猪口孝の発言 (憲法調査会)
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○参考人(猪口孝君) ありがとうございました。
私は、日本の憲法、国際平和活動、国際協力と何かいうことなんですが、私の考えていることは先の話でありまして、それから法律とか慣行とか過去とは余り関係ないことをお話しするかと思いますが、御勘弁願いたいと思います。
私は、日本外交は非常に大きく変わっていると。今回だけじゃなくて、ほとんど各十五年ごとに結構大きく変わってきたんですけれども、日本のいろいろなところでは吉田ドクトリン万歳とか、いろんなのんきな話が多いんですが、ちゃんと変わってきていると、物すごい勢いで変わってきている。それはしっかりと認識した方がいいというので、それを五分ばかりしゃべって、その次に、どういうふうに、どうしてそういうことが起こっているかというのを、この地球的な規模での、なんかの変化を、これも五分ぐらいしゃべって、そして、これからどういうふうな、何というか変化を期待したらいいかということについて、モデルというか、どれから学んだらいいかというようなことを、ちょっとまた五分ぐらいしゃべって、最後、どんなふうにこの大きな問題について考えているかをお話しできたらと思います。
日本の外交路線は、とにかく十五年ごとに変わっているというのが、もう本当みたいなんですが、もう本当なんです。吉田茂首相がいたときに、吉田ドクトリンなんといって、要するに安保はアメリカ任せ、あとは経済一生懸命やりましょうというのですが、大体一九六〇年ぐらいまでは、別に定着したんじゃなくて、親米勢力と反米勢力は対立したまま好きなことをやって、ついにそこまで来たと。六〇年から安保改定とかいろんなことがあって、所得倍増計画というので、何となくトーンが急に変わっていくというのが、六〇年から石油危機、七五年ぐらいまでなんですけれども、これは、今度これで、後からはただ乗りと言われてしまうんですが、そのときはまあすばらしい時代だったわけですが、それは唯一に吉田ドクトリンの時代だったと言うことができると思うんですが、中東戦争でも石油危機でも、いろんなことでも、ただ乗りはいけないということになって、アメリカが率いる国際経済体制を支持すると、支えると。縁の下の力持ちみたいな一人ということで、大体、冷戦の終えん、一九七五年から九〇年までいくということになって、これはまた全然話が違うんですね。それは、安保があるからなんというんで、全部安保あるんだけれども、中身は大きく変わっているということを認識したらいいんかなといつも思っているんです。
冷戦が終わりますと、今度は核兵器で対峙するような大きな戦争が起こりにくくなったというので、むしろ軍事主義ではない、平和を志向する日本とかドイツにとっては正に絶好の時代が来たというのがこの地球文民国家といいますか、シビリアンパワーみたいな時代だということであったんですが、それはもう二、三年もしないうちにがたがたがたがたしていくわけですが、いずれにしろ、現在はこの三番目と四番目の、大体この両方のプリンシプルで日本自身の外交もある程度の展開をしているわけです。
それで、今度九・一一のようなことがまた起こって、いろいろそこらじゅうに面倒くさいことがまた別の種類にも起こると、まあ普通の国というか、地球的な規模でもうちょっと何かできるようにしたらいいんかなというのが出てきているわけでありまして、これは与野党もある程度言っているんだけれども、どのぐらいの普通にするのかというのは、全世界に百九十も、それ以上もあるんですから、どれを見て、どんなぐらいの普通国家にしようかということについて、これからというか、今、これからやっていることでありまして、それが本格化するのは、来年とか再来年ぐらいに本格化するんだと思いますが、それで十五年ぐらい掛けてやるんじゃないかなと理解しております。
キッシンジャーは、全然関係ないんですが、日本人はやたらとコンセンサスを何か気にするから十五年掛かると。ばかなちっちゃなことでも十五年掛けておると。ペリーが来たとき、すぐやればよかったものを十五年掛けている。まあ、何かそれはちょっと偏見もあるような気もするんだけれども、とにかくいろいろ考えて十五年掛けて、六八年は十五年掛かっている。すぐじゃないんですよね、十五年。もう義務教育なんか一遍に終わるぐらい長くやっていますし、それから、日本は戦争に負けても反米、親米と延々とやって、十五年掛けてわあわあやっていて、今でもやっている面もあるけれども、またちょっと変わっていて、十五年ぐらいやってようやく、やっぱり自分が専念すべきものは金もうけであるというふうに専念して、分かりが遅いとわめいておるんです、彼は。
本当かどうかは知らぬ、アメリカの方がもっと分かりが悪いとも思わぬでもないところもあるんですが。一番最近はバブルの崩壊、一九九一年から十五年たっても怪しい、うまくいかないんじゃないか、今回はというふうなことが書いてあるんですが、十五年というのは、確かに今見ましたように、親米、反米、対立、ただ乗り国家、支持者国家、地球文民国家、地球普通国家みたいな、確かに十五年というのは、結構やっていることは何というか似たようなものが多いんですけれども、ルーチンが多いですから、大きく原則というか、どういう原則に照らして何をやるかということが変わっていると。
それで、これからの話ですけれども、地球上の変化で一番大きなのは、やはり所得水準が着実に上がっているんです。それは、とにかく信じられないぐらいどんどんどんどん上がっているんです。それは金持ちの国は大して上がりませんけれども、そうじゃない国の所得水準の上昇というのは全体で見れば上がっている。もちろん、所得格差、その国の所得格差、それから国ごとの所得格差、これはもう激しくどんどん開いていくわけです。これはどうするかということについては、どういうふうに見るか、そしてそれがどういうふうな日本の外交を要求するようになるかということは考えなきゃならない。
第二は、主要国家間の戦争というのは減少しているんです。すぐに、普通の主要国家間というのは、日露戦争みたいな戦争とか、何でも、イラン・イラク戦争とか、ああいう国を挙げて延々と何か分からないことをやっているみたいなのは本当に少ないんです。一九七五年から九〇年を見ますと、あるのは何ですか。一九七九年、中国がベトナムに侵入、侵入というか介入というか、ちょっとやって、二か月ばかりやって、中国軍は二十五万人死んでいるわけですけれども、いずれにしろ、ある程度主要国家間の戦争、それからイギリスとアルゼンチンの戦争、それからイラン・イラク戦争ですけれども、あとどうやっても考えにくい。それじゃ、アメリカのイラク戦争はどう。あれは戦争という、主要国家間の戦争じゃなくて、あれは瞬時の軍事介入みたいなもので、それで占領しているわけですから、そんなに何というか、戦争というような感じではないことは、今までの感じではないんですね。非常に、ちょっと行ってちょっとやっつけるみたいな介入はかなり増えていますけれども、余り大きな戦争はない。それから核戦争は起こっていない。それから、これは不思議なんですけれども、内戦とか内紛とか大きな、カンボジアの三派がもう何百万人も殺しながらやっていくというような戦争は、意外と内戦も低下というか、余り大きくそこらじゅうに起こらない方に少しずつ進んでいる。
ただ、非常に激増しているのは、破綻国家、破産経済、それから無法国家とかいろんな、言葉は好きなようにお使いくださればいいんですが、どうしようもないというか、何があるのか分からないという国というか社会というか、そういったものは結構増えておりましてね。国単位で何とかというよりも、この国でもあの国でもそういうポケットみたいのがあってどうしようもない無法状態みたいなのが増えているわけですね。それは、市場の自由化とかというのをグローバルに展開していますからそういう面も出てくるところは多いんですけれども、これが現在の二番目の重要な点です。
戦争は激減というか漸減しております。核戦争は起きていません。まあ小型核兵器については使っているというあれも、定義もあって、どうするかという問題ですけれども、でも、ばかんという何十万死んでどうするかというのはまだ起こっていないし、多分起こりにくいんじゃないかと思うんですが。それから内戦も意外と減っている。しかし、何だか分かんないけれども、どうしようもなくなっている。何といいますかね、動きが取れないどころか、動きをどうやっていいかも、何かもう神経機能がなくなったみたいな社会が結構増えている。その後はどうしていいか分からないと。
三番目は、しばらくは軍事研究開発、お金を投資するわけですが、この世界全体のトータル、世界全体の費用の八五%はアメリカでありまして、これを継続的にもう五年、十年やっていますから、恐らくこれから二十五年から三十五年ぐらいはアメリカが圧倒的な第一の軍事大国であって、第二は、ずっともうグラウンドを十周ぐらい後れてくる人が第二であって、このことは恐らくこれから二十五年余り変わらない。
こういった現実を照らして、これからどういうふうに考えたらいいのかということに移りたいと思います。
もちろん、アメリカはやっぱり軍事的にナンバーワンであっても、いろんな形で、余り唯我独尊であったり人のことを考えなかったりすれば必ずや落ち目は早まるわけですけれども、いずれにしろ、軍事的にはもう圧倒的、どうしようもない、もう何ともしようがない格差が付いている。ヨーロッパはぼうっとしておりますし、日本はちょっと頑張っているみたいだけれども、本当に何だか、プライオリティーが付けにくいし、いろんな点で、それがいいかどうかはまた話が違うんですが。
まあとにかくこの三つの件。所得水準は上がっている、だけれどもその国の中でも国の間でも所得格差は物すごい勢いで増大している。しかし、何というか、戦争はとにかく減りつつある、普通の戦争という感じはまずない。よほど間違ったことを考えている指導者がいる国じゃなきゃ、まずやらない。しかし、どうしようもなく神経もずたずた、借金だらけ、何もない、そういう国が増えている、場所が増えている。それから三番目には、そのアメリカの、何といいますか、ユニポラー、一極制といいますか、それはしばらくは続くことは確実であります。
このような中、地球普通国家群の一角を、一群に参入しようと日本は多分しているんだと思うんですが、それは第一与党である自民党でも第二与党の公明党でも第一野党の民主党でも余り変わらないと思うんですが、どういうふうに、じゃ普通の国家にするかというのは非常に大きく違いがあるわけで、そのときに学ぶべきは、やはり基本的なものでは、自由民主主義、人権、市場経済と、こういったものを基盤とした普通の国家になるということは確実だと思うんですね。それから二番目には、何としても軍事的なもので事を決するという風潮をできるだけ抑えようとすると、こういうふうに、平和主義というか非軍事主義といった、そういった基調をほかの国にも広げるといった感じのものがある方が多分いいんじゃないかと私は思っている。
それで、そのときに、どういうのをモデルに考えたらいいかというのが、まあヨーロッパの普通の大国としてはイギリス、ドイツ、フランスを考えてみたらいいと思うんですね。イギリスは、御存じのようにアメリカとの特殊な関係を豪語しておりまして、イラク戦争ではちょっと、何といいますか、間違いとかいろいろもう失敗が目立つんでありますが、日本もやっぱり特殊な関係というのを非常に大事なものとしておりまして、マイク・マンスフィールド駐日大使はもう十何年、十年以上も前ですけれども、世界じゅうで一番重要な二国間関係と、こう定義して、日本政府は非常に有り難く感じて、今でもそう思っている節がありますが、まあそれはそれとして、それがあります。
それで、ドイツは、一番あれはやっぱりヨーロッパ、西ヨーロッパの中で、そして中央ヨーロッパ、東ヨーロッパも含めて、地域的に非常に根差しているといいますか、根を張っているわけですね。それは、まずいろんな制度、地域的な制度といいますか、中に非常に優等生、ちゃんと言う、決めたことは守る、まあ赤字でちょっと守らないところもありますけれども守る。それから、余りわがままを言わない、経済的には、西、中央、東ともにドイツの経済的な力というのは物すごく根強く強い、こういったような地域に根差した形が最も強い特徴であると思います、日本から見るとき。
それから、三番目はフランスですけれども、これはやっぱり何といいますか、「「NO」と言える日本」でしたっけ、だれかが書いた本、それじゃなくて、それをもじって言えば、フランスというのはイエスと言えるフランスになったらいいなと思う人がアメリカにはたくさんいるというぐらいなところでは自立性が強い、自己主張が強いというのが特徴だと思うんですね。どちらもみんなアメリカの同盟国ですけれども、それがある。
それで、日本が見ていくときちょっと引っ掛かるのは、結局、イギリスにまずいきますと、やっぱり激しい軍事国家なわけですね。さっささっさ、とにかく決めるときも早いし、出ていくのも早いし、とにかく軍事というか、軍事的なのでいこう、得意科目は体育みたいなもので、非常にこれ、日本はなかなかそういうわけにいかない。すぐ行くといったって、まず査察団が百回ぐらい行ったんじゃないんですか。もっと少ないですか。十回ぐらいですか、イラクに例えば。ゆっくりゆっくりやって何をやっているのかよく分からないけれども、慎重に慎重に重ねていくというんだから、まずイギリスのまねはすぐできない。足が速い、口も上手というので、なかなかまねしにくいところがある。
ドイツというのは、地域的に根を張っているわけですけれども、日本の場合は地域的信用というのがまあいろんな理由でいま一つという面があって、これをどうするかということを何とかしないとなかなかまねしにくいところがあると思うんですね。まあいろいろ、二国間の自由貿易協定とかいろんなことで、もう少しアジアに根を張りたいというか、アジアに愛されたいというような欲望は強いんですが、まあちょっと面倒くさいところがある。
フランスはまあまねしたい面もあって、やっぱり何というか、執拗さといいますか、とりわけ政府レベルで執拗さとか攻撃性とかエロクエンスみたいなところはやっぱりちょっと、フランスなんかに比べるとちょっと、もうちょっと頑張ったらいいんじゃないかなと思うんですね。頑張りますね。言っても、同じことを言っても、しれっとして、何回でも頑張っていつの間にかやるという面もあって、そもそもフランスというのは大体大きな戦争、全部負けているんだけれども、いつも勝利側にくっ付いて、何か領土取ったりいろんなのを取っているわけで、何だという感じはしますけれども、これをモデルというのもなかなかこれ大変だなというか、リーダーズというような、資質なんと言っちゃ悪いんですけれども、そういうタイプの人が余りいないし、どうしたものかなといつも思うわけであります。
それで、最後の方でありますが、国際軍事活動ではイギリスは得意、ドイツは既に連邦共和国の軍は国際平和協力といいますか、平和活動みたいなところにかなり集中するものを大きくそれに充てる中で、軍の中でそれを充てるようにしましたし、それから非常に強い、小さいけれども激しい介入をやる介入軍みたいなものを作ろうとしていますが、こういう形にどのぐらい日本は考えているのかというのが一つの、何といいますか、ポイントになると思いますね。
フランスは、まあ言う割には余り、活動はほかのところでは最近は余りやっていない。フランス語圏ではかなりのさばりますけれども、余り激しいことはない。
二番目の国際協力では、いずれも財政的な問題があって、とにかく日本だけがどんどんどんどん、幾ら削減させても絶対的順序ではどんどんどんどん上がっている感じというか比重が強まっているんですね。これをどういうふうに生かすか、どういうふうにしたらいいのかというのが非常に大きなポイントになると思います。
中国だって、もう三年か四年で物すごく減ったというぐらい目に見えて現れるんですけれども、全体からすると、そしてアメリカとかドイツとかフランスとかイギリスとかに比べますと、日本というのは物すごい相対的な比重というのは高まっているんです。国際協力といいますか援助といいますか、イラクの復興基金なんかでも一番はアメリカだ。もちろんそれは自分がやったんだから自業自得というか、まあ、いいでしょうと。だけれども、二番目は世界銀行とか国際連合の開発計画とか、そういうのが来て、それだって日本は一杯出している。それから四番目に、日本では、こんな長くいられたら金がもうなくなるんじゃないかと思うぐらい何か要りそうな感じだし、大変じゃないかと思うけれども、でも、もうここで頑張るんだという感じでいくなら、そういう感じにせざるを得ないというかして、物すごくいいところを頑張るしかないかなという気は私自身はしております。
憲法ですけれども、これはまあ変わる方向になるんじゃないんでしょうかと僕は思いますね。余りにも現行解釈だけでは無理だし、内閣法制局自身が帝国議会から発布したような法律も全部、それの整合性を見ながらやっていますからもたもたもたもたして、もう完全にオーバーロードで何にもできないなんというと内閣法制局に怒られるでしょうけれども、オーバーロードでなかなか速く進めない。でも、今の立法というのはもう速さが勝負でありまして、それはみんなで集まって、わあわあ言って国際条約を作って、はいよという、しっかりしたものを作るというんじゃなくて、みんな、これ大体こういう形で決議すると、それに賛成するのは自分でそれぞれに国内立法やってくれという形で物事が進むようになっていますから、早くやらないとばかみたいなことになる。
一九九九年にテロリズムに対する反対決議、国連がやっているんですが、日本自身はなんといって悪いんですが、二〇〇一年の九月十一日になってもまだやっていない。二〇〇二年の何か春ごろやっているんですね。まあのんきな話で、何が悪いのか知りませんけれども、何かつっかえるところがあるんだと思うんですが、何かしてほしいなと思います。
核兵器は、これはまた近くの問題で、面倒くさいですけれども、非常に面倒くさいのが、まず台湾海峡でアメリカはエイジス、ミサイルを監視して、もしかしたら撃ち落とすみたいなのを売るのをやめたので、中国がミサイルを四百発から六百発に増やすというのをどのぐらいやめるか、それが今物すごいですし、それでも伸ばすとしたらやっぱりアメリカの大統領はやっぱりエイジス配置というふうに、台湾に売却というふうにいくかもしれない。
それから、六者協議ですけれども、六か国協議ですが、これもどういう形で北朝鮮を核開発のすべてを廃棄するというようなことに持っていけるかということに物すごく、日本がミサイル防衛とか、あるいは二〇二〇年にあるかもしれない核武装なんということになれば、非常にすぐ近くの問題としては台湾海峡、朝鮮半島の問題、その扱い方は非常に、何といいますか、しっかりとした先を見て、しかし軍事緊張が高まらないような形で進めていくと、考えていくということが、日本のシステムを作ることがまたすべてあちらにも確実に反映していくわけでありまして、とにかく一番初めの、何といいますか、自分、日本が生き残られるだけじゃなくて、誇りを持って人類の大義を実現できるような体制をどこまで、どのように作れるかということが非常に重要になっていると思います。
どうもありがとうございました。