佐々木毅の発言 (文教科学委員会)

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○参考人(佐々木毅君) 佐々木でございます。よろしくお願いいたします。
 では、十五分という時間をいただきましたので、その範囲内で私の考えを申し述べさせていただきたいと思います。
 私の基本的な立場は、この国立大学法人法というものを基本的に支持するという立場に立つ意見でございます。
 どういう趣旨でそれを考えているかということを申しますと、言うまでもないことでありますが、二十一世紀、二十世紀ももちろんそうでしたが、二十一世紀において大学の果たす役割というものはますます大きなものになることが当然予想されております。本来であればこの種の議論はもっと早く出されてしかるべきではなかったかと私個人は思っておりまして、私の大学におきましても、私よりも二代前の総長のころに既にこのような議論は行われつつあったというふうに仄聞をいたしているところでございます。
 つまり、日本の国立大学の一つの大きな課題は、公的、国という部門の中にその一部として組み込まれているわけでありますが、一体それらの大学が個々的にどのようなことを実行しようとし、どのようなメッセージを社会に対して発しようとしているかということにつきまして、従来は専らその内部だけでその作業が行われてきたという点が否めない点でございます。
 私は、この法人法を支持する一番の理由は、大学と社会との関係の大きな組替えというところに重要なポイントがあると考えます。大学が、それぞれの国立大学が、あるいは国立大学法人が社会と今までよりもより直接的に向かい合い、どのような目標をどのような形で実現するかということを発し、そしてそれの様々な段階での計画を着実に実行していくということ、これは大学の在り方にとって非常に大事なポイントであると私は考えております。最近のよく言われるところの説明責任なるものを果たしていくということはどのような組織においても求められておりますが、大学という組織においてもそれは不可避的な課題であると、このように考えているわけであります。
 その中で、またどういう形でその法人をデザインするかということにつきましては、国会でもいろいろ御議論をいただいておりますし、国立大学協会及び国立大学それぞれの内部においてもこれまで議論を重ねてまいりました。それらの点については、また御質問があれば私なりの考えを申し上げさせていただきたいと思います。
 で、ただいま私が申しました大学と社会との関係の見直しという問題は、どのような結果を招くかといいますと、一つには、これまでの経験にかんがみまして、教育という問題が大学において従来にも増して重要なテーマになるということを予想させるところであります。
 言うまでもないことながら、人材養成と、特に高度な専門的な能力を持つ人材の育成は、これからますます大事な課題になってきております。その意味で、国立大学はこれまでとかく研究に非常に注力してまいりましたし、その成果は私は非常に見るべきものがあると思うのでありますけれども、教育という面でなお多くの努力が求められているということ自体明白な事実であります。その意味で、教育活動という社会的により分かりやすい活動というものに、これによって大きく国立大学は軸足を動かしていくことになるのではないだろうか、そのことは十分期待できるというふうに思っております。
 それから、従来、国立大学は様々な学部あるいは研究所あるいは研究科というものから成り立っており、今後とも基本的にそれらによって成り立つわけでありますが、法人化いたしますと、まず法人があって、その中に様々な組織があるという関係になります。今までは、様々な組織の連合体の上に学長や総長が言わば乗っているというような形のものでありました。これからは、法人全体というものがあって、その中に様々な組織があるという形になりますので、それらの組織全体の持っている非常にすばらしい研究資源や知的な資源というものを様々な形で有効活用し、かつそれを社会に対して発信するということが可能になります。
 俗に申します縦割りというものが大学の中でも極めて牢固として存在してきたわけでありますが、そういったものを今までのような形で新しい縦割りを作っていって組織を増やしていくということが恐らく社会的、経済的に不可能な現在においては、それらの壁を低くし、そして様々違った専門の方々を言わば結び付けるように、寄り合わせるような形で次のステップを踏んでいく、次の新しい段階を展望していくということが非常に私は重要であると思っております。
 それはある意味でこれまでの量的拡大というだけとは違った選択肢もこれからは考えていかなければいけないということでありまして、私の大学の様々な有名な先生方と議論した感触から申しまして、実にすばらしい知的資源があるのですけれども、なかなかこれがそれぞれのところに分散するような形で、ある程度散在しているというようなことがございます。その意味で、研究体制におきましても、一つの法人の中で自由に人間が動くような仕組みを作ることによって研究の状況も大きく変わりますし、また、そのことは教育活動に必要な人材というものをより広範に求めることにもつながるのではないかというふうに私は考えております。
 したがって、どのような事態が出てくるかは、これはそれぞれの法人のデザインによって違ってくると思いますけれども、これまでいろんな意味での拘束というものによって縛られてきました制約から自由になることによって、教育、研究の面で新しい次元を開く展望が出てくるということを私としては申し上げたいと思います。
 それから、そのことが結局、私は、大学というのは社会、広い意味での社会というものの中の非常に重要なアクターであるというふうに思います。これがずっと官の中の一部であるという姿はかなり異常な感じをむしろ受けるわけでありまして、かえって大学の社会的な基盤というものを弱める要素にもなり得るわけでありまして、その意味で、むしろ大学が社会の中にきちっと幅広く定着するという方向を実現するためには、むしろ法人としての自律性を備えるということが重要な要素ではないかと、このように考えております。
 ただ、言うまでもございませんけれども、今度の国立大学法人法は、今後とも国からの財政的な支援というものを前提として組み立てられるわけでありますから、それに必要な手続というものを当然予定していることは法案にも書いてあるとおりでございまして、様々な中期目標、中期計画の問題、それから評価の問題等々については、既に私が知る限り衆議院等におきましても様々な議論がなされたというふうに承知しているところでございます。
 その中期目標、中期計画につきましてはいろいろ御議論があったようですけれども、評価につきましては、まだ私個人としても必ずしも全体が見えてこないというふうに申し上げざるを得ないところでありまして、今後なお検討を要する課題があるのではないかというふうに思っております。
 ただ、基本は、その言わば中期目標、中期計画というのは、あれは個々の大学と、個々の法人と文部科学大臣との間の一種のこれは契約的なものと想定するならば、それがどのような形でその後段階的に実現していったのかということをチェックするという意味で評価が必要なことは言うまでもありません。
 ただ、大学の活動というのは極めて膨大でありまして、何をどう評価するかということについては十分事前に慎重な考慮が求められるのでありまして、評価のための評価、あるいは評価のために大学自体が、大学人が評価のためにたくさん参加し、その結果として大学自体が疲弊してしまうというようなことは、これはやはり非常におかしな事態であることは言うまでもございません。
 それから、まだ必ずしも十分展開されていないテーマでございますが、会計制度その他における規制緩和を是非お願いしたいというふうに思っているわけであります。
 我々大学がパブリックセクターにおける非常にコスト高の一端を担ってきたのではないかという意見が学内に広範に存在いたします。このあるものは規制によって生じた面もあろうかと思います。したがって、こういう面で言わば努力をすればコストを下げられ、かつ、それをほかの研究その他に回すことができるというような仕組みを作っていただきませんとこのシステムは回らないということになるのでありまして、その意味での規制緩和の件につきましても是非とも皆様方に御検討いただきたいと思います。
 しかし、もう一つ論点として出させていただきたいのは、これは本当に大きな仕事である、これは大改革であるということでございます。
 したがって、文部科学省はもちろんのことでありますけれども、政府の各省におかれましても十分な支援体制を取っていただきたい。特に、最初から数年の移行期というのは非常に大変でございます。法律案が通ればそれでおしまいということでは全くございません。様々な問題がそこから出てまいりますので、そこにつきまして可能な限り十分な体制を取っていただく。その上で、ようやく動き出したときに、またいろいろ次の段階でまた対応が違ってくるものだと思います。その意味で、政府、特に文部科学省の大学に対するかかわり方は決して一律ではなく、段階を踏んで変わっていくべきものであるというふうに私は考えているわけであります。そういう点を私としては今日特に申し上げたいというふうに思いました。
 いずれにせよ、各大学の状況、多様でございますが、学長たちの意見を聞きますと、本当に目の前のことで大変悩んでいるというのが実情でございます。会計規則が変わるということでありますが、一体その会計規則に必要な費用をどうして捻出するかということでもって頭を悩ましている学長も少なからず存在するというのが現実でございます。その意味で、移行に伴う様々なコストあるいは必要な措置というものにつきましては可能な限り対応をお願いしたいというふうに考える次第でございます。
 ちょっと早いかもしれませんけれども、私の陳述をこれで終わらせていただきます。

発言情報

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発言者: 佐々木毅

speaker_id: 1248

日付: 2003-06-03

院: 参議院

会議名: 文教科学委員会