酒井啓子の発言 (憲法調査会)

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○参考人(酒井啓子君) 御指摘ありがとうございます。
 今の御指摘については、サマワが安全な地域であるというふうなことで選ばれたということについての、それが本当に恒久的に続くのだろうかどうなのだろうかというような点に御関心がおありかと伺いました。あるいは、民主主義の導入というようなアメリカの意向に対して、日本が若干違う、そこまで使命感に燃えていないのではないか、燃えるような立場にあるわけではないのではないかという御指摘かと思います。そして三点目、憲法上、果たしてどのような措置が必要なのかという点でございます。
 まず、サマワの安全状況でございますけれども、これは確かにおっしゃるとおり、現在までほかの地域に比べれば比較的安全でございますが、特に大きな政治抗争が起こっている地域ではございません。これはひとえにサマワが、サマワという町あるいはサマワを含めたムサンナ県という県がイラクの国内でも大変人口密度の低い、絶対人口としても下から二番目というような、言ってみれば非常に過疎地に当たる地域でありまして、経済的にも政治的にも主要な中心地、地帯というものではないという、そういう側面がかなりあろうかと思います。
 といいますのも、同じようにフセイン政権にいじめられた、フセイン政権に抑圧された地域であっても、例えば南部のナーシリヤでありますとか、あるいは北部に、若干北の方にあるシーア派の聖地であるナジャフとかカルバラなどといったような地域は、経済的に中心地域になっているとか、あるいは政治的な重要性を持っているというようなことで、既にいろいろな、これはフセイン派、反フセイン派というような対立だけではなくて、同じ反フセイン派の中でも様々な派閥抗争がございまして、そうした派閥抗争に巻き込まれる形でいろいろな都市、地域が政治的に流動化しているというような現状がございます。
 サマワの場合はそうした、ある意味では経済的にも政治的にも、それぞれの政治派閥がねらうほど大きな資源がなかったというようなことだろうかと思いますので、そういう意味で、これまで余り各派閥ともにサマワを拠点にして、あるいは地盤にして何かやろうというような、そういう発想とは無縁な地域であったかと思います。
 ただ、これが今後恒常的に続くかどうかということにつきましては、とりわけ今後、いずれにしても今年の終わりあるいは来年の初めには直接選挙、しかも県別、地方別の、いわゆるその地方から議員を選出していって中央政権を組み、確立していくというような形での選挙が導入されることになりますので、これまで政治的、経済的に重要性がなかったと言われて、ある意味では各政治勢力からは余り注目を浴びてこなかったサマワでも、一つの選挙区は選挙区と、地盤は地盤という形で、いずれにしてもいろいろな政治勢力が触手を伸ばしてくる可能性というのは十分あるわけでありまして、既に一定の水面下のそうした駆け引きといいますか、抗争はあるということも、報道もございます。こうした政治的な抗争がただ単に政治的な選挙をめぐる駆け引きにとどまらず、武力による衝突というような形に転化していくことになると、これは必ずしもサマワが安全を維持できるというわけではなかろうかというふうに今考えております。
 二番目の民主主義の点でございますけれども、先ほど御指摘させていただきましたように、今のイラク人の大半が内容はともあれ民主主義というものに対して非常に大きな期待を抱いている。しかし、その内容を見る限りでは、例えばこの民主主義に相反するものは何かという問いに対して、独裁とか不正義、正義ではないという、あるいは搾取といった項目が民主主義とは相入れない項目なんだというふうにイラク人は認識している部分がございます。
 その意味では、これはアメリカ型の民主主義あるいはヨーロッパ起源の民主主義云々というよりも、ある意味で自由と政治参加を求め、他方、不正と搾取、独裁を嫌うという、ある意味では人類普遍の価値基準をイラク人も求めているにすぎないというようなことがあろうかと思いますので、その意味では私は、三番目の論点にもつながりますけれども、日本の持っているいわゆる民主憲法というものは十分、イラク人の今後の憲法制定あるいは民主政権の設立に対して十分モデルになり得るのではないかという、特に軍事独裁という、軍に依存した独裁体制というものに対するアレルギーといいますか、そういったものに辟易してきたというイラク人の今の心情から考えれば、日本の経験、戦後の経験というのは十分共感を得るような内容ではなかろうかと思います。
 最後の憲法上の問題につきましては、私はイラクの問題に限って申し上げました。基本的には、自衛隊が戦後、イラクの戦後復興に果たせる役割はそれほど大きくないのではないか、むしろ別の形での貢献の方が効果的ではないかというような視点でお話しさせていただきましたので、その意味では、取り立てて憲法を、このイラク、対イラク貢献に関して憲法を何らかの形で変えなければいけないというような必要性は取りあえず今のところ私は感じておりません。よろしゅうございますでしょうか。

発言情報

speech_id: 115914184X00420040317_009

発言者: 酒井啓子

speaker_id: 34479

日付: 2004-03-17

院: 参議院

会議名: 憲法調査会