楠田大蔵の発言 (憲法調査会)
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○楠田委員 民主党の楠田大蔵でございます。
先ほどの小委員長報告にありましたように、ツェプター大使からの御意見をもとにして、特に、国家統合・国際機関への加入及びそれに伴う国家主権の移譲について意見を述べさせていただきます。
まず、憲法論議がこうしてこの場でもなされるようになった背景として、やはり時代の変化というものが挙げられると思います。例えば、国家間戦争から民族紛争や国際テロなど、多国間で共通の新しい脅威に対抗する時代への移行、環境権やコミュニケーションといった二十一世紀型人権の必要性、国境を越えた経済やエネルギー、食料問題の発生などです。そうした変化の中で、もしくはそうした変化を先取りしてEUというリージョナルコミュニティーが誕生しました。既に経済・通貨統合をなし遂げ、新たに欧州憲法条約締結、共通外交・安全保障の策定などを既に目指しております。
その長い形成過程の中で、国家主権の制限と移譲という命題があらわれてきましたが、現にEUでは、一定の分野において多数決方式による立法も含む形で立法権限が移譲され、その定立する法に国内的な直接適用や直接効果が認められ、解釈、適用に関する裁判所を用意し、対外的な交渉権限を持つ超国家性を備えており、こうした点で既に国家主権の移譲がEUでは行われていると言うことができると考えます。
こうした事例というより、ツェプター大使の壮大なEUにおける夢を目の当たりにいたしまして、翻って我が国の現在の状況、そして将来のあり方を考えますと、やはり戦略の欠如というものを感じざるを得ませんでした。アジアの中の日本として、中国や韓国、東南アジアとの関係をいかにしていくか、スピード感を持って具体的に想起する必要があると私も若い世代として考えたところでございます。
私は、やはりアジア間での集団的安全保障というのは必要だと考えます。北朝鮮との関係における核兵器の拡散防止や大量破壊兵器の建設への懸念といったものは言うまでもなく、前回の小委員会で中山会長が御指摘されたように、エネルギー安定のためにアジアでパイプライン敷設というものを考えていく、そうしますと、その防衛やまた原子力発電の使用済み核燃料の処理をいかにしていくかといった問題など、アジア地域での安全に対する共通課題が多く存在すると考えます。
こうしたものに対して、やはり日米安保という軍事同盟の枠組みだけでは対処できない、もしくはなじまない部分も多いと考えます。また、アメリカへの過度の依存にもつながる。この点、ツェプター大使も、EUにおいて独自の緊急対応部隊を編成するにおいて、地域の問題に対して、ヨーロッパの問題に対して、いつもいつもNATOに頼る必要はないということを示したかった、このような率直な意見も述べられておりました。
こうしたアジアでの集団安全保障を想起する上で、やはり憲法において自衛隊に関する国家主権の移譲もしくは制限というものが一つ考え得るのではないかと私は思います。また、既に実行されておる国連の平和維持活動も、国連という枠組みのもと、自衛隊が派遣され、国連が具体的な行動をとる際にそれを使うことができると考えれば、同じく我が国の国家主権が制限、移譲されると考え得ると考えます。この点は既にドイツ連邦共和国基本法二十四条二項や、不戦をうたうイタリア共和国憲法十一条にも明記されており、我が国も平和と正義を確保する手段としてとの留保を条文に付して明文化してもよいのではと私は考えるところでございます。
しかし、ここでつけ加えておきたいのは、やはりヨーロッパでこうした結論が導き出される過程には、多くの困難と歴史があったということでございます。ドイツ、フランス間における不戦の誓い、過去の経験に基づく不戦の誓いというものを共通の理想として出発し、その後、共同市場の形成や経済統合といった経済面での共通利害、そして欧州大陸という共通の社会、文化があって初めて可能となった。また、そうした土壌がありながらも、欧州憲法条約が既に決裂を一度し、またイラクへの対応で明らかなように、共通外交・安全保障でもまだ足並みの乱れがございます。
こうした現実を考えると、アジアでの集団安全保障を現実ならしめるには、やはりそれとその前段階として、もしくは同時に、FTAや最近もう一歩進んで人的交流も含めたEPAの締結、また環境エネルギーにおける協力体制などを通じてお互いの信頼関係を醸成することがまず必要ではないかと考えます。また、我が国が、人権尊重や民主主義、核兵器の廃絶などをアジア共通の理念として掲げてその浸透を図るということも、アジアでの共同体形成の重要な手段になり得るのではないかと考えました。
こうした経済面、人権面での共通規定をアジア相互間で共有するという選択においても、当然、国家主権の制限、移譲というものが憲法内で明記される、こうした選択の必要性が出てきます。
我が国は、一国ではもはや生きられず……