川渕孝一の発言 (厚生労働委員会)
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○川渕参考人 ただいま御紹介いただきました川渕でございます。
きょうの私の話は、資料が入っておりますので、その資料を使いながら都合十五分間話をしますが、全部で十六について話をしますので、一枚一分のスピードで話をします。
日本の医療が危ないということを私は思っておりまして、実は、先生方のお部屋にこの本を贈呈した記憶があるんですけれども、九月十日の本でありまして、その次の日に選挙がありましたので、九月十一日以降に着いていると思います。読んでいただいたでしょうか。
実は、私、この本を書いたときに、自分は医科歯科大学に来て六年目になりますけれども、医師でも歯科医師でもない、無資格者でございます。医療経済学というのをやっておりまして、きょうは医療経済学の立場からお話しします。
私、この本の中に書きましたけれども、医療は対人サービスでございますけれども、医療制度は九九・九%政治でございます。ですから、政治家の先生方には慎重に考えていただかなきゃいけない局面に来たのかなと思います。
まず、きょうは、一つ目としまして、素朴な疑問ということで、まず一つはファイナンシングの話をしたいと思います。
そもそも、現行の国民皆保険制度、これは一九六一年にできたわけでありますけれども、私は当時二歳でございましたからよくわかりませんが、非常に思い切った、改革といいますか制度じゃないかなと思います。
しかし、これが持続可能、不可能という議論がありますけれども、本当に現行の国民皆保険制度というのは、このままほっておくと持続不可能なのかどうかというところが一つ議論ではないかなと思います。
と申しますのは、先ほどから議論が出ておりますけれども、現行の医療費二十八・三兆円、これはいつの間にか医療給付費となっておりまして、国民の患者負担が抜いてあるんですけれども、これが、このままほっておくと五十六兆円、経済財政諮問会議が言うには四十二兆円、厚労省はその間をとってか四十八兆円でどうだと。まるでバナナのたたき売りのような話でございまして、一体全体、この推計はどれが正しいのかなと。
一番国民が不安だと思うのは、やはり医療というのは、年金も非常に不安でございますけれども、国民年金に比べて、国民保険の滞納率等、低うございます。そういう点では、なけなしのお金で国民は必要なお金を払っておるわけです。結局、一体全体、社会保障の全体像がどうなっていくかというところが見えないのかなと思っております。
厚労省の案ですと、今回の案を見ますと、基本的には、中長期的には平均在院日数の短縮と疾病予防の強化によって適正化を行うという話でございますけれども、この中に一つだけ抜けているのが技術革新。つまり、医療は年金とは違って、この技術革新がなかなか読めないわけです。日夜、ドクター等も新薬をつくったり、あるいは医療機器の開発ですとか、この技術革新部分が医療のだいご味でありまして、これがなかったらやはり医療の発展はないわけであります。
ただ、いろいろな分析がありますけれども、技術革新はやはりお金がかかります。中長期的には、医療費の節約ですとか、あるいは雇用を生み出すとか、税収を上げるとか、医療費ではなくて分母の、国民経済の方に寄与するという部分があるわけですね。ですから、そこをどう考えておるかというところが私の非常に素朴な質問でございます。
それから、儒教の精神、今回の法案というのはこれは儒教の精神でありまして、老人保健法というのはまさに儒教であります。私も名前が孝一でありますので、日本一親孝行の子供でございますが、この儒教の精神で、本当に七十五歳のところの高齢者医療保険制度、これが二〇〇八年度以降どうなるのかなと。
特に私が一番懸念するのは、ついに人口減社会に突入しております。前倒しして二年前から入っておりますね、二〇〇五年から。四十七万人の方が、私もそうでありましたけれども、不妊治療に通っておられるし、三十二万人の方は優生保護法で堕胎をしている。そういう中で、今後、この人口減社会の中での高齢者医療保険制度の長期見通しはどうなのかというところは、ちょっと私もわかりません。
それから、我が国には五つ社会保険があります。年金、医療、介護に加えて、失業、労災保険と、厚生労働省でございますので、五つの社会保険があります、これはドイツに似せてつくったんですけれども。一方で、社会保障個人会計という話がありますけれども、こことの整合性はどうするのかとか、あるいは、年金はゆっくりと今、六十から六十五歳へと給付を上げておりますけれども、医療保険は七十五で線を引くという話、それが果たして整合性があるのかどうか。
それから、要医療、要介護と言っておりまして、なかなか線引きができない中で、介護は六十五歳、四十歳以上となっておりますけれども、ここがどうなのかというところも、やはり私は、年金、医療、介護の整合性を、医療保険改革だけではなくて、問う必要があるんじゃないかと。
それから、さらに声を大にして言いたいのは、国民皆保険は残るが勤務医が医療界から消えてしまうという現象が起こらんとしております。それは次の三ページ目を見ていただきたいんですけれども、小さな数字の三ページ目ですね。
これは、厚労省の医療施設調査で分析しました。実は、日本で医師が何人いるかというのもはっきりわからないんです。医療施設調査と三師調査というのがございまして、医師・歯科医師・薬剤師調査、これは医師の数が違います。ですから、私自身、非常に困ってしまうんですけれども、とりあえずここでは医療施設調査。それで、年間大体千人ぐらいの方がふえております。ところが実態は、四千人ぐらい開業して三千人ぐらいがやめている。純増が千人ぐらいであります。七千七百人、医学部から医者を輩出して、時間差はございますけれども、四千人ぐらい開業しているという実態ですね。
科別に見ていただけばわかりますように、小児科、確かに一・一とか一・〇九ということで、十二年前あるいは六年前よりふえておりますが、逆に言いますと、開業する小児科がふえるということは、勤務する小児科が非常にプアだ。先日も、八戸へ行ってきましたけれども、あの人が開業したからうちの小児科は閉めるんだとか、そういう固有名詞の話になっておるわけですね。これについては、今厚労省も医療監視ということで、特に東北地区の病院は非常に今医師が足りない、つまり医療法の標準を満たしていない医療機関が多いわけですね。いないわけです。
それから、産科の開業に関しても、産婦人科は十二年前に比べて〇・二六ポイント減っているというのが実態でございます。
ここで気をつけなくちゃいけないのは、産科の方というのは女性が多いんですね。私は女性の方と最近お会いしまして、何と今、平成十五年度で、四万六千八百六十人の方が医学部にいます、八十大学ですね。そのうちの三三%が女性なんですね。この方々が一体どういうキャリアを描くのか。それが、NPOのejnetの瀧野さんという方からいただいたこの四番目の資料ですね。いわゆるMカーブを描いているわけです、我が国は。これは女性の今の就業の中で、医師も例外ではないということでありますね。下手をしますと、もう専業主婦になってしまうということも懸念されるわけであります。そこをどうするか。
それから、さらに気をつけなくちゃいけないのは、次のページの、労働基準法を満たしているのかどうか、これは東京都医師会の先生の資料でございますけれども、いろいろなドクターがいます。研修医あるいは非常勤等もいます。この資料によりますと、六百二十九人しかありませんが、七二%が週四十時間の労働時間を超えている、つまり労働基準法違反であります。こういったのが今の医療の実態でありまして、ここをどう考えればいいのかというところを私は特に声を大にして言いたい。
二点目は、疑問のところで見ますと、本当に医療費はコントロールできるのかどうかというところであります。先ほど御案内しましたように、医療は、高齢化もありますけれども、技術革新というのはなかなか読めないわけですね。実は、歴史をひもときますと、一九八一年に土光臨調というところで国民医療費の伸び率を国民所得の伸び率の範囲内に抑えろという話が出ましたけれども、本当に抑え切ったのかどうかという検証がなされておりません。これは本当に抑え切れるのかどうか。
もう一つ大事なことは、健康日本21、これはアメリカのヘルスピープル二〇〇一にちなんで厚労省もつくりましたけれども、中間報告を見ますと、残念ながら、五十三項目中二十項目はむしろ数値目標が悪化している。私のウエストも今九十二センチでございまして、何とか八十五センチにしたいと思っておりますけれども、なかなか人間の行動変容というのは期待できない。
私は、国民すべからく健診を受けろ、こういう何か昔のような話はもう無理じゃないかなと。それで、中にはルーズな方もいますので、疾病予防に医療費控除を入れる。例えば、人間ドックを受けますと、一銭も医療費控除を受けられないんですね。大衆薬の領収書を持っていくと、交通費まで医療費控除を受けられるわけです。この矛盾。
あるいは、疾病予防にたばこ医療費目的税、これはぜひ公明党さんにも頑張っていただきたいと思うわけであります。
それから、メディカル・セービング・アカウント、これはシンガポールがやっておりますけれども、貯蓄を医療費に使った場合に節税効果がある、相続も可能であります。日本人はまだ貯金が好きでございますので、私は、ぜひ、このメディカル・セービング・アカウントのような節税をするということと疾病予防、これを組み合わせないと、国民すべてにあしたから健診を受けろ、こういうのはもう時代錯誤も著しいんじゃないか。
それから、三つ目は、昨今の厚労省の医療費適正効果があったのかどうか。これに関しては、実は、内閣府が立派な報告書をまとめております。これはまた後で御披露します。
それから、DPCということで、今、急性期病院の包括払いが入っております。この四月からも百四十四から三百六十病院と拡大しましたけれども、これは一体何を目指しているのかよくわからない。
例えば、内閣府がまとめた報告書がありますけれども、私の資料の小さな数字の七ページでありますが、見ていただけばわかりますように、非常に細かいのでありますけれども、画期的なのは、厚労省が他の官庁にデータを貸し出したということですね。多分、今、いろいろな官庁が社会保障、医療に関心を持っております。ところが、患者の個票、もちろん個人情報保護法はクリアしなくちゃいけないんですけれども、厚労省のデータベースをもっとシェアして、政策評価に使えないか。
ここに書いてあることはその一部でありますけれども、これまでの患者の自己負担増は余り受診抑制になっていないというような分析結果があります。ただ、これはいろいろな方が分析しているんですけれども、本当に医療というのは、一円、二円上げても、やはり大事なんですね、必需品であります。これに対して、歯科はまた違うんですね。私は医科歯科大学でございまして、きょうはだれも歯学部の話をする人がいませんので、かわいそうなのでやってあげようと思うんですけれども。
もう一個、介護保険。介護保険に関して明らかに出てきたことは、高所得者ほど在宅介護サービスの利用者が多い。逆に言いますと、低所得者はなかなか受けられない。介護は混合介護を認めておりますので、この辺、医療保険と介護保険の整合性をどう合わせていくかというところも大事じゃないか。
今、中医協改革と言われておりますけれども、まさにアメリカでやっておるようなメドパックといいますか、第三者の立場で国会議員の方に医療政策に対しての評価をするという機構を私はつくってもいいのではないかと。あるいは、今の内閣府のようなところの官庁エコノミストの知恵をかりながら、一体全体これまでやってきた医療制度改革はどうだったのかというような評価も必要じゃないかなと思います。
歯科に関しては、専ら世界に比べて非常に料金が安い。その結果として、数量調整ということで、次のページを見ていただけばわかりますように、期待値より二・三倍も延べ患者数が多いということでありまして、先生方も歯科医に行かれますと、また次ということがあると思います。これは、まさにプライスコントロールを、結局は数量で調整しているという面でもあるのではないか。
それから、DPCでございますが、よく言われますけれども、日本の医療費の約一兆円を今ここでやっているわけです。問題は、何が起こっているか。まず、医療費が高騰しております。DPCをやっていない病院よりもやっている病院の方が医療費の伸び率が高い。それから、外来シフトが起こっております。目指した医療の標準化というのが果たして進んでいるのか進んでいないのか、全くわかりません。したがって、一体これは何を目指してやっているのか。
次のページを見ていただけばわかりますように、アメリカのDRGというのは一九八三年に入りました。当時、私はシカゴ大学にいまして、こんな制度は長続きしないと言っておりましたけれども、まだ二十年たっても続いております。何が起こったか。病院の数が減り、病床数が減り、平均在院日数が五・七日、病床利用率が六四・四、外来が十九万人から五十三万人。
こういうことを目指しているのでしょうか。そうすると、平均在院日数は何日を目指すのでしょうか。私は、日本で今、五・七日を目指すといったら、病院職員はみんなやめていくと思います。もうバーンアウトぎりぎりでございますので、これ以上、今の医療スタッフにその負荷を課すのかどうかというところを本当に考えなくちゃいけない。
最後に、私は、医療提供体制について申し上げたいのであります。
資料の十二ページでございますけれども、私がいろいろな研究をやっておりまして、例えば、この方は広島県の方でございますけれども、この方に了承をとって私は今この資料を使っておりますけれども、川渕さん、どこの病院に行ったらいいのかというようなことを聞かれるわけですね。我が国はすべからく平等に医療が受けられるとなっているんですけれども、どの病院がいいかどうかという情報はないんですね。したがって、本当に機会の平等があるのかどうか、ましてや結果の平等というのがあるのかどうかという部分は、私は非常に今、病院の可視化ネットワークをやっておりまして思います。
それから次の十三ページ、私の今やっております病院可視化ネットワークというスキームでございますけれども、これは、厚労省が今集めているDPCデータで、国に出すのであれば私にも一票をということで、我々もデータをいただいてくるわけです。これは原価ゼロでありますね。国へ出すんですから私にも下さいと。本当は、厚生省の方が私に貸していただきたい。研究班の方にもお願いしたんですけれども、これはなかなか個人情報の問題があって貸し出せないとおっしゃるんです。何度も申しますけれども、患者名は匿名で結構でございます。
一度、アメリカはこういうデータを、AHRQというアメリカの厚生省の研究所がデータベースにしているんです。これを数十ドルで貸し出すんですね。ですから、我々みたいな日本人でもアメリカの病院のデータが手に入る、それで研究ができるわけであります。研究ができて、最後は、その次のページでございますけれども、私は何とか医療の質がよくて医療費が安い病院の名前を出したい。私はこれがアイ・ハブ・ア・ドリームであります。
つまり、十五ページにありますように、医療の質がよくない病院もあるわけですね。よくどうやって評価するのかと言われますけれども、これは先ほど言いましたように、患者の個票をいただいて、難しい患者さんは亡くなります。これは心血管疾患の例でありますけれども、狭心症ですとか心筋梗塞ですとか、冠動脈が詰まっている方はやはり亡くなりやすいわけであります。こういうのをすべて数値化してできるんですね、DPCデータで。これをリスク調整して、縦軸は、平均在院日数、アメリカではALOSと言っていますけれども、在院日数掛ける診療単価、つまり国民からすると医療費ですね。病院は医療収入。
ということは、国民が一番欲しているのは、うまくて安い病院です。そういう病院は、あるかと思ったらあるんですね、M病院。この病院が報われないわけです。なぜか。収入が下がってしまうわけですね。医療費が安いということは収入が安いということですから。ですから、私は、努力する者は報われないと。
先ほど、渡辺参考人の方から長野モデルが出ましたけれども、実はこのR病院が長野の有名な病院なんです。この院長が名前を出してもいいとおっしゃるんですけれども、なぜこんなに死亡率が高いのか、ここを可視化しなくちゃいけない。確かに、長野のぴんぴんころりはありますけれども、本当に長野の医療費は安いんだけれども、医療の質はどうなのかというのを可視化しないといけないんじゃないか。最近、見える化という言葉が使われておりますけれども、まさに見える化。
そして、私は、覚書で実名入りができませんけれども、ぜひここに固有名詞を入れる社会、これをやはりつくらないと、私は国民は医療費負担に耐えられないのではないかと思います。
それから、最後の十六ページですけれども、今の診療報酬体系ですと、医業の利益率が高い病院は必ずしも死亡率が高くない。逆に、利益率が低い病院の方が死亡率が高かったりするわけですね。しかし、統計的にはないんです。ということは、だれも、医療の質を上げるといっても、経済的インセンティブがない。これは一般産業から見たら非常におかしいと思います。
以上、私の雑駁な話を終わります。ありがとうございました。(拍手)