逢見直人の発言 (厚生労働委員会)
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○逢見参考人 おはようございます。連合で副事務局長をしております逢見です。
医療制度改革関連法案に対する意見を述べたいと思います。お手元に資料をお持ちしてございますので、適宜参照しながら意見を述べてまいりたいと思います。
医療、医療保険制度の抜本改革は、一九九七年からの国会、政府の公約でもありましたが、政府は改革を先送りし、負担増、給付削減を繰り返してきました。この間にも医療費は伸び続け、地域や診療科による医師不足はより深刻となり、国民の制度への不信、不安を招く結果となっています。
今回の改革の趣旨について、政府は、国民皆保険制度を堅持し、将来にわたり医療保険制度を持続可能なものとしていくとしております。政府の言う持続可能とは、財源の確保だけであるかのようであります。制度への国民の信頼がなければ、財源の確保どころか制度の持続可能性さえ困難になります。
医療制度に対する国民の信頼を回復し、安心、安全、信頼の医療体制を確立するため、抜本改革を断行すべきであるという立場から、以下、意見を述べさせていただきます。
まず、積極的に推進すべき内容について述べたいと思います。
第一に、二〇〇六年度の診療報酬改定において、明細のわかる領収書発行がすべての医療機関、保険薬局等に義務づけられたことです。この点については評価したいと思います。
連合は、一九九七年から、明細のわかる領収書をもらおうという運動を展開してまいりました。お手元に資料を配付させていただいております。ことしの二月から三月にかけて、インターネット上で調査した領収書発行状況につきまして、二ページから五ページに掲載してございます。これは後ほどごらんいただきたいと思います。
今後、民主党提案の医療の安心・納得・安全法案で提案されておりますレセプトに近い領収書発行の義務づけを検討するよう要望いたします。
第二は、レセプトのオンライン化です。昨年十二月の政府・与党、医療制度改革大綱において、レセプトを電子化して二〇一一年三月末までにオンライン請求に切りかえることが提案されておりました。しかし、政府は、四月に入り、年間のレセプトが千二百件未満、歯科については六百件未満の医療機関については、最大二年間猶予する省令の改正を行いました。五年間も準備期間を設けているわけですから、この期間内にすべての医療機関がオンライン化するよう要望いたします。
第三に、医療法等の一部改正法案についてです。
法案に示された、患者等への医療に関する情報提供の推進、医療計画の見直し等を通じた医療機関の分化、連携の推進等の内容については、確実に実行すべきであると思います。しかし、地域や診療科による医師不足問題への対応につきましては、医師不足を解消し、国民の安心を回復するには不十分な内容であると言わざるを得ません。民主党が提案しております小児医療緊急措置法案、がん対策基本法案を十分反映しつつ、さらなる具体的な対策を講じるよう強く求めます。
その上で、地域や小児科、産科の医師不足への次善の策として、小児医療については保育所、幼稚園などに看護師、保健師を配置する、産科については助産師の力をかりるといった方法も検討すべきではないかと考えております。
第四に、保険者の再編統合についてです。
政管健保については、全国単位の公法人である全国健康保険協会を保険者として設立し、都道府県単位の財政運営を基本とする改革案が提案されております。これにつきましては、連合が政管健保の改革として提案してきた内容と大筋合致するものであり、その実行を求めます。あわせて、保険料負担者である被保険者、事業主の制度運営への参画を確実なものとするよう、重ねて要望いたします。
第五に、療養病床の再編についてであります。
療養病床については、老健施設やケアハウス等への病床転換を進め、二〇一一年度末に廃止する、医療型療養病床は二十五万床から十五万床に削減することが提案されております。この療養病床の再編は、長期入院、社会的入院の解消という、これは三十年来の懸案である問題に決着をつけることであると思います。療養病床再編に当たっては、入居者の処遇に十分配慮しつつ、確実に実行すべきだと思います。
続きまして、法案の修正を求める内容について述べたいと思います。
第一は、新たな高齢者医療制度の創設についてです。
老人医療、退職者医療については、現役世代からの負担のあり方が不透明であること、財政運営責任が不明確であること、保険者が制度運営に参画できないといった問題が保険者から指摘されてきました。今回の改革は、これらの問題を解決するものでなければなりません。しかし、提案されている新たな高齢者医療制度は、問題は解決されないばかりか、保険者、被保険者にさらなる不安、不満を増幅させる内容となっております。
まず、後期高齢者医療制度への支援金、前期高齢者医療制度における支援金を含む財政調整金、退職者医療制度への拠出金など、被用者保険の将来の負担増に関する詳細が不透明なまま、納得しがたい負担が求められる点についてです。支援金、財政調整金、拠出金の法的性格を明らかにしつつ、現役世代も納得して支えることのできる制度とすべきであります。
次に、後期高齢者医療制度は独立した制度であるにもかかわらず、保険者が不明確な点です。全市町村が参加する広域連合を各都道府県に設置して制度運営を行うとし、広域連合の構成メンバーは、直接選挙、市町村議会の間接選挙、いずれかで選出することとされています。このような方法で選出されたメンバーによる広域連合で、保険制度の運営が果たして可能なのでしょうか。厚生労働委員会での質疑におきまして、政府は、財政責任を持つ運営主体としては、広域連合が保険者であると言えると答弁しました。そうであるなら、なぜ広域連合を保険者と規定しないのか、理解できません。
また、各保険者が保険者協議会に参加し、運営について協議するとしております。しかし、保険者協議会の権限、広域連合と保険者協議会の法的関係、両者の意見が異なった場合の調整などについても不透明です。
六十五歳から七十四歳を対象とする前期高齢者医療制度の制度間財政調整は、保険者機能の発揮を阻害し、保険制度の自主、自立の基本をゆがめるものであります。また、後期高齢者医療制度と同様に、前期高齢者医療制度にも公費負担を行うべきであると思います。
新たな高齢者医療制度は撤回し、引き続き検討するよう強く要望します。
第二は、高齢者の窓口負担の引き上げです。
高齢者の自己負担引き上げは慎重に検討すべきであると思います。現役並み所得者がいることは否定しませんが、高齢者の老齢年金の平均金額を見ますと、男性では約二百二十七万円、女性は百三十二万円となっております。
高齢者の自己負担については、二〇〇二年十月に、一割と現役並み所得者二割といった定率負担が導入されたばかりであり、マクロ経済スライドの導入で年金額が減少し、公的年金等の課税強化によって医療、介護保険料が増加しております。さらには、定率減税の縮小廃止で税負担がふえるなど、高齢者の生活不安は高まっています。療養病床における食費、居住費の見直しとあわせて、再検討すべきであると思います。
第三に、高額療養費制度についてであります。
今回、定額部分の引き上げと、二年後に七十から七十四歳の新たな年齢区分の設定が提案されております。高額療養費制度についての改正のたびに制度が複雑になり、計算方法を理解できる国民はほとんどいないと言っても過言ではないと思います。
昨年十月の厚生労働省の医療制度構造改革試案では、定額部分の引き上げと、医療費に連動した一%を二%に引き上げる案が提案されていました。定額、定率部分を引き上げれば、目に見える窓口負担を上げなくとも、実質的な自己負担の引き上げは幾らでも可能となります。定額部分の引き上げと医療費に連動した一%は撤回し、制度の簡素化を行うよう強く求めます。
さらに、今回、高額医療と高額介護合算制度が提案されております。利用者の負担軽減という観点からは、歓迎すべきだと思います。手続の簡素化を行うことによって利用しやすくするよう、検討するよう求めたいと思います。加えて、高額医療と高額介護という異なる制度の合算制度を創設するのであれば、例えば、勤務先が異なる夫婦がともに政管健保加入者であった場合など、被用者保険内での合算制度も創設すべきだと思います。ぜひとも検討いただきたいと思います。
第四は、妊娠、出産にかかわる内容についてです。
お配りの資料にも、やはり連合がインターネットで実施しました妊娠、出産費用に関する結果を掲載しております。十七ページにありますように、出産費用は預貯金を取り崩したという回答が最も多くなっています。このようなアンケート結果を参考に、子育て支援、医療安全の観点から、妊娠、出産にかかわる費用は保険適用とし、保険適用となるまでの間は出産育児一時金を四十万円に引き上げるよう強く要望します。
ILO百三号条約、母性保護条約が二〇〇〇年に改正され、百八十三号条約となっておりますが、いまだ我が国はこの条約を批准しておりません。今回、出産手当金は賃金の三分の二相当額を支給することが提案されました。これは前進であります。残るのは、育児時間の有給化です。条約では、相応の報酬を与えられねばならないとされております。これは本法案とは直接関係ありませんけれども、ILOの母性保護条約の批准に向けて、育児時間の有給化を検討されるようお願いをしたいと思います。
第五は、国保組合の国庫補助のあり方についてです。
高額所得者が加入する国保組合に対する国庫補助は、中小零細企業の労働者が加入する政管健保の一三%と比較すると、著しく高い補助率となっております。一人親方の組合、理容師、美容師の組合などへの補助は国保並みとすべきでありますが、高額所得者の組合については国庫補助率を抜本的に見直すべきであります。
第六は、医療法等の改正に盛り込まれている外国人医師等の臨床修練法における臨床修練対象の拡大についてであります。
現行の外国人の技能実習制度に見られるように、事実上、労働者としてカウントされ、労働基準法、最低賃金法違反など、多くの問題があることを踏まえると、この点については慎重に検討すべきだと思います。
第七に、医療制度改革関連法案には含まれておりませんけれども、二点ほど申し述べておきたいと思います。
第一点は、政府・与党の医療制度改革大綱に明記された「医療保険制度の一元化を目指す」という点についてであります。内容の詳細は不明ですが、これが地域保険と被用者保険との統合を目指すということであれば、これについては反対であることを強調しておきたいと思います。
第二点目は、経済財政諮問会議、規制改革・民間開放推進会議や財務省が主張する総額管理制、保険免責制は導入すべきではないということも強く求めておきたいと思います。
最後に、今回の医療制度改革関連法案の内容は広範多岐にわたっており、国民生活に大きく影響するものであります。法案の内容や問題点は明らかになっていない点がまだ多く残っております。審議は始まったばかりであり、今後さらに十分な審議が行われることを期待しております。
安心、安全、信頼の制度の確立に向けて、患者、保険料負担者、保険者、医療関係者などが納得するよう、昨日と本日の参考人意見を十分踏まえ審議を行うよう重ねて要望いたしまして、私の意見とさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)