永岡洋治の発言 (憲法調査会)
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○永岡委員 自由民主党の永岡洋治でございます。
私は、前文に関しまして、特に、前文のあり方を通じた国の形というものについて意見を述べさせていただきたいと思います。
私は、憲法調査会の委員といたしまして本調査会で多くの委員の発言を拝聴し、私自身も国の形について真剣に考え、委員の皆様とともに議論を深めてまいりました。そして、これまでの調査会の議論を通じ、私が憲法について改めて認識したことを申し上げるとすれば、憲法というものはまさに国家を形づくる土台であることは当然でありますが、その前文というものが、国家が進むべき道を明確に示す道しるべとしての役割を果たすものであるということであります。
このような視点から現行憲法を眺めたとき、我が国の前文は、その進むべき方向を明確に示しているとは言えない状況にあるのではないでしょうか。例えば、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」という文言がございますが、振り返ってみますと、我が国はこの六十年間、戦争を起こしたという事実は一度もなく、このような前文の文言は既に時代錯誤に陥ってきております。
また、前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」あるいは、「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会」という高邁な思想も書かれておりますが、現実の国際社会に目を向けてみると、北朝鮮による拉致問題、イスラエル・パレスチナ問題、アフガニスタン、イラク問題など余りにもかけ離れた状態にあることに気がつきます。
このように前文は、内容的にも既に現実に合わなくなってきておりますが、そのほかにも大きな欠陥がございます。それは、日本国民自身による国の形を考えるという視点であります。先ほども申し上げましたが、憲法は国家を形づくる土台であり、その前文は国家の進むべき道を明確に示す道しるべとしての役割を果たすものであります。私は、我が国が明るく、活力ある社会となるためには、物心両面における豊かな国づくりを目指す必要があると考えます。
戦後六十年を経て我が国は、高度経済成長のもと、物質的には国際社会の中でも大変豊かな国へと発展してまいりました。しかし、その結果、西洋における経済合理主義が日本の社会経済を覆い、我が国は大切なものを数多く失ってきたようにも思います。我々は、我々の祖先が長い歴史の中でどのように生きてきたかを今こそ振り返り、それを踏まえた国家像、国家の進むべき道を考える必要があるように思います。
古来、我々日本人は山川草木に畏敬の念を抱き、生きとし生けるものに慈しみの気持ちを持ちながら自然との調和の中で生きてきたという、すぐれた伝統を有しております。また、我が国は、家族、家庭を通じ、または地域社会において相互扶助、助け合いの精神を培ってきたという、世界に誇るべき生活の歴史も有しております。このような我が国固有の伝統や歴史が、ややもすると軽んじられてきているところに今日の社会秩序の乱れの一因があるのではないかと考えます。
私は、我が国の長い歴史の中ではぐくまれてきた環境主義の理念、そして家族の重要性というナショナルアイデンティティーを前文に明確に示し、国民一人一人が自然との共生の中で相互扶助の精神を培ってきたという日本人の姿を改めて認識することにより、我が国が精神文化においても豊かな国へと発展していくものと考えます。また、このような自然との共生の中で相互扶助の精神を培ってきたという日本人の姿は、今日の国際社会の中においても求められているものと考えます。
確かに、現在の前文にも既に国際貢献の理念がうたわれております。しかし、このようなナショナルアイデンティティーを生かした国際貢献、例えば、地球環境への積極的な関与を明らかにしていく、環境安全保障への我が国の責任というようなものを前文に明記していくことも検討に値するのではないかと考えます。このような具体的、平和的な視点を持つことにより、国際社会の中において日本は他の国々から尊敬される国になるものと信じます。
以上、私からの前文に関する意見表明とさせていただきます。ありがとうございました。