機関が多角的な自由化への枠組みを提供し、WTOの多角的通商交渉を通じたグローバリゼーションの動きに対して、一方で、EU、NAFTA、北米自由貿易地域などで知られるリージョナルに市場統合を進めていこうという自由貿易協定を締結し、FTA、自由貿易地域を形成する動きが、一九九〇年代に入ってにわかに活発になってまいりました。昨年初めに、我が国は日本・シンガポール新時代経済連携協定を締結したとはいえ、欧米やアジアにおけるこうした動きは、もっと急速な勢いで進んでいると言えます。
 近年のFTAの特徴は、商品やサービスの関税障壁の撤廃に限定することなく、生産資源の資本、労働、技術などの障壁を取り払っていこうとする特徴を備え、これが国内と地域の経済活性化に寄与するとの認識が広まっています。
 中国は、二〇〇一年七月に、トウカセン外相により、十年以内に二国間協力を基礎にASEANと農業、人材育成、情報通信、投資などの分野で相互協力すると同時に、ASEANプラス3の枠組みでも協力するとの姿勢を打ち出し、昨年、中国・ASEAN自由貿易地域を形成する首脳間の合意を取りつけ、ASEAN市場を取り込んでいく選択を行いました。
 一方で、多角的な自由貿易交渉と、財貨・サービス取引の障壁撤廃や生産要素の移動の自由化、制度の共有化なども視野に入れる近年のFTA形成の潮流の中で、我が国がどのような産業構造を構築していくのか、先を見通した農業対策、製造業対策の構造調整施策を慎重に策定しておかなければならないと私は考えております。
 そこで、国際社会と競争し、また補完し合うこれからの我が国の産業の国際競争力を考えるときに、その高コスト構造を問題とする必要があります。世界で最も高い人件費を使って物やサービスを供給しなければならない状況にあることを謙虚に認識しつつ、国際的に閉ざされた市場の中で、甘んじていつまでも旧来の産業構造の権益を温存させていくのではなく、どのような方向に是正していくかが問題となってまいります。
 労働市場について言えば、特定の専門職に限って国内入国、滞在基準を緩和することが、日本経済の活性化に私は好ましいと考えております。
 高齢化社会における医療、介護サービス市場における人材、そしてIT業界における高度なプログラマーの確保など、国内における高度なサービスを提供することのできる人材養成を進めていかなければならないことは当然としても、国際的にかけ離れることのない競争的な労働市場が機能しなければ、非効率な産業がこの先も温存されてまいります。
 財やサービスは、国内からその生産、供給拠点が東アジアに出ていってしまい、産業の空洞化が問題となっているのでありますが、市場が制度的に規制されたままでは、国際市場の標準に収束しないまま、ゆがんだ価格構造が残ってしまいます。国際的なソフトウエア産業のITビジネスにおける競争力を確保する上で、海外への下請、委託生産にシフトしていくことが企業にとっての重要な選択肢としてある一方で、国内の基幹部分を担う技術者の確保に当たり、シリコンバレーなどに見られるような、インド、中国などからの人材を積極的に確保していく努力が我が国でも必要であると考えるのであります。
 我が国の産業は、どのような構造に変貌していこうとしているのか。IT不況が起こっていると言われる反面で、ITを基盤に据えた産業社会は現実のものとなって世界の経済が成長してきました。BツーB、産業間電子経済取引は無論のこととして、BツーC、電子小売取引の場でも、ますますデジタルな経済取引の実態が膨らんでいます。
 政府は、内閣総理大臣を本部長にしてIT戦略本部を設置、二〇〇一年一月からe—Japan戦略を推進しています。このような今後の社会構造をにらんだ重点計画のもとで、社会的基盤を中心に整備が進んできたことは、一方で評価できるものであります。しかしながら、こうした社会基盤の恩恵が、利用者としての家計、ユーザーに行き渡っていないことや、国際競争力という視点から問題をとらえるとき、現状を楽観できるのか、いささか疑問を持たざるを得ません。
 e—Japan重点政策には、世界水準のネットワークの形成、教育、学習の振興と人材の育成、電子商取引などの促進、行政、公共分野の情報化、ネットワークの安全性、信頼性確保といった分野で、民間分野を主導的役割とした上で、政府が環境を整備し、民間が実現できない分野では政府が対応していくという立場をとっております。公共財としてIT技術がユーザーに広く利用されるためには、企業による技術の囲い込みを制度的に好ましい方向へ誘導することも重要な政府の役割と私は考えます。
 IT産業の国際競争力を強化する上で、技術開発の促進と高度な人材育成が不可欠となります。技術開発に当たっては、戦略技術の開発を集中的に支援するフォーカス21において実用化を後押しする施策が導入されています。また、人材育成についても、技術者を制度として育成していこうという基盤整備への予算化が行われていることを評価するものです。世界から取り残されることのないよう、政府は必要な環境を整備していくことが求められます。
 景気指標を見ると、開業と廃業の企業数がこれまでと逆転しているのが現在の我が国の経済の姿です。これは、景気が後退する短期的な局面と、産業構造が長期的に転換していく過程で生産資源が移転する際に短期的に市場から取りこぼされてしまう局面が、重なって生じていることによるものです。このような状況の中で、既存の利益に遠慮して、国民経済全体にとっておびただしい遊休資本設備や失業を生み出し、その状態を長引かせてしまいました。こうした状況下では、構造転換を促すだけの経済政策では、短期的な遊休設備や失業を回避することは困難であると言わざるを得ません。景気刺激策を伴った構造改革に向けた政策こそ、経済の潜在能力を引き出すのに有効な政策であると私は考えております。
 そのためには、国際経済との調和ある発展を目指し、新時代の産業構造をにらんだ社会基盤づくりと、新しい社会を担うべき人材育成を促進する予算措置を大胆に行っていくことが必要ではないかというのが私の考えであります。
 政府は、IT戦略本部を設置し、総務省、経済産業省を中心に、各省が連携してデジタル社会への基盤整備が進められています。二〇〇五年までに我が国の国際競争力を世界のトップに位置づけようとのねらいであります。こうした夢のある、政府が呼ぶe—Japanという次世代の社会は、他方で、スキルを持ちその恩恵を享受する人々と、スキルを持たない労働者との間に、デジタルデバイドと呼ばれる所得分配の不平等が生じることが指摘されています。
 こうした経済の成長の果実を分かち合うべき施策や制度こそ、構造調整のために整備しておかなければならない政府の役割ではないかと私は考えます。
 御清聴ありがとうございます。拍手
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藤井孝男#7
○藤井委員長 ありがとうございました。
 次に、中西公述人にお願いいたします。
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中西啓之#8
○中西公述人 おはようございます。御紹介いただきました都留文科大学の中西でございます。
 本日は、平成十五年度予算に関連いたしまして、三つの問題について、私の意見を申し述べたいというふうに考えております。第一は、所得税制の改革方向についてであります。第二番目は、公共事業と社会保障の問題であります。第三番目は、地方財政、特に地方交付税財源との関連で、市町村合併の問題について申し述べたいというふうに考えております。
 私は、たまたま一昨年の三月から八月にかけまして、オランダのハーグのISSという、これは国立社会科学研究所というふうに一応訳されておりますけれども、そこの客員研究員として半年留学する機会がございまして、オランダの福祉や税制について若干調べてまいりました。
 福祉国家といいますと、日本ではスウェーデンやデンマーク等々が主に紹介されているようでありますが、オランダも一味違った非常にユニークな福祉国家でありまして、そこの国の税制であるとか福祉のあり方について、多々参考にすべき制度をつくっているんじゃないかというふうに思いまして、現在も私研究中でございますけれども、その一端を御紹介しながら、日本の財政問題というのを考えていきたいと思っております。
 表がお配りしてございます。表一は、オランダの所得税の税率表であります。
 日本の所得税の税率につきましては、もう既に皆さん方御承知のように、一〇%から三七%まで四段階の税率区分になっておりますけれども、表一はオランダの所得税の税率表でございまして、ここにございますように、最低税率が三二・三五%。オランダでは、いわゆる住民税、日本の住民税に当たる地方の所得課税はございませんで、所得課税はすべて国税の所得税でやられているわけですね。最低税率が三二・三五%、最高税率が五二%で、四段階に分かれております。ここで一万五千三百三十一ユーロ以下の所得については三二・三五%というふうに書いてございますが、これは日本円で大体二百万円弱の所得について三二・三五%の税率を掛ける。
 ところで、この三二・三五%、その次が三七・八五%でありますが、この最初の二段階の税率で課税されて国に納められた税収のうち、一〇・五%が特別医療保険会計、つまり日本で言う介護保険の財源にこの最初の二段階の一〇・五%がそっくり充てられる、こういう構造になっております。さらに、この最初の二段階の所得課税の一七・九%がAOWという国民年金の財源に充てられる、こういう構造になっております。
 ここの注一に書いてございますように、現在、オランダは二〇〇一年度から税制改正が行われまして、それまではいわゆる所得控除、日本式の所得控除をやっていたのですが、税額控除という制度に変更いたしました。この日本の基礎控除に当たる税額控除が千六百四十七ユーロでございますが、これを今の為替レートで日本円に換算すると二十万円程度になります。これは税額控除でありまして、例えば、税率が三二・三五%でありますから、割り戻しますと、基礎控除に換算すると大体六十万円程度になるということであります。
 問題は、今の為替レートで所得六十万以下の人には、日本の介護保険料であるとか国民年金の保険料に当たるとか、そういうものがかからないという仕組みになっているわけですね。逆に言いますと、日本の場合、ほとんどの低所得者に介護保険料あるいは国民年金の保険料というのがかかっているわけですけれども、これは、日本で言う課税最低限以下の世帯にはこれをかけない。かけないけれども、この制度を受ける権利は与える、こういう仕組みになっているわけですね。したがって、現在の日本のように、膨大な国民年金のいわゆる未納であるとか、あるいは介護保険の保険料の重圧であるとか、そういうことから低所得者は解放されているということであります。
 さらに、いわゆる国民年金部分とそれから介護保険部分、さらにもう一つ、孤児手当という片親の子供に対する手当が一・二五%この財源から出るわけですが、それ以外がいわゆる日本で言う普通税収入、一般財源ということになるわけですね。そうしますと、最低税率が、実質的には最初の段階の税率が二・九五%、次の第二段階が八・四五%、さらに四二%、五二%というふうな税率になるわけでありまして、非常に累進度が高いということが言えるわけであります。
 翻って日本の税制はどうかというふうに考えておりますと、表二で、一九八六年当時の日本の所得税の税率を資料に出してみました。このときは、日本の所得税におきましては、最高税率が七〇%でありまして、これを六〇%に下げ、五〇%に下げ、三七%に下げ、どんどん高額所得者についての減税を景気対策として行ってきた、こういう経過がございます。
 私は、先ほど来指摘がございますように、所得減税と公共投資の増大という景気対策は失敗をしたのではないか、こういうふうに考えているわけですね。そうすると、国民一般の所得、特に低所得者を含めた中低所得者の所得をいかに高めていくかということを真剣に考えないと、日本経済というのは依然としてうまくいかないのではないか、こういうふうに考えております。
 そういう意味で、私は、所得税の最高税率を八六年当時に戻すということを考える必要があるんじゃないか。これは、アメリカがレーガン政権のときに三五%に引き下げて、これはちょっと下げ過ぎたということで、その後、クリントンのときに引き上げたという経過があるわけでございまして、一挙に八六年当時まで戻さなくても、それに近づけるということをまず試みるということが私は必要ではないか。
 翻って、ことしの平成十五年度予算の国民の負担増というのを一覧にしたのが表の三でございますけれども、これは、医療保険制度を変えるとか、あるいは介護保険料を引き上げるとか、あるいは年金給付額を引き下げるとかいう形で、合計いたしまして四兆四千億の国民負担増になっております。
 先ほど来も話に出ております、九七年のときの消費税率の引き上げと医療保険制度の改正によって九兆円の負担増、あれで消費不況が進んだわけですけれども、現在は、給与が引き下げられるというふうな傾向とあわせて、この十五年度予算における負担増がさらなる不況の原因になるんじゃないかということを大変心配しているわけであります。
 したがって、私は、所得税制の改革が重要であって、これはやはり最高税率を引き上げていくという方向で考える、それを財源にしていくべきじゃないかというのが私の意見であります。
 第二番目に、社会保障と公共事業について申し上げたいわけでございます。
 表の五に、各先進国の総固定資本形成対GDP比の国際比較というのがございまして、黒い部分が公的固定資本形成でございますから、いわゆる公共事業費に当たるものですね。これは、日本が五・一%、アメリカが一・九%、イギリスが一・三%、ドイツが一・八%、フランスが三%で、依然として日本の公共事業費、これは二〇〇〇年度の数字でありますけれども、非常に高いわけです。
 これが平成十五年度の予算でどういうふうに変わったかということを見てみたわけでございますが、私のレジュメ、公述要旨に書いてございますが、公共事業費の比率が三・数%減少しております。
 これは、一見、公共事業費を減少させようという御努力をやったかのように思われるわけですけれども、しかしながら、中身をよく分析していきますと、例の本四架橋の膨大な赤字が発生しております。道路特定財源を一般財源に変えるという措置が行われたわけですけれども、その道路特定財源を一般財源に変えた部分が公債費に変わって、本四架橋の借入金の返済に充てられるという形で予算に組まれておりまして、これが二千二百四十五億円ございます。さらに、先ほど来指摘されております、デフレによって公共事業の経費そのものが縮小しているというふうなことを考慮に入れますと、数字上は公共事業費が減らされているように見えるけれども、実質的には余り減っていないんじゃないか。
 ここにつきましては、今後とも、高速道路でありますとか新幹線でありますとか空港でありますとか、こういう大規模公共事業が本当に今緊急に必要なのかどうかということについての十分な見直しが必要であろう、こういうふうに考えるわけであります。
 これに関連いたしまして、私がオランダで調査いたしましたことを一つ御紹介しておきたいわけです。
 オランダは干拓によってできた国であります。この干拓事業を最近は中止しております。
 何で中止したのかということを調べて、ヒアリングをしてきたわけでありますが、これは、財政問題もあるけれども、一つは環境保全の問題がある。もう一つは、本当に干拓による土地が現在必要かどうか、ここを我々はよく考えなきゃいかぬ。現在、EUでの食糧需給といいますか食糧供給はもう飽和状態になっていて、これ以上農地をふやす必要はない。環境保全の上からも食糧供給の上からも、これ以上干拓の必要が認められないから、国会で論議をした結果、中止にしている。これは廃止とまではいかないけれども、もう非常に長い間中止をしている。こういうふうな回答がございまして、やはり本当に公共事業が必要かどうかという判断が大変大事かというふうに思うわけであります。
 三番目の問題は、最近の地方財政の状況でございます。
 これは、国の財政危機と連動いたしまして、特に、国税五税の一定割合を交付税の財源にするというふうにやっておりますけれども、国税五税そのものの税収が低下するというふうなこともございまして、いわゆる地方財政計画における歳出に交付税法で規定されている国税五税が決定的に足りない、不足する。従来は借入金をやってまいりましたけれども、それだけでは不足するということで、このところ、臨時財政対策債というふうな地方債を発行して、その償還を後年度の交付税に繰り入れる、こういうふうな措置をとっております。
 これが市町村では非常に大きな誤解を生みまして、交付税が減った減ったというふうなことが広がって、今後は交付税の見通しがないということで合併に走るというふうなことがございますが、私は、合併が一体地域に何をもたらすかということについて、一言申し上げておきたいわけです。
 皆さん方にお配りしております表の四ですね、これをごらんいただきたいと思います。これは、一九五〇年代のいわゆる昭和の大合併が地域に何をもたらしたのかということを調査して表にしたものでございます。
 新潟県で一番小さな自治体が粟島浦村と申しまして、二〇〇二年の人口は四百八人であります。一九五五年当時、粟島浦村の人口は八百二十九人でございました。そのすぐ近くに、これは山形県でございますが、飛島という島がございます。これは五〇年代の昭和の大合併で酒田市に合併いたしました。この五〇年代当時、この飛島の人口が千六百二十一人ございました。当時、粟島浦村の人口が八百二十九人ですから、二倍の人口があったわけですね。
 これが五〇年代に酒田市に合併されて、その後どういう運命をたどったかということでございますが、二〇〇二年の数字で比較いたしますと、粟島浦村の人口が四百八人、飛島の人口が三百四十一人。しかも、二十歳以下の人口を見ていきますと、飛島の二十歳以下の人口が三人、粟島浦村の人口が七十二人。保育園児は、飛島がゼロ、粟島浦村が八人。小学生は、飛島がゼロ、粟島浦村が二十二人。中学生が、飛島が一人、粟島浦村が十三人。役場職員が、粟島浦村が二十七人に対して飛島は四人。こういう状況でございまして、合併というのがいかに地域を崩壊させ、若者が住めなくなる地域にしてしまうかという、これが非常に明瞭に示されております。
 昨年の十一月、地方制度調査会の西尾私案というのが発表されまして、これが全国の町村に大変な衝撃を与えております。一定の、例えば人口一万以下の小規模自治体は、事務を取り上げて、府県に委託させるか、あるいは近辺の市に委託させるかというふうな形で、もう少しずばり申し上げますと、こういう小規模町村に対する交付税を交付しないということをねらっているのではないか、こういうふうに思われる節があるわけでございまして、これが現在大変な反響を呼んでおります。
 私は、この日本の小規模町村というのは、二十一世紀の日本を考えた場合に、食糧供給の面からも、あるいは環境保全の面からも、あるいは伝統文化の保存という点からも、非常に重要な役割を果たすわけでございまして、これを財政的な誘導によって合併に追い込まないということが非常に大事なことではないかというふうに考えておりますので、議員先生方もこの問題について御検討いただければ幸いだというふうに思っております。
 御清聴ありがとうございました。拍手
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藤井孝男#9
○藤井委員長 ありがとうございました。
    —————————————
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藤井孝男#10
○藤井委員長 これより公述人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松野博一君。
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松野博一#11
○松野(博)委員 自由民主党の松野博一でございます。
 公述人の先生方、本日は御苦労さまでございます。早速質問に入らせていただきます。
 伊藤先生にお伺いをさせていただきます。時間の制約がございますので、質問が総論的なものになりますけれども。
 先生は、現状の経済の認識に対して非常に厳しい見方を示されました。その中において、平成十五年度予算案でございますけれども、この予算案が、経済の主要な二つのプレーヤー、企業と家計から見て、どういった国の意図をそれぞれのプレーヤーが分析し、行動し、その結果がどういうふうに経済に影響してくるか、それに関しての御所見をお伺いさせていただきたいと思います。
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伊藤隆敏#12
○伊藤公述人 平成十五年度予算案については、法人税の減税でありますとか、企業の活動を刺激するということは確かに含まれていると思います。
 ただ、一番重要なのは、消費に回る、それから投資に回るということですから、むしろ投資にピンポイントした、投資に対する税額控除であるとか、あるいは、住宅の税額控除という制度がありますけれども、これの拡充、あるいは適格要件を緩やかにするといったようなことも考えられたかなというふうに考えております。
 そういう面で、方向性としては確かに、企業、家計に働きかけて経済活動を活発にしようという意図は感じられますけれども、方法については、まだもう少し工夫の余地があったかな、議論いただきたかったなという感想を持っております。
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松野博一#13
○松野(博)委員 今、経済に対する議論、景気回復に対する議論をいたしておりますと、とどのつまりは、財政規律に関してどういうふうにとらえるかというところに終始するわけでありますけれども、先生は、先ほどのお話の中で具体的に、対GDP比率が二〇〇%、時期的に言うと、もう数年、六、七年というお話でありましたけれども、例示をしていただきました。
 ただ、一方で、国債の保有の状態ですとかその他の要因を含めて、そう短期に財政規律、財政赤字の問題をとらえずに、長期的な中で、景気回復をさらに優先しながら施策を打っていった方がいいんじゃないという議論もございます。これは、もうそれぞれの方の視点によって違ってくるものだと思いますけれども、しかしながら、この方向性が確定をしませんと、なかなか建設的な議論ができません。
 そこで、今後、この財政規律の問題ということに関してどういった方法論で整理をされるべきなのか、そのことについての先生のお考えをお聞きしたいと思います。
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伊藤隆敏#14
○伊藤公述人 財政規律だけを取り上げて議論できるような状況に現在はないというふうに考えておりまして、私が強調いたしましたように、政策パッケージというものをつくって、その中で財政の規律を、中期的には回復するんだけれども、短期的には財政を、少し刺激を考える。ただそれも、単に規模だけに焦点を絞るのではなくて、中身を考える必要がある。最大限、財政の刺激効果というのがあるような中身に歳出も歳入も考えていくということが重要だという点。
 もう一つは、やはり金融による景気刺激のサポートというものがぜひ必要ではないかということで、財政の面ではその中身の入れかえ、それから、短期的には減税だけれども中期的には増税、それから、財政だけではなく金融も最大限、非伝統的な政策も含めて対策を考えていくというパッケージが重要だと思います。
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松野博一#15
○松野(博)委員 その政策的なものでございますけれども、非伝統的な財政政策という中で、先生は、乗数効果の低いプロジェクトから高いプロジェクトに移行していくべきだというお話が先ほどありました。これは、乗数効果の高いプロジェクトというのは具体的にどういった施策をお考えになっているのか。
 その中において、今非常に重要な問題として雇用政策の問題がございます。乗数効果の低いプロジェクトから高いプロジェクトに移行するに当たって、雇用の問題とはどういうふうに関連してお考えになっているのか、その点についてお考えをお聞きしたいと思います。
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伊藤隆敏#16
○伊藤公述人 乗数効果の高いプロジェクトの例としましては、都市再生型の公共事業が一つ挙げられる。都市で、明らかに利用者の方がその供給を上回っているような箇所、道路の箇所でありますとか、それから下水道の整備のおくれているところでありますとか、そういうところの都市を再生することによって、より利用者がその町に来る、あるいは買い物が便利になるということは、高い消費刺激効果があるというふうに考えております。
 それから、もう一つはIT関連でありまして、これも、光ファイバーの敷設でありますとかケーブルテレビの容量を上げるといったようなことも考えられて、これによって経済活動が電子的なものに移っていく、これによって景気が刺激される、活動が活発になるということが考えられるので、そういう都市再生型のものが乗数効果が高いプロジェクトの例でございます。
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松野博一#17
○松野(博)委員 以上で質問を終わらせていただきます。
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藤井孝男#18
○藤井委員長 次に、石井啓一君。
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石井啓一#19
○石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。
 本日は、公述人の先生方には、予算委員会の公聴会にお越しをいただきまして、大変ありがとうございます。心より御礼を申し上げたいと存じます。
 まず、伊藤先生にお伺いいたしますけれども、私は、先生の本日の公述に大変共感をするところでございまして、特に、日本の経済の現状について大変厳しい御認識をお持ちであり、デフレ克服の重要性を強調され、さらにその政策パッケージを打ち出されているというところは、私も同じ意見を持っております。
 私も、デフレ克服というのが今非常に日本経済の中で最重要事項の一つであるというふうに思っておるわけでございますけれども、一方で、このデフレ克服について、デフレというのは日本経済の実態が悪化している結果であって、経済の実態を改善することが先決だと。すなわち、産業の競争力を強化したり、あるいは新産業を生み出したりということをすればいいのであって、病気で例えれば、そちらの方が根本治療であって、デフレというのは熱のような症状だから熱をおさめるというのは対症療法にすぎない、こういう意見もございます。私は決してそういうふうには思っておりませんけれども。
 そういった点、極端に言えばデフレ下の経済成長もあるではないか、こういう主張もあるわけでございますが、この点について伊藤先生はどういうふうにお考えなのか、御所見を伺いたいと存じます。
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伊藤隆敏#20
○伊藤公述人 私の資料及びプレゼンテーションで強調しましたように、デフレにはスパイラルという悪循環を引き起こす状況がありますので、デフレそのものが、私は、一つ大きな問題になっている。したがって、新産業でありますとか産業競争力の回復というのは大事なことですけれども、これもデフレの克服がなければ非常に難しいのではないかというふうに考えております。
 そういう意味で、デフレを克服するための政策パッケージというのは、必要条件であって、それなくして産業競争力、新産業もないというふうに私は考えております。
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石井啓一#21
○石井(啓)委員 私も同様でございまして、熱がひどいときに熱をおさめないとやはり病気も治らないわけでありますから、やはりデフレの克服というのは非常に重要であるというふうに思っております。
 ところで、先生のこの政策パッケージの中で、非伝統的な金融政策といたしまして幾つか例示がございますけれども、この中で、例えば、ETFの購入、REITの購入、これについては、現在マーケットの規模が小さいため、購入してもそんなに実際にマネーが出ていかないんじゃないか、効果は少ないんじゃないか、こういう批判がございますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
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伊藤隆敏#22
○伊藤公述人 ETFといいますのは、株式の全体をあらわす指標と連動している投資信託でございますので、これは、つくろうということになれば簡単につくることができる商品であるというふうに認識しております。したがいまして、日銀が購入するということになれば、証券会社は一生懸命こういうものをつくるでしょうし、もしできないのであれば、日銀が幅広くTOPIX連動のようなパッケージのものをマーケットで買うということができると。したがって、ETFに関しては、日銀自身もできるでしょうし、日銀が購入すると言えば証券会社が提供するというふうに認識しております。
 REITの方は、確かに、不動産で、証券化できるようなものが限られているかもしれないという御批判はそのとおりですけれども、これも、やはりそういうものを購入するという意識がはっきりすれば、そういうものをつくるというところが、商品が提供されるということが必ずや起きるというふうに思っております。
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石井啓一#23
○石井(啓)委員 需要が供給をつくる、こういうことだと思います。
 もう一つ、この非伝統的な金融政策の中で、通貨の信認に傷がつくと資本逃避が起きるのではないか、あるいは、最終的に国債の暴落につながるのではないか、こういう批判もございますけれども、この点についてはいかがお考えでございましょうか。
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伊藤隆敏#24
○伊藤公述人 通貨の信認に関しては、経済が健全であるということが第一でありまして、デフレがいつまでも続く、あるいは財政赤字が非常に巨額になってくるということになれば、いずれ通貨の信認に傷がつく。したがって、何もしなくてもいわゆる通貨の信認に傷がつくという状況が発生し得るというふうに私は考えております。
 したがって、それよりは、積極的な政策によってデフレを克服し、経済成長を潜在成長のところまで持っていくという政策をとるということがあれば、一時的に非伝統的な政策の期間があったとしても、最終的にむしろよい状態になるのではないかというふうに私は考えております。
 国債の暴落についても、経済の状態がよくなるという政策をとることによって、たとえ名目金利が上がるような状況が将来生じたとしても、それまでに経済がよくなっていれば、これは暴落ということには当たらないというふうに考えております。
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石井啓一#25
○石井(啓)委員 次に、正村先生にお伺いいたしたいと思います。
 きょうの先生のお話も大変啓発に富むお話でございまして、特に財政のあり方について、これは経済と財政の両方を考えていくべきだ、経済の中の大きなサブシステムだ、こういう指摘はもっともであるというふうに存じますし、また、新しい時代に合った前向きの財政を考えるべきだ、こういう指摘も私も共感をするところでございます。特に、二十一世紀の日本の社会のあり方として、環境、教育、福祉を重視すべきであるという御主張でございますが、これは私ども公明党も志向している方向でございまして、大変共感をさせていただきました。
 ところで、十五年度の政府予算は、重点四分野ということで、一つは、教育、文化、IT、二つ目に少子高齢化、三つ目に、都市の再生、地方の町づくり、四つ目に環境対策ということで、この重点四分野につきましては全体的に緊縮的な予算の中で予算を伸ばしておりまして、それなりのメッセージは発しているかなというふうに私は思うのでございますけれども、この点について、正村先生、御評価はいかがでございましょうか。
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正村公宏#26
○正村公述人 メッセージというのは、ちゃんと伝わらなければメッセージにならないわけですね。
 二つのことを申し上げたいのですけれども、一つは、行き当たりばったりはだめだということです。
 日本は、単年度予算、これは理由があるんですけれども、そういうことであるために、単年度ごとに、これをやりました、あれを盛りましたという格好になりがちなんです。硬直的な計画をつくってそれにこだわって状況に合わなくなるのは困りますけれども、先ほどの、十年かけて二十五人学級をつくったらどうですかというようなことを申し上げましたけれども、中期、長期の展望の中で何を考えているかということが伝わらないとまずいと思うんですね。
 もう一つは、こういうところに重点を置きましたというのであれば、それが見えてくる程度には予算をつけないと。例えば環境関係でも、いただいた資料を見ましても、ふえている部分もありますけれども、合計のところを見ると、ちょっぴりですけれどもマイナスになっていたり、これは、本当にやる気があるのということになりますよ。
 地球環境問題での国際会議での日本のスタンスもよく見えないですね。ヨーロッパとアメリカ、すっかり腰が引けちゃっているアメリカと、もう少し真剣に新しい文明をつくろうという取り組みに進んでいるように見えるヨーロッパの間で、ちょっと悪い言葉を使えば、右往左往しているような印象がある。日本のメッセージがない、それが問題だと思うんです。
 私は、そういう基本的な、腰の据わった取り組みをしているよということをやはり国民にも伝え、格好をつけるということでは困りますけれども、やはりそれなりの実のある施策を組んでいただかないと困る。
 教育、文化、科学技術、重点だとおっしゃるけれども、科学技術振興費というのは確かに力を入れておられるように見えるけれども、では、教育はどうなんですか。残念ながら、私には伝わりませんね、そういう点では。
 私は、率直に言いまして、十二月に政府予算案についてのコメントをある新聞社の方に求められたときに、最初に言ったのは、こういう中途半端が国を滅ぼすと。残念ながら、その言葉は活字になりませんでしたけれども、私はそれが印象なんです。その印象は今も変わりません。一般歳出が久しぶりに、何年ぶりか知りませんが、久しぶりにちょっとふえた。ふえたといったって〇・一%じゃないですか。それはだめですね。
 そういう点では、これをやりましたという、書いてあるだけの話で、国民には伝わっていないと思います。御一考いただきたいと思いますけれども。
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石井啓一#27
○石井(啓)委員 もっと頑張りなさいという御激励だと受けとめさせていただきました。
 ありがとうございました。
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藤井孝男#28
○藤井委員長 次に、井上喜一君。
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井上喜一#29
○井上(喜)委員 保守新党の井上喜一でございます。
 まず、伊藤公述人からお伺いしたいのでありますけれども、今の日本の経済の深刻な現状ですね、こういう現状から、デフレの克服というのが最大の課題だ、こういう御意見でありまして、そのためには政策をパッケージにしてやっていかないといけない、これはそのとおりだと思うのでありますが、その中で、私は二点お伺いしたいのです。
 円安誘導策について触れておられましたが、御発言は、適切な方策により円安が誘導できるというような御趣旨だったと思うのでありますが、適切な政策とはどういう政策なのか。結果において円安になればいいんだけれども、しかし何かあれば、その政策とはどういうものなのか、お伺いしたいと思うんです。
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