2004-03-25
衆議院
中山太郎
憲法調査会最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会
中山太郎の発言 (憲法調査会最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会)
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○中山会長 自由民主党の中山太郎でございます。笹田栄司参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
ただいま、最高裁判所の機構改革に関し、また、海外の憲法裁判所の状況についてお話をちょうだいしました。私は、この衆議院憲法調査議員団の団長として、平成十二年から十五年にかけて、ヨーロッパ、アジア及び北中米の各国を訪問して、これまで、在外公館からの聞き取り調査も含め、二十七カ国の憲法事情について見聞を広めてまいりました。
この二十七カ国のうち、ほぼ半数に当たる十三カ国が、違憲審査権を行使するための独立した憲法裁判所を設置しております。
その内訳は、ヨーロッパ諸国で、第二次世界大戦以後の新憲法制定に当たって憲法裁判所を設置したドイツ、イタリア、フランスの三カ国、国家体制の移行に伴う新憲法の制定に当たって新たに憲法裁判所を設置したスペイン、ベルギー、ロシア、ハンガリー、ルーマニア、チェコ、ポーランドの七カ国、そして、アジアにおいては、タイ、インドネシア、韓国の三カ国であります。
その中でも特に目を引くのが、ドイツ、イタリア、スペイン、韓国などの、独裁政権や軍事政権を経験した国家、また、ロシアを初め社会主義政権を経験した東欧諸国が、いずれも憲法裁判所を憲法保障のかなめとなる機関として設置しております。
なお、ヨーロッパにおいては、国際司法機関による国境を越えた人権保障への取り組みもなされています。例えば、一九五三年発効の欧州人権条約には、現在、四十一カ国がこれを批准しており、同条約に基づいて欧州人権裁判所が設置されております。
私どもが訪問したロシアでは、平成十三年現在、欧州人権裁判所に対して、ロシア市民から約二千件もの訴えが起こされていると聞いております。また、現に制定の作業が進められているEU憲法草案においても、EU域内を管轄する司法裁判所が設置されることになっているようであります。衆議院の憲法調査議員団が訪問したドイツの憲法裁判所は、現在までに五百件を超える法律に対して違憲判決を下しており、カールスルーエは連邦議会よりもよい政治をするとまで言われることがあるとのことであります。また、フランスの憲法院は、国民の間に、民主的自由や人権を守る機関という評判が高まっており、そのような評判を誇りに思っているところであります。さらに、韓国の憲法裁判所は、議会が真正面から取り上げようとしてこなかった、伝統文化や国民意識に内在する差別や不平等の問題を是正することについて、多くの成果を上げてきたとのことでありました。また、最近では、大統領の弾劾裁判を韓国の憲法裁判所は行っております。
また、憲法裁判所は、単に憲法の番人であるにとどまらず、フランスやイタリーでは国民投票の監視機関、タイでは汚職防止の機関、韓国では大統領に対する弾劾機関として権限を持つなど、各国の民主政治にとって重要な役割を担っていると私どもは認識をいたしました。もちろん、その一方で、米国のように、独立した憲法裁判所を設けることなく十分に違憲審査制が機能している国があることも承知をいたしております。
こうした諸外国の違憲審査制の実情や憲法裁判所の機能に照らして、我が国の最高裁判所及び憲法裁判が抱える問題点は、我が国と同様に単一の司法体系を有する米国などと比較した場合、どのようなところにあるのか。
きょうはいろいろとお話を承りましたが、私ども議会人として絶えず感じますことは、憲法解釈、これは、内閣法制局長官が法案をつくるときに違憲問題について十分審査をして、内閣が法案を出してまいりますけれども、最高裁判所の行政に関する違憲判決の件数が余りにも少な過ぎる。我々の目から見て、一般国民の目から見て、この憲法の条項について、現実の社会におけることが果たして憲法にぴしっと規制されているかどうか、ここが国民の大きな疑問点であります。
このような疑問点を解明していって、国民のための違憲審査制というものが確立できるようにしていくことがこれからの大きな問題ではないか、こういうふうに思っております。
次いで、最高裁判所にお尋ねをしたいと思います。
昨今、公害などの環境問題に関するさまざまな紛争、医療過誤に端を発した諸事件、遺伝子操作などの生命倫理にかかわる事件、IT化の進展に伴う諸事件など、科学技術や医療技術といった自然科学の分野に密接にかかわる事件が増加の傾向にあるように思われます。
例えば、医療の関係での訴訟件数は、平成五年に四百四十二件であったものが平成十四年には八百九十六件と、この十年間に倍以上の伸びを見せております。また、知的財産関係の訴訟も、特許庁による審決の取り消しを求めて起こされた訴訟件数が、平成五年には百九十九件であったものが平成十四年には六百三十六件と、飛躍的に増大をしてまいりました。
あるいは、一九六〇年代後半に相次いで起こされた、水俣病訴訟を初めとする四大公害訴訟に端を発する公害関係訴訟は、研究者によれば、一九七〇年代には、最高時、累計で約一千件が裁判所に係属されたということでありますが、今なお、年間ほぼ百件以上の訴訟が新たに起こされているところであります。
これらの分野に関する事件は、日本国憲法が制定された当初においては想定されていなかったような、いわゆる新しい人権ではないかと私どもは考えております。
一九八〇年代以降に新しく制定または改正された諸外国の憲法の中には、例えばスイスや南アフリカの憲法のように、生命倫理や環境保護に関する規定を有するものが多く見受けられます。知的所有権の保護についても、フィリピンやロシアなど、多くの国がこれを憲法に明記しております。私は、このような諸外国の事例は、二十一世紀の人権保障を考えていく上で大変示唆に富むものであると考えております。
また、昨今の事件の中には、従来の憲法理論の見直しを求められるような事件が多いことも特徴的であります。例えば、インターネットの発達は、情報の伝達、共有などにとって飛躍的な進歩をした反面、個人情報に関するデータベースが大量に流出したり、特定の個人に対する誹謗や中傷が極めて匿名性の高い状態で全世界に流布されるもの、個人の人権にとって回復しがたいダメージを与えている事件が散見されます。例えば、先月発覚したヤフーBB個人情報流出事件では、約四百六十万人分もの顧客データが流出したとのことであります。
また、いわゆる電子政府の構築を進めていくに当たって、より一層の個人情報の保護を図るなど、我々政治部門に身を置く者が取り組まなければならない課題もございますが、司法の分野にあっても、例えば、裁判所間のネットワークや、裁判所と弁護士会、弁護士事務所とのネットワークの構築など、インターネットの発達に即した対応が求められるようになってきていると存じます。
この点に関して、大阪大学の松井茂記教授は、その著書「インターネットの憲法学」において、表現の自由については最大限の保障がなされなければならないとの前提のもと、インターネット法ないしサイバースペース法というような独自の法領域を確立し、さまざまな分野の研究者や実務家が議論を尽くす必要があると提言しております。
一九八九年に大阪と東京で起こされた薬害エイズ訴訟は、一九九六年に民事訴訟では和解が成立いたしましたが、それと相前後して起こされた刑事訴訟は現在なお係争中であります。このような裁判の長期化は、憲法三十七条の定める迅速な裁判を受ける権利を侵害するものと言っても過言ではないと思います。
私は、歴史の流れに即した人権の保障を図っていく上において、自然科学の分野に知見を有する法曹の養成は喫緊の課題であると考えております。現在のところ、我が国には、全裁判官の中で理系出身の裁判官が八名しか存在しないと伺っておりますが、最高裁判所としては、現在、こうした分野に関する事件について司法判断を下すに当たり、どのような体制をとっていかれるのか、また、裁判所や弁護士事務所などとの情報ネットワークの構築はどの程度まで行われているか、そして、今後これらの諸点についてどのような体制の構築を考えているか、お尋ねを申し上げたいと思います。よろしくお願いします。