山内一也の発言 (内閣委員会)

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○参考人(山内一也君) 山内でございます。
 本日は、発言する機会をお与えいただきましてありがとうございます。私は、これまでウイルス学の専門家としてウイルスによるいろんなリスクの問題、それからウイルスの延長線としてのBSEにおけるリスクの問題等にかかわってまいりましたが、一人の科学者としての見解を今日お話しさせていただきたいと思います。
 私自身はBSE問題調査委員会に参画いたしまして、そこで報告書をまとめたわけですが、その中で食品の安全確保組織としてリスク分析の手法を取り入れ、リスク評価組織を独立させることを提案いたしました。その委員の一人として、今回提出されております食品安全基本法の内容は私たちの報告書の提案に沿ったものと考えております。
 私は、これまで科学者の一人として農林水産省、厚生労働省の審議会などでリスク評価に関する様々な問題にかかわってきました。これらの委員会は行政からの諮問に答える場であって、科学者の側から問題を拾い上げ提言する場としての機能は不十分であったと考えております。逆に、科学者の側でも委嘱された問題に答えるだけでした。今回の食品安全委員会の設置は、科学者にこれまでにない重要な責任を与えるものと受け止めております。
 リスクは危害要素により起こり得る危険の確率を推定するものです。危険という用語では表現し切れない内容と言えます。リスク評価を行うに当たっては、食品の安全性にかかわる問題とそれを取り巻く状況、これはリスクプロファイルと呼ばれるものですが、この面での検討を行った上で評価すべき問題を選び出して、科学的な面からのリスク評価を行わなければなりません。
 食品における最大の危害要素は細菌、ウイルス、寄生虫などの微生物です。そのほかに食品添加物、アレルギー物質など様々な要素があります。
 米国政府の発表では、アメリカ人の五千人が毎年食中毒で死亡していると推定されています。日本での実態は不明ですが、日本独自の生食文化に加えてグルメブームで寄生虫感染は年々増加しています。ウイルスによる胃腸炎は欧米で大発生を起こしております。日本でも増加の傾向が見られます。
 現在世界的な広がりを起こしております、示しております重症急性呼吸器症候群、SARSは、これはエマージング感染症、厚生労働省は新興感染症と訳しておりますが、これの典型なものでして、これ自体が食品流通にもいろいろな問題を提起しておりますし、また食品の安全性にかかわるものと考えられます。また、直接食品の安全性にかかわるようなこういった新しいウイルス若しくは微生物が出現することも考えなければいけないと思います。現実にBSEはその代表例と言えます。
 また、遺伝子組換え植物に由来する組換え食品が問題になっていますが、一方で動物バイオテクノロジーは現在進展しておりますが、これは組換え家畜の開発の面で非常に進んでおりまして、いずれ組換え食肉の問題も出てくることを考えなければならないと思います。
 こういったことはすべてリスクプロファイリングにかかわる問題と考えております。
 一方、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションの三要素に基づくリスク分析の手法は、BSE発生が契機で七年ほど前に国際機関により提唱されてきたものです。まだ十分に確立したものではなく、この手法をより発展させていくことも食品安全委員会に課せられた課題になると思います。
 食品におけるリスクの科学的評価には不確実性の存在することも指摘しておきたいと思います。リスクコミュニケーションはその不確実性を消費者に理解してもらう重要な手段と考えます。これには委員会での議論の内容の公開が重要な役割を果たすと考えております。
 本法案に関連した具体的問題として、以下についての私見も述べたいと思います。
 食品安全基本法案の第二十六条に、参考人、報告書作成依頼など、第二十六条、必要な調査委託の範囲、独立行政法人、民法第三十四条の規定による設立された法人、事業者その他の民間の団体、都道府県の試験研究機関又は学識経験を有する者に対し必要な調査を委託することができるとされていますが、リスク評価に当たっては海外の科学者の参加の必要が予想されます。BSEの例を挙げれば、これまでの国際的対策も日本での対策も、ほとんどはEUの科学運営委員会の見解に基づいて立てられてきております。海外の科学者を参考人に委嘱したり又は報告書の作成を依頼する必要性が出てくると思いますが、この法文の学識経験者を是非海外にまで広げて解釈できるようにしていただきたいと願っております。
 一方、第二十四条で、食品関連法律の改正に「委員会の意見を聴かなければならない。」と明記されている点は高く評価できます。
 これまで私は、例えば家畜伝染病予防法の目的が「家畜の伝染性疾病の発生を予防し、及びまん延を防止することにより、畜産の振興を図ることを目的とする。」となっている点が大きな問題とみなしてきました。要するに家畜の衛生ということが目的であって、人の安全というところは目的に入っていなかったわけです。食中毒の大きな原因である例えば大腸菌、腸管出血性大腸菌O157、これは牛が最大の感染源ですが、牛に病気を起こさないために家畜伝染病予防法の対象にはなっていません。一方、OIE、国際獣疫事務局の国際動物衛生規約の前文には、動物又は人に病原性を示す病原体の移動を阻止するためとなっています。これからは、食品関連のいろいろな法律、これがその目的の中に人の健康保持という内容を加えていただけることを期待しております。
 一方、一九九六年の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病出現を契機に、欧米で食の安全確保の組織が作られてきました。今回、配付されております法案資料四に、欧米での畜産・食品行政に係る組織再編についての現状が整理されています。しかし、BSEが最初に出現した英国でのBSEリスク評価組織、そしてEU全体でのBSEリスク評価組織と食品安全評価組織が述べられていませんので、レジュメに添付した表について簡単に御説明させていただきたいと思います。
 最後のページでございますが、EUには科学委員会があります。これはすべて科学者から成り立っております。そして科学委員会、そしてその中に九つの部会がありまして、第一が科学運営委員会、これはBSEのリスク評価を行っているところです。最も活発に活動しております。委員長はノーベル賞を受賞したクリスチャン・ドドユーブ教授、ベルギーの方ですが、委員十六名は、これはすべてEUの中から公募で、五十一名の中から公募で選抜された世界的クラスの科学者八名から成っております。そのほかに八名は、科学委員会のほかのセクション、下にずっと書いてありますが、八つのセクションの委員長が兼任しております。例えば、この公募で選ばれた八名の委員のうちの副委員長、これはウイルス学者でして、現在SARSの対策の最前線で一番最も活躍している方でもあります。
 一方、食品に関するリスク評価の組織として、二番に書いてあります食品に関する科学委員会、これはBSE以外の食品リスク評価を行っています。医学、栄養学、毒性学、生物学、化学などの専門家十九名ということです。そのほかいろいろな委員会がございます。
 そして、こういったEU全体としてのリスク評価が行われて、更にそれぞれの国におけるリスク評価組織、管理組織が作られているわけでありまして、例えば英国では、BSEリスク評価を海綿状脳症諮問委員会が行い、管理を食品基準庁が行うと。フランスの場合には、これは一九九九年に作られたわけですが、食品衛生安全庁、これは元々国立農業研究所が母体になっておりまして、そこがリスク評価を行っています。しかし、ここの職員自体がもう一方でEUの科学委員会の食品に関する科学委員会のメンバーとしてやはり参画しております。
 したがって、二重構造の中でこういうEUにおける食品リスク評価といったようなことが行われておりまして、日本の場合にはすべて自分のところでやるわけですから、それをどういうふうに持っていくかといった点についてこれから御検討いただきたいというふうに思います。
 以上で私の説明を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 山内一也

speaker_id: 18134

日付: 2003-05-08

院: 参議院

会議名: 内閣委員会