大出彰の発言 (憲法調査会)
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○大出委員 最初の発言者担当の民主党の大出彰でございます。
この齊藤参考人のお話というのは、法律の条約適合性というのが中心でございましたので、その話でございます。
私は、常日ごろ、裁判所は法律の憲法適合性審査と同様に、どうしてもっと法律の条約適合性審査をやらないのだろうかと思っていましたので、その観点から齊藤参考人に質問しました。
まず私は、私が国際法学者に会ったとき、裁判所は法律の条約適合性審査をやらない傾向があるのはなぜでしょうかと問い、それに対して、我々国際法学者は憲法をよく勉強するけれども、憲法学者は国際法を勉強しないことが裁判にも影響していると答えられた話を出して尋ねました。
その点について、参考人の直接的な答えの部分は、「憲法学者が国際法を勉強していないということで言いますと、国際人権条約の規定が憲法の人権規定と同じように、」「裁判で使うためには、いろいろとその審査のための基準ですとか厳格度といったものについて議論を詰めなければいけない。にもかかわらず、実際にはそれがまだ十分に行われていない面がありまして、そういう面で、憲法学の人が、憲法の規定については違憲審査基準ということでいろいろ論議しているけれども、国際人権条約については足らないのではないかということを国際法の先生がそうおっしゃったのであれば、そういう面もあり得るかなというふうには考えます。」とおっしゃった部分でした。
裁判所が法律の条約適合性審査を余りやらない原因の一端に、憲法学者が、憲法と異なり、条約についてはその審査基準とか厳格度といったものについて議論が不十分あるいは足らない面があることを認めた形になりました。
この質問は、決して憲法学者を責めるための質問ではなく、また事がそう単純でないことも認識した上での質問であり、さらに何よりも人権擁護への強い気持ちから出た質問であったことを御理解いただきたいと思います。
この問題の基本には、参考人がおっしゃるように、条約と法律の関係が、憲法と法律の関係や法律と地方自治体の条例の関係と同じと考えるかという問題があります。
そこで、次の質問をしました。
国際人権規約自体が、条約で、セルフエクスキューティング、自動執行力があるというのであれば、即適用してもいいのではないかと単純に考えますし、日本では法律よりも条約が上だというのが自明の理として考えられているのであれば、なぜ適用が遅いのだろうかと、適用を催促している気持ちをあらわしました。
それに対して、参考人は、「本当にそれができるか、あるいはしてもいいのか、その根拠が十分に説明できるかというところが非常に困難な問題で、日本の裁判所がちゅうちょする理由もそこにあろうかと思います」と述べられ、さらに、憲法、条約と法律の憲法上の具体的な問題点について、次のように述べられました。
「憲法の場合ですと、憲法と法律の関係で、法律の違憲審査をするということになりますと、これは憲法に基づいてやるということで、民主主義に対して立憲主義といったものを持ち出して正当化が何とかできるわけですけれども、条約の場合に、では、条約の条文にどこまで法律にまさるだけの民主的根拠があるのかということを考えていきますと、多少難しい問題にも突き当たる面がございまして、そうすると、裁判官として、立法府がつくった法律を、条約を根拠として簡単に適用しないと判断ができるか、あるいはどれだけできるのかということにはためらいが生じるのも無理がないところはあろうかという趣旨でございます。」と。
このことから、参考人は、法律に対する条約の優位性の根拠については、憲法の国際主義を基調としてほかの憲法の諸原理との調和を求めた結果と解するのが整合的であるという点に求められておられました。
さらに、いわゆる上乗せ条約あるいは横出し条約について質問しました。
基本的には、法律と衝突して排除するという問題が生じないので、困難に行き当たらないというお答えでした。
しかし、「最高裁判所に上訴をする場合に、条約ということを争いとしてはいけないということがありますので、そうなると、上乗せ部分あるいは横出し部分といったものを憲法の規定の中に読み込む、あるいは、読み込む対象の規定が見出せないという場合には」、条約の誠実な遵守をうたう憲法「九十八条二項を使った方法でいくということが必要ではないかというのが陳述の趣旨でございます。」と述べられました。
そのほか、私の質問に対して、憲法解釈を通じた上訴の容認についての見解、また条約のセルフエクスキューティング、自動執行性と条約の直接適用性との関係について、イコールだというふうに考えても説明は成り立つのではないかという見解が述べられました。
以上です。
〔会長退席、枝野会長代理着席〕