山口富男の発言 (憲法調査会)

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○山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。
 初めにきょうは新聞報道をめぐる発言がありましたので、私は冒頭に、今国会での調査について述べておきたいと思います。
 憲法調査会は、調査会規程で定められているように、「憲法について広範かつ総合的に調査を行う」という調査会であって、憲法改定に向けた検討とかそのための論点整理などをやるところではありません。しかし、先日の幹事懇談会に提案されました最終報告書作成へ向けての調査(案)、これは、事実上、憲法改定に向けた論点整理になっているものです。この点については、幹事懇談会の席上でも私は指摘をいたしました。
 例えば、天皇につきましては、象徴天皇制に関する規定を見直す必要があるか。九条にかかわっては、国際協力についての規定のあり方。国民の権利及び義務、三章にかかわっては、さらに新設すべきものあるいは削除するものはないか。こういう形で提議されました。これは字句上の直しで、この部分については、国際協力についての規定のあり方は残っておりますが、字句上の直しが行われました。
 同時に、あくまで論点の例示だという話もあったわけですけれども、これは、実際には調査会規程からの逸脱にほかならない。これについては、先日の幹事懇談会でも指摘した点です。
 もう一点は、最終報告書の問題なんですけれども、調査会規程は、「調査を終えたときは、調査の経過及び結果を記載した報告書を作成し、」「議長に提出する」としております。このように、調査の経過及び結果の記載だけであって、議案提出権がない本調査会が改憲の方向性とか結論めいたものをここに記載できないことは自明のことです。本調査会の設置の趣旨や調査会規程に反するような検討は許されないことをはっきり指摘しておきたいと思います。
 さて、天皇ですが、現行憲法のもとでの天皇は、法規範上、天皇主権を定めた明治憲法下の天皇とは全く異なるものです。この点から言っても、憲法と天皇については、問題を歴史的に見ていくことが重要になります。
 先ほど、民主党の大出委員からこの点での発言がありました。明治憲法は、「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」とし、「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」とうたいました。神の子孫としての天皇が主権者として統治権を総攬するという、ここに神権的天皇制と言われるゆえんがありました。天皇は、立法、行政、司法の全体にわたって国を統治する権限を持ち、軍隊への指揮と命令、宣戦、講和の権限を握りました。特に戦争と軍隊の問題は、天皇の固有の権利、天皇の大権とされました。
 一方、国民は、臣民という名前で天皇の家来とされ、軍人勅諭や教育勅語で天皇絶対の教えを強制されました。信教の自由、言論、集会、結社の自由などの権利は法律の範囲内という制限つきで認めましたが、女性には人格権はなく、政治の実態としては、国民の人権は著しく抑圧されました。これらが、専制的とか絶対主義的とか呼ばれたものです。この体制のもとで日本が二十世紀に起こした侵略戦争は、アジアで二千万人、国内でも、少なく見ても三百十万人のおびただしい犠牲をもたらしました。
 一九四五年八月、日本が受け入れたポツダム宣言は、日本国民を欺瞞し、これをして世界征服の挙に出るの過誤を犯さしめたる者の権力と勢力を取り除くこと、日本軍の武装解除と家庭への復帰、戦争犯罪人の処罰、民主主義の復活強化を阻むすべての障害の除去、言論、宗教、思想の自由と基本的人権の確立、再軍備を可能とする産業の制限など、軍国主義の一掃と平和的、民主的な日本の建設を要求しました。そして、その実現は日本の国際公約となりました。
 こうして、第二次世界大戦後の日本が国際社会の中で再出発することは、明治憲法と天皇絶対の体制を否定し、国民主権と戦争放棄、平和の国づくりの道を打ち立てることと一体のものとなったわけです。だからこそ、日本国憲法は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすること」、「主権が国民に存すること」を宣言して、これに反する憲法、法令、詔勅を排除したわけです。
 さて、現行憲法と天皇ですが、現行憲法の規定は、こうした歴史の経過を踏まえて生まれたものにほかなりません。
 憲法第一条は、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」と定めています。これは国民主権の原理を確認したものですけれども、これによって天皇は、主権在民下の国民の意思に基づいて設けられた機関だという位置づけを与えられました。
 さらに第三条は、「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要」とすると定め、第四条で天皇は、「憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」とされました。このように天皇は、憲法上、四条二項、六条、七条に定める十三の国事行為のみを行いますが、これは内閣の助言と承認を必要とする形式的、儀礼的なものとされ、憲法は、国政に実質的な影響を与えるような権限、機能は一切天皇に認めておりません。
 このように、現行憲法の定める天皇は、主権在民下に置かれ、国事行為には内閣の助言と承認が必要であり、かつ、国政に関する権能を有しないという厳しい制限規定を受けております。これらの規定の法規範としての意味とこれが生まれた歴史を明確にとらえて、厳格に運用していかなければなりません。
 天皇の制度をめぐりましては、天皇を元首と見立てたり、その明記を求める意見があります。一般に元首とは、行政上の長であり、対外的には国家を代表する者です。憲法には明文の規定はありませんが、日本では内閣総理大臣が事実上これに当たります。これとは別に、天皇を元首と見立てたりその方向を明記することは、国民主権原理との矛盾を広げ、憲法が天皇の制度を法規範上に位置づけた歴史にも反するものになります。こうした試みには反対であります。
 さて、国民主権の原則の首尾一貫した展開を展望したときに、一人の個人が世襲で国民統合の象徴になることは、本来的には、民主主義、人間の平等の原則と両立するものではありません。この制度の存廃は将来の国民の選択の問題ですけれども、これも、憲法の規定に則して、国民の総意によって歴史の中で解決されていくものと考えております。
 以上です。

発言情報

speech_id: 116204184X00120050203_013

発言者: 山口富男

speaker_id: 25006

日付: 2005-02-03

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会