林明夫の発言 (憲法調査会公聴会)
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○公述人(林明夫君) おはようございます。栃木県で開倫塾という学習塾をやらせていただいております林明夫と申します。
今日は、これからの憲法を考えるということでこのような貴重な場所で発言の機会を与えていただきましてありがとうございました。心から感謝申し上げます。
私の主張は二つであります。安全保障を考える場合に大事なことは、国の安全保障という考え方と人間の安全保障という考え方、二つあるということを今日は皆さんに是非御理解していただきたいと思います。
国の安全保障を考える上で一番大事なことは、国家緊急権の規定が日本国憲法にありませんので、是非この規定を作っていただきたいと。それから、人間の安全保障を考える上でこれまた大事なことは、もしここにいらっしゃる参議院の先生方が憲法についてお考えになる場合に、是非、前文の中に、憲法の前文の中に人間の安全保障という最も新しい、これから五十年ぐらい、半世紀にわたって恐らく使用に堪えられるであろう安全保障の概念を入れていただきたいというふうに思いまして、この場に来させていただきました。
私は、日本国憲法に限らず、あらゆる国の基本法である憲法は憲法制定権者の時代認識を強烈に反映したものであるというふうに考えます。日本国は、憲法制定当時に恒久の平和を念願したがゆえに、軍隊も持たず、国の交戦権をも否定した形で徹底した平和主義を憲法の前文と第九条に明記をいたしました。敗戦直後の憲法制定権者の時代認識の表れとして、これは日本国民からも、それから世界の有識者の方々からも高い評価を得たことは皆さん御承知のとおりであります。しかし、憲法制定後半世紀が経過した今日、果たして前文と現在の第九条の内容でこれから半世紀の日本国の安全を担保できるか、日本国民の生命、財産、生活を守り切れるかというふうに問われれば、大半の国民が不安に陥っているのが現状ではないかというふうに思います。
今、国会では有事に関する立法が検討され、参議院でも何日か先にこれが通過するというふうな新聞報道があります。私は、国の安全保障については、国の在り方を含めて日本国憲法の中でどのように考えるべきか議論をまずは深めるべきことが先決であるというふうに考えます。憲法の中に明記すべきものは明記し、しかる後に、法令にゆだねるべきものはゆだね、法律として立法の処置を取るということが適切な手順ではないかというふうに考えます。
すなわち、私は、日本国憲法に国家緊急権の規定を明確に置き、憲法の規定の下に有事に関する立法をなすべきものというふうに考えます。なぜなら、国民の基本的人権を一時期にせよ制約せざるを得ない国家の緊急時についての立法を、たとえ国会であろうと憲法の規定なしに行うことは不適切であるというふうに考えるからであります。
さらに、もしこれからの平和や安全保障を本質のところで考えるならば、国家の安全保障を補うものとして日本国憲法の前文に人間の安全保障、ヒューマンセキュリティーの促進を明記すべきものというふうに考えます。これからの半世紀、日本国が国際社会になすべき貢献というのは、一人一人がどのような状況であっても人間として生き抜く力を身に付けること、エンパワーメントというふうに言うそうですけれども、このエンパワーメントを人間の安全保障という観点から支援することが大事であるというふうに考えるからであります。
本年の五月一日に、緒方貞子氏、それからアマルティア・セン両氏が共同議長になられ、日本国政府の強力なイニシアチブの下に人間の安全保障委員会が最終報告書を出されました。故小渕首相の遺志も相当受け継いでいるというふうにお聞きし、私も国連大学の方で小渕元首相の演説を聞いて非常に感銘を受けた覚えがあります。その最終報告書が国連に、国際連合に提出をされました。
人間の安全保障という見地から人々を守り、人々に力を付けること、プロテクティング・アンド・エンパワーリング・ピープルという、人々を守り、人々に力を付けるということを日本国の国是とし、憲法前文に明記することを提言したいというふうに思います。
前文というのは、日本の個性、日本の国際的秩序、日本の個性を生かしながら世界の国際的秩序構築に向けた主体性を持った新しいものにしなければいけないと思います。国際的な平和構築の主体的な参画者となるべき信念に基づく考え方が必要だというふうに思います。私は、日本国が今一生懸命に人間の安全保障ということを外交の基本政策の一つとして取っているのであれば、是非これを入れていただきたいというふうに思います。
私は、過去半世紀、日本国憲法が日本の平和と安全に果たした役割を高く評価するものであります。しかし、近隣諸国の軍備拡張という現実や日本国に宣戦布告に近い主権侵害行為を継続する国家の存在を目の当たりにすると、これからの半世紀、現在の日本国憲法で日本国の平和と安全保障が保障できるのかと極めて疑問に感ずる今日このごろであります。
五月の三日の日に「二十一世紀の日本と憲法」有識者懇談会、通称民間憲法臨調が開かれ、そこで北朝鮮から拉致をされた家族の代表であられる蓮池さんのお兄さんのお話を聞き、日本国民の一人として深く考えさせられました。この公聴会に出させていただいたのも、そこで蓮池さんのお兄さんのお話を聞いて、何か私もしなければというふうな思いをして出させていただいた次第であります。
是非、これからの半世紀の使用に堪えられるだけの国の基本法を目指し、日本国憲法の全面的改正を提言したいというふうに思います。
ただし、憲法改正のための国民投票法等の手続法が不備なために、実際には憲法改正は不可能となっています。日本国憲法に改正条項が存在するのに、改正のための手続法の整備を怠ることは、たとえどのような理由があろうと、憲法尊重義務に反し、憲法秩序に反するものというふうに私は考えます。立法の不作為というふうに言っても言い過ぎではないと思います。これは、公正さ、フェアネスに欠けるものであります。是非、国会においては、憲法改正手続法制を早急に整備し、憲法秩序を整合性あるものにしていただきたいというふうに思います。
憲法の担い手は、選挙で選ばれた議員の皆様だけではなく、日本国民の一人一人であるというふうに考えます。
これからの半世紀のあるべき姿、国民の生命、財産、生活を守るための平和と安全保障のあるべき姿を、国際社会の現状を直視しながら、是非直視してください、直視しながら、本音で議論をし、国の基本法である憲法秩序を考え、憲法においてこそ国家戦略的思考を持って改めるべきことは改めることが重要であるというふうに考えます。
インターネットのホームページを私も活用させていただきまして、この憲法調査会の公聴会を知りました。このように、インターネットのホームページを活用して、国や地方の議会や、国や地方の行政での意思決定過程の情報を開示し、国民からの意見を聞く仕組みを作り上げ、民主政治を促進することを私はe—デモクラシーというふうに呼びたいというふうに思います。
この参議院で、憲法調査会、このように開かれ、また衆議院の憲法調査会が開かれ、その議事録や提出資料がインターネットのホームページで次々に公開されていることも、国の基本法である日本国憲法の再検討過程、再検討プロセスの透明性を増し、国民への説明責任、アカウンタビリティーを果たす上で意義深く、e—デモクラシーの推進に役立っているというふうに思います。
野沢太三憲法調査会会長様、それからここにいらっしゃる委員の皆様始め、熱心に御議論なさっていることはよく分かります。事務局の皆様の御努力に対して、国民の一人として心からお礼を申し上げます。
私は、一九九八年に世界銀行のセミナーがありまして、たまたま私は公共部門の民営化の勉強をしに行ったんですけれども、その手前でたまたまNATOの、北大西洋条約機構の五十周年を控えてセミナーがありまして、そこに参加しました。バージニア州のノーフォークで開かれた、オールド・ドミニオン大学で開かれたセミナーに参加しましたら、そこに数多くのNATO軍の最高司令官とかNATOの参加者、NATO参加各国の責任者がいらっしゃいました。これからどのように安全保障について考えるか、熱心に議論をしていました。
日本人が行ったのは私と通信関係者の方一人だったんですけれども、そこで言われたことは、北朝鮮からミサイルが飛んできたのに、なぜ日本の人々は静かにしているのか、何十人もの方が質問を受けに来ました。非常に衝撃を受けました。
日本の国内では歴史学者とか政治学者の方々が随分いらっしゃいますけれども、戦争の歴史の研究、それから現在の軍備状況を踏まえて戦争の抑止のための研究ということをなさっている方が余りにも少ないというふうに思います。是非、これからは日本の学者の方も、それから一般市民の方も、自衛隊やアメリカ軍の視察やセミナーにもっと参加をし、実情を踏まえた議論をする必要があるというふうに思います。
それから、中国軍や韓国軍、北朝鮮軍ともどんどん交流を深めて、現実を踏まえた上でどうしたらいいか、お互いの国にとっての平和が達成できるのかについて考えることが日本にとって大事であるというふうに思います。戦争は猜疑心から生まれます。どんな国も戦争を望む国はありません。率直にお互いの立場を話し合い、認め合うことが大事だというふうに思います。
私は、国際連合教育科学文化機構、ユネスコというのがありますけれども、たまたま民間企業でもユネスコ協会ができるということで、開倫ユネスコ協会というふうなものを設立させていただきまして、その会長を務めるものでありますけれども、子供たち、それから地域の方々と一緒に、どうやったら人間の安全保障というふうなものが促進できるかということを一生懸命考えて、この六月の十七日にも人間の安全保障を考えるという、そういうふうな勉強をさしていただきたいというふうに思っています。市民の一員ですけれども、こんなことを皆さんとともに考えていきたいというふうに思っています。
それから、国の安全保障についてはどんなふうにだれが考えるかについてですけれども、是非、参議院の先生方は、お願いしたいのは、皆さんは国の、これから日本国憲法を考える上での憲法制定権者の中で一番大事な方々であります。ですから、是非御自由に議論をしていただいて、これからの日本の五十年後、百年後を考えていただいて、どうしたらいいか、日本国の安全保障をどうしたらいいか、根本のところから考えていただければ有り難いと思います。是非、御熱心な議論をしていただくことによって、日本国国民の信託にこたえていただければ有り難いと思います。
大変僣越な話をさしていただきましたけれども、私も社団法人の経済同友会の憲法問題調査会というところで一生懸命、日本国憲法をどうするか、それから日本の国のありようをどうするか、仲間たちと、仲間の経営者の方たちと一生懸命考えていますので、どうか皆さんも国の代表として熱心に御議論していただくことを期待いたしまして、ごあいさつとさしていただきます。
どうもありがとうございました。