永里善彦の発言 (環境委員会)
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○永里参考人 おはようございます。旭リサーチセンターの永里でございます。
私は現在、環境省の中央環境審議会の地球温暖化部会の臨時委員を仰せつかっております。また、日本経団連における検討にも参加しておりまして、本日は、産業界に身を置く者として、地球温暖化問題に対する産業界の自主的な取り組みの状況や基本的な考え方なども紹介しながら、今回の温暖化対策法につきまして若干の意見を陳述させていただきたいと存じます。
御承知のように、二月十六日に京都議定書が発効し、我が国は九〇年度比六%削減という重い約束を達成することが義務となりました。申し上げるまでもなく、地球温暖化問題は、我々がこれから未来永劫に対応していかなければならない長期的でかつ地球規模の問題であります。この問題に対応するために、国民一人一人、政府、地方自治体、企業などのあらゆる主体が、みずからの問題としてとらえ、それぞれ自覚と責任を持って行動を続けていくことが何より重要であると考えております。
この自主的な取り組みに関し、産業界の行動の中心となっているのが日本経団連の環境自主行動計画であります。経団連では、一九九二年の地球サミットに先駆けまして、一九九一年に経団連地球環境憲章を策定し、また、一九九六年には経団連環境アピールというものを策定しております。さらに、これらを受ける形で、京都議定書に先立つ一九九七年に、二〇一〇年度に産業部門及びエネルギー転換部門からのCO2排出量を一九九〇年度レベル以下に抑制するよう努力するという統一目標を掲げ、経団連環境自主行動計画として、社会にコミットし、行動することで大きな成果を上げているところであります。
本日の温暖化対策推進法の報告・公表制度にも関係いたしますが、経団連の自主行動計画は、目標の設定、行動、取り組みのフォローアップ、計画の結果の公表という、政府が今般京都議定書目標達成計画で行おうとしているPDCAサイクルと同様の手法を用いております。経団連自主行動計画には現在三十四業種が参加しており、我が国の産業部門及びエネルギー転換部門の約八割強をカバーするに至っております。
二〇〇三年度のフォローアップ実績も既に公表したところでありますが、これによりますと、九〇年比で〇・六%の削減、これには原子力発電所の停止が影響しておりますが、これを考慮いたしますと、実質的には三・八%の削減を達成している計算になります。
産業界といたしましては、おのおのの業種の実態を最もよく把握し、最も効率的な手法で環境と経済の両立を図っていくためには、自主的な取り組みを強化していくことが最善かつ不可欠であると認識しております。今後とも、透明性、信頼性を一層向上させながら、自主行動計画を着実に達成することで我が国の温暖化対策に貢献してまいりたいと考えております。
また、環境問題に対する企業の取り組みを積極的に情報公開していこうということで、昨年一月には環境報告書等の三年間倍増計画を宣言いたしまして、会員企業各社に呼びかけを行っております。
経団連が会員企業を対象に昨年行ったアンケート調査によりますと、環境報告書を作成している企業は回答企業のうちの五四%、また自社のホームページに環境情報を掲載している企業は七四%にも上ります。また、近い将来に作成する予定と回答した企業も多数あり、企業の環境に関する自発的な情報提供の意識は急速に広がっております。今や環境問題に対する企業の取り組み姿勢自体が投資家などによる企業評価につながっており、企業価値を高めるためにも環境情報の提供が重要な経営課題の一つとなりつつあることを示しております。
このように、企業サイドでは、環境問題に対して自主的な目標を社会に掲げ、その達成のためにみずから行動することを取り組みの基本姿勢としております。
今般の京都議定書発効を受けまして、現在、政府では京都議定書目標達成計画を策定中と伺っております。計画案によりますと、経団連の自主行動計画は産業・エネルギー転換部門における対策の中心的役割を果たすものとされておりまして、我々といたしましても、役割の重要性を改めて認識しているところであります。
さて、今後我が国が目標達成に向けて着実な対応を継続していくためには、個々の対策について定期的に定量的な評価を行い、その進捗状況を把握しながら、追加的な対応が必要か否かを判断していかなければいけません。そのためには、今回の温暖化対策推進法や省エネ法の改正で求められるような、排出量に関して一定の報告や公表を制度化することも必要であろうと存じます。
産業界といたしましては、先ほど申し上げたとおり、環境報告書などを通じた自主的な環境情報の開示が最も効果的であると考えてはおりますが、規模の大きくない企業やサービス業などの第三次産業では、まだ自主的な取り組みが十分でない部分もございます。また、情報の統一性を図るという観点からも、法律により一定の報告を義務づけることは、温暖化対策を進める上で有用であろうと考えているところであります。
法律に基づきまして排出量の報告や公表を行う場合に、企業として最も御留意いただきたい点は、やはり企業秘密に当たる部分の扱いであります。この点に関しましては、今回の法案におきましても一定の御配慮をいただいているところでありますが、なぜ温室効果ガスの公表が企業秘密に当たるのかにつきまして、例えば半導体を例にしまして、この機会に御説明させていただきたいと存じます。
我が国の産業を支えている半導体産業では、炭酸ガスに比べて極めて高い温室効果を持つSF6、PFC、N2Oなどの温室効果ガスが、半導体や液晶の特定の製造工程で、性能などを決定する反応ガスの一つとして使用されています。この反応ガスの役割は、具体的にはトランジスタや配線を形成するのですが、製品を加工し、性能、品質、生産性を決定する重要な要素の一つになっています。これらのガスは限られた特定用途の製造工程でのみ使用されますので、工場の排出量やガス名の報告、公表により、競合企業は歩どまりを推定でき、製造コストを推定できます。また、新技術を開発して製品化すれば、ガスの種類と使用量もおのずと変わってきますので、新製品の開発状況が推定できます。これが、国内だけでなく、韓国、台湾、中国にも筒抜けになりますので、まさしく敵に塩を送るようなもので、国際競争力の低下につながります。
したがって、半導体各社はこの反応ガスに関する情報の企業内管理を徹底して行っています。すなわち、技術部門では、ガス流量などは製造指示書として担当の技術者が指定し、技術文書として企業秘密にしています。製造現場では、製造指示書は管理監督者、担当者以外の閲覧は不可能になっていて、これも技術書として企業秘密にしています。また、購買部門でも、ガスに関する情報は材料購入価格などと同様の重要な購買データとしても管理され、製造原価を決める重要な要素として企業秘密にしています。
以上のように、温室効果ガスの公表の仕方によっては、そのまま企業の生産プロセスや製造コストが明らかになってしまうことにつながります。このことは、繰り返しになりますが、単に国内企業他社との関係のみならず、我が国産業の秘密を諸外国にさらすことにもつながり、ひいては我が国産業の国際競争力を低下させることにもつながりかねません。今後、地球温暖化問題を考えていく上で、いかに経済と環境とを両立させていくかという点が最も重要な課題でありますが、そのような観点からも、企業の秘密の保護に関しましては、どうかよく御理解をいただきたいと存じます。
京都議定書の発効に伴いまして、産業界といたしましては、みずからの取り組みを一層強めることによって温暖化対策に貢献してまいりたいと考えております。また、これまで取り組みがおくれていた民生や運輸部門に関しましても、よりすぐれた省エネ型製品やサービスを充実したり、物流を合理化したり、あるいは従業員の家庭での省エネを支援するといった取り組みを通じて貢献してまいる所存です。環境と経済の両立を目指して、国や地方自治体、関係諸団体との連携も深めながら行動してまいりたいと考えておりますので、何とぞよろしく御理解を賜りたいと思います。
私からの意見陳述は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)