2004-03-25
衆議院
松浦一夫
憲法調査会安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会
松浦一夫の発言 (憲法調査会安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会)
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○松浦参考人 防衛大学校の松浦でございます。
本日は、お招きいただきましてありがとうございます。
私に課せられたテーマでございますが、諸外国の国民保護法制ということでテーマをいただいております。諸外国と非常に広い範囲を指定されましたのですが、私も、いろいろな国について新しいところまですべてフォローしているわけでございませんで、特にドイツのことを中心に勉強してまいりました。そういうことで、諸外国とありますが、特にドイツの国民保護法制、これを中心に、これまでの制定の経緯と、それから、特に九・一一の米国テロ事件以降の新しい動向、こうしたものを踏まえましてお話をさせていただきたいと思います。レジュメをお配りしてありますが、おおむねこれに従ってお話をいたします。
各国国民保護法制の概説ということで最初にございますが、衆憲資料第四十五号ということで、こちらでつくられた資料がございまして、これが非常によくできておりまして、これ以上のことをお話しするようなこともないのでありますが、後半述べますドイツの法制の特徴を際立たせる意味で、ほかの国についても若干御説明をいたしたいと思います。
よく、緊急事態法制を分類する場合に、英米法系と、それから大陸法系というような区別をされる論者が多いわけでありますが、これは、一般的に二つに分けられるということは確かに類型として言えるのかもしれません。
先ほど小針参考人の方からも言及がありました英国に関しましては、成文憲法を持たず、またコモンローの国ということで、この緊急事態法制に関しましても、いわゆるマーシャルロー、マーシャルルールというものに基づきまして、必要性の原則に従って緊急時に必要な対処権限というものを広く国王に授権するという方法をとる。その際、法に仮に反した場合に、違法な措置であっても免責法という形でこれを事後的に合法化するというような手続をとるということがあります。
ただ、これも、第一次大戦のころから第二次大戦にかけまして幾つかの成文法ができております。これらは、一九一四年の国土防衛法であるとか、あるいは緊急権法、こういった法律がそれであります。これらは、今日我々が、あるいは日本において、あるいはドイツの法制に照らしてみて、いずれもいわゆる授権法というものでありまして、緊急措置権を包括的に授権できる分野を列挙したにすぎない程度のものでありまして、内容的には、要するに授権を行政立法に委任するための法律というような側面を持っております。とはいえ、こうした実定法上の枠組みというものができ始めたのが第一次大戦のころからということになります。
国民保護法制といいますものは、やはり第一次大戦のころから戦争の形態というものが変わってきまして、一般の非戦闘員を巻き込む非常に大きな戦争災害を招くようになったのがこのころからでありました。国家総力戦の中で非常に多くの一般市民の犠牲者が出るということが前提にあったわけでありまして、これにどう対処するかということでさまざまな法律ができてまいります。イギリスでも、空襲警報法、あるいは民間防衛法といったようなものがさまざまできてまいります。
また、戦後になりまして、一九六四年に国家緊急権法というものができております。これに基づき、広く民間防衛に関しましてもカバーできるという体制をとっております。さらに、イギリスの場合には特にテロ対策というものにつきましてもかなり前から立法がなされておりまして、二〇〇〇年にテロ対策法というものができております。
それから、フランスに関しましても、これもやはり第一次大戦のころから、消極的防衛という名称、分類でありますが、工業力や建造物の保全であるとか、あるいは国民に対する毒ガス攻撃などに対処する法制というようなものができてまいります。一九四四年、第二次大戦の終わりのころに国防省から内務省に移管して、現在は民間防衛・安全保障局というところが、内務省の中でこれを担当しているということであります。
それから、スイスに関しましては、民間防衛と申しますのはスイスは非常に発達しておることは御承知のとおりであります。スイスは永世中立国でありますから、これは自国の国土を戦闘の場にせざるを得ない状況にあるわけでありまして、そういう中で、国民保護をどう考えるかということは特に、ほかの国以上に重要な問題であります。民間防衛、これはドイツと共通するところがあるのですが、総合防衛という原則のもとに、軍事防衛、精神的国防、これとともに民間防衛という柱、この三本柱によって総合防衛というものを構築しているわけであります。
民間防衛に関しましては、特に一九九九年の憲法の六十一条にその明文規定が置かれておりまして、憲法上も詳しくこれが規定されているというところに特徴があります。
韓国に関しましては、これは言うまでもなく北の脅威というものを前提にいたしまして、早い時期から、これは朝鮮戦争のころからでありますけれども、国民保護というものについては非常に重きを置いてまいりました。憲法上、大統領に緊急措置権、緊急命令権でありますとか緊急財政・経済命令権あるいは戒厳宣布権といったようなものが憲法上の規定として置かれております。
民間防衛に関しましても、一九五一年の三月に防空法というものが制定されております。また、七五年の八月には民防衛基本法というものが制定されました。現在、この法律が民間防衛の基本法ということになっております。同年十二月には民防衛隊というものが組織されまして、二十歳から四十五歳までの男子あるいは志願した女子というものから、非常に大規模な民防衛隊の組織というものが維持されておるということでございます。
アメリカに関しましては、これは、特に九・一一以降、こうした分野について省庁の再編等がございまして、最近の動きというものがかなり活発でありますが、当初は、一九五〇年のころから民間防衛法というものが制定されてはおりましたが、これは特に、米ソの対立が厳しい時代、核攻撃の危機というもの、これを前提にした法制がまず構築されていったわけであります。
災害に関しましても法律がございますが、これは一次的には各州が対応するものであります。これが一九七九年の三月にFEMA、連邦緊急事態管理庁というものによりまして、連邦一元的な危機管理体制というものが確立してまいります。州知事の要請とFEMAの長官の勧告によって大統領が緊急事態宣言、これは大規模なテロであるとか核攻撃などの場合は要請は必要ございませんけれども、大統領の緊急事態宣言というものを行うという形になっております。これが、二〇〇三年の一月に国土安全保障省の設置に伴って、その一局として統合されるという経緯をたどっております。
いずれにしましても、こうした諸外国の民間防衛あるいは国民保護法制というものを見てまいりますと、軍事的な防衛というものとそれから平時の災害救助、こうした法制とを結びつける一つの法分野というようなことが言えるかと思います。
さて、本題の方のドイツの国民保護法制に関してここから御説明をいたしますが、ドイツの緊急事態法制、これにつきましては、この小委員会の中でも参考人が何度か触れられております。それについてまた改めて説明する必要もなかろうと思いますので、憲法上、市民保護、国民保護というものがどのような形で規定されているかということだけを御説明いたしたいと思います。
ドイツの条文を見ますと、防衛に関する規定というのが幾つかございます。その中で、特に防衛という言葉を単独で用いることなく、一般住民、一般市民の保護を含む防衛という言葉がたびたび使われております。
レジュメに列記いたしましたように、基本法の十二a条三項、これは兵役あるいは代替役務に徴用されない防衛役務義務者の非軍事的役務に関する規定でありますけれども、ここにおきましても、防衛という言葉がこう書いてあります。国防義務者に対しては、防衛事態において、法律によってまたは法律の根拠に基づいて、一般住民の保護を含む防衛の目的のため、非軍事的役務の義務を課すことができるというふうな条文を置いておるわけであります。
これ以外にも、十七a条の二項、これは、防衛に関する法律による移転、居住移転の自由であるとか居住の不可侵の制限でありますが、ここで言う防衛に関する法律というものの中にも、一般住民を含む防衛という言葉が使われております。
さらには、七十三条の一号、これは連邦の専属的立法権限に関する規定でありますけれども、これも、一般住民を含む防衛に関して連邦が立法権限を有するという条文になっております。
つまり、ドイツの憲法の中では、防衛、通常我々が想定しますのは軍事的な防衛を意味するわけでありますが、それとワンセットで国民の保護、一般住民の保護というものを常に考えるという姿勢がこの憲法の条文の中からも読み取れるということが言えると思います。
つまり、国防の任務というものがもちろん国の役割であることは間違いございませんが、国民に多くの被害を与えて、あるいは国民の安全というものをないがしろにして国防というのはあり得ないわけでありますから、国を守るということと国民の安全を守るということが常にワンセットであるということを意識する意味で、こうした条文の規定のあり方というのは有意義であろうと思います。
そうしたことで、憲法上、軍事的防衛と国民保護というもの、これが常に並列関係で規定されているということでありますが、ここから、では実際、国民保護というものがどのような形でドイツの防衛構想の中に位置づけられているかということを御説明したいと思います。
これは、先ほどスイスのところでも申しましたが、総合防衛という考え方をドイツはとっております。これはきょう参考資料としてお分けしました私の論文の中でも図式化しておりますけれども、「総合防衛のための一般指針 総合防衛ガイドライン」というものがドイツにはございます。これは一九八九年の一月十日に決定されたガイドライン文書であります。
ここではどういうことが書かれておるかといいますと、NATOとそれからドイツの国家機関、ドイツはNATO加盟国であります。特に冷戦時代、東西ドイツに分かれまして、西ドイツはワルシャワ条約軍に対して前線にあったわけでありまして、非常に有事というものを常に想定した安全保障政策というものをする。そういう中で、この防衛構想というもの、これはNATOとドイツの国家機関との関係というものが問題になります。さらに、ドイツは連邦国家でありますから、連邦政府と州政府、地方機関、こうしたものとの関係がどうあるべきか、あるいは民間の災害救助団体、こうしたものとの関係がどうあるべきかということで、非常に複雑な関係の中で有事法制というものを運用しなければいけないという立場にございました。そういうことから、有事法制、これはドイツの場合には実定法としてたくさんございますが、これを統一的にそごなく運用するための一般指針として書かれたものであります。
この総合防衛といいますものは、軍事防衛、それから非軍事防衛という二つの分野に分けられております。軍事防衛というのは、国防省、連邦軍が担当する防衛分野であります。これに対しまして非軍事防衛といいますものは、軍事防衛以外の防衛に関係する分野、つまり文民機関が担当する防衛分野ということであります。こういう中で、国民保護、ドイツの場合には市民保護と言っておりますが、市民保護というものが非軍事防衛の中に含まれる。連邦内務省、それから各州の内務省の管轄で行われております。
この市民保護のために、ドイツはさまざまな連邦法をこれまで制定してきたわけでありますが、現行法は一九九七年の三月二十五日の法律であります。この九七年三月二十五日の法律というものは、正式名称は市民保護再編法という法律でありまして、それまで多く制定されてきた市民保護関係の連邦法を再構成するという意味を持っておりました。
この市民保護に関しての法律というものをたどってまいりますと、再軍備直後の一九五七年の十月九日に市民保護のための措置に関する第一法律というものがございます。
これが市民保護関係の法律の先駆けとなったものでありますが、この中には既に、市民保護、これは民防空と言っておりますが、連邦の任務であるということ、それから、この民防空に関する費用というものは連邦が負担するということが定められております。また、防空を担当する機関として、連邦防空警戒庁というものを内務省の中に置くというようなことも定められておりましたし、また、空襲時に発生する人的、物的災害、こういったものを予防しまたは除去する任務を持ちます防空救助隊というものの設置、これもこの段階でもう既に行われております。これ以外にも、例えば工業、食糧産業、ガス、水道、電気、こうした生活上重要な施設、防空施設を整備する措置、こういうものを定めておりますし、さらには、文化財の保護あるいは医療品の備蓄等の規定もこの段階でもう既に規定されております。
これが基本法になりまして、個々の分野につきまして個別法ができてまいります。
一九六五年の八月十二日に市民防護隊に関する法律というものができまして、武力攻撃の危機や被害から住民を守るための組織としまして、国際法上、救済団体としての地位を有する組織が設置されます。これは、招集された兵役義務者あるいは職業隊員、志願による任期採用隊員から構成される点で、連邦軍、軍隊と同じような組織をとっております。
さらに、一九六五年の九月九日になりますと、防護建築法という法律ができます。この防護建築法というのはシェルターの建設にかかわる法律でありまして、先ほど申しました第一法律の中の第五章に防護措置に関する規定がありました。これを補充する法律であります。建築物を新築する場合、その住民やそこで働く労働者の安全のためにシェルターの建設を義務づけるという規定が置かれましたり、あるいは病院、学校、宿泊施設、こうしたものに収容人員に見合ったシェルターを建設するというようなことがこれに書かれております。
それから、六五年の九月九日、同じ日でありますが、自己防護法というものもできております。
有事の際の国民保護といいますものは、確かに、公的な機関、国や自治体の住民の保護ということが重要であることは言うまでもありません。そのための法律でありますが、それ以前に、被害が発生した初期の段階でだれが自分を助けるかといえば、自分自身あるいは隣人であるわけであります。こうした住民の自己防護あるいは隣保救助というものの義務、これを定めたのがこの法律でありました。
ドイツでは、現行法でも、この自己防護というものに非常に重きを置いております。戦時においては、各地で同時多発的に被害が生じますから、国や自治体の機関がこれを救助するといいましても、無理が生じます。やはり、その初期の段階でこれを救うためには、自分で自分の身を守る、あるいは隣人を助けるということが重要になってまいりまして、この自己防護ということについて法律を設けたのが六五年でありました。
ただ、こうした法律、幾つかできておりますが、これは、当初は西ドイツの財政難から施行が大分延期されまして、十分にこれが効果を発揮したとまでは言えない部分がございました。とはいえ、この法律によって国民保護法制が一応完備したということが言えると思います。
その後、災害防護の拡張に関する法律というものができております、六八年の七月九日であります。この法律というのは、平時の自然災害や大事故に対する救助活動を行う組織、これはドイツの場合には連邦技術救助団というものがございます、あるいは連邦技術支援隊というように訳しているものもあります。これは内務省管轄の連邦機関でありますが、ボランティアが中心で組織されております。あるいは地方の消防隊でありますとか赤十字機関、あるいは、これはドイツ特有であるかもしれませんが、修道会、教会、こういったところが救済団を組織いたしまして、事故の救助などに当たっております。
こうした平時の災害救助組織というものと有事の市民防護組織、これが別々に運用されていたということから、組織上合理的でない、また、隊員も両方に重複して登録しているというケースが多くありまして、これを一本化する必要があるということで、平時の災害救助組織が有事の際にも活動するということで、組織的な一体化がなされたのがこの法律であります。
その後、そこに書かれておりますように、七六年に、第一法律が改正されて、市民保護に関する法律というものができました。最終的には、九七年、これは冷戦が終わった後でありますが、市民保護の再編に関する法律という現行法ができまして、それまでの法律がこの法律に一本化されて、非常に簡素かつ非常に合理的な法律にまとめられております。
時間がございませんので、現在の市民保護法に関して、簡単にその項目を列記いたしますが、市民保護に関しては七つの柱、分野がございます。先ほど申しました自己防護というのがその第一に書かれております。第二が、住民への警報に関する規定であります。三番目が、防護建築、先ほど言ったシェルターの維持管理。第四としまして、滞在規制。第五番目に、市民保護における防災組織の位置づけ。六番目に、健康保護措置。それから七番目に、文化財の保護措置というものがございます。
これらはいずれも、この市民保護再編法、現行法ができる前に幾つかの法律の中で既に定まっていたものでありますが、自己防護、これがその第一条に掲げられております。先ほど申しましたように、災害救助における自己防護というものの重要性をまずうたっておりました。自己防護というのは市民保護の基礎である、官庁による市民保護措置はこの自己防護というものを補完するものであるという位置づけがなされておりました。
それから、住民への警報に関しましては、危険の把握といいますものは連邦の責務であるということになっておりまして、ドイツでは各地に市民保護連絡所というものが設けられておりまして、防空に関する危険情報はここから上げられます。それから、放射能に関しては、全国に観測所が設けられておりまして、連邦放射能防護庁本部というものが設けられて、ここで情報収集、分析がなされることになっております。連邦レベルでこうした危険の把握を行うわけであります。
警報の発令というものも連邦が指示を出すわけでありますが、連邦の委任によって、ラント、各州の防災警報を担当する機関がこれを行うということになります。防災の器材等に不備がある、不足がある場合には、これは連邦の予算によって警報器材等の補充をするということになっております。
防護建築、シェルターの建築に関しましては、冷戦時代、もう既に多くのシェルターが建造されております。その維持というのは市町村に任されております。市町村は、平時、維持管理するかわりに、平時にはシェルターとして利用されておりませんで、ほかの別目的、例えば地下駐車場でありますとか、こうしたものに利用されておるわけですけれども、そこから得られた収入というものも市町村に帰属するということで、維持管理の責任と同時に、そうした収益にも結びつくというような合理的なシステムになっているようであります。
また、自家シェルター、これは個人あるいは企業などが設けたシェルターでありますけれども、これも連邦予算から補助金が出たり、あるいは税制上の優遇措置がとられておりまして、一定の義務を伴います。例えば、自分だけではなくて、ほかの人も同時にここに収容しなければいけないというような義務でありますとか、シェルターとしての機能に支障になるような改造、こういったものをしてはならないとか、こういった義務も同時に規定をされております。
それから、四番の滞在規制です。
滞在規制、これは日本では避難誘導というような言い方がされておりますけれども、必ずしも避難誘導というだけではございませんで、これはドイツだけではなくてNATO諸国すべて共通していると思いますが、滞在規制、つまり動いてはならないという指示もこの中に含まれます。
戦時においては、特に、いろいろな情報が錯綜しまして、一般住民が右往左往するということも考えられます。そうした場合に、住民が無秩序に移動するということになりますと、交通の障害にもなりますし、特に戦闘地域に近い地域では、部隊の移動とこの住民の避難というものの調整をどうするかというのは非常に難しい問題がございます。そういったことから、特に危険度が少ない地域におきましては、一般住民はそこにとどまれ、滞在場所を許可なく退去することが許されないという指示を出すこともできるようになっております。ただ、戦闘地域に近いところでありますとか、防衛上の重要施設があるところに居住している住民に関しましては、やはり避難誘導あるいはシェルターへの収容といったようなものがなされることになっております。
それから、市民保護における防災組織ということでありますが、先ほど申しましたように、平時の防災組織が有事においても市民保護に当たります。
これはドイツの特徴でありますが、これは後の方で説明するつもりでございましたが、ついでに説明いたしますと、ドイツでは、非常にボランティア組織というものが重要な役割を果たしております。消防団の志願隊員というのは全国で百三十万人おります。それから、そのほかにも代表的なボランティア組織が五つございまして、ドイツ赤十字社、それから労働者サマリア人連盟というのがありまして、これは労働組合系の救済団体、救助団体であります。それからドイツ救命社、それからヨハネ騎士修道会事故救済団、マルタ騎士修道会救助団といったようなものがございまして、これらに五十万人のボランティアが登録されております。こうしたボランティア組織あるいは消防団といったようなものが、連邦やラント、州の国民保護措置、これを助けることになっているわけであります。
これに加えまして、連邦技術救助団、これにも七万五千人が登録しておりまして、これは平時の災害救助のみならず、有事においても連邦やラント機関と連携をとりながら国民保護に当たる形になっております。
日本におきましても、これは、ボランティア団体との連携というものを、一応、国民保護法制、国民保護法の中に規定しております。第四条だったと思いますが。ただ、それの関係につきましては、ボランティア団体を支援する、協力関係をとるといいましても、具体的にどのような形になるのかということにつきましては、はっきりとはしておりません。この辺のところ、ドイツの連携のあり方、これが参考になるのではないかと考えております。
それから、六番目の健康保護措置というものですが、これは、特に有事の際には医療、衛生物資、これが不足いたします。これを平時から備蓄しておくということを、薬品会社でありますとか卸売業者、あるいは薬局、こうしたところに命じるという制度を整えております。
それから、文化財保護措置に関しましては、ドイツは、武力紛争における文化財の保護に関するハーグ条約に加入しております。六七年の四月十一日に、その批准法の中で、外務省、内務省それから国防省の所管分野に関しまして、この規定を置いております。
日本でも、文化財の保護に関しましては、国民保護法制の中で幾つか規定が置かれております。
時間がございませんので、最近の動向につきまして、若干御説明をいたします。
九・一一のテロ事件まで、特に冷戦下の、つまりドイツに対する武力攻撃というものを前提にした武力攻撃事態における国民保護ということが中心で検討されてまいりましたが、特に九・一一テロ事件以降、こうしたテロに対する対処というものも考えていかなければいけないということで、二〇〇二年の六月に、内務大臣会議、これは連邦内務大臣と各州の内務大臣の会議でありますが、新戦略というものが決定されまして、これに従いましてさまざまな改善がなされております。
幾つか項目がございますが、連邦市民保護・災害救助庁というものが新設されまして、それまで市民保護本部というものが担当しておりました部分をこれが引き継ぎまして、特に連邦、ラント、それから民間団体の連携というものに意を用いております。
それから、連邦・ラント合同通報・対策本部というものも設けられました。これが、特に不足物資の管理や要員、機材の調整などを行う対策本部として機能をいたします。
それから、deNISと言っておりますが、ドイツ緊急事態準備情報システムというインターネットを利用したデータバンクを立ち上げております。これは既に二〇〇二年の五月から運用が始まっておりますけれども、これは一般国民向けと関係者の内部のネットと二つございまして、一般向けのサイトにおいては、防災関係について二千以上のリンクが張られておりまして、市民保護に関するさまざまな情報の提供に充てられております。また、内部のネットに関しましては、防災関係機関、連邦、州、それから民間団体の間の情報交換でありますとか要員の融通、あるいは物資の配給、こういったものについての調整を行う情報データバンクとなっております。
これ以外にもさまざまな改善がなされておりますが、時間の関係上、省略をさせていただきます。
最後にもう一つ、テロと市民保護という視点から注目すべき動きといたしましては、航空保安法という法律ができつつあります。これはまだ、今現在、連邦議会の第一読会を通過したところまで確認しておりますが、日本でも若干、報道がなされております。これは、九・一一のテロの場合に、民間航空機をハイジャックしてこれを武器として使用するというような非常に残忍な行為が行われたのですが、こういったことがもしドイツであったらどうするんだということから話が始まりました。
さらに、二〇〇三年の一月五日でありますが、フランクフルトでちょっとした事件がございました。小型航空機を操縦する、ちょっと精神病を患った経緯のある者が高層ビルのあたりを飛び回っておるということで、これは危険であるということで、九・一一のテロの記憶がよみがえったというような事件がございました。こうしたことを反映いたしまして、民間航空機のようなものが乗っ取られて、例えば原子力発電所に突っ込むであるとか高層ビルに突っ込む、こういったことがなされた場合にどう対処するかということで、制定されつつある法律であります。
特に問題になりましたのは、この十四条の中で連邦軍の出動を規定していることであります。空軍機によって、強制着陸とか排除に従わない場合、威嚇射撃をしてもさらにこれに従わないということになりますと、最終的に武器の使用を認めているという点であります。民間航空機でありますから、当然これは一般の乗客も乗っているわけでありまして、これに対して武器を使用するということは、撃墜を意味するということになる。そうした一般住民を巻き込んだような措置が許されるのか、仮に二千人の人命を救うために二十人の人間を殺していいのかというような議論もございます。
これに関しましては、現在法案審議中でありますし、どうなるかはわかりませんが、一部には、基本法三十五条、災害時における連邦軍の出動規定、あるいは第二条、生命身体を害されない権利というものが規定されておりまして、こうしたものとの関連から、違憲の疑いありということで、批判も出ております。
ただ、連邦政府がそれを承知でこういった法律を出したといいますのは、やはり、自爆テロというのは自分の命をもう捨てるつもりでやっておるわけでありまして、そうしたテロリストに対して絶対にそれを成功させないという決意を示すためには、これぐらいのことは連邦政府は考えておるんだぞというところを示したかったのではないかと思います。
実際のところ、先ほども申しましたような、極限状況において連邦国防大臣がこの決断をする、つまり民間航空機を撃墜するというような決断ができるかといえば、非常に難しい。政治的に非常に大きな責任を伴いますから、決断は難しいだろうと思います。実際、オットー・シリー内務大臣は、この法案の説明の中でも、具体的にどういう状況でこうした武器使用を行うかということについての要件をはっきりしないということも言っております。ですので、実際には撃墜命令を出すというふうなことは難しいとは思いますが、ただ、法制上、そういうことも含めて政府は考えておるんだという決然たる態度を示すということで、自爆テロのようなものを防ぐという姿勢のあらわれではないかと私は考えております。
もう時間が過ぎておりますので、このぐらいにいたしまして、甚だ雑駁な発表になってしまいましたけれども、御不明な点がございましたら、また質疑応答の中でお答えしたいと思います。(拍手)