上田勝弘の発言 (経済産業委員会)
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○参考人(上田勝弘君) 社団法人日本金型工業会の会長を拝命いたしております上田でございます。今日は岐阜県から参ったわけでございます。
先ほど鵜飼先生の方からお話も一部ございましたが、金型という産業、この中で金型というのは金の型と書く字でございますが、これは最近まで、我々は金型、金型と数十年この業界におりますんですが、一般的にはあれはキンケイと読むんじゃないかという人もたくさんおられて、やっとここ最近になってあれは金型だと、金型企業大丈夫かと、こういう認知を最近になってやっといただいたと、これが私は非常に一番うれしゅうございます。
御承知のとおり、金型というのは欲しい部品を作るためにその型を作るということで、これは歴史は古いわけでございますが、日本では本格的には戦後のいわゆる自動車あるいは家電製品、これの発展とともに金型産業もイコールの勢いでずっと発展をしてまいりました。途中、バブル崩壊の平成三年までは、いわゆるオイルショック等のいろんな経済激変期がありましたが、そのときも、一時金型産業はがくっと下がりながらも、基本的にはV字回復をして、自動車産業、電気製品、電子機器、こういったもので随分発展をしてまいりました。
しかしながらその規模たるや、金型の業界は、当時一万二千社全国にあると、こう言っておったわけですが、この業界の数が平成三年のバブル崩壊後、順次減ってまいりました。現在では約一万社になろうとしております。また、平成三年をピークにいたします金型の総生産額は約二兆円と。これはかなり規模の大きい、金額では規模の大きい産業でございますが、企業規模は、一万二千社の中で、従業員が二十名以下という企業が大体九六%を占めていると。ですから、全くこれは中小企業集約型の代表的ないわゆる産業構造を成しているわけでございます。
しかしながら、金型メーカーというのは大手企業の要請によって世界に冠たる製品を作るために随分頑張ってまいりました。しかしながら、経営基盤が弱いばっかりに、技術は非常に強いが経営基盤が弱いという体質の中でも、あふれる仕事をいただきながらそれなりにいわゆる潤ってきた時代もございました。
しかしながら、御承知のとおり、円高の進行とともに日本の製造産業が海外に移転を始めたときから、事態は急変をしてまいります。これは、平成七年、八年と、一時海外へ行った企業が、円高の関係で日本の金型は高いから海外で調達しようよということで、随分大手電機メーカーのいわゆる購買担当者が金型の調達のために中国、台湾、韓国へ走りました。そして、ある部分的にはその発注をして、これは日本の大体六〇%ぐらいでできるなというようなことで発注をした実績も多数ございます。しかしながら、発注をしてみたものの、品質だとか後のアフターケアにおいては随分これは大変な時間を要するし、自分の思っておる品質のものが上がってこないというようなことで、やはり金型というのは日本の中で慣れた業者が慣れた商慣習の中でやることが一番いいんだというようなことが一時ありまして、回復基調が、平成十年にいわゆるバブル崩壊の平成三年と大体同水準まで回復をいたします。
我々は、やっぱり金型は日本のこれは基本的なもので日本人に一番適した産業だと、こういうことで一時は安堵をいたしましたが、それから御承知のとおり、世界大競争、世界調達主義の、大競争調達主義の中で、大企業は本格的に今度は工場移転を海外に進め、プロジェクトチームを作って、海外でやはり金型も調達しなければ、これはコスト安にはならないよというようなことを本格的に取り組んできたわけでございます。
それと同時に、金型というのは、新しいNCで制御をいたしますコンピューターを付いた最新鋭の機械がどんどんと日本から、あるいはドイツ、スイスから生産をされて、中国、台湾、韓国等の東南アジアを含める諸国では金さえ出せばいわゆる金型ができるNCマシンを購入することができると、こういうことが大きく金型産業の海外移転に拍車を掛けてまいりました。
そして、日本の業者では、いわゆる今まで潤っておった業者は、海外との競争の波にさらされると。海外、中国では三〇%安でできますよと。いや、作れるものなら作ってみてくださいというようなことは言えないんです。いったん、そうやって言いますと、もう仕事がぱたっと来なくなる。仕方なしに三〇%あるいは四〇%のコストダウンで仕事をやらざるを得ない、そうしなければ従業員の給料も払えない、こういう事態に陥っているわけでございます。ただし、金型業界の中でも二〇%強はいわゆるそういった競争にさらされずに、独自の強い技術でもって、中国や台湾、東南アジア諸国あるいはアメリカ、ヨーロッパに負けない技術力でもって堂々と商売しておる企業もございます。これはやっぱり中堅以上の企業でございまして、数からいえば非常に少ない、少数派になるわけでございます。
そういった中で、金型の問題が、東京でいきますと大田区、あるいは大阪では東大阪地区のいわゆる金型業界が集約をいたしております集約の地域でいわゆる倒産、廃業が続出をしておるわけでございます。同時に、生産額も随分落ちてまいりまして、工業統計でも絶頂期の二兆円から一兆五千億までに落ちております。このままで日本の金型産業あるいは製造を支えておるサポートインダストリーと言われたこの産業が、将来これでいいのかと。日本産業の製造、貿易立国、物づくり立国でやってきた日本はこれでいいのだろうかという論議が、いわゆる廃業するあるいはもう倒産前夜の人々の中から強い声として沸いてまいりました。
金型工業会といたしましても、私どもは実態調査をいたしまして、どういうことで今困っているんですかということを実態調査をいたしました。これは東京と大阪、別個に行いましたが、その中で一番問題は、仕事が少なくなっている、絶対仕事量が少なくなってきた。そこへ輪を掛けてコストがもう安くたたかれてきている、それから不正な取引が発生している、このままでは我々はもう将来夢がありませんと、こういう声が随分全国から出てまいりまして、金型工業会としても、これはもう異常な事態になってきたという危機感から、経済産業省の御協力を得て、いわゆる実態調査あるいはまた経済産業省としてのユーザーに対する指針、買いたたきの防止、それから先ほども鵜飼先生が申されましたようにソフト、一生懸命精魂込めて作ったコンピューターのデータ、これを修理という名目で取り上げられて、それを、データを海外で渡して、このとおりに金型を作りなさいと、こういうアンフェアな取引が最近目立ってきたと。こういうことも防止してもらわなければ、日本の、今問題になっております中国のコピー製品、これを日本はこれから立ち向かっていかないかぬと。そういうことが、国内の業者でそういうことが行われておったんでは、どうして対中国に対する著作権の問題であるとかいわゆるコピー製品の追放であるとか、こういうものに立ち向かっていけるのかということもございます。
それと同時に、我々金型業界としては、一番問題は、新規参入がもうほとんどございません、新規参入が。ということは、我々の金型を始めた三十数年前というのは金型はいい産業だということで、どんどん核分裂をするように新しい業者が発生をしてまいりましたが、今はございません。なぜかというと、金型産業に未来はないという認識で一致しておるようでございます。ただし、中国辺りでは、これから物づくりは中国の番だというようなことで、金型産業はいよいよ新しい設備を入れて、人材を育成しながら、金型産業というものは成長産業であると、こういうとらえ方をしております。この落差が私は日本の製造産業の問題点として非常に重要じゃないかなというふうに思っております。
また、金型産業は、先ほど申し上げましたように、小規模のいわゆる業態が多いゆえに、大手企業との取引慣習というのが、契約書を基に取引をしているというのは非常に少なかったんです。ツーカーの仲で、やってくれよ、はい、分かりましたと、こういうふうなことでやってきた。しかし、それが今日ではあだとなって、いわゆる取引慣習が崩れてきた。図面をちょっと出しなさい、それを、どこか、いつの間にか海外へ持っていかれると、こういうことが頻繁に行われるようになりました。昔はそういうことが、昔からあったんですが、それはちゃんと見返りがあったんです。トラブルが起こらなかった。今日、そういうことが非常に全国の金型業界の中から大きな声として出ております。
金型業界としてはこれを無視することができないというようなことで、今、経済産業省の御協力を得て今鋭意頑張っておるところでございまして、また昨年とおととしは経済産業省の御協力によって、金型の実態をいわゆる実業者、我々の業者が実際に見るために、中国への調査団、東南アジアの調査団を派遣いたしまして、どのぐらいの競争力があって、どういうユーザーがあって、どういう方向で金型業界、業態を運営しているのか、こういうことをつぶさに調査をしてまいりました。報告書は全部提出をさせていただいております。
こういったことから、我々はこの日本の製造を支えてきた金型産業が今やもうピンチに陥ってきている、競争力を更に弱くしている、これをこのまま放置しては日本の製造業の明日はないと、こういうことで、金型業界というのは本当に今苦境に立っておるわけでございまして、昨年辺りから新聞紙上、報道で随分バックアップのキャンペーンをしていただいたわけでございますし、いわゆる法律、今回の法律の改正でも金型という文字がここに独立していわゆる掲示をさせていただいたということは、我々にとっては非常に金型というものをいよいよ重要視していただいたという証拠だと思っておりまして、非常に有り難く思っているわけでございます。何とぞよろしくお願いを申し上げたいと思っております。
以上で終わります。ありがとうございました。