岸本正壽の発言 (経済・産業・雇用に関する調査会)

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○参考人(岸本正壽君) ありがとうございます。それじゃ、着席させていただきます。
 皆様のお手元にお配りしておりますレジュメに従いましてお話をさせていただきます。
 まず結論から先に申し上げますと、日本経済の国際競争力の強化というのは技術創造立国と貿易立国、この二つが基本的要件ではないか、このように考えます。日本経済の国際的優位性の維持強化というのは、資源の乏しい我が国にありましては、科学技術、生産技術の発展、これが国際競争力の源泉でございます。同時に、技術開発による新産業の創出、これが新しい雇用の受皿になると、このように考えます。したがいまして、先進技術の研究開発とその産業化を促進するための継続的な投資、高コスト構造の是正、自由貿易体制の強化、これが肝要でなかろうかと考えております。
 時間の関係もございますので、これから技術開発という点に的を絞ってお話しさせていただきます。現場的な思考でございますので、細かいことが入るかもしれませんが、御容赦いただきたいと思います。
 まず第一に、生産技術の方でございますが、日本企業の海外生産が伸展する中で、日本におきましては高付加価値創造の物作り、これを追求すべきではないかと考えております。どこで作っても同じ商品ではなくて、日本で作らなければならない商品、この創造ということでございます。
 現状についてちょっと申し上げますと、一九七〇年代に第一次海外生産移管、日本の企業が海外に進出したわけでございますが、このときは台湾を中心にタイ、マレーシア、インドネシア等に進出しまして、いわゆる低コスト生産、これが目的でございましたが、一九九〇年代の第二次海外生産、これはカントリーリスクが減少しました中国が中心でございまして、低コスト生産はもちろん目的の一つでございますが、あの大きな潜在市場をどう対応するかという市場戦略も含まれている、このように考えております。
 日系企業の中国生産品というのは軽工業の中心、軽工業商品の中心でございまして、特に高度な生産技術を必要としない組立て中心、アセンブリー中心の製品群が主力でございますが、最近では中級品や、あるいは部品を含めた一貫生産、これに移行しつつありますし、ごく最近では金型あるいは治具工具、そういう生産設計、あるいはソフトの開発、こういうところまで日系の企業が移行しているということがうかがえます。
 他のアジア地区でも生産につきましてはほぼこれと同じような状況と認識をしております。
 米国でございますが、ITや半導体関連の心臓部であります電子ハイテク部品、これはやはり日本が中心でございまして、あと台湾、韓国、この辺から輸入をしております。したがいまして、高付加価値商品の製造力というのはそんなに強くはない、このように判断をしております。
 このような状況に対しまして日系の、我々企業がどのように対応しているかということでございますが、まず海外生産品でございましても日本にパイロットラインを敷いております。パイロットラインというのは、わずか一レーンのテストパイロットといいましょうか、テストラインといいましょうか、そのラインを使いまして量産技術を確立し、そしてその上で生産移管をしていると、こういう状況でございますので、量産技術はまだ日本にあると、このように考えます。
 それから、高度生産技術を必要とする高付加価値製品、これは日本で生産しておりますし、移転が必要、技術移転が必要という場合はブラックボックス化、いわゆる技術を外から見えないように、分からないように凍結をしてそれを移管すると、そのような方法を取っております。
 それから、日本と特に中国でございますが、どういう生産区分をしているのかということでございますが、価値創造という字がございます。その創の部分ですが、これは日本で担当しよう、そして造の部分、これは海外生産、海外の担当でもいいじゃないかと、こういう考え方が一つございます。もちろん造の部分におきましても高付加価値商品は日本で生産をする。当社でも、付加価値の高い、高度生産技術を必要とする医療機器につきましては、すべてこれは日本で生産をしております。
 それから、中国の生産、当初はこれいろいろな規制がございまして合弁が主力でございましたけれども、規制緩和が進んだことと、それから技術流出等の防止、そういう意味で独資系の会社がこのところ多くなっておるという状況でございます。
 したがいまして、日本の企業もいろいろ工夫をしながら、技術、いかに日本の中に保有するかということに一生懸命対応しているということでございます。
 ただ、課題でございますけれども、中国の大手企業でございますが、技術、技能を有する企業を買収するという傾向が出ているわけでございまして、あのコンピューターの大手でございます聯想という会社がIBMのPC部門を昨年の末巨額で買収をしました。我々企業にとってもあれだけのお金が出るというのはちょっと予想外でございましたが、多分企業だけではなくて国の一つの考え方としてあの買収が入ったのではないか、このように判断をしております。日本におきましても、技術のある中小企業の買収、これ現実に今起こっております。
 それから、二点目の退職技術者の流出ということでございますが、かつて九州を中心に、週末、技術者が韓国に飛びまして、それで技術指導をして韓国の電子産業の発展に寄与した、こういう時代があったわけでございますが、中国におきましても、今のところ日本の定年退職技術者、この技術者の方がかなりの高額で指導に入っている、そういう方がだんだん多くなっていくんではないか、このように考えております。
 それから、三番目の、これは今日のテーマからちょっと外れるかもしれませんが、社会環境、教育といった大きな課題でございます。
 日本の若者の仕事への意気込み、挑戦意欲、こういうことがちょっと弱っている、弱まっているということが、継続的な努力とそれから忍耐力を要する製造現場への従事を遠ざけてしまわないか、こういう懸念がございます。
 中国と日本の若者のハングリー精神あるいは労働意欲、挑戦意欲の差というものは将来の懸念材料であることは間違いない、このように考えております。
 二ページでございますが、その前に、今、生産技術のお話をいたしましたけれども、生産技術というのは主として現場から生まれるものでございますので、民間企業主体で競争力を強化していく、これが大きな命題ではないか、このように認識をしております。
 次、二ページの科学技術、俗に言う研究開発ということでございますが、かつて日本は応用技術あるいは商品化技術、これは優れているけれども基礎技術は弱い、このように言われました。しかし、昨今、カーボンナノチューブ等の材料技術、発光ダイオード、半導体関連、電子ハイテク技術、特にナノテクノロジー等に見ますように、日本発の強い部分が増加をしております。また、既存産業におきましても、自動車の飛躍、あるいは新三種の神器と言われておりますフラットパネルとかDVD、デジタルカメラと、これは圧倒的なシェアを保持しております。船舶も一時の低迷から見事に復活しましたが、これは新しい技術開発によるところでございます。
 そういう状況でございますが、強化策としてどういうことが望ましいかということでございますが、まず第一に、研究開発投資の促進でございます。
 a、国家予算による支援でございますが、日本の研究開発費の民間ベースでは、米国の半分、二分の一でございます。それから、日本が、民間が使用する研究開発費の総額に占める政府の資金支援といいましょうか資金負担、この割合がドイツの六分の一、米国の五分の一でございます。国家予算全体で見ますと、GDP比率、何を基準にすればいいか分かりませんが、GDP比率で見ますと、欧米主要国の水準以下ということが言えます。したがいまして、日本が優位性を期待できる戦略分野に焦点を当てた継続投資、これが必要であると考えます。厳しい財政下ではございますけれども、当面GDPの一%程度の額を最低限として考えるということが必要じゃないかと。一%といいますと、ちょうどこの間、新聞に出ておりました、GDP五百数兆でございますから、五兆円ぐらいということになるかと思います。ただ、GDPというのは上下をいたしますので、できればやはり長期的な観点から額で決めていくということも必要じゃないかと、このように思っています。
 一九七六年に、昔の通産省ですか、通産省で取り組まれました産業育成政策というのがございまして、ここに日本の大手の五社がLSIの共同開発をいたしております。それから、一九九一年に始まったマイクロマシン、国家プロジェクトの長期支援、これが十年間続きましたけれども、これらは非常に成功であったということでございますので、これらが参考例になるかと思います。
 bの税制でございますが、現在の税制は、従来からある増加試験研究費の税額控除、これに加えまして、平成十五年度より新しく導入されました試験研究費の総額に対する税額控除、この二つの制度がありまして、企業の方でどちらを選択してもよろしい、有利な方を選択しなさい、こういう有利選択が適用されておりまして、企業の研究開発の投資促進、これに大変寄与をしていると考えております。
 ただし、試験研究費の総額に対する税額控除、これには経過措置としまして、三年間、より有利な税控除割合となっているのですが、これが十七年度をもって終了ということになっております。したがいまして、現税制の継続、さらにはより有利な制度が投資促進を支援することになる、このように考えております。
 二番目でございますが、産官学連携の強化ということでございまして、一九八一年に登場しました米国の大統領、レーガンさんは、強い米国、これを標榜いたしまして、特に産業強化という点でプロパテントと、それから産官学共同による産業強化策として国家プロジェクトの下に科学技術の開発、こういうことに多額の資金を投入いたしました。一九九〇年代に入ってそれが開花したと、こういう具合に言われております。
 この間、日本は高度経済成長時代でございまして、これからの高付加価値を創出するのは金融とサービス業であると、こういうことで、考え方として、そちらの方に注目が行きました。したがいまして、不動産とか株式とか、そちらの方に資金がかなり流れた。結果としてはそれがバブル経済ということになったわけでございますけれども、そんなことで日本の対応が少々後れを取ったということでございますが、近年、産学連携の動きが急激に高まっておりまして、二〇〇三年には国立大学の民間との共同研究数というのは八千件を超えている。三年前が四千件ぐらいでございますので、ちょうど倍増ということでございます。
 特に、基礎研究というのは長期間を要しますし、多額の先行投資を必要としますので、またデジタル時代の複合技術開発のスピードという観点からも、一企業での取組は無理でございます。したがいまして、新産業創出の基盤となる世界トップレベルの研究開発の推進や、後ほど申し上げます人材育成について、産学連携の強化を図ることが重要ではなかろうかと思います。
 三番目でございますが、ベンチャー企業の育成でございます。
 小泉内閣の大学発ベンチャー企業一千社設立という目標は、昨年ほぼ八百社ぐらいになったという具合に聞いておりますが、民間を含めてなかなかこれが、育成が困難でございます。
 日本の場合、一度失敗しますとまず駄目人間というレッテルを張られますので、なかなかリターンマッチができない。あるいは、ロイヤリティーが非常に強い従業員、国民性がございますので、会社を離れてベンチャーに挑戦するということは企業風土にもちょっとなじまないという点がございます。あるいはベンチャーキャピタルあるいは起業家が育っていない、そういう難しさもございます。一円で会社設立ができるようになりましたが、運転資金が集まらなければ一円で設立できてもこれは意味がないということでございます。
 我々が携わっております医療機器・用具の業界でございますけれども、日本で使用される医療機器・用具の五〇%強が輸入品でございます。特に治療機器・用具、この開発、産業化が大変後れている。というのは、一つは医療関連のベンチャーが日本にはごくごく少ない、そういうことも原因の一つだろうと思います。医療機器のメーカーはリスクを恐れて取組そのものが消極的でございますが、米国ではベンチャーがいわゆるリスクのバッファーとなっております。そして、新しい医療用具開発が促進されているという点がございます。
 そういう意味でもベンチャー企業の育成ということが大変重要なことだろうと思いますので、政府、公共団体の資金援助、あるいは官民によるマッチングファンドの設立、あるいは公的研究機関の設備を一部開放して利用ができるような、そういう育成施策の拡充が必要ではなかろうかと思います。
 四番目でございますが、人材の育成でございます。
 新しい技術が開発されても、それを事業化する、いわゆるブリッジ人材というものが不足しておりますし、海外の優秀な人材が集まる世界トップレベルの研究機関が非常に少なくて内外の研究者の交流の場が乏しく人材が育ちにくい、こういう点がございます。そこで、産学の人材交流を積極的に推進することによって事業化のスピードを上げる必要がありますし、MOT教育を充実させるとともに、一定期間、インターンシップのお話もございましたが、一定期間企業で経験学習ができるような教育システム、これが有効に働くのではないかと思います。
 アメリカでは百六十以上の大学がMOTのコースを持っておりますが、日本では、昨年の春の数でございますが、十六校しかないということでございます。また、海外、特にアジアの優秀な人材が、現在、日本を飛び越えてアメリカの方に行っているわけですが、こういう人たちが日本に来るような、集まりやすい、そういうインフラ整備というものが必要ではなかろうかと思います。
 最後の五点目でございますが、知的財産につきましては、特許庁で大変な努力をされておりまして、民間の意見も積極的に取り入れていただいて急激に改善が進んでおりますので特に言うべきことはないんでございますが、四点目の知的財産紛争の迅速処理という点でございますけれども、やはり日本においても、近年、法廷での争いが非常に多くなってきておりますので、知的財産にかかわる専門裁判官の養成、これが急務ではなかろうかと、このように感じております。
 それから、日本発の国際標準化への取組推進でございますが、日本で得意とする、あるいは有利さが期待できるところにつきましては積極的に標準化を進めていくと。それによって、ISOの規定にも入れていただくというようなことが必要なんですが、民間の団体だけではなかなか難しい点もございますので、経済産業省を始めとした政府レベルの推進ということをお願いできればという具合に考えております。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 岸本正壽

speaker_id: 8128

日付: 2005-03-02

院: 参議院

会議名: 経済・産業・雇用に関する調査会