酒井和子の発言 (厚生労働委員会)
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○酒井参考人 酒井と申します。均等待遇アクション21という小さなグループなんですけれども、そこで事務局をやっております。
私たちの均等待遇アクション21といいますのは、二〇〇〇年にスタートいたしましたグループです。二〇〇〇年ということは、前回の均等法が改正されたときに、私たちはそのときから間接差別をどうしても法律に入れたいと強く願っていたのですが、残念ながら間接差別が入らなかったということもあって、それ以降、パートで働く人たちや未組織の正社員の人たち、そして労働組合の方たち、弁護士あるいは研究者、国会議員の方も含めて、そういった思いをする人たちとともに小さなグループをつくりまして、ILOあるいはCEDAWに行ったりとか、さまざまな調査研究をやったり、働く実際の小さな声を拾い集めて、何とか次の改正に声を反映させたい、そういう思いで活動してまいりました。
本日は、そういった私たちの思いをこういう形で発言させていただいて、大変うれしく思っております。
私は、きょうは特に、この均等法が、パートや契約社員などいわゆる非正規と言われる女性たちにとって、ああ、均等法があってよかった、本当に均等法は私たちにとって役に立つよね、そういうふうに言われるような法律になってほしいと強く願って発言をしたいと思っています。
さて、これまでもさまざまなところで、参議院の中でも繰り返し述べられてまいりましたけれども、非正規で働く女性たちにとって一番の問題は何でしょうか。それはもちろん、私が言うまでもなく皆さんよく御存じのように、何といっても賃金差別です。そして、この賃金については常に、いや、これは労基法四条でという形で、均等法の問題ではないというふうに言われ続けてきましたけれども、それならば、ぜひ均等法の中に間接差別としてパートの賃金差別を禁止するということを入れていただきたいと思っているんです。これは、日本では、いや、これは違うと排除されますけれども、国際的にはもう当たり前の常識になっております。
これまで、参議院の中ではCEDAWの勧告の話がされてきましたけれども、CEDAWだけではありません。ILOの条約勧告適用専門家委員会は、百号条約の日本における実施状況について、二〇〇三年の報告の中で次のように意見を表明しております。
日本政府の報告が、正規労働者のみを対象としてパート労働者や臨時労働者を除外していることを問題にして、男女の非正規雇用者の賃金も考慮に入れた完全な統計情報の提供を求めております。そして、パート労働者の大半が女性である以上、パート労働者の賃金水準が概して低い状況にあることは、全体として男女間の賃金格差に悪い影響を与えているとしています。そして、委員会の見解として、男女同一価値労働同一報酬の原則は、パートタイム労働者を含めたすべての労働者に適用されると述べております。
そして、二〇〇三年のCEDAW勧告の中でも、パートタイム労働者や派遣労働者に占める女性の割合が高く、その賃金が一般労働者より低いことに懸念を有するというふうに述べております。
こうした指摘を受けてか、二〇〇六年のヌエックという国立女性教育会館が発表していますデータでは、初めてパートタイム労働者を含めた男女の賃金格差を掲載しています。それによりますと、一九八五年から二〇〇四年の間の男女賃金格差は、正社員だけならば五六・一%から六五・七%という形で若干縮小をしておりますが、パートを含めた男女賃金格差を見ますと、一九八五年の五二・九%から、二〇〇四年、五一・三%と拡大をしているんです。二十年間でむしろ拡大しているということをようやく政府も認めたわけですけれども、この事実を認めるならば、当然のように、非正規の賃金差別を間接差別として立法化をお願いしたいと思っています。
次に、非正規の労働者にとって大変大きな問題は、賃金と同時に、もう一つは有期雇用の問題があります。この有期雇用については、これまで雇用管理区分の中で、指針においては、職種、資格、雇用形態、就業形態などの区分であるとしており、有期雇用か常用雇用であるかという区分けが行われておりますけれども、これこそが間接差別であると思っています。
厚生労働省のパート労働者総合実態調査というのが大体五年置きぐらいに行われているんですけれども、一九九五年には雇用期間の定めのあるパートはわずか三六・八%でした。ところが、二〇〇五年、去年、二十一世紀職業財団がパート労働実態調査を行ったんですけれども、それによりますと、何と、この十年間で雇用期間の定めのあるパートは六六・六%とほぼ倍増をしております。しかしながら、そのほとんどが契約更新をしており、実際には雇用期間の定めのないパート労働者という実態があるわけです。そして、この有期契約労働者のほとんどが女性であるわけで、有期契約であるということをもって賃金が低く抑えられており、それどころか、一時金や退職金もない、そして慶弔休暇とか夏や冬の休みも無給になってしまう、そういう雇用条件や福利厚生などで大きな隔たりがあります。
有期雇用であるかどうかということを理由にして差別をする、これは雇用管理区分が違うんだから問題にならないというふうに放置することも大きな問題であり、これこそ間接差別としてきちんと是正をしていく問題ではないでしょうか。
次に、具体的な事例を挙げて少し説明をさせていただきたいと思います。
きょう皆様にこういう一枚の資料をお配りしましたけれども、大手総合スーパーの人事制度というところを見ていただきたいと思います。
大手総合スーパーというのは、もちろん日本の中のパートの非常に多くの部分を占めるものであり、そして、大手スーパーではどのようなパートがどのような働き方をしているのかということは、これからの日本のパート政策を考える上でも非常に大きな示唆を与えるものだと思います。
これはJILという厚生労働省の外郭団体の資料から作成したものなんですけれども、このA社、B社というのは、名前は出しておりませんけれども、最大手のスーパーであります。そして、両方とも共通するのは、最近の人事制度は、これまでの非常に細かな人事制度を変えまして、大体三つぐらいに分けているんですね。その共通性というのは、一つは全国転勤ができるかどうか、それからもう一つは、地域限定、例えば東京都内、あるいは東京と神奈川という、それぐらいの、転居を伴わない転勤ができるかどうか、そして三つ目は、転勤しなくてよい、要するに、転居を伴わない転勤がない、それをすべてパート社員という形で、転勤ができるかどうか、転居を伴う異動があるかどうか、これで一つの区分けをしております。そしてもう一つは、労働時間の長さです。フルタイムなのか、それともパートタイムなのか。
この転勤の有無と労働時間の長短で人事制度を分けていくというのがスーパー業界の一つの特徴なんですが、これを見ますと、非常に明らかな変化が起こっています。こういう制度に変える前は正社員の中にも女性が結構いたんですけれども、全国転勤という基準をつけた途端に、A社で見ますと、全国転勤型は、男性が七千二百人に対して、女性はわずか千三百人になってしまいました。そして、転居できないという人たち千八百人がパートに切りかえざるを得なくなったんですね。パートに切りかえられたうちの九一・七%は女性でした。そして、パートになるのも嫌だ、だけれども全国転勤もできないという女性たちは、本当にたくさんの人たちが退職に追い込まれていったんです。
こんなふうにして、転勤の有無と労働時間の長短という二つの基準を設けることによって、生き残れるのは男性だけ、そして、特に家族的責任のある女性たちはみんな、退職をするか、あるいはやむなくパートにならざるを得ない、こういう実態があります。
そして、では、いわゆる正社員と言われている人たちとパート社員の中で、いろいろ違いはありますけれども、その中でも共通するのは、いわゆる社員は月給制だけれども、パートは時間給であるということ。そして、退職金は、社員にはあるけれどもパートにはない。そして、契約期間も、社員にはもちろん期間の定めがないけれども、パート社員はたとえ十年いても二十年いても一年あるいは六カ月の契約があり、そして、たとえパート店長になっても、パートのリーダーになったとしても、一年更新ということで十年、二十年働き続けている、こういう差があるわけです。
こうした実態を見ますと、やはり転勤の有無と労働時間の長さをもって正社員とパートの区別にするということ自身が間接差別であり、これは、日本が批准していますILOの百五十六号条約、家族的責任条約に違反するものであると思います。このILO家族的責任条約の勧告、第百六十五号勧告というのがありますが、ここでは、パートタイム労働者の雇用条件は、可能な限りフルタイム労働者の雇用条件と同等であるべきであると述べています。
さて、次に、もう一つ、きょうお配りしました資料の裏の方をごらんいただきたいんですが、こちらの方にも一つの典型的な例を述べておきます。
これは、いわゆる疑似パートあるいはフルタイムパートという、とても外国の人たちが理解に苦しむような、しかしながら、日本の中では当たり前にたくさんいるパートの人たちのことなんですが、この会社で働く正社員とパートの労働条件について比較対照の表をつくってまいりました。
ここの会社は、正社員は一日七・五時間で、パートは七時間勤務なんですね。三十分時間が違うということで、これは疑似パートということなんですけれども、実態としては、パートの人たちはほとんど残業があるんです。ですから、確かに雇用契約書で見れば三十分違うんですが、ほとんど同じ時間働いているという実態があります。
しかしながら、ここの会社で、正社員は、百二十人のうち、女性はわずか十四人しかおりません。その十四人というのは、未婚の女性、あるいは結婚していても子供がいなくて、いわゆる家族的責任を持たないでもよい、そういう女性しかおりません。そして、パートはほとんどが女性ということで、ここでも、数の上でも女性と男性に分かれているわけですけれども、契約期間の有無にしろ、そして、残業や配転などについてもいろいろ違いがあります。残業や配転は、正社員だけではなくパートにもあります。そして、パートの雇用契約書の中にもきちんと、残業がある、そして必要によっては配転もあり得るということが書いてあるんですね。
ところが、実際に、一時金は違いますし、それから退職金も、正社員にはあるけれどもパートにないという形で、事細かく隅々まで、どうしてここまで差別をしなければいけないのかというぐらいに差別をしております。
そして、こうした中で、最近、ここで働くパートの方たちが、大変ショックだということで訴えてこられたことがあります。
ここの会社では、弔慰休暇として、お母さんやお父さんが亡くなると三日間有給で休みがとれるわけなんですが、先月、あるパートの女性が、お母さんが亡くなって青森に帰られたので、三日間休みをとられたんですね。そして、当然これは、自分の周りの正社員が弔慰休暇をとって休んでいますので、自分も三日間弔慰休暇をとりたいというふうに申請をしましたら、あら、知らなかったの、パートにはないのよ、有休とりなさいというふうに言われたんですね。もちろん、その方はもう有休がなくなってしまったので、結局、三日間の休みは欠勤扱いにせざるを得なかったということがありました。
親が死んだときの気持ちは同じなのに、なぜ自分はここまで差別をされないといけないのかということで大変ショックに感じておられたんですが、三日間の休みによって何と給与が一万九千円も引かれてしまったんですね。そうすると、ほとんどフルタイムで働いているにもかかわらず、手取りで十万円になってしまった。これがまた大変なショックだったということで、生活にも大変困っているという実態があります。
こういったことを考えても、特に疑似パートと言われるような方たち、あるいは正社員と全く同じ時間働く女性たちが、雇用管理区分が違うということで差別が是正されないというのは何とも納得ができないと思います。こうした疑似パートやフルタイムパートと言われる人たちは、雇用管理区分が事実上同じものとして、間接差別として是正すべきではないでしょうか。
さて、もうそろそろ時間がありませんので、この間の参議院の中で、パートはパート法でやるべきだという話が随分と出てきました。それについて私はぜひ反論したいと思います。
例えば、ヨーロッパでそんなことを言っている国はないと思います。EUの中、例えばイギリスでは、既に一九七五年に性差別禁止法ができて、この中で間接差別が禁止されています。そして、イギリスでは、間接差別禁止をした性差別禁止法に基づいてたくさんの判例が出ています。パートの低賃金や年齢差別、あるいはシングルマザーの深夜勤務など、これらはすべて間接差別として認定されております。
しかしながら、パート差別は、こうした性差別禁止法の間接差別法理だけではなく、一九九七年には、雇用関係法の中でパート差別を禁止しております。すなわち、性差別と雇用形態差別という二つの視点からパート差別をイギリスでは禁止しているわけで、こうしたいろいろな側面から差別を禁止することが、是正にはより効果的なのではないでしょうか。
最後に、参議院の審議の中で、パート差別はパート法で是正するという考え方が何度も示されておりますけれども、同時に、均等法はパート労働者や非正規労働者もすべて対象になっているという発言もございます。ところが、このままでは、均等法によるパート労働者、非正規労働者の権利擁護が全くなされないことになってしまいます。そしてまた、パート法でやれと言われますけれども、現行のパート労働法は努力義務による均衡処遇となっているため、是正は一向に進んでいません。
先ほどの印刷会社の方は、余りにもパート差別が激しいので、労働基準監督署に訴えたんですね。そうしたら、いや、実情はよくわかるけれども、パート法は努力義務だから強制はできないので、無理やり企業に対して強制して是正しろとは言えないということで、何とそこで行われた指導は、経営者に対してパート指針のパンフレットを持ってきたということが実は指導なんですね。こういう指導を行政の方では指導あるいは助言と言われるかもしれませんけれども、私たち女性の側から見れば、これは門前払いとしか言いようがないと思います。
私たちは、パート労働法を実効性のあるものにするためには、均等待遇と差別の禁止をパート労働法に明記すべきであると考えておりますが、それと同時に、均等待遇がパート労働法の中で明文化されたとしても、性別役割分業に基づくパート差別は形を変えて残っていくと思います。そういう意味では、均等法でもぜひパート差別を間接差別として禁止するよう、皆様にお願いしたいと思います。
これで終わります。(拍手)