弘兼憲史の発言 (文部科学委員会)
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○弘兼参考人 漫画家の弘兼憲史です。
きょうは、昨年八月に設立された貸与権連絡協議会の幹事代理として参りました。よろしくお願いいたします。
お手元の資料一ページをごらんください。貸与権連絡協議会は、著作者十一団体、業界関係四団体で構成されています。著作者というのは、文芸作家、美術家、写真家、児童文学作家、そしてコミック作家ですね。今回問題となっている著作権法附則四条の二の廃止を求めて、作家、出版業界の意思統一をすることと、法改正後の管理スキームなどを検討することを目的に活動しております。
コミック業界の状況を申し上げたいと思います。資料二ページ目にあります。
御存じのとおり、近年は出版不況と言われて久しいのですが、コミック業界も最近の五、六年は大変厳しい状況が続いております。そこに、一昨年秋ごろからレンタルコミック店と言われる業態が急増してまいりました。これが、今回私たちが貸与権獲得を目指して活動を始めたきっかけでした。
レンタルコミック店の特徴はといえば、お手元の資料の三ページから五ページ目をごらんください。ここで言うレンタルコミック店というのは、いわゆる伝統的な貸し本屋とは異なり、レンタルビデオ店と同じように、大規模に売れ筋のコミックを貸し出している店舗をいいます。時には、コミックを一冊十円で何冊も貸し出しているというところもあります。今後も大手レンタル業者がレンタルコミックに参入を予定していると聞きますので、これからレンタルコミック店が全国に急増する可能性が高いと危惧しております。
ここで、韓国の実例を申し上げたいと思います。
貸与権の適用がないままにレンタルコミック店が乱立した場合、どのような事態になり得るのかというのを考えるときに、お隣韓国の例は無視することはできません。お手元の資料六ページ、七ページをごらんください。韓国では、一九九〇年代後半にレンタルブック店が乱立した結果、コミックの発行部数が五分の一から十分の一になったと言われています。今では、九割の読者がコミックをレンタルして読んでいる状況です。つまり、コミックは買って読むものではない、借りて読むものだという空気が支配的になっております。
昨年我々が実験的に運営したレンタルコミック店、これは千葉県の白井市にあるんですけれども、レンタルコミック店のアンケート調査でも、一たんレンタルコミックを利用すると、それまで購入していた本でも今後はレンタルで済ませるという回答が全体の約四分の三を示しています。韓国の先例は決して対岸の火事ではなく、日本も、貸与権の適用のないままにレンタルブック店の増加を放置しておりますと、同様の事態に陥る可能性は極めて高いと考えております。
ぜひ御理解いただきたいのは、私たちは決してもっとお金をよこせ運動をしているのではありません。手前みそかもしれませんが、日本のコミック文化は世界に誇り得るものであると考えております。コミックは、単にコミックとしてだけではなくて、アニメーション、ゲーム、テレビドラマなどさまざまなコンテンツに複合的に転換され、まさにコンテンツ・オブ・コンテンツと呼ぶにふさわしい位置を占めております。
資料の八ページをごらんになってください。一つの統計によりますと、アメリカへの日本のアニメーションの輸出額は、アメリカへの鉄鋼製品輸出額の約三・二倍に当たるとも言われています。ちなみに、数を申し上げますと、二〇〇二年の数字なんですけれども、鉄鋼はアメリカに対して十三億八千万ドル輸出しておりますが、アニメは四十三億五千九百十一万ドル、こういう状況であります。
この世界に誇り得ると言っていい日本のコミックが、作家にリターンのないまま読み捨てられる状態を放置すれば、韓国の例でもわかるように、必ずコミック文化は衰退します。リターンのない業界に人材は入ってきません。優秀な才能はその才能の発揮場所を求めてゲーム業界、アニメ業界、映画業界など、コミック界を去ってしまうのではないかという強い危機感を抱いています。コミックが衰退すれば、ほかのゲームや映画業界も共倒れになるという可能性もあります。実は、映画の興行収入の約八割はコミックを原作としたものであるというデータも出ておりますので、これはかなり大きい数字であります。
次に、貸与権獲得後はどういうシステムになるかということについてお話しいたします。
貸与権獲得後に円滑に権利行使ができるように、ことし三月一日に出版物貸与権管理センター準備会を立ち上げました。ここで行われることは、改正著作権法施行後のレンタルコミック店との間での契約、商品の物流、許諾料の作家への分配など、全体のシステムをスムーズに運営する体制を整えるために、現在着々と準備を進めております。
貸与権獲得後の許諾条件、つまり、どういう条件でレンタルコミックに貸し出しを認めるかということなんですが、許諾料と貸与禁止期間の二つを大きな柱とします。そして、レンタル業者の団体である日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合、CDVジャパンと何度も話し合いを重ねて、作家、出版社などとレンタル業者が共存共栄できるような条件を模索しているところです。
我々は、何もレンタルコミック店をなくせと言っているのではありません。なぜなら、それはある程度消費者ニーズにかなっているからです。だからといってどんどんふえてしまっては、韓国のように業界の崩壊を招きかねないので、それは困ります、適度の数で適正なルールで、双方にそれなりの利益を得ようということなんですね。
特に、貸与禁止期間の必要性については、発売日当日からレンタルを開始した場合は、新刊本の売り上げに多大なる影響を与えるというデータを私たちは持っております。この点、先日、参議院での附帯決議におきまして、一定の貸与禁止期間の必要性が言及されたことに大変感謝しております。
最後に、我が国が知的財産立国として国際競争社会を生き残っていこうとしているときに、コンテンツの源泉であるコミックが廃れるようなことは絶対に防がなくてはなりません。そのためには、作家が安心して創作活動を行えるよう、法的権利確立が不可欠です。法的権利確立、つまり知的所有権を認めていこうという世界的な趨勢の中で、貸与権を雑誌、書籍にも認めるということを妨げる理由は見当たらないと私は思います。それによって、世界に誇る日本のコミック文化がますます豊かになると信じています。
何とぞ、貸与権獲得のために皆様のお力添えをお願いする次第でございます。
どうもありがとうございました。(拍手)