梶山正三の発言 (環境委員会)

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○梶山参考人 梶山でございます。
 全国で、終わったものも含めて五十を超える廃棄物紛争に弁護士としてかかわっております。それから、各地の廃棄物関係の条例策定等にもかかわっております。そういう立場で私の意見を申し上げたいと思います。
 お手元に簡単なものがございますが、それをちょっと見ていただきたいと思います。
 まず、今回の法改正案をどう評価するか。包括的にまず申し上げますと、簡単に言いますと、毒にも薬にもならないというのが私の全体的な考えでありまして、それは全くならないというわけじゃないんですが、薬としても弱い、毒としても弱い。だから、特にここをこうすべきだという反対意見というのはないんですが、むしろ、こういうものよりもこちら、こういうところに目をつけてほしい、そういう観点からの話を申し上げたいと思います。
 今回の法改正は、テーマとしては、不法投棄の根絶、不適正処理の根絶、マニフェストの実効性の確保、それから、廃棄物の無確認輸出の未遂罪、予備罪の創設と重罰化、それから、業許可の取り消し要件の自主申告とか最終処分場の維持管理積立金制度の対象範囲の拡大、こういうものが挙げられています。
 このうち、不法投棄、不適正処理、この区別も大変難しい問題があるんですが、それは置いておいて、古くからのテーマで法改正のたびに言われている部分であります。
 それから、無確認輸出の問題は、これはそういう意味でいうと新しい視点があるんですが、基本的には、この無確認輸出については、平成四年にバーゼル法ができて、それに対応して廃棄物処理法の改正が行われたわけですが、法制度自体に大きな欠陥があると私は考えています。ですから、ここで無確認輸出の重罰化をしても余り意味がないだろう、もっと根本的なところに問題があるはずだ、そう考えております。
 そういう意味で、順番に申し上げておきたいと思いますが、基本的には、実はもっと重大で根本的な問題が見過ごされていて、それがいつまでも俎上に上ってこないというのは、私から見ると、大変問題になるところ、本当に大事なところにもっと早く手をつけてほしい、そう考えております。
 まず、不法投棄、不適正処理の問題ですが、私のレジュメの一ページの下の方に書いてありますが、まず何が原因かという原因分析が十分ではないのではないかと。
 これは、現場の廃棄物処理業者の方ともよく話をする機会がございますが、一番問題なのは、まず自社処理だと。自社処理という形でもって法規制をくぐり抜ける。それからもう一つは、国が一貫してとっているいわゆる有価物解釈のドグマ。この二つが不法投棄の温床になっているということは、現場で廃棄物処理に携わっている人が口をそろえて言うところでありまして、そこの根本的な問題に全く目を向けていないというのが、今回の法改正でもそういうことが言えるものだと思います。
 それで、ここに四つ書きましたが、一つが自社処理で、一つが処理施設のすそ切り、すそ切りは改善されてきていることは、これは事実であります。それから、排出事業者の責任が強化されたというお話もありましたが、現行法の強化程度では、とてもこれは不法投棄を防止する程度に至っていない。先ほどの安かろう悪かろうの廃棄物処理の実態というのは、まさに排出事業者が無過失連帯責任という形で、自分の手足として使いながらそこでも責任を免れる道が大きく開けている、それがやはり一番大きな問題であろう、私自身はこう考えております。
 それから、四つと言いましたが、実はあと二つここにつけ加えますと、現場から見ますと、規制担当者の圧倒的なマンパワー不足です。
 私自身、法廷で都道府県の規制担当者を尋問したことは何度もあります。数知れないぐらいありますが、いかに彼らがマンパワー不足に悩んでいるか、それから、簡単に言うと、彼らがいかに能力がないかということを身にしみて知っております。
 先ほど、保健所設置市に体制がないという話がありましたが、実は都道府県だって全然ございません。そういう意味でいいますと、まじめに人材を育てる工夫をすれば、むしろ市町村の方が対応できるというのが私の考えでありまして、その点はまず実態把握からきちんとしないといけないのではないか、そう考えております。
 それから、これは関連なんですが、結局、安かろう悪かろうという、排出事業者に責任がない結果として、どうしても安い業者の方に荷が流れる。安い業者というのはそれなりにダンピング競争の中で生き残ってきた人たちですから、結局は、適正処理をしてもらえるだけのお金をもらっていない。それは、会社の、企業の命運をかけて不法投棄に走るわけでありまして、これは、不法投棄をしないとつぶれちゃうという構造をそこでつくっちゃっているわけですね。ですから、ここは、その点をほっておいて規制ばかり強化しても、実は不法投棄はなくなるはずがない、こう私は考えております。
 二ページの絵をちょっと見ていただきたいんですが、ごく簡単な絵で、これは実際に私が代理人を務めた、左の方が長野県御代田町の事例、それから右の方が新潟県中頸城郡三和村の事件です。
 これは要するに、焼却灰にセメントを混練りして、有償取引の契約書だけつくっちゃう。実際には有償取引じゃないんです、裏でお金を流していますから。だけれども、有償取引の格好をつくっちゃうと、これは廃棄物じゃないよということで、廃棄物処理法の規制を一切免れて、谷間に大量に埋め立てることができる。これは廃棄物処理法でとめられないので条例でとめたわけですが、こういうことができる。
 それから、右の場合は、これも今のお話の中でも実は一番抜けていた部分だと私は認識しているんですが、例えば、排出事業者から木くずを受け取ってそのまま燃やすんだったら、これは焼却の業の許可が要ります。ところが、それを一たん破砕機にかけちゃうと、それを燃やすときに業の許可は要らない。
 これは現行法の解釈として国が一貫してとっているわけでありまして、木くずを破砕した後は自社処理だ、だから業の許可は要らないよ、こういう解釈をとられますと、幾らでも自社処理の範囲が拡大して、それから自主的報告書にも載らない。それから、廃棄物処理の実態としても、数値としてみんな出てこない。幾らでも拡大ができる。実際にこの新潟県中頸城郡の事件では、破砕機は置いただけ、行政が来ると使う、後は直接燃やしているわけですね。実態は全く変わらないのに、これは自社処理として焼却業の許可なしで幾らでもできる。
 こういう中間処理を経ると、それから後は自社処理であって、マニフェストも何も機能しないという今の制度を維持している限り、幾らその周辺を規制強化してもむだであります。その点にぜひ目を向けていただきたいということでございます。この二ページの下の方に書きましたが、ごみがごみでなくなったり、業の許可も施設の許可も受けずに合法的に商売ができるというのが、今の廃棄物処理法の根本的な欠陥であります。
 それで、今回の改正案について簡単にコメントしたいと思います。
 一つは欠格要件の厳格化で、まず欠格要件に該当するに至ったときの自主申告というのがございます。自主申告することを義務づけること自体の是非は、これはやはり議論のあるところだと私は思います。
 もう一つは、この欠格要件の中に、例えばおそれ条項とか黒幕規定というのがございます。これは、おれは黒幕だよなんて名乗る黒幕はいないわけで、名を名乗らないから黒幕なわけですね。ですから、そういうことがほとんど期待できない欠格要件というのは、まずたくさんあると。明確なものは、これは申告しなくたって実はわかるということがありまして、この規定の意義は、私にとって大変疑問です。
 それから、現実には、先ほどから許可の取り消しの義務化というのがございましたが、これは特に悪質な業者でありまして、実際の現場で見ておりますと、七回違法行為をしても見逃してあげますよ、行政指導で済ませますよ、八回目からはこれは刑事告発をしますよ、そういうことを実際に運用している都道府県があるわけでありまして、そういう実態をまず見ないと、特に悪質な業者なんという認定を今の行政担当者がやるとは思えない、これはめったなことでないとやらないだろうということでありまして、その実効性にはやはり私は大変問題があると思っております。
 それから、不正の手段による処理業または処理施設設置許可を受けた者について取り消し処分の対象となる、これも、不正の手段というのはこれから具体化されるんだと思いますが、大変あいまいな規定のつくり方でありまして、ある意味ではこれは当然のことなんですが、これも、実際にはどこまでいくかというのは、後の規定を見てみないとわからない。
 それから、暴力団員等がその事業活動を支配する場合を欠格要件に追加、これは黒幕規定の要件が追加されたときにも議論になったところなんですが、その事業活動を支配するというのは一体何かと。
 何でこんなことを私は申し上げるかというと、やはりこの欠格要件が明確化される前に、我々は、実際にはAさんがこの企業を支配しているんだ、Aは欠格要件該当者だという主張を裁判上さんざんやりまして、この欠格要件が明確化される前に裁判所で随分その主張をしたときに、結局、Aさんは徹底してそれを否定したわけですね。そうすると、徹底して否定されると、これはどこでだれが認定するかという大変難しい問題が出てきまして、実際にはもっと簡単な要件設定をしないと、法を適用する現場では生きませんよ、生きた規定となりませんよということを私は申し上げたいということです。
 それで、先ほどの、保健所設置市から政令で定める市への事務の移管。事務が、従来、保健所設置市に一律に都道府県知事の権限が任されていた分を、今度は政令で定める市にすると。ここに私が三ページから四ページに書きましたとおり、基本的には、私はこれは地方分権の方向に反すると思っております。それは、さっきも申し上げましたが、では、都道府県とか政令市が十分な体制を持っているかというと、これは決してそういうことはない。
 例えば、神奈川県の例でいきますと、神奈川県は相当に広い県ですが、あの中で、例えば西部なら西部でもって、実際に現場で動く技術系の担当者というのは一人しかございません。それぐらいお粗末なところです。しかも、その一人も、尋問したときに、本当に基礎的な知識もないということが明らかになった、その程度の話でありまして、これは神奈川県だけに限らず、全国の規制行政の実態としてぜひ見ていただきたいと。それを見ないで、保健所設置市とか政令市というのを国のレベルで決めて、これは政令で定めたからできるというような認定が到底できるとは私には考えられない。
 むしろ、本当に住民と接していて、しかも地域に密着型という意味でいきますと、やはり市町村に権限を与える、これは一つ必要だろうと。広域化ということは当然あり得るわけですが、広域化があったとしても、地域の、そこに処理施設があり、そこに例えば焼却炉があるところがやはり一番密接に環境破壊、環境汚染を受けるわけでありまして、その視点からいっても、まず都道府県よりも市町村、さらに、それを支援する体制を考えた方がより合理的である、こう考えております。
 マニフェストのことについて申し上げますが、マニフェストについては、私は、現行法上二つ大きな欠陥があると思っております。これは、四ページのところに書きましたが、まず第一には、自社処分には一切適用がない。この自社処分の範囲も物すごくあいまいでして、先ほど例に挙げましたが、焼却したり破砕したりすると、後は全部自社処分だよと、他人から荷を受けてもですね。ですから、そこでマニフェストは切れてしまう、自社処分にはマニフェストはありませんから。そうすると、最終処分までの確認ができないということで、いわゆる二次マニフェストができたわけですね。たしか二〇〇〇年でしたか。
 ところが、二次マニフェスト、役に立つかというと、これは全然役に立たない。例を挙げますと、どういうことかといいますと、AさんがBさんに焼却を依頼する、それで、焼却してそれを最終処分したと。ここから先は自社処理だからマニフェストはないんだけれども、排出事業者は、自分が預けた荷が焼却されてどこに埋め立てられたか、これを確認しろというわけですね。このAさんが、ある業者のものしか受けていなければそれはいいんですけれども、例えば三十社受けている。これは普通の規模です。三十社受けて、それをまぜて燃やすのは当たり前なんです。まぜて燃やして、ある日燃やした、その灰がどこの灰かなんてことはわかるわけがないですね。つまり、人の遺骨と他人の遺骨をまぜちゃっているものを、これはおまえの遺骨だということでこれを確認する、つまり漫画の世界です、この二次マニフェストというのは。こういういわゆる漫画チックな制度をつくったというのは、やはり実態を知らないからだというふうに私自身は思っています。
 四ページのところにケース一、ケース二と書きましたが、これは私がよく法令講習会で使う図をそのまま使わせていただいただけです。これはちょっと時間がありませんので説明いたしません。
 そういうことがありまして、今回の法改正で言われていますマニフェストまたはその写しの保管義務だとか、処理が終了していないのにマニフェストの写しを送付をしてはならない、それから、違反に対する是正勧告を受けた事業者等に対する公表、命令の制度化、これ自身は、冒頭に申し上げたとおり、特に反対する理由は全くございません。ただし、重大な、基本的な欠陥をほっておいて、こういうものに手をつけて何の意味があるのかということが私の大きな疑問です。
 電子マニフェストについても、これは我々も随分議論したことがありますが、その実効性の前提として、やはりマニフェストの基本的な部分、自社処理をどう扱うのか、それから自社処理の範囲はどういうふうに明確化するかということをまず拾い上げないと、マニフェストばかり発達させてもしようがないだろう、こう思っています。
 それから、国庫補助金の廃止の問題がありますが、これはちょっと時間の都合で省略いたしまして、後で読んでいただきたいと。
 それから、最後に、無確認輸出の問題について申し上げたいと思います。
 無確認輸出の罰則の強化、六ページから七ページについてなんですが、実は平成四年十二月にバーゼル法ができまして、それを受けて廃棄物処理法の規定が改正された。バーゼル法の方は、特定有害廃棄物について、つまりバーゼル廃棄物についての規定であって、それから、廃棄物処理法の規定の方は、それ以外の一般廃棄物等についての規定。問題は、いずれもこの規定では到底適正な輸出入の確認あるいは承認等の手続ができないということになります。
 時間がなくなったので詳しくは申し上げられませんが、むしろ根本的な部分をやはり改めないと、この手の問題は今後も続発するだろうと思います。
 済みません、ちょっと時間を超過いたしまして。どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 梶山正三

speaker_id: 28472

日付: 2005-04-05

院: 衆議院

会議名: 環境委員会