松尾宣武の発言 (少子高齢社会に関する調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(松尾宣武君) 今日はお招きいただきまして大変ありがとうございます。ふだんいろいろ御指導いただいております清水委員長に厚く御礼申し上げます。
 私、小学校のときに国会の参観に来まして以来、国会の敷地に足を踏み入れましてすごく緊張しております。
 自分の専門は性の分化、分化というのはカルチャーではなくてディファレンシエーションというふうに、男と女がどうしてでき上がってくるかという、そういうことを専門にしております。この少子化の問題につきまして小児科医の存在感が非常に薄いということを責任を感じておりましたが、今日こういう発言の機会をいただきまして大変うれしく思っております。
 お手元のレジュメに従って話を進めさしていただきたいと思います。
 結論から申し上げまして、少子化対策として非常に有効な対策というのはないということを我々は認識して次世代に対する対策を考えなければいけないというふうに思います。一番まずい方法は、山田参考人もちょっと触れられましたが、効果のはっきりしないたくさんの対策を打って借金を次世代に先送りするということが一番少子化対策としてはまずいことだというふうに思います。
 最初に、少子化社会の意味と書きましたが、日本だけではなくて、すべての先進諸国が少子化社会を迎えているわけでございますけれども、単に子供が減るというだけではなくて、子供の質が低下するという現象がすべての先進国において同時進行しているということを我々は理解する必要があると思います。
 ここに我が国の子供の半数は心身不健康であるというふうに推測されると書きましたが、決してこれはオーバーな評価ではないというふうに思っております。ですから、数を増やすということよりも、子供の健康の質をどうやって確保するのかということに主眼を移すべきではないかというふうに思います。
 少子化の要因でございますが、いろいろな分析がされていることは確かでございますけれども、最も根幹の問題というのは、我々が子育てにそれほどの価値を見いだせなくなってしまったということだと思います。価値を見いだしていないというわけではございませんけれども、大きな価値を見いだせなくなった。
 これは岸田秀先生の表現で、育児思想というふうに彼は述べておられますけれども、昔は親孝行であるとか家の継続であるとかという、そういうかなり親の利己的な物の考え方が入っている、その育児の理由というのがあったわけでございますけれども、今はそういうものが完全になくなりましたので、育児に対して親が意味を見いだし得ないということが、どういうふうにこれに対応するかという問題がございますけれども、新しい育児思想をどういうふうに確立していくかということについて、もし時間があれば私の見解を述べたいと思いますけれども、その問題がございます。
 それから、家庭機能が極めて低下してきたということがあります。結婚したときに親としての準備性がない若者が多い、子供が生まれてもまだそういう状態にあるという人が多いわけでありまして、これは小児虐待でありますとか小児の非行であるとか、様々な子供の問題につながっていくということが言えると思います。
 少子対策でございますけれども、国や自治体が打ってきました少子対策というのは、すべて出生率の向上をどういうふうにして図るかということに視点が限定されているように思われます。私は子供の健康と幸せが確保されるために何が必要かということに是非視点を移していただきたいというふうに思います。特に、この実効ある少子対策というふうに、実効あるという言葉の意味についてこの調査会のコンセンサスが得られることを期待しております。
 子育てにおいて非常に重要なのは乳幼児期と思春期にあるということは、これは言をまたないことだと思いますけれども、この乳幼児期の重要性というものが非常に無視されておりますし、三歳神話というような非常に空虚な言葉が広まって、母親の重要性というのが非常に軽視されたということは小児科医として非常に残念に思っております。
 この乳幼児期の子育てにおきまして、母親が持っている偉大な力というのは、これは男子が代行できない部分が非常に多いわけでございますが、思春期の問題、思春期の親の責任としては、これは父親の果たす役割は大きいわけでございまして、乳幼児期は母親が主体になる、思春期は父親が主体になるというような役割分担というものを将来の我々の社会において考えなければいけない問題であるというふうに思います。
 仕事と家庭の両立でございますが、この問題は先進諸国がすべて共通して抱えている問題でございまして、すべての国において子供の健康障害がその結果起きていると。これはまず認めるところからスタートすべきで、これを昔に戻すということは不可能でございますけれども、仕事と家庭の両立というのは非常に困難なことだということをまず理解する必要があると思います。
 特に、キャリア女性に対する対策としては、復帰したときの支援パッケージというのを充実させるということは非常に重要であると思っておりますし、私、小児科医として、女性の小児科医が出産、子育てをした後の復帰ということについて学会で今取り組んでおりますけれども、こういうものをそれぞれの業界において考えていく必要があるというふうに思います。
 最後に、まとめでございますけれども、少なくとも二つの問題が大事ではないかというふうに思います。
 一つは、やはり社会的規範というのをもう一回取り戻していかないと、人間に自由に、自主性に任せるということをいたしますと、果てしなく社会が混乱していくというふうに思います。ですから、社会的規範をどうやって取り戻すかということを考える必要があると思います。
 第二点は、人間というものはどういう動物であるかということですね。人間性というものをもう少し我々は深く学ぶ必要があると思います。
 そこに書きましたが、我々の歴史がどういうものであったのか、それから人間の様々な行動がどういうふうに遺伝学的に制御されているのか、そして自己の形成というのがどういう社会心理学的な機序によって起きてくるのかということにつきまして、すべての大人がより深く理解、する必要がある、これがつまり親教育であるというふうに思っております。
 最後に、この「付」として書きましたが、我が国の医療計画というのは、子供という視点が完全に医療計画から脱落しております。これを是非取り戻す、見直す必要があるということで、これを私たち小児科医の重大な役割というふうに考えております。
 以上でございます。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 116214534X00220050216_007

発言者: 松尾宣武

speaker_id: 12047

日付: 2005-02-16

院: 参議院

会議名: 少子高齢社会に関する調査会