品川尚志の発言 (内閣委員会)

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○参考人(品川尚志君) 御紹介いただきました日本生協連の品川と申します。このような場で私どもの意見陳述の機会を与えていただきまして、大変感謝いたしております。
 全国の生活協同組合では、長年、食品の添加物ですとか残留問題などを始めといたしまして、食品の安全性を確保しようということで自らの事業上の努力、あるいは社会的ないろんなシステムについての提言、発言等をしてきておりますけれども、特に九〇年代に入り、その中ごろから、O157とか遺伝子組換え食品とか、あるいはダイオキシン、環境ホルモン、BSEというような、それ以前にはなかった新しい食品安全問題というのが、これも日本国だけではなくて世界同時多発というふうな形で発生してくるということになってきまして、改めて食品安全行政の抜本的充実強化が必要だろうということでいろんな運動を進めてきております。
 私ども自体も、ヨーロッパにこのころにも調査団を派遣したりいろいろ情報収集等を行いながら、一九九八年にはリスク分析というシステムがこれはどうしてもこういう時代には必要だろうということで日本生協連としての見解としてまとめて、消費者の中での学習活動を進めたり、あるいは私どもも、生協の事業上の運営についてもこうしたリスク分析の考え方を取り入れようとか、それから社会的な制度としてもそうしたものが必要だろうということで意見表明するとか、そんなことをしてきたわけでございます。
 ただ、事業上の努力をしようというふうなことをこの時点でもリスク分析の考え方を取り入れてというふうに考えましたが、昨年来の食品の偽装表示問題というふうなことでは私どもの生協の商品自体でもそういう問題が発生してしまっておりまして、そういう点では改めて私どもも事業者としての品質管理の責任、メーカー管理の責任等を痛感しているところでございます。
 そんなことをたどりながら、特に西暦の二〇〇〇年、二〇〇一年には、当面具体的にはということで、食品衛生法の抜本的改正をお願いしようということで国会請願署名なども行いました。全国で一千三百七十三万人の署名を得ることができました。衆参両院合わせて五百四十二人の国会議員の方々の御賛同もいただいて、国会請願としては最終的には採択いただいたと、そんな経過をたどってまいりました。
 そういうお願いを、あるいは要請をいろいろしてまいりました生協ということでいいますと、今回の法案は十分完全というふうなことは言えないまでも、私たちの求めに大筋で沿った内容であるというふうに思いますし、我が国の食品安全を確保する法制度ということでいいますと抜本的な改革であるというふうに考えております。
 例えば、国民の健康のために食品の安全を確保することが国の責務だということがこの法案では明記されております。現行の日本の法律には、例えば食品衛生法には公衆衛生の維持向上のために業者を取り締まる国の権限、国の裁量権というふうなことは決まっていますが、食品の安全のための国の責務というふうなことが決まっている法律は全く存在していないのが現行の法律でございます。あるいは、新しいリスク分析手法の採用なり食品安全委員会の設置というふうなことが決められるわけですし、あるいは例えば国民の意見反映、リスクコミュニケーションというふうなことが国の義務、国の責任ということで、これも法文上明記されることになります。
 国民の意見反映を国の責任とするというふうな、そんな法律も現行法には全く存在していないわけでありまして、ごく一例を述べましたけれども、そんなような点を見ても、もしこの法律が成立しなければ、結局現行の法律、国の責任が明示されている文言は何もない法体系のまま残されるということでありますので、是非ともこの法案が今国会で成立するということを期待申し上げたいというふうに思います。
 ただ、法律の条文だけで食品の安全と安心が確保されるのか。そんなことはあり得ないということでありまして、法律の目的、第一条なりあるいは基本認識というふうな条項が第三条に起こされておりますけれども、そういう内容が現実の運用の中で実効性を発揮できるか否か、それが安全と安心が確保されるか否かを決めるということであろうというふうに思います。
 その実効性を確保するかどうかという点も多々あると思いますけれども、とりわけ重要なポイントは二つあるというふうに私どもとしては考えております。
 そのうちの一つ目は、新たに設置されます食品安全委員会が、条文第三条にも書かれていますように、「国民の健康の保護が最も重要であるという基本認識」、つまりこの最も重要だという最もの意味が、これは私の理解もあるのですけれども、とりわけこの法案が作られてくる経過で問題になりましたBSE問題への対応等が、関係各省がその国民の健康ということよりも産業振興なり事業者優先なり、そういうことに傾きがちであったというふうなことが強く批判もされて、そういう関係の中で国民の健康が最も重要と、こういう条文が起こされてきているのではないかというふうに私は理解しておりまして、そんな意味では、この食品安全委員会が、そういう基本認識の下に第二十一条では総理大臣に対して基本的事項にかかわる意見を述べることができるように記載されるわけですし、あるいは関係各大臣に対していろいろな勧告がこの委員会としてできる関係になりますので、そういう勧告権なり意見提出権を有効に発揮をして、いわゆる縦割り行政の壁を少しでも穴を空けていくというふうなことがどれだけできるかということであろうというふうに思います。
 それを現実のものにしていくためには、七人で構成されます食品安全委員会のこの委員メンバーの人選がどれだけ消費者のことへの理解もいただける、そういうメンバーの人選になるかということが一つございますし、それからこの食品安全委員会の下に専門調査会等の委員会等が持たれますので、そうした場への消費者参加、あるいはそうしたものの情報公開等がどれだけきちんと行われるか。
 それから三つ目に、特にこの食品安全委員会の下に事務局が編成されるわけですけれども、この事務局は、当面は農水省なり厚生労働省なり、あるいはその他から人が出てスタートをするということに現実的にはならざるを得ないと思いますけれども、早期にそうした関係省庁からの独立性をきちんと確保して、そうした関係省庁にも物の言える体制が事務局体制としてもきちんと確立されるということが必要だろうというふうに思います。
 それから、様々なリスク評価を行うためには情報収集なりデータ検討等が必要になるわけですけれども、当面、そうした各種の研究機関、専門機関がこの食品安全委員会には直結しておりませんで、農水省の下であったり厚労省の下に各種研究所があって、そうした研究所の情報がこの食品安全委員会に集まるということになるわけですけれども、それがやはりここで壁が立てられるのではなくて、きちんと情報の一元的な集約ということがこの委員会にできるかどうか、そんなこともポイントの一つとして大きいのではなかろうかというふうに思っております。
 それから、海外における情報ということですけれども、特に海外情報ということでいいますと、政府の集まりでありますコーデックス委員会という国際機関がそうした情報が一番集約される場であるわけですけれども、現状では、日本国ではこのコーデックス委員会の対応というのを文部科学省がコンタクトポイントになって関係省庁の担当の方々と御一緒に対応するというふうな関係になっているわけですけれども、できるだけ早いうちにこのコーデックス委員会へのコンタクトポイントなどもこの食品安全委員会の下に置かれて運用されるということが必要ではなかろうかというふうに思う次第です。
 あるいは、コーデックス委員会なども各国政府に対してもう何年も前から、各国の中に国内コーデックス委員会というのを作って消費者あるいは事業者等の関係者との意見交換をしながら国際対応をするようにという、そういう勧告などをしているわけですけれども、日本の国内ではこの国内コーデックス委員会というのが今もってきちんと編成されるというふうになってございませんので、そんな点がこの食品安全委員会の下にもきちんと作られるというふうなことも、独立性をきちんと確保し、関係省庁、リスク管理機関に対して物の言える食品安全委員会になっていく上で必要な点ではないか、運用上そんなことがいろいろなされる必要があるのではなかろうかというふうに考える点でございます。
 それから、運用上かぎを握る点の二つ目は、リスクコミュニケーションが実効性あるものとして運用されるかどうかという点が、これも非常に大きい点ではなかろうかというふうに思います。
 一つは、この食品安全委員会の下でリスクコミュニケーションについても委員会が作られ、そのありようについて検討するというふうに理解しておりますけれども、それについて、この食品安全委員会の場で行うということだけでなしに、それぞれのリスク管理機関においてもこうしたリスクコミュニケーションがきちんと制度化されて情報が公開され関係者との意見交換が行われる、そういう条件がきちんと整備されるということが必要だと思います。
 それから、特にこのリスクコミュニケーションというのは、まず行政、国が説明責任を果たすんだという姿勢で、分かりやすく説明する努力ということが必要だろうと思います。例えば、情報公開といいますと、かなり長大な文章がホームページに載せられて、これをもって情報公開をした、すべて終わりというふうな理解のされ方が時としてないわけではないというようなことでありまして、もちろんホームページを活用するということは大切なことではございますけれども、より分かりやすく説明をする努力、あるいは分かりやすく説明するにはそうした能力が必要だというふうに思うわけでありまして、そうしたことがきちんと作られていく、育っていく、そんなことが必要かというふうにも思うわけです。
 それから同時に、リスクコミュニケーションというのは、関係者、消費者ももちろんですし、事業者もその他科学者もメディアも、そういう関係者がすべて意見交換をしながら理解を深めつつ進めていこうということが基本だと思いますけれども、そんな点では、それぞれの関係者も、このリスク評価の問題なりあるいはリスク管理の在り方なりということについて冷静に科学的に評価をし、とらえ、リスクコミュニケーションに参加をしていく、そういう力をそれぞれに付けていく、高めていく、そのこともまた必要なことだというふうに感じておりまして、そんなことを含めたリスクコミュニケーションの運用力というのが、必ずしも法律ができてすぐにでき上がるというふうには思いませんけれども、早期に高められていくというふうなことが必要ではなかろうかというふうに思っている次第です。
 そんなふうなことが運用上大切な点で、かぎはその辺にあろうかというふうに思っております。そんなことを含めて、十分な御審議をされ、是非成立させていただければ有り難いというふうに考えている次第です。
 どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 品川尚志

speaker_id: 22846

日付: 2003-05-08

院: 参議院

会議名: 内閣委員会