小川和久の発言 (武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会)
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○小川参考人 おはようございます。小川でございます。きょうはお招きいただきまして、ありがとうございます。
私は、本日は、緊急事態対処に関する基本法を中心にちょっとおまえの考えを述べてみよということでございますので、これまで政府の危機管理の末端で実務者としてかかわってきた、そういった経験を踏まえまして、若干の問題提起をさせていただきたいと思っております。
私自身、危機管理ということでいいますと、おととしまでの二年間、内閣の情報集約センターあるいは危機管理センターの能力を向上させるための研究会の主査をやってまいりました。そこで目の前に展開された状況というのは、惨たんたるものであります。関係省庁から優秀な上級職のキャリアが集まり、しかも、能力は持っていながら、そこにおいて、情報の収集の基本すらわからない、集約の仕方もわからない、ただ単に座っておる。そして、そこで時間がたっていって、おれはこの後出世できるんだろうかという心配ばかりをせざるを得ない。そういった状況が繰り返されてきたわけであります。
やはりそういった問題を乗り越えていかなければいけないということでございまして、とにかく我々は、法律や制度をつくるとき、それをつくることを自己目的化し、それができれば一段落ということになってしまう。それが機能するかどうかをチェックすることがなく過ぎてきた国民性を持っております。
そういったことから、私は、法律や制度を絵にかいたもちにしないための条件ということにおいて、やはりこの緊急事態基本法というものを考えたいと思っております。
つまり、縦割りを克服するためには、条件が二つある。一つは、緊急事態基本法のような法律である。そして、もう一つの条件は、この基本法を機能させるための組織であるということなんです。
概念図的にここに図をかきました。これは、国家安全保障会議、モデルになるといいますか、それをそのまま、まねするわけではありませんが、アメリカのホワイトハウスのナショナル・セキュリティー・カウンシル、こういったようなものが一つある。そして、それのもとに、危機管理あるいは国の防衛、安全保障に関しては二つの柱がきちっと存在しなければ、国の安全というのは図れないわけであります。
当然ながら、軍事に関しては、防衛庁・自衛隊でございます。これが一つの柱です。
ただ、いま一つ、これは軍事にかかわるところもあるし、あるいはテロや災害や、そういったものにかかわるところでありますが、ここにおいて、消防、警察、自治体が実は縦割りで、消防と警察の間で本音の話し合いができないんですよ。たまたま同期の課長がいて仲がいいという場合には、ひっそり話ができる。しかし、セカンドトラックをつくれと言ったって、ではやりましょうと言うけれども、全然機能しない。そういう中で、お互いの言葉の統一も、装備についての知識もないわけであります。
だから、消防、警察、自治体などを束ねるという意味で、日本版のFEMAという言い方を私はいたしましたが、緊急事態管理庁あるいは危機管理庁のような組織をつくるべきだろうということで、ここにかいております。
ただ、先ほど青山さんの方からありましたように、日本版のFEMAといっても、アメリカのFEMAを誤解しているようなことではいけない。統合するとか、そういう話じゃないんです。FEMAの、やはり我々が学ばなければいけない機能の一つは、コーディネートでございます。そういったようなことがきちっとできれば、国の安全というものは、相当レベル高く維持されるだろうと思います。
まあアメリカの場合は、今も青山さんのお話にありましたように、このFEMAも含めて、国土安全保障省、DHSの中に入ってしまいました。私もことし三月までに三回アメリカにセキュリティーの関係で行って、DHSのリッジ長官とも会いましたけれども、やはりまだばらばらです。ただ、アメリカはアメリカなりの歩みを進めている。ただ、日本では、このDHSのような組織をつくるというのは、時期尚早も尚早。
ネットワークのセキュリティーについて、私は今かなり深くかかわっておりますが、日本はアメリカと比べると大体二十年おくれですよ。IT戦略本部なんてつくらない方がいい。韓国に比べて十年おくれ、その自覚がないわけであります。IT戦略本部は、本部長は総理大臣、副本部長は総務大臣と経済産業大臣。それで何をやっておるのか。いや、IT化社会があれば便利ですという先生がずらっと並んでいる。
だけれども、最初のときのIT戦略本部に関する文書には、セキュリティーという単語が三回しか出てこない。こんなばかな話がありますか。セキュリティーは、選択肢じゃないんですよ。必要不可欠なものなんです。まずそこから考えないと、国家の安全なんて図れない。
その意味で、この条件の一、緊急事態基本法、それから条件の二、基本法を機能させるための組織というものを、きちっと我々は備えていかなければいけないのではないかなと思います。
そういう中で、一つだけ前もって申し上げておきたいのは、危機管理庁あるいは緊急事態管理庁のような組織をつくろうということになりますと、行政改革に逆行するという声が、結構出ていた。
ただ、私は、いろいろなところで日本の政府のお仕事にかかわる中で、むだなものはいっぱいあるんですよ。例えば、一つの審議会や委員会に私が出るとしても、連絡するだけで、一人の職員が八回も電話してくる。一回で済むんだ。では八分の一に減らせるじゃないかというのは、いっぱいあるわけです。そんなことをちゃんとやればいいんですよ。そういう中で、不要なものはどんどん削り、なくすものはなくす、そして必要なものをつくっていくというのはスクラップ・アンド・ビルド、これが行政改革であります。そういう中で、この緊急事態管理庁というものもお考えいただきたいなと思っています。
ただ、私は、軍事問題の専門家の一員でありますし、本当の、自分自身で自信を持っているのは日米安保なんです。ただ、私は、消防審議会の委員をやったり、あるいは住基ネットの調査委員会をつくってもらって委員をやったり、そういうことをやっている。あるいは医療の危機管理についてもかなりかかわりがあるんですよ。だから、数年前には九州大学の医学部の大学院の教授になるかと言われたぐらい深くかかわっている。
何で軍事と離れたところでやっているのかというと、応用問題と基礎問題という問題があって、日本人は、応用問題である国家の安全保障をきちっとした形で答案を書くために、基礎問題からできるようにならなきゃいけないのに、基礎問題である防災能力を高めようとか医療ミスから国民の命を守ろうとか、そういったようなことについて余りにも手薄な状態で来たからだ。基礎問題をきちっとできるようになるのはこれは間違いないんですが、そこに取り組んで基礎問題ができるようになれば、必ずや高度な応用問題である安全保障問題についても相当高いレベルで健全なものを日本国民は維持できるだろう、そういう期待があるから、そういう基礎問題のところにかかわっているわけであります。
その中で、私は、縦割りの現実としてお手元のレジュメに書きましたのは、道路問題であります。私は道路族のお友達でもないし敵でもないんです。猪瀬直樹の友達でも敵でもない。まあ、あいつは二十五年ぐらい友達ではあるんですけれども。ただ、縦割りの現実を象徴するものとしてちょっとお話をさせていただきたい。同じような現実は、大規模テロや不審船対処の問題でもあるんですけれども、まあ、ひどいですよ。
ここに書きましたのは、おととしの九月、国土交通省のナンバーツーである大石技監と道路の研究会をやったときの話です。私が指摘をしたメモの一部でございます。これは、もちろん大石技監、道路局長から来た人ですから、道路のエキスパートでありますが、そのとおりであるということを言っていました。そこのお話を申し上げたい。
私は、そこで話をしたのは、国家建設、国づくりの目標は、国民に安全を保障すること、あるいは国民に繁栄を保障すること、もちろん一番大事なのは、国民に自由を保障することであります。その国家建設の目標の中に道路整備が位置づけられたことが一回でもあるのかという話でございます。
結論から言いますと、一度もないというお答えでございます。このときは、委員長は東大の岡野名誉教授がやってくださいましたので、これは自民党の道路部会の方で報告をしていただいたはずでございます。ただ、その中で、私は、もう安全保障といったようなところは、危機管理といったようなところ、国民の命にかかわるところでも何にもないじゃないかというのを具体的には挙げざるを得なかった。
例えば、ここにあるように、国の防衛については、ハイウエーストリップはあるのか、つまり道路を飛行場に使えるような格好になっているのか。先進国だったら常識であります。韓国だって八カ所ある。航空地図を見ればばっとわかりますよ。北朝鮮はアメリカ製の航空地図だと十三カ所ありますよ。日本の場合一カ所もない。これは韓国のケースでいうと、大体直線四キロ、上下二車線、そして厚さ一・五メートルの強化コンクリートでできております。そして、中央分離帯も照明灯もない。だから、有事には戦闘機が発着できるし、大災害や大事故のときは輸送機や大型ヘリがどんどん発着できる。日本であるのか、一カ所もないですよ。公共事業の金はこんなところでどこに行っちゃったんだという話になるわけであります。私は、公共事業はこういったことをちゃんと正すために使ってほしい、そういうお金として公共事業のことを考えてほしいという立場であります。
あるいは、軍用車両の通行に耐える設計になった道路が一カ所でもあるのか。これは、重量物に耐えるというのは大型トレーラーがいっぱい通るからいいんですけれども、例えば、災害や何かのときでも戦車や装甲車を高速道路を使って移動しなきゃいけない場合があるわけですよ。戦車の前にブレードをつけてタンクドーザーという格好でブルドーザーに使わなきゃいけない場合もあるでしょう。装甲車だって、普賢岳のときにはキャタピラの車両しか入れないから溶岩流のところに入ったでしょう。
そういったことで考えると、高速道路を使えなきゃいけないのに、日本の高速道路で自衛隊の持っている新しい戦車とか新しい装甲車が通れる料金所を持っているのは、東名の東京バリアの一番端っことか限られたところだけですよ。
首都高速道路なんて入ろうと思ったら、サダム・フセインの銅像を倒すみたいに料金所を引き倒さなきゃ入れないんだから。だって、九〇式の戦車というのは幅が三メートル四十センチあるんですよ。新しいタイプの装甲車は三メートル二十センチあるんですよ。皆さん方が乗っていらっしゃるクラウンは一メートル八十センチ台ですよ。倍あるんですよ。そんな広いものをつくらなきゃいけないのは何だという議論はあるかもしれないけれども、これはこれで理由はあるわけであります。だったらこんなものを考えて道路を設計せいよと。
ところが、国土交通省の人、旧運輸省の人あるいは建設省の人はこんな知識なんかないし、こんなものを聞こうという意識もない。自衛隊の側は道路建設にはかかわっていないわけであります。かくして、日本の道路は何にも使えない。
あと、これは「上陸適地周辺の防御的設計」なんて難しいことを書いていますけれども、鳥取県の海岸に大規模地上部隊が上陸するなんということはあり得ない。これは、鳥取県で五年間新聞記者をやった私がよくわかっているし、上陸適地というのはあるわけです。つまり、一個連隊三千名ぐらいの各国の軍隊の一個歩兵連隊が上陸するためには、幅二キロの海浜が必要だとか、ちゃんとあるんですよ、ちゃんと軍事の公式というのが。だから、そういったもので考えれば、別な話を片山知事はしなきゃいけないわけであります。
ただ、この上陸適地というのはちゃんとありまして、北海道においては、北方脅威論の時代にあった。でも、上陸適地が明らかなのに、その周辺で国を守るために道路をどう使うのか、あるいはトンネルを例えば戦闘機のシェルターとして使うのか、そんな発想なんか全くない。じゃぶじゃぶ金を使ってむだな道路やトンネルをつくったと言われてもしようがないわけです。私は、クマしか通らないところでも道路が必要だったらつくれと言っているんです。ただ、高規格道路をつくるようなワンパターンなばかなことをやる役人は首にせいと言っているわけであります。だから、その辺はちゃんとしていただきたい。
あるいは、防衛計画と住民避難路の整合性なんて、考えられたことはないわけであります。これは次の防災の問題にもかかわるので、そこでお話をいたしますけれども、「防災計画と住民避難路の整合性」ということで書いておりますが、防災を考えた道路もないんです。一番日本で欠けているのは循環という発想なんです。
阪神・淡路大震災の現場でいいますと、神戸があり大阪がある、大都市がある。それを結んでいる道路、高速道路はちょっと除外いたしますが、国道二号線が山側を走っている。そして海側を国道四十三号線が走っている。それを発災した地点によって融通無碍に組みかえて、一方通行で必要な流れができるような計画を持っていなかったら、何の意味もないわけであります。
だから、ある事態においては国道四十三号西行き一方通行、国道二号は東行き一方通行、そして交通の流入点はわかっているから、陸上自衛隊は五百機のヘリコプターを持っていますので、その半分ぐらいは輸送にも使えますから、例えば白バイを三台ずつぐらい載せていって、そして交通の流入点におろして赤色灯をつけるだけで、日本人は従順だから、むちゃくちゃやじ馬が入ってくることはないんです。そこにおいて緊急車両の通行は確保できる。そんな発想が全くない。
だから、鳥取県が住民避難の話をしても、これは自衛隊側にもプレゼンテーション能力がないという問題はあるんだけれども、例えば、あそこで幹線道路が、国道二十九号線、五十三号線など山陽方面に向かっている道路があります。海の側で、例えば津波が来るかもしれない、だから住民を避難させようでもいいじゃないですか。
そうすると、片側一車線の幹線道路を使って住民が避難してくる。ただ、自衛隊は逆方向に行って災害の対処のための行動をしなきゃいけないとする。あるいは作戦行動の場合もある。往復二車線で動けるか。装甲車や何か大きな車両を持っていけば持っていくほど、路肩に寄れば崩れるんですよ。だから、センターラインを大きくまたいで前進しなきゃいけない。そうすると、前から来る住民を乗せたバスは二メートル五十ある。通れない。だから、完全に循環というのを考えなかったら、これは絵にかいたもちだよという話ですよ。そんなものをちゃんと考えているのか。
これは、縦割りの中にいたら全然そういう発想は出ないんです。私のように、食いぶちは自分で稼ぎ、その分どこの役所にも手を突っ込むというやつじゃないとだめなんですよ。だから役人にならないんだ、なれと言われたって。その役所の何かポストの中でしかできないからですよ。でも、そういったことをちゃんと考えながらやっていただかなければいけないという話なんです。
これは、津波と高速道路網の問題なんかは象徴的ですが、東名の由比のあたり、あるいは北陸道なんかは何カ所もありますが、ちょっと波が高ければ普通の車は走れない。何でこんなところに道路をつくるんだよという話でしょう。何も考えていない。
あるいは、こればかり言っていると大変なことになりますが、あと、救急救助の問題なんかも考えていないんですよ。私はドクターヘリの実現に若干かかわった人間でありますが、あの救命効果の高いシステムを、我々は、西ドイツがスタートさせてから三十年間やらずに来た。その間に、救えるはずの国民の命を、例えば、二十五万人ぐらい殺してしまったと言えるぐらい問題はあるわけであります。これは厳密さを欠く話ですから、例え話でございますが。
ただ、ドクターヘリが実際に動き始めてみたら、高速道路におりられない。だって、そういう設計になっていない。しかも、防音壁はあるわ照明灯は出ているわ。だから、私の自衛隊時代の後輩のパイロットが一人、ドクターヘリのパイロットがおりますが、もうぎりぎりで事故現場にドクターとナースをおろしたら、すぐまた離陸して、田んぼの上でホバリングしているんだそうですよ。それでまた迎えに来るとか。それはそれで運用できればいいけれども、やはり、道路の設計というのはきちんと考えなきゃいけないだろうという話でございます。そんなことだけじゃありません。だから、道路というのは、本当に三つ、四つ、五つの役所がきちっと調整されて、機能を発揮する中で国民の安全のために建設できるという話なんです。象徴的なケースなんでお話をいたしました。
この縦割りの現実につきましては、大規模テロの問題、不審船の問題、挙げていけば三日三晩ここでしゃべってもいいぐらい例はあるんですよ。
例えば大規模テロにつきましても、自衛隊、警察、海上保安庁、消防という組織、それぞれに機能しなきゃいけないけれども、武器一つとっても、自衛隊が普通だと思っている武器に関する知識を警察が持っていない、海上保安庁が持っていない、どうするんやという話ですよ。だから、海上保安庁にとってはRPG—7は重装備だそうですけれども、自衛隊にしてみれば重装備とは言わないですよ。それは、軽いか重いか、重火器という場合の分類には使いますけれども。そういうところから始まる。
だから、一発迫撃砲弾がおっこってきたらびっくりする。戦場だったらどうなるんですか。一カ所の陣地をねらうのに、迫撃砲弾が百発ぐらい降ってきますよ。そんな中で戦わなきゃいけないんですよ。あるいは国民がびびるから、自衛隊もあんな避難しなきゃいけないわけですよ。そのための軍事組織なんだから。だから、やはり基礎知識だけはきちんと持とう、持たなければシビリアンコントロールはできないぞという話であります。
あるいは不審船の問題も、あと一分以内に話しますが、武器に関する知識の格差が、自衛隊、海上保安庁の間にもあります。同時に、ずっと指摘をしてきた結果、新しい船についてはそんなことはないようにしようということで両方の役所が一致しましたが、同名異船、同じ名前の船がいっぱいある。「なだしお」事件のときは、四十九組九十八隻あった。この間の不審船の事件のときは、四十三組八十六隻あった。
私は、海上保安庁の委員をやっているけれども、海上保安庁の委員会に行くと、主な船だけで、数少なく見せようとして悪知恵を使って出してくるから、違う、小船まで入れて同じ船がいっぱい並んでいるじゃないか、こんなばかな国がほかにあるのかと言うと、そうでございますと。海上自衛隊は、今、古庄さんという大変優秀な幕僚長がいまして、こんなばかなことはないと言っているから、何とか進んでいるんですよ。これを許してきたのは、我々国民ですからね。やはり反省しなきゃいけないだろう。
私は、最後にお願いを申し上げたいのは、緊急事態基本法は国家生存のために不可欠な法律である。基本法を機能させるための組織、国家安全保障会議あるいは緊急事態管理庁のようなものを忘れずに備える形で、この法律をぜひ高度なレベルで制定していただきたい。そして、この基本法については、改正が融通無碍にできるような内容にもしていただきたい。それをお願いいたしまして、私の話にかえたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)